「シズカナカクレガ」ヘヤフコソ
再び、信州へ


信州っちゃ蕎麦も楽しみの一つだよね〜(軽井沢「東間」にて)。

 ・・・・・・って、おれの中の信州のイメージはかなりアバウトかつ広範囲であって、岐阜や山梨、あるいは新潟、群馬の一部も含まれてたりすんだけど、まぁ何だかんだでこれまでいっちゃん出掛けたことの多い地方であることは間違いない。大好きだ。たぶんこれまでの宿泊延べ日数は3ケタに及んでるのではなかろうか。

 とは申せ、もう「温泉」だけをキーワードに訪問するのは少々厳しくなって来てるのが偽らざる事実だ。主だったところはあらかた行き尽くしてしまってるし、かといって同じトコを再訪するのは大切な記憶が損なわれるようで基本的にあんまし気が進まないし、それにいくらマイナー好きとはいえ行き残しに野湯だかただの湧水だか分からないようなのばっかチマチマ狙って求め歩くのも本筋からズレてるようだし・・・・・・そんなこんなで年々コース組みがむつかしくなっていたのも事実だった。気付くと足が遠のいていた。

 2年前、降って湧いたように転勤話が持ち上がって、右も左も分からぬまま北の地に赴き、かの地特有の所謂「日本的」とは言えない風景に囲まれた時間を過ごして戻ってきて、改めて今、信州方面に出かけてみたい気持ちが無性に募って来ている・・・・・・な〜んて書いたものの、あっちにいる間だってロクすっぽ休みは取れず、独特の荒涼とした風景をしたり顔で語れるほどにあちこちを存分に堪能したワケでもなかったのだけどね(笑)。

 いやいや、北海道にしたって実のところ、目ぼしい温泉は過去にあらかた行き尽くしてしまってたから、おれの興味は最初から炭鉱跡や油田跡、あるいは風景そのものに向けられていた。さらには誰も行かないような地味な無人駅や、どマイナーな展望スポットなんかもけっこう出かけたし、時には心霊スポットなんて呼ばれるような不気味なトコに出かけさえもした。興味のない人にはまったく面白くないだろうが、おれ的にはどれもかなり楽しかったんで、存分とまでは行かずともそれなりにいい時間を過ごせたんぢゃないかって気がしてる。

 そうそう、そぉいやこの数年、おれの興味は巨石と懸崖造りに向かってた。しかし、残念ながら北海道でこのジャンルの収穫は何もなかった。いろいろリサーチはしたんだけど、あっちに巨石文化の遺物はないみたいだし(忍路等ストーンサークルはあるもののいささかショボい)、ナントカ岩、みたいな「見立て」にさほど興味はなし、懸崖造りは土地自体が拓かれてまだ100数十年しか経ってないもんだから、寺社仏閣そのものがひじょうに少なく、またあっても殆どはただの民家か集会所みたいな作りばかりで望むべくもない。だから行こうにも行けなかった。

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 んでもってこっちゃ戻ってきて、時間の余裕が出来たんか?っちゅうとこれがもうまるで無い。ホントにもぉイヤんなってくるが、それが現実だから仕方ない。アベノミクスで景気が上向くとか言ってるけど、まったくもって実感は湧かない。思えばまだ90年代初頭までのバブルの頃は貧しいなりにバブルの恩恵はあったかもしれない。給料はそれでも年々上がってたし、1日置きにちょっとスカした外食に出掛けるくらいのことはしてたもん。
 それに喪われた20年に於ける徹底的なリストラによって日本のサラリーマンの、特に中間管理職の労働密度は恐ろしく上がった。昔の管理職はもっとヒマでもっと威厳のある立場だった。時短なんてどこの世界の話だ?って思うぞ。因果な仕事だ。そんな中で何とか工面していくしかない。
 そんなこんなで戻ってからっちゅうもの、専ら候補地のピックアップにばっかせっせと精出すのが関の山の状況なのである。

 しっかし、これまでと切り口を変えてスポットを探すと、あまりにいくらでも見付かるもんだから、ちょっと困ってしまうくらいだ。日本もまだまだ捨てたモンぢゃねぇなぁ〜、って気持ちになれる。黙々とネットにいろんな検索ワードをブッ込んで、得られた結果から面白そうな候補地をコピペでメモ帳に拾ってく・・・・・・その作業をひたすら繰り返すだけなんだけど、ちょっと子供の頃の密かな楽しみを想い出したりもする。

 おれはとにかく地図を見るのが好きな子供だった。家に誰のモノかは分からないが帝国書院発行の昭和31年版の、おそらくは中学か高校の教材にでも使ったようなベージュのハードカバーの地図帳があった。縦横に細く糸が織り込まれた表紙だったことをハッキリ覚えている。すでにボロボロになってテープで表紙はくっつけられたりして、ようやっと本としての体裁を保ってたのだが、これを完膚なきまでにバラバラになるほど読み込んだのはおれだ。
 その頃は日本の津々浦々に鉄道網があり、驚くほどたくさんの鉱山マークが地図上に溢れていた。オマケに学習用だから、農産品・特産品名なんかも書いてある「みかん」とか「りんご」、あるいは「絣」とか「縮緬」とか。それは幼いおれにノスタルジーとないまぜになった旅情を掻き立てるに十分なものだった。

 本の地図はボロボロになったけど、ネットは飽かず繰り返し調べてもせいぜいキーボードが叩き過ぎで外れるくらいだろうから、実に世の中便利になったと思う。実にありがたいことだ。一方で肝心の地図上から得られる情報は随分寂しく、また平板になってしまったような気もするが・・・・・・。

 ともあれ、こうしてリストアップされた中から候補地を選んで整理して行く。地図に当て込みながらどんなふうに行くのがいいか考えてみたりする。不在の数年の間にも関東周辺の道路網はさらに整備され、出掛けやすくなった。その一方で円安のせいで国内旅行客だけでなく外国人観光客も増えてるらしい。少子はともかく高齢化の波は静かな旅行には大敵だったりもする。でも、おれの行きそうなとこにはそうはやって来ることもないだろう(笑)。
 以前ほど行き当たりばったりではなく、多少は緻密になってきたかも知れない。ある程度効率的に回るには、コースの最適化も考慮して移動時間の短縮を図らなくてはならないからだ。

 かくして日々リストは増え続けてる。もちろん、恐ろしい勢いで信州方面のいろんなスポットがリストアップされてってるのは言うまでもない。予備知識ばっか増やしても仕方ないとは分かってるんだけど・・・・・・。

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 上述の通り、アベノミクスとやらでちょっとばかし世の中は浮かれ気味になってきてるとはいえ、個人的に気懸りなことがある。それは大嫌いな地震である。東日本大震災以降どうやら地殻のバランスが崩れたみたいで、とにかく地震が激増した。地殻のバランスが崩れるってことは火山にも悪影響を及ぼすらしく、聞くところによるとあの大震災以降、活動が活発化した火山は全国で20に及ぶという。
 大体旅行好きのおれがこれまで決して三陸方面に行かなかったのは、そりゃ温泉が殆どあっちにないってコトもあるけど、それより何より過去に吉村昭の「三陸大津波」とか読んでた影響で津波が怖かったからだ。旅先で天災に見舞われるほどナサケないことはないもんなぁ・・・・・・。

 ああ、まとまりも何も考えないままグダグダに書き連ねてしまった。とまれこれらの計画が行動に移され、さらにはまとまった形でこのサイトにレポートとして載せられるにはまだまだ時間は掛かるだろうけど、まぁアセらずちょっとづつやって行こう。

2013.07.06

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