「シズカナカクレガ」ヘヤフコソ
機材はデジタルが面白い


初めて買ったデジカメはこれ、SONY"DSC-F505V"。使いこなせなくてすぐにコンデジに移行したけど・・・・・・

http://cha-o.asablo.jp/blog/より
、 ・・・・・・最近つくづくそう思う。

 いや、カメラの話である。デジタル技術の進化は写真や動画というものからコストや習熟の難しさ、またそれに伴うある種の堅苦しさといった様々な障壁を取っ払い、本当に我々の身近なモノにしてくれた。息を呑むような高精細でヌケの良い画像がホホイのホイのイージーオペレーションで撮れてしまう。実に素晴らしく有難い話だ・・・・・・って、通常ならこの辺でアイロニーに満ちた茶々の一つや二つ入れるところだけど、今回に限ってはそんなことを書く気はサラサラない、いやマジで衷心からおれはそう思ってるのだ。

 通常なら長所/短所をアナログと比較して、その結果相対的に優劣を論じるべきところなんだろうけれど、おれ的には最早、デジタルが銀塩に対して劣ってる部分がどぉにも見い出せないのである。今日は改めてその辺を整理してみたい。

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 まずは可搬性だ。そりゃ今のおれのはデカい。レンズ付けてストロボ上に載せたら2キロ近くになってしまうのは事実だ。しかし、それはフルサイズの高画素番長なハイエンドモデルをムリして買ったからであって、そこまで求めなければいくらでも小さいのはある。
 それに前回も書いた通りで薄っぺらな媒体に一体全体何枚画像入ります?っちゅう話である。
 ニコンが年寄り可愛がり過ぎて未だにCFなんてぇ過去のメディアに拘ってるのが業腹なのはさておき、コストをケチってRAWは64GBのSD、JPEGは32GBのCFに保存してるのだけど、これでザックリ800枚くらいは保存できてしまう。実に36枚撮りのフィルムだと22本ほどの分量である。半透明の樹脂でできたパトローネの入れ物って、噴出花火の「ドラゴン」を少し大きくしたくらいの大きさだったから、22本だと相当なボリュームになることは容易に想像していただけると思う。こんなん旅行に持って行けるかぁ!?っちゅうねん。それがどんな仕組みか知らないが、切手くらいの薄い板の中に納まるのである。

 たしかに一方でデジタル化が進んでレンズやボディが巨大化したのは紛れもなく事実である。薄いフィルムではなく撮像素子の組み込まれた受光部のユニットがドーンと入り、さらにはパネル部分に液晶が組み込まれたりした分、ボディは分厚くならざるを得ない。それに細かい理屈は良く分からないんだけど、CMOSって撮像素子は、俗に「井戸の底で光を受ける」と言われるくらいで、受光部分が奥の方に引っ込んでるモンだから、真っ直ぐに入った光でないとそこにまで届いてくれないのである。そのため昔のような口径の小さいレンズだと周辺部分は屈折して斜めに入って来るからチャンと感光できない。それでなるだけ周辺にも光が真っ直ぐ届くように口径をデカくしてレンズの真ん中を使うような設計になったんだそうな。実際、昔のレンズは手ブレ防止等の機能が無かったのもあるけど、とにかく口径自体が小さかった。だからフィルターも小さく、比較的廉価な40mm台とかで賄えるのが普通にあった。今は小さいのでも58mmとかで、ちょっとシッカリしたズームだと77mmとか、余計なコストが掛かってしまう。
 ちなみにこの考えで従来のレンズの大きさを逸脱しないように出来た規格が小さめの撮像素子を使うフォーサーズらしい・・・・・・ってその割に最近のはエラく図体が大きくなってる気がするけど。

 それでも、フィルムを何十本も持っていくよりはおれは断然マシではないかと思ってる。そう先日、たまたま鉄道関係のお年寄りのブログを見てて仰天したのだけど、その人は昔、汽車の撮影旅行に持ってったフィルムが100本とかで、キスリングっちゅうて柿色の帆布で出来た横長リュックの1/4くらいが占められてしまってた、って書いてた。3600枚・・・・・今のおれの環境ならCF・SD5枚づつでオツリが来る。

 しかしもっと言うと、もしおれが「デジイチ」なるややこしいモンにハマッてなかったら、昔みたいにスナップショットばかりを撮るだけだったら、そもそも今は「カメラ」って機械を今でも使ってたかどうかさえ怪しいと思ってる。だってスマホで2世代前くらいのコンデジの廉価モデル以上のクオリティでバンバン撮影が出来てしまうんだから。
 画像の容量にしたって気にしてないだろう。これだって今はクラウド上に大容量のストレージを構えることも容易に出来てしまうんだから・・・・・・そら通信費や環境の問題はあるけど、基本、撮ったそばから次々にアップロードすりゃぁエエだけだ。実に身軽だ。

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 次は即時性だ。昔は現像して焼き付けてもらって初めてどんな風に写ってるかが判明した。ある意味一八勝負でホントにドキドキしたモンだ。実際、戻ってきたらピンボケだらけだったり、発色がメチャクチャだったり、真っ暗だったり逆に真っ白に飛んでたり・・・・・・なぁ〜んてコトはなんぼ簡単なバカチョンカメラでもけっこう日常茶飯事だった。さりとてもう一回出掛けるワケにもいかず、これで何度泣きたい思いをしたことか。
 それだけでなく、フィルムってセットする時はちょっと引っ張り出して巻揚げ部分のギザギザに穴を引っ掛けるんだけど、たまにこれをミスる、なんてコトがあった。機種によっては最初に全部引っ張り出して、そこから巻き戻しながら撮ってくなんてのもあったけど、まぁとにかく最初にここでチョンボすると撮ったツモリが全然撮れてないのである。悲惨である。
 このタイムラグについては昔から問題視されており、だからこそポラロイドなんちゅうのが生まれたワケである。しかし、結論から言うとこのポラロイド、最後まで画質はヒドくてバカチョン以下だった。オマケにフィルムはとっても高かった。ぶっちゃけパーティーグッズくらいにしか使えなかった。つまりは宴会の余興みたいなモンである。このヒドさを逆手にとって「味」として売り出したのが、御存知カメラ女子が大好きな「チェキ」である。実際、飛び道具としてはとても面白くておれも1台欲しい。欲しいが、これ1台だけでというのはいささかやっぱし考えにくい。やはり、基本はチャンと写ることが大事なのだ。

 それが今はどうだ、チャンと写ったかどうかはシャッターを押した直後から確認できる。電子ファインダーなら撮る前から絞りの深さや色調をいくらでも確認できてしまう。そいでもって気に喰わなけりゃ一瞬で消せる。さらには先日書いた通り、一枚づつ感度を変えて撮るだけでなく、機械任せにすることさえ自由自在なのだ。こんな芸当、絶対に銀塩にはできなかった。

 さらには可塑性だ。昔はとにかくワンチャンスなので失敗したらほぼそれっきりだった。それが今は後続のソフトウェア上でかなりのレベルで修正できてしまう(もちろん銀塩写真だってスキャナで取り込めば出来てしまうが・・・・・・)。要はサルベージっちゅうこっちゃね。
 明るくトンでしまうと厳しいけれど、アンダーに映っちゃったのはほぼどうにかなる。発色もまずまずどうにでもなる。不自然になるようでおれはやってないが、範囲を指定してその部分だけ明るく持ち上げるなんてコトもできてしまうし、ボケ量を後から直すことさえできてしまう(絞る方へはムリだけど・・・・・・)。構図だって一瞬でトリミングできるし、傾きも回転させればイッパツだ。水平出しが苦手なおれには本当に助かってる。
 それこそソフトがフォトショだった日にゃもぉ大変、余分に映り込んだのを消したり、乳をデカくしたりウェスト細くしたり垂れた尻を持ち上げたり脚を長くしたり(笑)、な〜んてコトまでやれてしまう・・・・・・めんどくさくてウソ臭くて、おれはやろうとは思わんけどね。

 現代のデジタル中心の写真に於いては、「撮る」って行為の占めるウェイトは最早、限りなく小さくなってるのだ。

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 他にも連写性といった長所もあるけど、どうだろ?逆に銀塩に比べて劣ってる可能性が残るのは今はもうラティテュードと群青色〜紫色あたりの再現性くらいぢゃないのか?って気がする。いや、少なくとも世間的にはそう言われてる。

 実を言うと、これらについて個人的にはそんなに大問題に感じたことがあんまし無いのも事実なのだ。ラティテュードで言うと、一番デジカメが苦手とするのは極端に明暗差が大きいシーン、それも暗い森の中で木の間越しに明るい光があちこちに射してるようなケースではないかと思うのだが、そこまでダメなのかなぁ〜?って思ってしまう。そらまぁおれの眼がド素人なだけなのかも知れないけどね。
 もちろん繊細な目をお持ちで気になって仕方ないって方もいらっしゃるだろう。それならアンダー気味に撮っといて上で述べたみたいに現像ソフトで暗部を指定して持ち上げるとか、HDRで撮るとかすれば良い。ニコンだと明暗差を埋めるアクティヴDナンチャラなんて機能もあったりする・・・・・・まぁ、そんなにハッキリ効果は分からないけどね。

 青系の色にしたって、断然良くなって来てるやん、って思う。少なくとも初めて買ったD3100の時代から僅か6〜7年で画像処理エンジンは随分進歩したように思う。おらぁ紫陽花が好きで良く撮ることは何度も書いた通りだが、それほど実物の色との間に齟齬を感じることは今では殆ど無くなったように思う。そりゃ〜たまに全然ちゃうやんけ!ってこともあるにはあるが、そこまで目クジラ立てるほどでもないって気がしてる。

 いやホンマ、デジタルが銀塩に劣ってる点なんんて、最早なんにも残ってないのである。劣ってたら、昔の一眼レフの中古がワゴンセールで投げ売りになるなんてあり得ないではないか。

 こんなことを言うとまた守旧派みたいな人はグジグジ言うのかも知れないが、どうしてもおれ的には新しい技術に対する逃げ口上にしか思えない。
 もちろん、だからって所詮は道楽の世界である。鼻の穴膨らませてムリに首に縄付けてでも・・・・・・な〜んて気持ちは毛頭ない。まぁ、好きなのを好きなように使やぁエエだけの話だ。ズームvs単焦点みたいなモンである。敢えてマニュアル操作に拘って不便を愉しむようなニコンのDfだとかフジのXTシリーズが堅調に売れてるのだから、蓼食う虫も好き好きってヤツなんだし。
 それでも、だ。カメラに関して言うならば、機材はデジタルが面白い・・・・・・あっ!一つだけ面白くないことがあった!

 あまりに技術の進歩と世代交代が速過ぎて、すぐに機材が陳腐化してしまうことだ!これはアカンですな。

2017.08.08

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