「シズカナカクレガ」ヘヤフコソ
白トビ/黒ツブレ/色飽和


色飽和の例

 ・・・・・・は撮影技法としては基本的にやっちゃアカンもんだと言われてるんだけど、そもそもそれらが何なのか分からない人のためにまずは若干の説明が必要かと思われる。

 最初に「白トビ」。要は明る過ぎて露出が飛んでしまって真っ白な部分が画面上に現れてしまうことで、「黒ツブレ」はその逆。要は暗すぎて黒ベタな部分が現れてしまうことだ。「色飽和」もまぁ似たようなもんで、ある特定の色に塗りつぶされて、色の諧調が無くなってしまうことを言う。特に赤とか黄色の暖色で発生しやすいと言われる。もちろん、デジタルカメラに限ったことではなく、昔ながらの銀塩フィルムでも起こりうる。

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 これらを防ぐには適正な露出を心掛け、撮影モードの彩度を上げ過ぎないコト、それだけである。それだけなんだけど、白トビがイヤで明るさに気を取られてると暗い部分が黒ツブレになるし、暗い所を豊かに撮ろうとすると、明るい部分がトンでしまう。燃えるような紅葉のその赤を適正にしようとすると他の色が妙に褪せた感じになったりもする。ナカナカ厄介なのである。

 明暗のコントラストに対してレンズもカメラも人間の眼には遠く及ばない。1枚撮っただけだと、結局は明暗どっちかを優先したモノにならざるを得ない。そのために最近は「HDR(High Dynamic Range)」な〜んてスゴい技術が生まれたりもしてる。連写機能を活かして、僅かのタイムラグで明るめに撮った画像と暗く撮った画像を重ね合わせ、上手く撮れてる部分を重ねて1枚にしちゃうのである。ソニーのデジカメなんて5枚を瞬時に撮って重ね焼きにするんぢゃなかったっけかな?デジタル多色刷り版画みたいなモンだ。そぉいった機能の付いてないカメラでも、PC上でソフトウェアでもってHDR処理して合成することもできる。

 当然ながら動的な被写体では上手く行かない。風景・・・・・・それも極力風の吹いてない状況でないと、重ね焼きがズレてしまうのだ。また、世の中何でもそう上手くは行かなくて、たしかに上記の問題はクリアされるのだが、今度は画面全体の色彩の諧調がひどく単純になって、何となくポスターっぽくなってしまうという一大欠点がある。

 つまり、カメラで明るい暗いを自分が見た、あるいは感じたとおりにキチッと捉えるっちゅうのは、要はかなり至難の業なのである。現時点ではカメラっちゅうのがいろんなスイッチやらダイヤルやら付きながら、一つの絞りとシャッター速度、ISO設定が画面全体に適用される以上、どうにもならん問題と言えるだろう。或いは今後はもっと機能が進化して、画素数分だけ画面の露出を別々に最適化する、なんて技術が出て来る可能性はあるけれど・・・・・・。

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 おれはっちゅうと、実はまったく気にしてなかったりする。別に等倍にしてシゲシゲ見ることもないのだし、真っ赤に見えたんなら、それが別に色飽和でもなんでもいい、逆光を見りゃ人間の眼だって白トビになるし、晴天の下、林の中はどしたって暗いモンだ。画面の隅々まで諧調がなくちゃいけないって法は無かろうって気持ちが強い。
 むしろそんな風にしか撮れないことが、カメラっちゅう一見ハイテクなようで、露光の瞬間だけは昔ながらで思いっ切りプリミティヴな道具の仕様なんだし、その中で面白いもの、良いもの撮れたらそれはそれで良しなのだ。

 画面の一部分がどうなろうとぶっちゃけ知ったこっちゃない。どだいいちいちそんなんを神経質にイジイジ気にするなんておれにゃ信じられない・・・・・・ま、それもこれも単におれがいつまでたってもヘタで、画面全体が露出不足だとか露出オーバーとかでアチャーの方が多いからなんだろうけどね(笑)。

 気にしてるのは何よりアングルとか構図で、光の方向やその時の明るさに対しても一つ無頓着なのが多分、未だ半ば偶然任せの写真になってしまってる理由なんだろうけど、一方で何せもぉパパッと撮らないといろいろ面倒な写真が多いから仕方ないってのもある。
 そう、三脚据えてあーでもないこーでもないと熟考し、レンズ取っ替え引っ替え吟味しつつ、シッカリと絞りだなんだってセッティングを追い込めば、間違いなくもっとマトモなモノが取れることは間違いないんだろう。景勝地やラムサール条約が何たら、っちゅうような湖とかに行けば、ジュラルミンのケースに大量の機材持ったそんなオッサンがウジャウジャ溢れてるやおまへんか。それを否定する気は毛頭ない。ないどころか、そんな風にやれたらいいなぁ〜、と常々願ってさえいるんだけど、何せ写真のテーマの多くがゲリラ的とまでは言わないにせよ、かなり短期決戦でないとどうにもならんのだ。

 つまり性格の大雑把さゆえに気にしてないことに加え、諸事情によりそもそも気にしようにも無理なのである。「・・・・・・なのである」などと重々しく威張ることではないな(笑)。ちなみに、滝やら渓流を減光フィルター掛けて長時間露光で撮ってるのは、今書いたような撮り方してる。スッキリ美しく撮りたければとにかく三脚を使うのが一番なんだろう。3軸だ5軸だジャイロだと手ブレ防止機能がいくら進化しても、これだけは敵わないんぢゃないかな?

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 「白トビ」「黒ツブレ」「色飽和」に戻る。

 3番目の色飽和に関しては彩度を見直すことで比較的容易に防げたりもするんで、まぁあまりハデハデとかコッテリな色調にしとかなければ良いのだと思う。などと言いつつ、おらぁほとんど「ヴィヴィッド」っちゅうモード一択だったりするんだが(笑)。
 ・・・・・・で、前2つはヒストグラムを見なさい、などと言われる。ヒストグラムとは色の諧調を横軸に、縦軸にその出現数を取ったものだ左右の両端が真っ黒(#000000)と真っ白(#FFFFFF)、途中が様々な色なんで、そこにあまり偏らすなだらかな山型になっておれば良い、などと。どぉゆうことかっちゅうと、1枚試し撮りしてヒストグラムチェックして、そいでもって適正な露出に調整しなさい、ってコトだ・・・・・・そんな悠長に構えてられん、ってば。

 参考になるかどうか、今のおれの対応方法について簡単に書いてそろそろ終わりにしよう。

 現在使ってるD7000は若干明るめに写る傾向がある。なもんで絞り優先モードで標準を−0.7EVにして、ISOはなるだけ低くなるように心掛けている。オートは薄暮の時以外は使っていない。シャッター速度はかなり遅いめを選んでると思う。手ブレ防止なんて気の利いたデバイスの付いたレンズは2本しかないし、またそれらはあまり出番がないんで大変だ。通常はそれだけ。
 ストロボはまず滅多に使わないが、いざっちゅう時にバッグから取り出して装着するのも面倒なので、大体カメラの頭上に聳え立たせたままだ。そして光の変化が大きいときはブラケットで±0.3の範囲で3枚撮る。もちょっと幅を広げてもいいかな?と思うこともあるが、極端になり過ぎても使い物にならないんで今のところはそんなんだ。

 何のこっちゃない、マニュアルモードとまでは行かないまでも、かなり人間側の判断に沿うような使い方をしてるのだ。要は手で弾く楽器とシーケンサの違いだろう。正確無比かつバカテクに鳴らすならキッチリ打ち込んだシーケンサが圧倒的に優れてる。でもそれはアウトプットの問題であって、プロセスが欠落して無味乾燥、ちっとも楽しくない。
 そんなんで今日もおれは、貧弱とまでは言わないけれど、決して充実した機器環境とはいえない道具で失敗作を量産し続けてるのである。


極端な白トビの例。これはこれで作品としてはけっこう良いかも知れない・・・・・・。

2013.11.09

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