「シズカナカクレガ」ヘヤフコソ
レフの時代の終焉


この模式図が一番分かりやすかった・・・・・・。

http://fashion-basics.com/より

 ・・・・・・がいよいよ本格的に到来してると思う。

 そらまぁ良く揶揄される「ニコ爺」に代表されるように、とかくカメラ好きな連中には頑迷で保守的なオヤヂが多いから、今日明日ですぐに消え去るとは思わないけど、ぶっちゃけせいぜいあと10年くらいしか持たないのではなかろうか。
 実際、未だにレフに固執してるのはもぉニコ/キャノ/ペンタくらいなもんで、ソニーは言い訳のようにAマウント機をたまに出すくらいになってほぼほぼミラーレス専用のEマウントに移行してしまったし、オリンパ/フジ/パナはとっとと見切りを付けて今はそもそも作ってさえない。パナなんて作ったことさえないのではないか?今更おれが言うまでもなく、コンパクトデジカメはみんなミラーレスだ。

 今日はそんな話だ。

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 まずは軽くファインダーそのものについてのおさらいをすると、元々はそんなレンズと連動した視界を確保するなんて仕組み自体が存在しなかった。今でも「写ルンです」に見られるようなただの四角い穴から始まってる。距離を測るなんて高度な芸当はもちろんできないし、ファインダー覗いた視界とレンズの捉えてる視界はもちろん異なる。

 そのうちライカに代表されるようなレンジファインダーってのと、ローライフレックスに代表される二眼レフってのが相前後するように出て来る。何だかんだでレンジファインダーは一部の好事家には未だに熱狂的に支持されてるし、最新のデジカメでもオリンパスのPEN−FとかフジのXシリーズといったレトロ感を強調したデザインのは明らかにレンジファインダーのカメラが下敷きになってる。実を言うと個人的にも何とも分厚くていかつい1眼レフよりスリムでコンパクトなイメージがあってレンジファインダーのカメラは好きだ。
 一方の二眼レフは今や絶滅した、と言っても構わないだろう。上下に2つレンズがあって、臍のあたりで構えて上から覗いて撮るのである。実家に昔、往年のリコーフレックスってのがあって父親がたまに使ってたけど、ファインダーったって左右上下が引っくり返って映るからワケ分かんないし、フィルムはミョーに大きいし(・・・・・・その分、通常のプリントでもベタ焼になるんで高精細ではあったな)、子供心にも摩訶不思議な道具だな〜、と思った記憶がある。
 そして戦後、いよいよ今の反射板を持った1眼レフがマトモな商品として登場する。最初の頃は俗に軍艦と呼ばれるペンタプリズム部分がなかったけど、そのうちそれもくっ付いて今の1眼レフの機構とフォルムが、何とこの日本で概ね完成した。1950年代末にかけてのことだ。それ以来60年くらいの永きに亘って1眼レフは我が世の春を謳歌して来たワケである。これはそれまでの機構に比べるとひじょうに長い。

 命脈を保てたのはやっぱりそれだけ性能的に従来より優れてたからだ。とにかく自然で正確な視界、オートフォーカス(AF)の速さといった基本部分でなかなかこれを超えられる仕組みが出て来なかったのは紛れもなく事実だ。
 しかし、客観的に見れば仕掛けはとにかくメカメカしくて大層なのである。レンズと撮像面の間には名前の由来ともなったレフミラー(反射板)が45度に傾けられて入っている。これでレンズを通った光が直角に曲がって真上に行く。そしてペンタプリズムでさらに直角に曲がるだけでなく上下左右の逆転を直してファインダー越しに見えるワケだが、このままではシャッターが切れないんで、シャッター切った瞬間にレフが跳ね上がり、シャッター幕が走って、上がってたレフ版が降りて来るって、まるでカラクリ箱みたいな機構が組み込まれてる・・・・・・どう考えてもこれはメカメカしい。そして欠点もある。
 まずはメカニカルな仕掛けの分だけコストが掛かる。また、レフをボディ内に押し込まなくちゃいけないのでスペースだって必要で、それだけカメラのボディが分厚くなりコンパクト化には限界がある。さらにシャッター切ってる時に振動は禁物なのに、レフがパタパタ動くもんだからそれで手ブレを起こしやすい。オマケにペンタプリズムは作るのに手間暇が掛かるし、だからってミラーで代用すると暗いし画像が小さい。そしてこれらの仕掛けの分、どしたって重くなる。つまり性能や機能のために犠牲にして来たことも実は案外多い機構なのだ。

 さらに、ファインダーが「自然に見える」ことがハイテク化の進んだ時代には却って実情にそぐわない事態さえ引き起こしている。今はホワイトバランスの設定なんてのがひじょうに高度化しており、色んな発色がホホイのホイで出来るんだけど、実際目で見た色と画像は異なってしまうのである。この点、液晶パネルやEVFの方が補正後の状態がそのまま目で確認できて具合が良かったりする。
 露出だってそうだ。高感度耐性が箆棒に向上した現代に於いては、目で見た以上に明るく撮ることはいくらでも可能なのだけど、それはホワイトバランス同様、液晶パネルやEVFの方が都合が良かったりするワケだ。
 それでもおれが一眼レフを選んだのは、出初めの頃のEVFがどうにも使い物にならず、不自然過ぎたり、ズーッと覗いてると酔いそうになったり目が疲れたり、とデメリットの方が多いように感じられたからだ。おれは目が弱いので、視界はなるだけ自然な方が良いように思ってたっちゅうのもあるが。
 しかし、僅か数年で状況は一変した。ぶっちゃけEVFの欠点は払拭されたとまでは言わないけど、大いに改善されて来ている。たまにカメラ屋でいろいろ弄り回してみるんだけど、まぁこれなら我慢できるかな?っちゅうくらいのトコまで確実に進化してるのだ。そして今後間違いなくもっと進化する。

 いやいやそうは仰いますけど、やっぱしAFがダメですやん、って指摘もあるだろう。なるほどAFの速度はちょっと前までレフ機に完全に負けていた。AFが迷ったり合わなかったりするのは、たしかに写真撮る上では大きなストレスだ。

 ここでAFの方式についてもおさらいすると、概ね今は3種類ある。レフ機でしかできない「位相差検出式」、ミラーレスでしかできない「コントラスト検出式」、さらに最近出て来たやはり撮像面を使う「像面位相差検出式」ってのだ。
 位相差は単純に位相のズレからレンズの移動量を算出して動かすのでとにかく速いが、フォーカスエリアが画面中央付近になくてはならないって制約がある。一方のコントラストは、フォーカスエリアが画面一杯に取れる代わりにコントラストのズレをあーでもないこーでもないと、いわば試行錯誤しながらレンズ動かすのでどうしても遅くなるし、電池の消耗が早いって問題も出て来る。像面位相差はコントラストの欠点を補うために登場したが、まだも一つこなれてないし、位相差と同じような問題がある。

 ・・・・・・ってな風に一般的には言われてたんだけど、技術の進化はやはり止まるところを知らない。枯れた技術の位相差が演算速度とレンズ駆動モーターの速度向上くらいしか改良の余地が残ってないのに比べると、コントラストはまだまだ技術的に発展の余地があったってコトだ。
 たしかにちょっと暗いと迷う傾向は依然位相差より強いし、動体への食い付きがホンの僅かに劣るとは申せ、今はもう殆ど合焦速度自体は大差ない所まで来てる。オマケに構図の隅っこでもフォーカスポイントを置くことが出来てしまう。位相差方式で近いポイントでピントを合わせ、そこからカメラ振るなんてしなくても良いのである。
 さらにはフォーカスポイントの多さが凄まじい。例えば100万円くらいするニコンの位相差のD5は測距点153点とか謳ってるけど、約13万円で買えるソニーのα6500なんて425点である。値段は1/8で約3倍。ファインダー覗くと、フォーカスポイントが綺麗に苗を植えた田圃みたいになってる(笑)。ホント、画面のどこでも合わせられるんですわ。
 オマケにAIだか何だか知らないけど、空間での被写体の動きを予測してAFを追従させてくなんてとんでもない技術まで出て来てる。

 おそらくは未だに残る欠点もそのうち克服されてくんだろう。

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 おれだってこれまで馴染みがあって残念だけど、もうレフが生き残れる要素が見当たらなくなって来てるのだ。四角いボディの上にちょこんとピラミッドのような軍艦の載った所謂「カメラ」なカタチは今後、ソニーのα7シリーズやフジのX−T、オリンパスのOM-Dみたく、ネタっちゅうか見た目だけの飾りになってくんだろうと思う・・・・・・って、こんなモン所詮過渡期の徒花に過ぎないのかも知れないが。

 ・・・・・・って、ウダウダ書き連ねて来たけど、そうだった!「カメラ」という機械そのものが今や、スマホの大攻勢の前に少しづつ終わりかけてるのだった。そうだった!そうだった!えろぅスンマヘン。

2017.07.13

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