蕎麦屋鉱泉・・・・・・柏尾温泉 |

何だかんだで20人くらいは入れる座敷(ギャラリーをリサイズし再掲)。
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嘆いたって始まらない。
愚痴ったって始まらない。
ボヤいたって始まらない。
悔やんだって始まらない。
ましてや怒ったって始まらない。
・・・・・・いやナニ、減少の一途を辿るシブい温泉やら鉱泉についてですがな。そらもちろん悲しむべきことではあるし、言いたいコトは山ほどあるけど、老人の繰り言をいくら並べたって無くなった懐かしいそれらが魔法のように甦るワケでもない。
ただ、希望の光は僅かながらもある。先日紹介した湯端温泉なんかまさにそうだ。こんな御時世にごく少数ながら、温泉・鉱泉宿を新たに始めてくださる奇特な人がいてくれるのだ。まだまだ日本も捨てたモンぢゃない。
本日紹介する静岡は清水の市街地の外れにある柏尾温泉もそんなところだ。
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正式名称は「古民家、蕎麦茶寮ゆーらく柏尾」っちゅうて、ちょっとネンネン趣味な名前がアレな気もするものの、実際は結構シブい造りの一軒宿である。由来は良く分からないが、元々からそこにあった柏尾温泉ってのが廃業したのを建築士であるオーナーが買い取って、古民家を移築した上で再興したらしい。だから新しいけど古い造りなのだ。
ぶっちゃけ温泉業で食ってく気はあまりないみたいで、蕎麦屋の方が本業のように思える・・・・・・とは申せ、本当の仕事は建築士なのだから、蕎麦屋にしたってまぁ趣味の延長なんだろうな。房総の方にたしか本業が写真家っちゅうオヤジが週末だけやってる蕎麦屋があるんだけど、それに近い立ち位置かも知れない。
それにしても、何でオッサンっちゅう生き物はドイツもコイツも蕎麦打ちに目覚めるんだろう?そして蕎麦打ちに目覚めた人は必ず人に食わせようとするんだろう?実はおれの会社にもいたりする。素材がシンプルでどこか求道的でストイックな雰囲気があるからなのか、とにかく蕎麦を目指すオッサンはムチャクチャに多い。
そいでもって愛読書は「男の隠れ家」とか「一個人」、「dancyu」「サライ」「自遊人」「おとなの週末」あたりだったりするパターンだったりする・・・・・・え!?おれ!?如何にも読んでそうでしょ?それが実は読んでないんだなぁ〜。だってスノッブでノーガキ多くてメンドくせぇんだもん。
・・・・・・って、蕎麦打ち志す人ディスってどないすんねん!?ってね(笑)。
ともあれそんなんで蕎麦はいっかな打とうとは思わないけど、食べるだけならおらぁ大好きなので、出来ることなら食べてみたかった。だが、どうしてもそれはムリな事情があった。実はここを訪ねる直前に、近所の「さんふぁいぶ」というどうしても押さえておきたい爆食系メシ屋に立ち寄ってたからだ。そろそろ年齢にふさわしい行動を考えんと命の危険さえあるっちゅうのにねぇ・・・・・・。
膨れ上がったハラで訪ねた柏尾温泉は静まり返っている。入口が分かりづらく、通りから裏手に回り込んだようなところにあった。何となく地面から少しめり込んだようになって建ってる。大雨降ったら周りから水が流れ込みそうだ。
入湯料を払うと玄関脇の座敷に通されて、お茶と梅干が出て来た。要は鉱泉の湯が沸いてないのである(笑)。茶を飲みながら改めて見渡すと、流石建築のプロがやってるだけあって、細かいところまで造作だけでなく掃除や飾り付けまでも気が行き届いており、色んな調度品のセンスも良い。クール過ぎずダサ過ぎず、ナカナカ良い塩梅のように思える。このテの鉱泉宿にありがちな貧乏臭さやボロさは微塵もない。
ぶっちゃけ蕎麦を注文して欲しそうなオーラが出まくってたので、正直にさっき昼メシ食ったばかりで申し訳ないと謝った。世辞ではなく、腹にもちょっと余裕があれば食ってみたかったな。
待つことおよそ30分、ようやく風呂に案内される。混浴ではないが片方しか沸かしてないので混浴だ。大体において湧出量が貧弱で、さらには沸かす油代もバカにならない鉱泉宿に厳格な別浴を求める方が野暮で酷な話だと思う。そぉゆうことを厚労省やその傘下の保健所はちっとも理解してない。ヤツ等はただの文化の破壊者だ。鉱泉っちゅうのは狭い混浴にみんなギュウギュウ詰めで入れば良いのである。
建物の奥、階段を上がった中二階みたいなトコ(これで恐らく表通りとは高さがツライチなんだろう)に浴室がある。ココはどうやら古民家の再利用でもなければ元からあった浴室でもなく、新たに建てたものだ。残念ながら表側の古民家のような重厚な佇まいは望むべくもない。
しかしこの浴室がまた変わってる。鉱泉ゆえに湯船が小さいのは当然としても、それが窓際とかではなく何だか入口の横の奥まったトコに、押し込まれたようなカンジであるのだ。建築士が手掛けたにしてはいささか違和感のあるレイアウトだと思う。いっそこの部分の天井も低くして、岩で囲って洞窟風呂に仕立てれば良かったのではなかろうか。その分洗い場は湯船のキャパからするとひじょうに広く、何だかガランとした印象がある。折角木をふんだんに使った最近では珍しいくらいに金の掛かった浴室だけに、ちょと残念っちゃ残念かもしれない。
お湯はまったく特徴のないのが特徴、とでも言うしかないモノ。無色透明・無味無臭、何となくアルカリ泉っぽい気がするかな?っちゅう程度。所謂「規定泉」に該当してるのかどうかさえ一切不明だけど、まぁ温泉名乗ってるくらいだから取り敢えず地中から湧いてることは湧いてんだろう・・・・・・ハッキシ言っておれ的にはどうでも良いことだけど。
そこに昔から鉱泉宿があり、一度は廃れてしまった。それを再興して頑張ってる、それだけで充分やんか。
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例によって例の如く、こうした個人経営の一軒宿について、おれの乏しい筆力で書けるのはこんなトコまでだ。アカンがな、全然魅力を伝えきれてない。
あ!そうだ!ちなみにココ民宿もやっており、何と今時一泊二食6,900円〜だったりする。料理の内容がどうなのかはサッパリ分からないけど、多分蕎麦を中心に出されるんぢゃなかろうか。詳しくはナカナカにスタイリッシュな公式サイトがあるんで、そこを見られると良いかと思う。
次はぜひ泊まって鉱泉に出たり入ったりしつつ、心行くまで蕎麦を堪能してみたいもんだ・・・・・・そう思ったのは間違いない。 |

浴室内部。異様に湯船が小さいのは鉱泉らしくて好印象だが、何でココにしたんだろ?
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2018.06.23 |
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----Asylum in Silence----秘湯 露天 混浴から野宿 キャンプ プログレ パンク オルタナ ノイズまで
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