「シズカナカクレガ」ヘヤフコソ
レイヤー旅行


2009年、入道鉱泉にて(ギャラリーのアウトテイクより。)

 ・・・・・・あ、別にコスプレイヤーのコトぢゃぁありません(笑)。

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 昔、入り浸ってた「喫茶U」のマスターにある日言われたことがある。何の会話からそんな流れになったのかは忘れたけど、まぁ多分、単車でどっかに出掛けてった話か、あるいは酒屋で日々回る京の下町の話でもしてたんだと思う。

 ------それにしても***クンの話聴いてるとアレやな〜、なんか僕等が知ってる「そこ」とは全然違うどっかに行ってきたみたいに聞こえるな〜。同じやのに違う世界の物語が浮かび上がる、みたいな、そぉゆう面白さがあるねぇ。

 まぁとにかく他人を誉め上手な人だったんで、9割引きくらいに受け取らなくちゃいけないんだろうけど、自分ではそんなに他の人と異なる点があるとは思ってなかったのでとても意外だった。それに大体において奇人・変人が集う「U」であるからして、Nのいきなり北海道に昆布取り、B氏の椰子の木撮るためだけに半年コサムイ、自称ライフワークなH氏の若狭放浪、白虎社Kの今時のブラック企業なんぞ児戯に思える熊野ワークショップ、エーッと誰だったっけ?路銀をすべてパチンコで賄いながら四国遍路ってのもいたな、ただの放浪くらいぢゃ誰も驚かんみたいなカンジ(笑)・・・・・・まぁとにかく常連はそんなツワ者ばっかしなのである。おれ的にはそっちのハナシの方が余程面白い。なのに買ったばかりの400のバイクでチョロッと日帰り圏内に出掛けたとか、地味にカブで下町を配達して回るような話の、何がそんなに面白いのか良く分からなかったのだった。

 ------どの辺が面白いんか自分ではよぉ分からんのんですけど・・・・・・
 ------んん〜・・・・・・何ちゅうかなぁ〜、***クンの話す視点とか切り口が面白いんやわ。
 ------別に意識してるワケとはちゃうんですけどねぇ。
 ------そぉなんかぁ〜!?(←これ、マスターの口癖)話してくれること、文章に落としたら絶対にエエ思うけどな。

 もう30年以上も前のコトだ。いささか傲慢の誹りを受けるかも知れないけど、言ってしまえば、いくら遠い場所・珍奇な場所に行ったって、ありきたりの視点ではありきたりの風景しか浮かび上がらないってコト、そしてどうやらおれには異なる視点っちゅう才がありそうなコトをマスターは言ってくれてたのかも知れない。

 嗚呼、もっと真剣に聴いて精進してりゃ良かった!正に後悔先に立たずだ。

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 さて、レイヤーの話だった。

 近頃、旅行のコースを考えたりナビ代わりに使ってるGoogleMyMapの基本機能がこの「レイヤー」っちゅうヤツなのである。直訳すると「層」って意味で、実際に使ってみた感じも元の地図の上にかつてのオーバーヘッドプロジェクターの透明シートを重ねて置いていくようなイメージである。この仮想シートには自分の好きなようにスポットやコースをプロッティング出来る。なおレイヤー自体はいくつでも作れるけど、1度に重ねることが出来るのは10枚までである。溢れたらエクスポートして退避させなくちゃならない。どのような分類にするかはユーザーの裁量に任されてるので、その部分での使い勝手は良い。
 ちなみに1枚のレイヤーにプロットできる地点の数は、昔は1000が上限だったようだけど、今はかなり改良されて3000以上あるみたいだ。もちろんこの登録地点には独自の名前付けたり、キャプション付けたり、リンク張ったりが可能である。ちなみにこのプロットに使うマップピンは、デフォルト状態ではダイキンの「ぴちょんくん」が激怒して達磨色になって逆立ちしたような形のものだけど、他にもいろんな色・形が選べるし、オリジナルの画像をアイコンにしてアップロードすることも出来る。

 ぶっちゃけ通信状態が良くないと重いどころか動かなくなるし、スマホだと少々操作しにくいし、ここに来ていきなりGoogleとゼンリンが喧嘩別れしたみたいだし、そんなに全幅の信頼を今後も寄せられるか?っちゅうとかなりビミョーだったりするんだが、それでもかつての大判ドライブマップに自分で書き込んだり、別途訪問予定地のリストをシコシコ拵えてた時代からすると隔世の感がある。ナビとコイツの組み合わせで、本当に旅先で迷わなくなったもん。自分でも明らかに1日で回れるスポットの数が増えたのを実感してる。

 今のところレイヤーは地域別とかではなく、行った場所のカテゴリーによって分類することにしてる。例えば「温泉」とか「巨石」「廃墟」ってなカンジだ。だから、一つのレイヤーに基本的には同じ柄のマップピンでダーッと北から南までがプロッティングされることになる。
 使って一つ大失敗したと思うのは、勢いで「候補地」ってレイヤーを拵えて、行きたい場所を後先考えずあまりにも大量にプロッティングしてしまったことだろう。すでに2000くらいあると思う・・・・・・で、実際に出掛けたらそれぞれのカテゴリにドラッグして移動させる、ってな運用をしてんだけど、これがチョーめんどくせぇんですわ。行った場所がレイヤーの配列の真ん中辺りだとひたすらドラッグして行かないと目指すレイヤーに辿り着けないんだもんな。オマケにこうして使うとさしものGoogleドライブにも相当な負荷が掛かってるのか、折角ネチネチ移動させたのに「変更は失われました」とかヘンなメッセージが出て元の木阿弥なんてコトが起きたりもする。プロッティングし直した方が余程速い。

 いくら何でもドン臭すぎる。おかしい。ひょっとしたら他に何か効率的な良い方法があるのかも知れない、って思ってネットを調べてんだけどイマイチ良い答えが出て来ない。アタマの良い人、誰か教えてくださいな。

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 ボヤキはともかく、そうして過去に訪ねたスポットを分類・整理したりしてて、ある日ふと気付いた。おれの旅行そのものが元来ひどく偏ったカテゴリーの縛りを掛けて(・・・・・・カッコ良く言やぁ「テーマを持って」なんだろうな、笑)行われてるのは今さら言うまでもなかろうが、そうしたカテゴリーを変えてしまうと、たとえ以前と同じ町、同じルートを通ってもとても新鮮な感覚で無邪気に愉しめてしまってるってコトだ。

 何だぁ〜、おれってホンマはメッチャ素直なんぢゃんかよ!って思ってしまった。それと同時に冒頭の「喫茶U」での会話も想い出したのである・・・・・・って、ハハハ、視点や切り口ったって温泉だとか巨石だとかそんなベタなレベルでやってちゃ全然アカンのんだけどね。

 それはさておき先日訪ねたいわき方面なんかもそうだ。東北道の白河から石川町に入り、グネグネと阿武隈の高原地帯を抜けていわきに向かうルートだった。似たようなコースは過去に何度通ったか知れない。
 温泉オンリーの以前とは打って変わって、近年は巨石+廃墟(+撮影もか・・・・・・笑)が専らだから、今回IC降りてまず向かったのが白河の東方の低い山のてっぺんにあるにある建鉾石。実は去年の福島行で行き損ねてたのだ。そこから今度は浅川・石川町と抜ける。
 走ってると、手書きっぽい看板で「即身仏の寺」ってのが出てる。ん!?・・・・・・ああ、そぉだった、たしかこの辺にあるのをマップルで見付けて立ち寄ったことあったっけ。もう15〜6年前かな?あれはちょっとばかしささくれた気分でテント積んで野宿旅に出た時だった。スッカリ忘れてた。たしかナントカ法印って坊さんだったな・・・・・・それにしてもこんな道、おれ以前に走ってたんだ。

 向かうのは石都々古和気神社だ。走ってくと今度は川向うに猫啼温泉が見える。あれ!?ここは立ち寄ったっけかなぁ〜?などと思いながら、鹽竃神社だとか石尊山だとか町内の巨石スポットを他にも何ヶ所か回った。石川町は岐阜の苗木、滋賀の田上山と並んで「日本三大鉱物の町」と言われ、ほぼあらゆる鉱物が採れるだけでなく、一帯には巨石がゴロゴロしてるのだ。撮影もそれなりに快調(笑)。
 あまりにも寒いんで急遽猫啼温泉の二軒ある旅館で未訪だった西田屋に立ち寄り、今度は南下しながら破石、八雲神社、天狗橋と回ることにするが、走ってくと女庭鉱泉とか湯ノ田鉱泉、塩ノ沢鉱泉等々見覚えのある標識・看板が出て来るではないか。

 ・・・・・・何のこっちゃない、ほぼ同じコースを10年ほど前に走ってたのだった。想い出してきた。たしかあの時は常磐道から回り込む逆ルートだったっけ。しかしあの当時で既に廃業してるトコだらけでスカばっかしだった。それにしてもこんなにコースがカブッてるって全然気付かんかったなぁ〜・・・・・・。
 そう、視点や切り口を変えれば、同じ場所でもコースでも、また違った風景がそこに立ち現われる。加えて近年とみに加速中の忘却力が新鮮さをより与えてくれたりもするし(笑)。

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 「温泉」っちゅうレイヤーから始まったおれの旅行は、今は専ら「巨石」ってレイヤーに移ってる。まぁ、廃墟や寂れた展望台なんかが加わることもあるけど、基本は巨石で間違いない。まだまだ関東近辺ばっかしで広がりがないのでこのレイヤーは今しばらく続くだろう。3層目のレイヤーが何になるかは自分でも予想が付かない。或いはもう無いのかも知れない。

 ・・・・・・しっかし、レイヤーの重なり以上に重ねてしまってるモノがある。言うまでもなく「馬齢」っちゅうヤツである。残念ながらマスターが誉めてくれたようには、おれはなれなかった。こうしてささやかな自己満のサイトに駄文を連ねるのが関の山だ。大体、興味の対象物ではなく、現在のおれの語り口そのものに視点や切り口の面白さはあるんだろうか・・・・・・。


2019年、阿武隈某所の巨石にて・・・・・・ホント、老けないのには感謝です(4:3にトリミング)。

2019.04.03

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