「シズカナカクレガ」ヘヤフコソ
MFT移行の記


OLYMPUS"M.ZUIKO DIGITAL ED 12-100mm F4.0 IS PRO"・・・・・・コイツを体験してハラは決まりました。

 まず初めに、お詫びから始めます。

 いやいや、他でもない。記述内容がほぼほぼ前回の焼き直しみたくなってるのはどうかお許しいただきたい・・・・・・まぁそうそう人の主義主張なんて変わらんのだから仕方ないコトとは申せ、書き上げて読み直してみてちょっとカブり過ぎだとサスガに自分でも思いました。年寄りの繰り言だな、これでは。衷心より反省しております、まる!

 APS−C〜35mmフルサイズって大きな変化を挟みつつ、およそ10年以上に亘って使って来たニコン・Fマウント・・・・・・っちゅうかフルサイズって〜のを止めた。そして終わコンだとか技術的限界だとかいろいろ外野の雑音がかますびしいマイクロフォーサーズ(MFT)に乗り換えた・・・・・・って、エラそうに言ってもまだボディ1台、レンズ1本とまだまだこれからなんで、全然大したことないのだが。

 理由はただもう、フルサイズのあまりの重さにウンザリして、システム全体での小型・軽量化を図りたかった、ってコトに尽きる。ついでに言うとファイルサイズもだな。フルサイズの写りはそらまぁなるほどたしかに実際スンバラしい。息を呑むような精細さが容易に得られる、それはもう間違いない。そしてそれはかなりの快感でもある。
 ただここまで折につけ触れてきたように、ある程度の機材を持ち運びしようとするとムチャクチャに嵩張って重いのだ。重量増加を警戒して所謂「大三元」であるF2.8レンズではなく、F4.0を中心に揃えてはみたんだけど、それでもやっぱし厳しかった。クルマに積んでったって、目指すポイントに着いてさぁ撮るぞ!ってなったら、そっからは歩いて担ぐことになる。急斜面をよじ登ることさえある。そんなトコをシンクタンクのレトロスペクティヴに収まった全部を担ぐ気には、今はもう到底なれない。以前書いた通り、無理して担いで急な山道でギックリ腰になりかけて以来、いささか怖気付いてしまったのだ。仕方ないから、予備の1本をモンベルのシルナイロンのペラペラの頭陀袋に移し替えて持ってったりする。しかしそうなると殆どの場合、何だかんだでツブシの利く16−35mm/F4と24−120/F4mmのズーム2本だけ、って構成にばっかし落ち着いてしまう。そんなんでもボディ+レンズ2本合わせると2.5kgくらいになる。35mm/F1.8や50mm/F1.8の単焦点でさえ出番がない。旅館に着いてからと翌朝にちょっと使うくらいだ。70−300mmに至っては、今や旅館の窓から双眼鏡代わりに使われてる有様だ。これでは何本もレンズ持ってく意味がない。アカンではないか。

 一言で言って「身の丈に余る」状況が続いていたのだった。ボディはともかくレンズについては、ナンボ裏面照射型CMOSが普及したとしても、銀塩よりかはレンズにテレセントリックな光学特性が求められ、撮像子が大きいほど悪影響を受けるる以上、どしたってフルサイズでフィルム時代のようなコンパクトなレンズを作るのはムリだろう。恐らくは曲面センサーとか異常なまでの屈折率の硝材でも実用化されない限り、今後フルサイズの世界でレンズの劇的な小型軽量化が実現することはないとおれは思う。ならばどのメーカーに乗り換えようと、このままフルサイズの世界にいては宝の持ち腐れ状況が続くことになってしまう。それはどうにも面白くない。

 ともあれ今回取り敢えず買ってみたのは、先日出たばかりのオリンパスの中級機「E−M5MarkV」っちゅうのと、「悪魔のレンズ」とまで言われるスーパー便利ズームの「12−100mm/F4」で、実はレンズの方はMFTとしてはかなり重い部類に入ってたりもするんだけど、それでも両方合わせて1kgくらいしかない。これまで同じような組み合わせで1.7kg近くあったことから思うといきなり6割になった。いっそ金属鏡筒に拘るの止めてくれたらもっと軽くなって良いのになぁ〜、っておれは思うな。いずれにせよそれでもスゴくスッキリした。軽いは正義だ。

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 あまり詳しくないとは申せ、ちょと知ったかなコトを書かせていただくと、そもそもライカ判と呼ばれる35mmが普及したのは、それまでの大きなフィルムをベースとする機材の巨大さに対するアンチテーゼからだった。フィルムサイズは小さくて画質的にはちょと劣るけれど、圧倒的に小型軽量で機動力に優れてたからである。それまでのカメラはとにかく大きいのが当たり前だった。
 先日、「ナショナルジオグラフィック」の記事にそれを裏付けるような、たいへん興味深いエピソードがあるのを見付けた(※)。新進気鋭のカメラマン、ルイス・マーデンがこの雑誌のカメラマンの募集に首からライカぶら下げて応募したとき、編集長のフランクリン・フィッシャーはこう言い放ったちゅうのだ。1935年のコトらしい。

 ------ライカ?そんなオモチャに用はない!うちはマジメに写真を撮ってる。

 そう、80なん年前のライカって、今でいえばコンデジとかスマホのカメラみたいなモノと見做されてたのだ。

 当時の・・・・・・いやいや今なお写真の世界に連綿と続く巨艦・巨砲主義が良く分かるハナシだよね。でも思いません?カメラって道具自体がそんな巨艦主義の中に相も変わらずあって、時代から取り残されつつある、って?だって最近のニュースなんかで大雨だの地震だのってな生々しい映像、みんなスマホですやん。悠長に露出や絞りがどぉこぉとかないですやん。ユーチューバーにしたってそこまでアホみたいに豪華な機材使ってないでしょ?昼夜を問わず日々インスタに上げられてる膨大な数の写真、間違いなく99%がスマホで撮られたモンとちゃうかなぁ?

 「それやったらオマエかてスマホでジューブンちゃぁうん?」と言われてしまいそうだ。実際、旅のギャラリーに並べてる写真くらいなら、流石に今使ってる随分くたびれたi−Phone6Sでは厳しかろうが、最新モデルにすればもぉ殆どが代替可能だろう。それはよぉ〜く分かる。実際、プロの写真家の中にも殆どスマホで撮っちゃって、後のフォトショ等の加工で仕上げてる、ってケースが増えてる、な〜んて言われてるもん(もちろんそのために、スゴいライティングとかしてるみたいだけどね)。

 言いたいことは、現在各メーカーが鎬を削るフルサイズの活況は、これまでのカメラ・・・・・・いや、あらゆる道具の歴史からすると退行なのではなかろうか?ってコトだ。そして何かが歴史の流れに逆行する場合、そこには必ず誰かの何らかの欺瞞や狡猾な企みが働いてるのは古今東西変わらない。
 この場合は言わずもがな、メーカーと流通である。単価も利益率もリピート率も高いフルサイズは、今やあらゆるプロダクトが大量生産・大量消費の薄利多売がデフォになってしまった中にあって、数少ない旨味のある製品なのだ。

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 あぁ、今回の移行のもう一つの理由に、手ブレ防止機能がもっと強力な環境にしたい、っちゅうのもあった。やっぱ三脚据えて腰を落ち着けて、ってな撮り方ではないし、絶えずキョロキョロ・ソワソワしながら(笑)っちゅうのもあるんで、パパパパッと数をこなして撮ってもブレてなくて歩留まりの良いことが、かなり要件の優先順位としては高いのである。
 この点でオリンパは脅威的と言える。これまであまり顧みなかったことが悔やまれるくらいにビシッと止まってくれる。カタログ数値だけで見れば5.5段とかは他メーカーにもあるんだけど、何となくそれ以上に効いてるような気がするのが不思議だ。ネットを見ても「長秒チャレンジ」とかゆうて、手持ちで20秒とか最早アタマおかしいレベルで殆どブレてない写真が上げられてる。まだそんなに試してないとは申せ、1/2秒くらいまでならちょっと気合い入れるだけでバチバチに止まった写真がいくらでも撮れる。むしろ被写体ブレの心配をしなくちゃならない。
 ちなみにメーカーが目指してるのは「手持ちで星空写真が撮れること」なんだってさ。メーカー自身も相当アタマおかしい(笑)。これには8段以上の性能が必要になるらしいが、そのためには地球の自転まで考慮する必要があるとかナントカ・・・・・・やっぱアタマおかしいわ。

 あと、デジイチなら当たり前のEVF、これも日進月歩で良くなってて、とにかく露出補正をキメやすいのがありがたい。レフ機は見た目通りに自然に見えるのが最大の長所である一方で、どんなふうに写るのか?についてはちょと弱い。
 それがEVFなら露出間違えてオーバーだアンダーだと悩む必要がない(逆に意図的に真っ白にトバしたりもすぐに出来る)。ファインダー覗きながらダイヤル回すだけでOK。WBもそうだな。飲食店とかだとやたらオレンジが強く写りがちなのが補正しやすい。もちろん液晶画面である以上何となく不自然だったり、目が疲れやすかったりって欠点は残り続けるんだろうけれど、時代はとっくにこっちにシフトしてんだし、良い点を上手く活用して行けばそれはそれでいいのかなぁ〜、っちゅう風に思えて来た。願わくは視野率が100%になればもっとありがたいのだが。

 暗所耐性はまぁ世評通りで、どうだろ?ISO1600まではOKかな?3200でも引き伸ばさなければ全然使えそう、ってなトコ。ベースが200だから要は3〜4段で、これだけ見るとちょとどころかかなり寂しい。ところが、MFTの特性で解像度は開放からいきなり使えちゃうし、何せSSをドーンと落とせるからこれまでよりは2段くらい低いISOで撮れる。つまり頑張れば12800レベルがOKってコトだ。だから実用上はあんましフルサイズと変わらんような気がしてる。
 それに暗所ではおれは専らビデオライトを使うことにしてるんだけど、それでナンボかAFの足しにはなるかなぁ?これまでのフルサイズにしたってAF、迷う時は迷ってたんだし・・・・・・ま、その内、F1.8を導入することにしよう。

 ボケはこりゃもぉ拘る人には厳しいかもね。おらぁ基本パンフォーカス大好きなんで全然気にならないけどさ。ただ、言われるほどボケないコトもないねんなぁ〜、って気がしてる・・・・・・っちゅうのも理由はカンタン、撮影最短距離がやたら短いのが多いから(おれの買ったレンズなんて最短はワイ端で実にレンズ前1.5cm!)、ちょっと長めの焦点距離で近付いて撮ればそこそこイケるやんか、ってのが正直な印象だ。むしろ広角域でこれだけボケてくれりゃぁ御の字なんぢゃねぇの?って思ったけどね。
 むしろどうしたって範囲が広めになるピントの当たってる領域が気になる人には気になるだろう。超ピン浅で、画面上の合焦した僅かな1点からアブストラクトに蕩けてくような写真を求めるような人は、そもそも敢えてMFT選ぶ必要はない気がする・・・・・・まぁどぉしても欲しけりゃ、ソフトウェアで作り込むか、或いはフォクトレンダーのF0.95みたいな変態レンズを使うコトだろう(笑)。

 ・・・・・・グダグダ書き連ねたが、要はフルサイズもAPS-CもMFTも、世間で言われてるほどにはあんまし大して違わへんなぁ〜、っちゅうのが忌憚のないところだったりする。マジで。むしろ気になるのは、設定変更すれば済むこととは申せ、標準アスペクト比が4:3ってコトくらいだ。近年のワイド化が進むアスペクト比にあってはちょとズングリしてるんですよ・・・・・・まぁ、3:2だと少し広すぎる気もしてたけどね。おれの理想は7:5くらいなんだよな。

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 そして最後にして最大の問題、画素数ってコトになる。撮像子の小さなMFTで高画素化がむつかしいのは周知の事実と言えるからそのリクツについては割愛させていただこう。ともあれ現状では2,000万画素だから(一説には間もなく2,600万とかが出るらしいね)、フルサイズの現行ハイエンド機と比べると1/3とかだ。おれの使ってたD810だって3,600万画素だったから。それと比べても半分ちょっとしかない。だから細かく見ればそりゃもぉ負けるに決まってますわ。

 しかし、人間の目には限界があって一般的に見るなら350〜450dpくらいと言われる。ジーッと目を近付けて穴の開くように見れば何と50万dpiとか恐ろしいレベルまで可能なようだが、普通に30cmくらい離れて眺めるのであれば、せいぜいそんなモンらしい。これはA4サイズで4000ピクセルくらいだから、4:3のアスペクト比ならば1200万画素で充分って計算になる。
 実はこの論争は、デジカメ一眼のワリと初期の頃に盛り上がった「1,000万画素あればジューブン」でほぼ出尽くしており、結論から言えばA3等の大きな紙にプリントアウトするんならそれに応じた画素数はあっても良いが(A3なら2,400万、A2ならそのまた倍、ってな具合)、よく考えればおれの持ってるプリンタは最大A4なんだし、そもそも印刷するってコトが殆どない。ほいでもってPC等で観るだけなら、その画素数に見合った高解像度のモニターがないとまったく意味をなさないのだ。それにどだいおれは目が悪く、強度の近視に最近は老眼まで加わって来てるんだった(笑)。ハイ、もぉ細かいのん見えまっしぇん。

 それに思いません?ネットの写真サイトで、そんなに大きなサイズの写真でもないのに、やたらとスッキリ写ってる写真ってありますやん?ピクセル数だけで言えば50万行くか行かないかくらいのサイズなのに、やたらクリアでヌケの良い写真。画像編集ソフトにもある、シャープネスとコントラストの為せる技と言ってしまえばミもフタもないが、要は写真って画素数の細かさだけで決まるこっちゃない。他にもいろんな要素が絡まりあって見え方はナンボでも変わる、っちゅうこっちゃね。

 人間の目には限界と同時に、錯誤も含めた認識力ってのが備わってるのである。

 こう書くと今度はトリミング耐性が〜ッ!なんて意見も出て来る。そりゃおれだってトリミングはやるよ。やるさ。でも、横のモノを縦に切り取ったりなんかは滅多にしないし、片隅に写ったモノを切り取るなんてことはまず全くない。あくまでチョコッとだ。デジタルテレコンも1〜2度しか試したことがない。まぁ漫然とカメラ構えず構図くらい撮るときにキメれ、っちゅうこってすよ。

 こうして高画素の追及についてある程度のトコで割り切ってしまえば、メリットは一方でケッコーある。ファイルサイズの小ささによる取り込み、読み書きの速さやディスク消費の抑制等だ。実はこの点でおれはかなり辟易してたのだった。大体、一度旅行に出かけるとおれは1,000〜1,500枚くらいは撮影する。そしたらJPEGだけでも20〜30GBくらいのボリュームになってしまう。さらにRAWがあって、こっちは3倍くらいの大きさだから、トータルでのバックアップは100GBとか尋常でないレベルになってしまう。1年で1TB以上とかさ。だから当然ながら、後からの様々な加工だって迅速性に欠ける。
 ジックリ吟味して、1枚選び出して・・・・・・ってな作業スタイルならそんなんでも良かろうが、おれはとにかく「ヘタな鉄砲も数撃ちゃ当たる」を身上にしてるんだし(笑)。

 ・・・・・・さぁ、ニワカ野郎の頭デッカチな付け焼刃の口上はここまでだ。これまでの重厚長大とは打って変わった軽薄短小なセットで、果たしてより楽しくなるのか!?それとも深い後悔に苛まされるのか!?取り敢えず今はちょっとばかしワクワクしてます。



※:「そうだったのか『ナショナルジオグラフィック』」第4章「1921-1956カラー革命と第一期黄金時代」17回(https://natgeo.nikkeibp.co.jp/nng/article/20120605/311336/?P=1)

2020.01.31

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