「シズカナカクレガ」ヘヤフコソ
永久の戦い・・・・・・単焦点 vs ズーム


おれもたまには撮ります陳腐な強烈ボケ写真(35mm,F2.2,SS1/250sec,ISO64)。

 チョーシに乗ってカメラネタ三連発。今回は永遠に決着が着かない・・・・・・ことになってる?(笑)、単焦点レンズとズームレンズの優劣についての私見だ。

 いつもながらのイラチぶり丸出しで結論から言ってしまうと、おれはこれだけカメラの高感度耐性が上がり、ズームに付きまとう色んな収差についても若干卑怯な電子デバイスによる補正も使いつつとはいえほぼ克服されつつある現代に於いては、単焦点はもはやピン浅を意図的に狙って撮るとか、極端な暗所でISOを上げ過ぎずに撮るとか、そんな限定的な用途っちゅうかシチュエーションでもない限り、分はそれほど良くないのではないかと思ってる。
 2ちゃんには随分昔から「単焦点なんかいらない」って有名なスレがあって、日夜単焦点派とズーム派が飽きもせず実りの無い罵倒合戦を延々と続けてたりするのだけど、おれはだからどっちかっちゅうたらズーム派に賛成したい。でも、前回書いた通りで嗜み程度に単焦点も保有してるし、それなりに使ってたりもする。それどころかつい先日新しく追加もした。もちろんこれからバンバン使うだろう。

 ・・・・・・で、単焦点派の主張によれば、そのメリットは次のようになる。

  1.比較的安価であるにも拘らず、明るくて写りの良いモノが多い。
  2.構造が単純なので故障が少なく、軽量なモノが多い
  3.絞りを開いた時のボケが美しい。
  4.画角や構図に対する感覚が磨かれ、勉強になる。
  5.あれこれレンズを選ぶ楽しみがある。

 一方、ズーム派の主張によれば、そのメリットは次のようになる。

  1.画角や構図の微調整がしやすい。
  2.レンズ交換の頻度が少なくなるんでボディ内に埃が入りにくい。
  3.足場の悪いところ、下がれない所でも撮りやすい。
  4.深く絞ってパンフォーカスで撮れば単焦点と変わらない画質
  5.シャッターを押すことに集中できる。

 もちろんどれも全部間違いではないと思うものの、双方にはデメリットも同時にある。要は一長一短っちゅうヤツで、優劣を競ったってどぉにもならんのである。そらまぁストイックな人からしたら写真なんて画質が全てなんだからそれ以外の属性を評価軸に盛り込むのは間違ってる!と言われちゃうかもしれないが、決しておれはそうは思わない。機動力や汎用性、限界耐性といった要素だって大切だろう。それに森山大道の「アレ・ブレ・ボケ」を持ち出すまでもなく、そもそも論で画質が良ければ良い写真、っちゅうのも何かおかしな理屈だと思う。
 ともあれこのような抗争が起きるのは結局、単焦点派に漂う様々なドグマやストイシズム、あるいはペダントリーやスノビズムの腐臭がどっか鼻に衝くからだなんだろう。ありとあらゆる道楽にはコイツらが付きまとうのが実に鬱陶しい・・・・・・とは申せ、道楽故にまったく無いっちゅうのもこれまた何だか寂しいワケで、ここら辺の塩梅はとてもむつかしい。ウ〜たらカ〜たら能書き並べるのもそれはそれで楽しいことだってコトは認めよう。

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 さて、以前も書いた通りで、おれは一眼レフってモノ自体が最早、「機械としての不完全性に於いてのみ」存在意義を有するのではないかと考えてる。その不完全性とは繰り返しになるが、詰まるところ「ボケ」っちゅうヤツだ(・・・・・・いやまぁ、レンズ交換式なんてーのも不完全性ではあるんだけど)。
 写真というテクノロジーは実は誕生以来、被写界深度によるボケを克服しようとして来た。ちなみに撮るってコトについてはおらぁニワカもニワカなんだけど、古今東西の優れた写真家の作品を観るってコトについてはもう30年以上続けてるんで、この指摘はあながち間違ってはないと思ってる・・・・・・しっかし、学習の結果が自作にちっとも表れてはくれんのぅ〜(泣)。

 そしても一つミもフタもない言い方をさせてもらうなら、絞りがF1.8だろうがF8.0だろうがボケる時はボケるし、ボケない時はボケない。これは何かの写真の技法の本を読んでてとても感心した主張なんだけど、絞りでボケ量をコントロールしようなんて間違いだ、ってな話だった。そこにはあくまで被写体と背景の距離差でボケは出すモンだ、って書かれてあったのだ。
 そりゃぁたしかにピン浅にして撮れば大きくボケる。背景は最早意味を喪ったアブストラクトで曖昧な模様となり、合焦したトコだけがフワーッと浮かび上がって見え、いくらパンフォーカス大好きなおれでもそれはとても美しいと認める。しかしながら、いくら写真が型の遊びとは分かってても、あまりにも手垢の付いた紋切り型でイージーな技法、自覚さえも無くしたエピゴーネンの氾濫はやはり陳腐でクドい。

 ボケ、っちゃぁもぉ10年くらいになるだろうか。街の鳥瞰を大きくボカして箱庭とか鉄道レイアウトの写真を撮ったように見せるってな作品が登場するようになった。初めて見た時はとても面白いと思ったけど、今は氾濫しまくりで工事中の塀の看板にまで大写しで貼られてる有様だ。そしてそんなのアドビのライトルームといった現像ソフトをチョコチョコ弄れば作れてしまうものでもあるのだ。

 ・・・・・・で、単焦点といえばこの「ボケ」こそが命みたいに語られてる。カミソリのような被写界深度の浅さ・・・・・・な〜んて悦に入って、ただのピンボケ写真をバカスカ量産されてる御仁も多いようで、今の時代それくらいしか単焦点には存在意義が残っていのかね?とツッコミ入れたくなるほどにボケばっかしだ。そしておれはボケにあんまし興味が無い。

 しかし、それでもおれは単焦点を買った。それも珍しい手ブレ補正付きなんかを。何でかっちゅうと、単焦点本来の使い方をもっと進めかったのだ。本来の使い方とは、即ち暗所の撮影だ。かつては「スピードレンズ」な〜んて呼ばれてた単焦点ならではの、暗いトコでもシャッター速度が稼げてブラさずにシッカリ撮れるレンズとして使おうと思ったのだ。
 稀代の偏屈映画監督、スタンリー・キューブリックが蝋燭の光だけの仄暗さを撮りたいがために、NASA用に作られた「プラナー50mm/F0.7」(←これまで世の中に存在したレンズで最も明るい)っちゅうムチャクチャなレンズを我儘言って入手したエピソードは有名だけど、ホンマに暗いトコの撮影はむつかしい。ちなみに映画はこの鬼のようなレンズを以てしてもやはりどうしても露出が不足してしまったので、現像で2倍に増感したらしい。

 今はそんな苦労しなくてもカメラの暗所耐性には眼を見張るモノがあって、ISO1600ならヨユー、3200で、ん!?ちょっと荒れてるかな?6400、等倍でなけりゃOKかな?12800、お!意外と写るやん・・・・・・みたいな感じだったりする。100の7段増しでっせ。
 だけどやっぱしISOはできたら低いに越したことはないし、シャッター速度は出来る限り長めにして光をシッカリ吸わせたい。そして三脚は極力使いたくないし、補助光も避けたい・・・・・・となると明るくて、ついでに手ブレ補正なんかもシッカリ効いてた方が良いに決まってる。同じシャッター速度でならF4解放だと6400まで上がるISOがF1.8なら1250程度に抑制できるモンな。
 ただ、これが手ブレ補正の無い元から持ってる50mm/F1.8だとあまり役に立ってくれない。っちゅうのもSSを最低1/100secくらいにしとかないと手持ちではブレブレになってしまうのだ。一方、補正付きのF4通し使えば50mmなら1/6secでも歩留まりは出せるワケで、そうなるとシャッター速度で4段分くらいの差になってしまい、レンズの2.5段差なんて消し飛んでしまう。ソニーかペンタにしときゃ良かったかなぁ〜、って思うのはこぉゆう時だ。K-1買った悪友のK田が羨ましい。

 ともあれそんな何だか良く分からん明るさ皮算用の結果、買ったのである。あ〜、言葉にしたらおれの計算弱いのバレバレやね(笑)。

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 話を元に戻す。詰まるところやはり、ヘンに拘らずズームも単焦点も上手く棲み分け、使い分けりゃエエだけではないかと思う。どっちか片寄せにして依怙地になったってちっとも好いコトない。

 ギターに例えるなら、チューブアンプ直でシッカリ歪ませた音はリアルでツヤがあって良いけど多彩な音色はむつかしい。マルチエフェクターはとにかく簡単に歪みからクリーンまで、オマケに空間系や飛び道具系まで一踏みで多彩な音が出せてライブとかには向いてるけど、あと一歩の物足りなさが残る。
 どっちが間違ってるワケでも劣ってるワケでもない。そこにあるのは好きか嫌いかだけだろう。おらぁギターの方は最近はすっかりもうアナクロもアナクロ、レンズで言えば距離は目測、露出は勘、そいでもってマニュアル単焦点といったマニアックな世界みたいな、ブースター咬ませただけのアンプ直になっちゃったけど、それはタンジュンにその方が今のおれにとって心地良い音がすぐに出せるからだ。

 思えば単焦点とズーム・・・・・・不自由の自由か、はたまた自由の不自由かってコトだけなのかも知れない。それにどっちがより楽しいかを論じても不毛だし、出て来る作品の出来栄えはレンズとはまた別のところにあるのだし・・・・・・嗚呼、前回と内容カブりまくりだし、そもそも水平/垂直もマトモに出せないヤツが偉そうに語ることではなかったっすね。でわでわ出羽桜。

2016.07.02

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