「シズカナカクレガ」ヘヤフコソ
2016 奥会津(初日・後半)

前回述べた通り、只見線は現在、会津川口~只見間が豪雨によって蒙った甚大な被害の影響で不通となっています。
ここはそんな不通区間に取り残された駅の一つ、会津横田。
すでに5年が経過し、線路は殆ど雑草に覆い尽くされてしまっています。
奥に見える切り通しはかつての鉱山のホッパー跡。

後ろの山には昭和47年まで黒鉱鉱床の横田鉱山がありました。埋蔵量はまだ数百万トン残っていたと言われます。
ここを再び列車が走る日が来るのか、極めて疑問に思います。
続いて会津中川駅。
ここは会津川口の一つ北寄りの駅で、列車は走っています・・・・・・が、1日僅か6本!。
無人駅とはいえ小さな除雪機が押し込まれてるのが如何にも雪国。
実は只見線、歴史はそれほど古くなく、この辺が開通したのは昭和30年代初頭、全通は実に昭和46年のことでした。
列車が走る区間でも雑草はこの通り。
恐らくは開業当初からの木造駅舎はちょっと小屋っぽい。

どうやら初めから無人駅だったようです。
覆い尽くした蔦が美しい。
鉄道の黄金時代は60年代が最後だったと思うのですが、それが過ぎた後に開通した路線は最初から終わりが見えていたのかも知れません。
「熊に注意」の看板がある駅っちゅうのもねぇ・・・・・・。
そうこうする内に列車到着。

何と両運転台のが4両も繋がっています。
ダイヤからするに恐らく、会津川口で一両づつ切り離して夕方以降の上り列車となるのでしょう。
続いては会津水沼駅。

殆ど駅に見えませんね。
国道から一段下がった隙間みたいなトコにあります。
かつては交換も可能だったように見えます。

ちなみに現在の平均利用客数は1日0人!(笑)。
依然雨は降り止まず、仕方なくそのまま今夜の宿である西山温泉・老沢温泉旅館に到着。

立ち寄りも含めるとここに来るのは3度目。
奥座敷の東山温泉と比べると、山峡の侘しい温泉場の印象の強い西山温泉ですが、この老沢温泉旅館は特に鄙びた印象が強いです。
もっと鄙びてるのは下ノ湯なんですが、今は宿泊を受け付けていません。
案内された二階の部屋はひじょうに重厚な佇まい。
ビニールで保護された掛け軸って初めて見ました。
古代の遺物みたいな恵比寿と大黒。
狭い廊下が如何にも歴史を感じさせます。

窓に渡された洗濯ロープも湯治宿の雰囲気がありますね。
何はともあれ風呂に行くことにしましょう。

階下に向かう渋い木の回廊。
何故か真ん中に銀マットが敷かれた脱衣場。
おれももっと歳取ったらこんなん奉納してみようかな?
「湯かげんと東おろしの名刀は病の根まで切れる味は正宗」

・・・・・・う~む、意味が分かるような分からんような。
脱ぐのは絶対に下から(笑)。
準備完了!

上に飾られてるのはスシ詰めで入浴中の湯治客の古い写真。
ちなみになぜかヨメはここは初めて。
極めて古い形を残した混浴の浴室。
奥に見えるのは温泉神社。

つまりここは神域であり、今は亡き山形の今神温泉等と同じ信仰と表裏一体になった土俗の香り漂う湯治の形を残していると言えます。
つげ義春の「ゲンセンカン主人」のプロットについては、本人曰く群馬の湯宿温泉での体験だそうですが、風呂のシーンのモデルはここか今神ではないかと思ってます。
変化の無い写真ですみません。

ちなみに浴槽は一畳くらいのが3つ並んでおり、水でうめることはできません。
外に出てみました・・・・・・っちゅうても露天風呂なんてシャレたものはもちろんありませんが。
何故か置かれた石臼。

背後は小さな沢になっており、あちこちから熱湯に近い湯が湧出してます。
ここは沼沢カルデラにも近い地熱地帯で、ちょっと奥に行ったトコには地熱発電所もあります。
再び浴室内に。

湯気がちょっと抜けてクリアに写りました。
泉質は硫黄泉で、結構モラモラと湯の花が漂っています。
背後に見えるのが源泉の注ぎ口。

湯加減は溝に小さな石の欠片を置いて流れを調節して行います。
ああ、また湯気が濛々としてきましたね。

そろそろ上がることにしましょう。
とにかく熱い湯で寒さも忘れてのぼせてます。
この、脱衣場も浴室も混浴、湯加減調整がほとんど不可能な湯船に温泉神社という形式こそが老沢温泉旅館最大の魅力だと思います。
画像は大修正(笑)。
ロケーションの全てがシブい。

正直、ここが改築されるようなことになったら世も末でしょうね。
部屋に戻ってまだのぼせてるのでちょっと撮影。
どぉも室内撮りは自分には向いてませんねぇ・・・・・・。
風呂上りのアンメルツは二人とも欠かせません。

どっちもすんげぇ肩凝りなんですよ。
そうこうするうちに夕食到着。

これがまた実にシブい。
馬刺し。

薬味は唐辛子味噌です。
イカと平天等の炊き合わせ。
ゼンマイの煮物。
数の子と豆の煮浸し。

これが意外なまでに美味かったです。
おから。
カレイの煮付は煮こごりが凄い。
メインディッシュのメンチカツの玉子とじ・・・・・・ちょっと山小屋っぽいですね。
とにかく今日はお疲れさん・・・・・・まぁ、撮影は無かったんでその点では気楽な一日でしたけど。
具沢山の澄まし汁・・・・・・実に美味。

会津名物のこづゆではなかったです。
これもハッとするほど美味かった漬物。
結局、山の宿の食事には山のモノが似合いますよね。
この日もビールは飲むわ、日本酒は飲むわで酔いまくり、後はそのまま寝てしまったような・・・・・・。

明日は天気が良さそうなので、最後の紅葉を見て回ります。
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