荒湯地獄に朝日が昇る | ||||||||||||||||||||
![]() 尾根伝いに下る。 |
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最近イラついてるせいか、腹立ちネタが全体的に増えてる気がする。これで「ボヤキ漫才」の世界にまで入ることができれば、そのトホホ感はそれなりに面白いのだが、いい歳して未だにアオいトコだらけなもんでどうにも怒りが平板、っちゅーか一本調子、っちゅーか我ながら実に芸がない。 あ〜、イヤんなった。今回は気楽に行くぞ〜!! ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ・・・・・・ってなワケで今回取り上げるのは、鬼首の奥、荒湯地獄。 ここと少し離れた片山地獄のスケールのデカさは日本有数ではないだろうか。朝7時、吹上高原キャンプ場の脇からところどころダートの細い道を、夏の朝の陽射しがまぶしい中、砂煙を巻き上げながら山中に分け入っていく。突き当りのT字路を右折すれば地熱発電所のある片山地獄だが、ここは左折。曲がって数百メートル、ほんのすぐであっけなく目的地に到着。お手軽野湯だな、こりゃ。 傾いたちっさい看板が一枚だけ!! こんなものが近畿圏内にでもあればものすごい観光名所になって、土産物屋とかが林立するのだろうが、何せここは鬼首だ。周辺一体こんな風景は掃いて捨てるほどある。だからスケールの割に何も設備がない。いやいや、実に好ましいことで、別に落胆するこっちゃないのだが、それにしてもここまで何もないとはさすがに予想していなかった。 ここもまた、かつては硫黄鉱山だったのだろう。道路脇は人工的な広い空地になっており、ここにかつて何かの設備が建っていたと思わせる。また、すぐに山の斜面が白土化して剥きだしになった地獄が始まるが、ここにもところどころ朽ち果てた木の柱が見える。窪地からは噴気が上がり、周辺が結晶した硫黄で黄色く染まるのはあらゆる噴気地帯共通の景色だ。 目指す野湯はおそらく沢を下ったあたりだろうが、このような場合、うかつに谷底を行くのが危険なことは言うまでもない。 かつて、安達太良山の沼ノ平で登山客、あるいは草津白根山でスキー客が硫化水素中毒で死んだのも、全て「くぼ地の中」である。H2Sは分子量34、空気が大体30前後なので比重が重く、低いところに滞留するのだ。ちなみにあまり知られてないがこいつ、有毒なだけでなく引火性でもある。かなりおっかないものが地面からボコボコと噴き出しとるワケだ。 尾根を下っていくと熱湯の細い流れがだんだんと広がって川となっていくのが分かる。熱湯だしいかにも湯量は少ないが、ところどころにドカシーがうち捨てられてあるところからすると、入れる温度のときもあるのだろう。それにしても・・・・・・ちゃんと持って帰れよな!! 足場が意外に悪くて滑りやすいのと、どうせまぁ野湯だし、広々と手足を伸ばして浸かることもムリそうなので、これ以上下ることは断念。何せこっちは子連れなのだ。親の道楽で危険な目に遭わせるわけにゃぁ行かない 小さな湯だまりができているところで、いわゆる「絞りがけ」にすることに決めた。湯はあくまで清澄だが舐めてみると強酸性でとても酸っぱい。子供たちにはいささか熱すぎるので親のおれたちだけで入ることにして脱ぎ方開始。しかし、なんですな、このなんと言いますか、抜けるような青空の下、子供たちが普通に服着てトンボ追っかけたりしてる真っ白な沢で、いい歳した両親だけが素っ裸になってウロウロしてるのは、全くもって「アホの極み」のような景色ですな(笑)。 きめの細かい砂地にわずかに溜まった熱い湯に、おれたちは替わりばんこで入った・・・・・・っちゅうか尻を触れさせた。あとはひたすらタオルに浸しては身体にすり込み。朝日はすでに高く、何だか日光浴でもしてるみたいだ。白土の照り返しがまぶしい。早速どこからともなくアブがまとわりつき始めた。温泉に入る者にとっては夏の最大の難物だ。 おれは二日前の川原毛地獄を思い出して頭の中で較べた。どっちもよく似たような影のない噴気地帯であるが、あそこが霊場としてのオーラをまとったいわば「陰」とするなら、ここは絶好の天気もあいまって何ともすっこ抜けたような「陽」の印象だ。あちらには御詠歌、こっちにはメジャーコードののどかな民謡が似合うだろう。そんな風景に、このいささか奇妙といえば奇妙な、滑稽でシュールな家族の姿は、点景として案外マッチしてるように思えてきた。 はじめよければ全てよし、とも言うけれど、本当かも知れない。朝もはよからこんな最上のひと時を過ごせたこの日、そこからあとの温泉行脚は、全部「アタリ」だった。 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 最後に吹上高原キャンプ場についてちょっと一言。 そんなあちこちのキャンプ場を泊まり歩いたワケではないけれど、まったく区画っちゅーモノがない広大なフリーサイトのここは、本当に開放感があって、キモチのいいところだ。連泊しても少しも苦にならない。そのツモリはなかったのについつい3連泊してしまった。トップシーズンでも一杯になることはないらしいので、キャンプに興味のある方は東北方面に行った際は、ぜひとも泊まってみられることをお勧めする。 も一つ、啓発のためのオマケ。硫化水素の毒性を示す一覧表を掲げておくので、参考にしてほしい。出典はウィキペディアです。
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![]() ギャラリーとほとんど同じに見えるけど実は別のショット。 |
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2006.04.05 | ||||||||||||||||||||
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