「シズカナカクレガ」ヘヤフコソ
サードパーティーの喜びも悲しみも幾歳月


純正品はどの世界でもエラい存在。

 ブログ等で触れたように、この度APS−Cで組んでたカメラやレンズ群を全部処分して、35mm・・・・・・俗に言うフルサイズ機に移行した。フルサイズ機は重たいもんで従来の三脚では雲台が耐えられず、これもついでに売り飛ばした。しばらくは手持ちオンリーで行くしかないんだけど、元々三脚の使用頻度が極端に低かったのでそれほど不自由はない。

 フルサイズ機であるそのニコン・D810およびナノクリレンズの使用感についてはまた今度書くとして、今回は軍資金の一部となったサードパーティー製品の下取りにまつわる話を書いてみようと思う。サードパーティーとは「非純正」という意味だ。昔は「社外品」なんて呼び方してたっけ。

 サードパーティーの魅力は何と言っても純正を凌駕する性能が比較的安価に入手できたり、純正にはないユニークなスペックの製品が存在することだろう。純正はブランド背負ってるゆえに全てに於いてまずは安定性優先で保守的にならざるを得ず、あまりカッ飛んだ冒険が出来ない弱みがある。だから面白味がナカナカ打ち出しにくい。その間隙を突いたニッチ商品にサードパーティーの存在意義があると言っても過言ではないだろう。

 ちなみに今回は価格.comの最安価格が霞んで見えるほどの爆安価格で購入できたし、下取り価格についても通常相場より遥かに高い値段で引き取ってもらってる。だから別にその買取額に不満があるワケではない。ただ、あらかじめ予想してたこととはいえ、メーカー純正との差異におれは改めて驚嘆した。あくまでそれだけのことである。

 ちなみにD810その他は一体いくらだったのか?どこの店で買ったのか?どんなルートなのか?について詳述しちゃうと相手に迷惑を掛けかねないので、そこには触れないコトを最初にお断りしておく。

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 とにかくサードパーティーは売値も安い代わりに、いざ下取りに出すとなると買値も安いのだ。一番安かったのはバッテリーグリップでタダ!!(笑)・・・・・・って、これはまぁ中国製ノーブランドのパチモンコピー品なんで仕方あるまい。

 問題はタムロンやシグマといったレンズ群だ(残念ながらトキナーは持ってなかった)。どれも性能は悪くないどころかメーカーとしてもニコンやキャノン、ペンタックスにソニーといった各社へ純正品として多数OEM供給している存在で、そんな氏素性の知れない怪しいトコでもなんでもない。
 殊にタムロンの17−50mm/F2.8通しなんて素晴らしく出来の良いレンズで、無調整でもビキビキにシャープに解像してくれてた。10−24mm/F3.5−4.5の超広角もかなりの出来で、ピント調整以降はひじょうにヌケの良い画が撮れるのでお気に入りだった。ワリと最近買ったシグマのアートシリーズ・18−35mm/F1.8にしたって独特のクセはあるものの、それまで重用してたニッコールの単焦点35mmの出番が無くなるくらいの出来栄えのレンズだった・・・・・・つまり、性能だけで行けば純正品に十分比肩しうるどころか上回ったりするのだ。

 なのに買取価格は純正からすると各段に落ちる。純正品は定価の*割っちゅう、とんでもない高値だったのに、サードパーティーはその半分にもならない。実勢売価で比較してもかなり安い。

 同等以上の性能なのに売られるときから安い。まぁそこにこそサードパーティーの存在意義があるワケだけど、思えば何とも哀しい存在だ。いいモノ作ったって決して高くは売れないのが商売の世界の厳しさである。

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 別にサードパーティーはカメラの世界の話だけではない。最もそれが百花繚乱に発達してるのは自動車関連ではなかろうか?オートバックスやイエローハットのようにほぼサードパーティーのパーツだけで商売が成り立ってる店があるのだから。アルミホィールやマフラーといった基幹パーツから灰皿やソケットの小物に至るまで有象無象・星の数ほどメーカーがひしめいている。

 ・・・・・・にもかかわらず、ここでもまたサードパーティーの地位は低い。

 今のおれのクルマは中古で買ったのだけど、年式や走行距離からすれば驚くほど相場より低い値段だった。その理由はカンタンだ。マフラーが社外品のぶっといチタンのに換装されており、取り外した元の純正品が欠品になってたからだ。チタンマフラーは高い。元値を調べてみたら定価で30万からする。いささかノーマルよりうるさいとはいえ、車検にだって適合してる。見た目もおれの趣味ではないとはいえ好きな人にゃぁカッコいいんだろう。
 他にも随所が細々とサードパーティーのパーツに換装されており、どれも元の純正パーツは欠品、それらが結局は値段を下げていたのである。それって下取額も買い叩かれた、ってコトに他ならない。

 めんどくさいんでそのまま乗ってんだけどこのマフラー、実際、純正品より劣る点があったりもする。まず何より燃費が若干落ちる。同じクルマでノーマルのと乗り比べたんだから間違いなかろう。ガソリン惜しむ時代にこれはやはり勿体ない。それと、ブン回せば馬力はアップしてるんだろうけれど、普段乗りの低速トルクが薄くなってしまってる。そんなんだからフツーにアクセル踏んで発進加速なんかをすると、もっと馬力のないクルマよりモサモサした印象だ。管の径を上げて排気口率を高めた分、低回転域でヌケが良くなりすぎてるのである。

 バイクなんかでも同じような傾向があったことを想い出した。おれはカワサキ党で900ニンジャに乗ってたんだけど、今とは違って当時はアフターパーツが少なく、マフラーで言えばサードパーティーはツキギやカーカー、デヴィルくらいしかなかった。あ、ビートもカワサキ系であったっけかな?
 だが、どれも評判は宜しくなかった。見た目はどれもナカナカにカッコいい代わり、ツキギはバッフル抜かないとノーマルより馬力が落ちる。抜けば劇的に馬力アップするけれど、当然珍走族なみに喧しくなって車検も通らない・・・・・・つまり、公道ではマトモに使えない(笑)。カーカーのスリップオンは単に喧しくなるだけで何にも変わらない(笑)。デヴィルは単に高いだけで低速がスカスカになるし、パイプはすぐに錆びる。ビートはヤンキー御用達のイメージだ・・・・・・こんな評判ばかり聞かされては万年金欠なのにとても投資する気にはなれんわな。

 サードパーティーは純正品に比べて抽んでてる部分もある代わりに、劣る部分もあるのだ。

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 話をカメラ関係に戻す。

 タムロンはこれまで4〜5本買ったけど、冒頭に書いた通り、購入状態でピントが僅かに後ズレ起こしてるのがあった。最初からチャンと調整して出荷せんかい!っちゅうねん。買ったばかりのを箱から出してボディに着けたら接点だかROMの不良でカメラがレンズを認識しなかったこともある。これはクレームで交換。使ってる途中で急にカメラが認識しなくなったこともある。これはちょっとオカルトかも知れないんでメーカーに責任押し付けるのは酷かも知れない(笑)。ともあれ、性能は良いのに品質がイマイチなのである。モア・ファンクション/レス・クオリティ(笑)。
 シグマは買ったのが気合い入れて出してきたアートシリーズだったのが良かったのか、ストックの状態でも特段の不具合はなかったが、世間一般ではタムロン同様いろいろ初期不良が多いと言われる。

 事情は分からないでもない。検品精度が純正より低いことが原因なんだろうけど、値付けをうんと安くするためにはそこに投入される人件費をケチらざる得ないワケである。
 これはPC関係のサードパーティーにも言える。純正パーツとして採用されるだけのメーカーが、独自ブランドで出してたりするんだけど、そっちは品質が落ちることが多いのはこの検品精度の問題なのである。安くするにはそこまでコスト掛けてられないよ・・・・・・と。

 そんなハイリスクハイリターンな、どこまで行っても一流になれない哀しみを引きずった存在のサードパーティーがおれはけっこう好きだ。今回メインの2本は随分奮発して純正にしてしまったが、それはおれの用途に合致したのがサードパーティーになかったからである。使用頻度の低い望遠域はそのうちタムロン買ってやろうと思ってる。調子出なけりゃ何千円かの手間賃出して調整に出せばいいだけのことだ。

 サードパーティー・・・・・・それは産業構造の中の門前市みたいな存在だ。美しさと醜さ、強かさと愚かさの同居する世界だ。どこか憎めない。 

「純正殺し」の異名を持つTAMRON "SP 70-300mm F/4-5.6 Di VC USD (Model A005)"

2014.08.09

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