「シズカナカクレガ」ヘヤフコソ
ダウンサイジングへの誘い


ヤリ過ぎてしまった感満載なオリンパス”OM−D E−M1X”。そらまぁニコキヤノのハイエンドよりは小さいけどさ・・・・・・。

 ・・・・・・昔のカメラは小さかった。

 現に今、おれの手許にある大昔のオリンパスなんて、ファインダーなんてもうただの覗き窓みたいな素朴なモノだけど、とにかく小さくて、コンデジを一回り大きくしたくらいの大きさしかない。実家の防湿ボックスの中に突っ込まれたままの父親の古いニコンだって、今のからすれば随分と小さい。レンズにしたってAFとか手ブレ防止とか電磁絞りとかややこしいデバイスが付いてなかったからとても小さかった。
 大体、現在「フルサイズ」などと持て囃されるライカ版の135フィルムにしたって、元はブローニーと呼ばれる120や220フィルムを使うカメラの余りの大きさに対するアンチテーゼとして生み出されたモノってコトを忘れちゃいけない。そう、そもそもありゃぁコンパクト規格だったのだ。

 そんなフルサイズとは申せ、ソニーのα7に端を発するミラーレスがだいぶ普及したことでボディは若干小さく・・・・・・っちゅうか薄くはなった。重量もレフのAPS-Cと変わらないか、むしろちょっと軽いくらいになってる。それはまぁ喜ばしいコトだろう。
 しかしながら、である。どしたってレンズがアカンのである。何やねんこれ!?って言いたくなるくらいにどいつもこいつも銀塩時代と較べるとデカい。口径だって大きくなる一方で、フィルターなんかも昔はせいぜい49mm〜58mmくらいで収まってたのが、今ぢゃ88mmとかである。タイガー戦車の大砲かよ?

 それはこの前も書いた通り、ひとえにセンサー(撮像子)の特性によるもので、フィルムと違ってなるだけ面に対して垂直に光を当てないと、チャンと感光してくれないことがベースにあるらしい。そんなんで背面照射だの曲面だのと、あの手この手で撮像子の改良が試みられてるが、今のところはも一つ決定打に欠けるみたいだ。

 ちょっと数字でもって、今の最新のフルサイズミラーレスでズーム3本の一般的なシステムを組んだらどれくらいの重さになるか列挙してみよう。条件はハイエンドではなく標準モデルで、レンズもF4通しの小三元あたりので拾ってみた。

   ソニー ニコン キヤノン
ボディ α7V 650g Z6 675g EOS RP 485g
広角ズーム SEL1635Z 518g 14−30mmF/4S 485g -
標準ズーム SEL2470Z 426g 24−70mmF/4 S 500g RF24−105F4 700g
望遠ズーム SEL70200G 840g - -

 ・・・・・・ワハハ、レンズがまだあんまし揃ってなかったのねんのねん(笑)。

 ちなみにもうすぐここにパナも加わるが、まだ細かい仕様が発表されてないんで割愛した。見渡すとキヤノンのボディの異様なまでの軽さが目立つが、これはおそらくエントリークラス向けにマウントまで強化プラスチックにしたりとか、かなり思い切った簡略化をしてるものと思われる(ボディ内手ブレ補正も疑似的なモノみたいだ)。ちなみにいずれもレンズ筒は強化プラスチック製。

 どう思われます!?ここには体積を示さなかったけど、トータルでの嵩まで考えるとレフ機との差異なんてもぉ殆どないし、電池の予備は沢山必要だし、そこまでミラーレスのメリットが感じられない気がしません?いくらボディ軽くたって、レンズ付けてナンボですやん。

 つまりレンズの重さがカメラっちゅうモンの殆どを占めてるのだ。

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 では対するAPS-Cやマイクロフォーサーズ(MFT)はどうなんだ?ってことになる。これも同じようなハイエンドのちょっと下あたりで、最も撮像子の小さいMFTで拾ってみよう。

   パナソニック オリンパス
ボディ DC−GX7MK3 450g E−M5MarkU 469g
広角ズーム 7−14mmF4.0 300g ED9−18mmF4.0−5.6 155g
標準ズーム 12−60mmF2.8−4.0 320g ED12−100mmF4.0 561g
望遠ズーム 45−175mmF4.0−5.6 210g -

 ・・・・・・あれ!?ボディとかあんまし変わらんぢゃねぇかよ!?って思われた方もいるに違いない。実はMFTったって撮像子が小さいだけで、CPUだの内部の配線だの手ブレ防止ユニットだのはフルサイズと大差ない。
 ただしレンズは全体的に軽い。ザックリ半分くらいだ。ただしこの2社はレンズ展開が普通とはいささか異なってて、所謂「小三元」で単純に拾うことが困難だったりもした。具体的に書くとパナは望遠にはあまり興味がないのか、45〜はエントリークラスに毛が生えたくらいだし、逆にオリは望遠命!で広角は品揃えが薄く、9〜は小三元よりも下のランクなコトを申し上げとくべきだろう。
 そんな中でオリンパスの標準ズームがMFTの良さを良く表してる。コイツ、望遠域までをカバーする便利ズームのくせに、恐るべき解像度を誇る最上級レンズだったりする。
 一方で小さいからって油断してるのか、妙に金属のレンズ筒に拘ってるのが多いのは、小さくて軽いコトが何よりのメリットなMFTとしては、メーカー側のアタマの固さを感じてしまう。徹底的に軽量化すりゃエエのに。

 やはり結局はシステムに組んだときのトータルの重量や体積に尽きると思うのだ。以前書いた通り、一眼ってその不完全さゆえに成立してる世界であって、レンズは取っ替え引っ替えせにゃならんし、被写界深度なるものでボケたりするし、そいでもってそれをユーザーはありがたがったりするし、で実にややこしいのである。だから最低でもボディ1台にレンズが3〜4本、プラス補助光ってな構成になってしまう。そうなるとやっぱしフルサイズは光学的な問題から、全体としてメチャ重いし嵩張ってしまう。

 あるいは現在ソニーが開発中の曲面センサーが、ひょっとしたらその辺のジレンマを一気にブレイクスルーする技術になるかも知れないらしい。収差と呼ばれる光学的なズレが大きく減らせるのでレンズ構成がシンプルになるし、レンズの口径そのものも小さくできる、さらにはシリコンに曲げ加工を加えることによる思わぬ副次効果で暗所耐性が上がるようなことまでが謳われてる。

 とは申せ、まだ発展途上で今は何とも言えない。

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 何だかんだでやはり小さい方が軽いし嵩張らない・・・・・・のは当然なんだが、撮像子の小ささ故に暗所耐性が低いとか高画素化に限界があるとか言われ続けてるのもこれまた事実だ。たしかにMFTの2社はハイエンド機でも目下2000万画素で一杯いっぱいみたいだし、ISOだって今でも1600が限界だ、いや3200までは行ける・・・・・・などとフルサイズに比べると随分寂しいことを言ってたりする。2〜3段は低い印象である。

 ・・・・・・でも、だ。

 先日知り合いからタダ券貰ったんで、買い物ついでにヨメと二人で日本橋三越で開催されてた岩合光昭って人のネコの写真展を観に行った。昨今の空前のネコブームもあってか、開店早々からお客さんで一杯なのには驚いた。写真展だから会場にはA全サイズくらいのパネルになった写真が沢山飾られてる。中には畳くらいのサイズのもある。さすがプロカメラマンだけあって、どれもクッキリ・スッキリ・シャッキリ、見事に猫の生き生きとした表情を捉えてる。
 で、どんな高画素機使ってんねん!?と思ったらあにはからんや、実はこの人オリンパスのエンドーサーで、使ってるのは世評では精細さではフルサイズに劣ってるハズのMFTの2000万画素機だったりしたのだ。でもぶっちゃけ何の問題もなかった。そらまぁもちろんプロだからウデはあるし、さらにはフォトショ等で弄りまくって仕上げてるんだろうけどさ。

 ちょっと前にハイレゾ音源について書いたのと同じである。ナンボ高精細っちゅうたかて人間の知覚の方が付いて行けなければ意味あらへんのやないか、ってコトに改めて気付かされたのだ。一説には人間の視覚は450dpiくらいが限界で、さらには対象物との距離でかなり大きく変わるらしく、展覧会のようにある程度離れて見るなら相当粗くてもOKらしい。かつて「1000万画素もあれば十分」ってな説が語られてたが、あれは今でも有効なのかも知れない。

 思えばサイトの画像はサーバ容量の都合もあって抑え気味にしており、小さいので360×240ピクセル、大きいのでも720×480ピクセルだ。画素数で言えば35万ほどである。お世話になってる板に上げる時だって1200×800強くらいだからせいぜい100万画素に過ぎない。元のサイズからしたらメチャクチャ小さい。それでも何とか間に合ってる。
 つまりフルサイズだ!3600万画素だ!っちゅうたかて、極端にトリミングしたり、マックスまでズームにしてルーペで覗き込むくらいのことしないと活かせる場がない。つまり一般ピーポーには無用の長物なのだ。ならばカメラもレンズも小さいに超したことはない。

 ・・・・・・そんなこんなで今さらながら、ペンタックスのQシリーズが復活してくれないかと密かに願ってるおれなのでありました(笑)。


ペンタックス史上最高の怪作!「Q」。手乗り一眼(笑)だった。

2019.03.02

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