「シズカナカクレガ」ヘヤフコソ
2021 岐阜~愛知(初日・前半)

秋晴れの朝、古い亜幹線の大駅な雰囲気を今も色濃く残す駅前。
ここは経営状態思わしくなく近鉄から分社化されて、今は養老鉄道となった西大垣駅。

早くに東京を発ったものの、途中、予想外の事故渋滞に巻き込まれたりしてケッコーいい時間になってしまいました。
改札口って、こんな風に薄暗いのが本来のローカル線の駅らしいと思います。
点字プレートとか料金表が今風なだけで、創業当初のままの形を残してることが良く分かりますね。
ホームの差し掛け屋根も深くて重厚な印象。

ホームがこうして少し高くなってるスタイルは平地の駅に多い気がします。
この養老鉄道、始発は三重の桑名駅っちゅう、何ともビミョーな路線です。

元々は多数の専用貨物線を有し、中京の一大工業地帯である四日市とを短絡する路線でした。
この西大垣駅には本社や車庫もあって、この路線の中では中核的な存在と言えます。

そんなんで車寄せなんかも重厚で立派。
到着が遅くなったんで、まずはお昼に向かうことにします。

大垣は古くは繊維の町として栄え、街のそこかしこに懐かしい佇まいが残っています。
・・・・・・で、やって来たのはココ・「朝日屋」。

まぁムチャクチャ有名ですんで、ご存知の方も多いかも。
メニューに「しのだ」とか「松月」、「ゆつき」なんてあるのがシブい。

実はこのお店にはカルトなメニューが2つありますが、1つは季節商品。
今はないんで、まずはノーマルにチャーシューメン。

もうヴィジュアルからして大好きな古典的中華そばですね。
アッちゅう間に完食!

次のはまだかな~?……っと。
出た!これこそがこの店のカルトなメニューの一つである「カツ丼」。

メレンゲ状にしたフワフワの玉子がカツの上に載るっちゅう、他に類例のないカツ丼です。
こちらもソッコーで完食。どちらも優しく、どこか懐かしい味でした。

いやもぉ朝から走りっぱなしでハラ減ってたんですわ。途中はだから撮り忘れました。
うどん屋を看板に掲げるのに、お客さんの9割はラーメンを注文してたりして・・・・・・ちなみにもう一つのカルトなメニューは夏季限定の「冷し中華そば」で、なんと汁が冷たいラーメンみたいです。

ともあれ御馳走様でした。
大垣は北に福井と県境を接する山並みが続き、豊富な湧水の町として知られ、市内には数十ヶ所の自噴井戸があるとのことです。

このため造り酒屋も多くあったりします。
続いてやって来たのは、かつては貨物車がひしめいてたであろう広大なヤードの広がるココ。

・・・・・・美濃赤坂駅です。

何とココ、東海道線の支線だったりします。
JRとしては終点なんですが、ここからさらに奥に向かって西濃鉄道・市橋線という貨物線が伸びてます。

かつては駅手前から昼飯線という貨物線も分かれていました。この辺一帯は石灰鉱山だらけなのです。
構内の端っこにはまだ塗装も綺麗な状態のディーゼル機関車が一両。

DE10のようですがナンバープレートがありません。
かつては荷物が山積みされてたであろう巨大な貨物ホームも、大半の輸送がトラックにシフトした今はガランとしています。
こうして見るともぉまるで廃駅のようですが、今も貨物列車が一日に数本、旅客列車は朝夕中心に20本くらいあります。

調べてみたところ、少し前まではここが始発の快速もあった模様。
後方に見えるのが古色蒼然とした駅本屋。
線路に対して直角にこうした木造の本屋が建つのは、かつての国鉄で貨物線の終点でよく見られたスタイルだと思います。
美濃赤坂は旧・中山道の宿場町で古い景色があちこちに残るみたいです・・・・・・が、ちょっと地味かも。
元々は貨物線で旅客輸送は二の次だったのが、今は大垣の近郊ベッドタウンになったのかそれなりに本数はあります。
古民家の納戸の入口みたいですね。
構内側は通常は張り出してる差掛屋根が一切なく、どちらも正面入口に見えるような、あまり他に類例のない形をしてるのが良く分かります。
旅客ホームはまぁ貨物駅あるあるでオマケみたいな存在。
木造駅舎自体も少なくなりましたけど、窓枠がアルミサッシ化されず木のままというのはさらに現存例は少ないと思います。

・・・・・・まぁ、それだけ追加投資ないまま放置されてるってコトなんでしょうが。
小さな駅前広場の通りを挟んだ反対側には西濃鉄道のささやかな本社。

半切妻の屋根が何ともレトロで良いカンジ。
・・・・・・って、テツな話はこれくらいにして次のスポットへ。

駅の北西に聳える金生山の頂上近くにある明星輪寺です。
牛と・・・・・・
・・・・・・虎、と言えば牛虎で丑寅、丑寅と言えば北東、北東と言えば表鬼門、そこを護るのが虚空蔵・・・・・・ってなワケでここは虚空蔵を祀るお寺です。

一般的には丑年・寅年生まれの守り本尊なんて言われてますけどね。
すでに標高の低いこの辺りでも紅葉真っ盛り。
実は寺社仏閣・日本庭園に植わってる紅葉樹って、綺麗に発色するよう品種改良されたんが多いらしいです。
あと、これ言っちゃうとミもフタもないんですけど、北海道の紅葉を体験しちゃうと、本州の紅葉はどれだけ見事と言われるトコでもくすんでる気がしますね。
もっとバッドテイスト炸裂な寺かと思ってたら、意外なくらい静かで落ち着いた佇まい。
ようやく山門が見えて来ました。
思えばこうした由来の看板はマメに撮ってる気がします。

役小角創建とか絶対ネタやろ!?と。
仁王さん、って要は見張りのガタイの好い用心棒ですよね?
阿形・吽形がどぉとか、運慶・快慶作の力強さとかそんなん言う前に、セレブの周囲でグラサンに黒スーツ姿で取り巻いてる怖いボディガードみたいなもんや、ってコトを教えるべきではないかと思います。
しかし、紅葉を綺麗に撮るのは実は手持ちだと至難の業だったりして。

絞り込んでISOも低く設定して、出来るだけスローシャッターで撮るのが実はすごく綺麗に色が出る気がしてます。
銀杏の落ち葉の絨毯・・・・・・
・・・・・・って、種明かしするとこれだけなんですけど。
レトロなタッチが何とも好ましい境内案内図。
ちなみにこのお寺、「虚空蔵」ではなく「こくぞうさん」として信仰を集めており、毎年1月の夜にオールナイトで開かれる「初こくぞう」には多数の参拝客で賑わうそうです。

これは持って帰って家の近所に貼ってね、っちゅう捨て看板。シブい色合いとデザイン。
思ったより随分小さな本堂。

ちなみに「明星」って名の付くお寺はほぼほぼ虚空蔵のお寺です。
中に入ってビックリ!
何とココ、巨大な石灰岩の露頭が本尊なんです。

間違いなく古くからの巨石祭祀の場が寺に取り込まれてった例と言えますね。
ただ、由来書きにはどうしてこの巨岩が本尊になったのかは書かれてありませんでした。

案外、修験の行場だったのが割と近世になって幕府の統制下に置かれた、なんてのが実態だったりして。
こうしたグッズ類もシブ目でレトロな意匠が多いのがココの特徴のように思います。
珍しいのはこの奉納額で、一種のパッチワークの立体的な絵になってます。
・・・・・・これも。

古くからこの一帯では綿花生産が盛んで、それがその後の繊維産業、毛織物産業等に発展して行ったってコトが良く分かります。
・・・・・・これも。

右側に裁縫学校の寄進であることが書かれてます。テーマはどうやらAKO47みたい。
裏山は「岩巣公園」という名前で、一面の石灰岩の露頭が広がっています。
お寺系の巨石って、こうしてすぐに彫りモン入れられちゃうんだよなぁ~!
ここにも虎がいますな。
実はこの金生山、山全体が巨大な石灰岩でできており、境内のすぐ裏まで石灰鉱山のベンチカットの切羽が迫って絶壁となってます。
同じような例は栃木の葛生にもありますね。
さらに上にドンドン上がって行きます。
・・・・・・しかし気になるのはこの山の名前。

石灰岩にマグマが接して形成されるスカルン鉱床で何らかの金属がかつては採れたんんぢゃないか?って気がします。
てっぺんに来ました。

眼下に濃尾平野が一望できます。
ここの石灰岩は割とヌメッとした表情を見せてるのが多い。
行場のアトラクションのマスト、胎内潜りみたいなんもあります。
境内から見上げた全景(?)。

もっとショボいのを想像してたんで意外に楽しめました。
山を下ると、削りまくってる石灰鉱山の施設が遠望できます。

後半は・・・・・・と言いたいトコですが、次は鉱山廃墟特集を挟んでみることにします。あまりにスゴかったんで。
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