「シズカナカクレガ」ヘヤフコソ
2016 茨城(二日目・前半)

朝になりました。

写真からは分かりにくいかと思いますが、この旅館のスゴいトコは隅々まで綺麗に掃き清められてるとこだと思います。
ただ、ちょっと張り紙が多過ぎるのは如何なモノか?と。
・・・・・・ね!?

ワードアートを覚えた人がやりがちなパターンですね(笑)。
ともあれ、旅館の良し悪しって建物の豪華さとかデカさではないことが分かります。
こぉいったのも一見ゴチャッとしてるようでとてもキッチリしてます。
小笠原長行って誰だか良く分からないんですが、幕末の江戸幕府老中だった人みたいっすね。
こっちは藤田東湖の歌碑を伝える説明版。

水戸藩に近かった関係で、徳川関係者との繋がりが強かったようです。
あ!斜めってしまった!

藤田東湖は水戸藩の碩学で尊皇派に大きな影響を与えたらしいですが、何と安政の大地震で家の下敷きになって死んぢゃった、っちゅう悲運の人でもありました。
曇り日の朝の空気感って良いですね。
旅館の周りを散歩してみます。
上から見た旅館、

これでも全体のごく一部。
さらに上に上がると他の旅館が固まっています。

青い屋根が昔、日帰りで立ち寄った山形屋旅館。
こういった空気を濾し取るような雰囲気はやっぱ単焦点ならでは。
何気ない木の緑さえもとても繊細。
集落を見下ろすように八幡宮がありました。
ちょっと上がってみることにします。
別に何があるワケでもないってコトは分かってんですけどね。
小さな舞台があって・・・・・・
小さいワリに異様にコテコテしくて屋根の重い本殿。

ここは良いロケーションだったんですが、ヨメはまだ布団の中(笑)。
まぁ、普段はネコに朝早くから起こされてるんで、旅行の時くらいはユックリ寝かさんとあきません。
古い効能書きの看板は今は玄関近くに飾られてます。

そう!この温泉、東日本大震災以降、泉温が2〜3℃上がったとのことです。どんなけ以前はぬる湯やってん!?
朝食の時間になりました。

左上から時計回りにヨーグルト、アジ開き、イチゴ、牛蒡と人参のサラダ、漬物、納豆、佃煮、梅クラゲ、真ん中はソーセージと生野菜。
別添でポテトサラダに・・・・・・
生玉子と海苔・・・・・・
あとは味噌汁と、夕食に較べて量的にはフツー。

昨夜があまりに凄まじかったんで、ぶっちゃけこれくらいでホッとしました。
二人ともヨユーで完食。
「湯岐の宿」---作詞・作曲:池進一、編曲:筧哲郎、唄:深谷恵子・・・・・・う〜む全員知りません。MIDIに起こしてみようかな?(笑)
さて、そろそろ出発です。

和泉屋旅館、ホント定宿にしたいと思わせる素晴らしい旅館です。

しかし女将さんの話によると、フクイチからは遠く離れてるにも拘わらず、風評被害の影響はかなり大きいとのコトでした。
20kmほど茨城側に南下して山に分け入り・・・・・・
急な石段を登って到着したのは・・・・・・
一部でひじょうに有名な廃墟物件である「本覚寺」跡。
実名よりも「詐欺寺」の通称の方が知られています。

これは3階建の社務所。
その由来等も含めて、少々細かくご紹介して行きたいと思います。

まずこのビジネスを始めたのは西川義俊っちゅう元はコンドームの訪問販売をやってた男。
そして次に始めた怪しげな水子供養の仏像販売で稼いだ金を元手にこの寺が出来たのは、昭和が平成に変わる少し前、1987年のことでした。

ヤリ口は割りと単純で、シッカリ仕込みまくった「霊視」でもって金を巻き上げるっちゅう手法です。まぁ最も効率的な訪問販売と申せましょう。
それにしてもいつも不思議に思うのは、そんなに大金を巻き上げられるような脛にキズ持つ人が日本中にワンサカいること。
とまれこうして巻き上げた御布施でもって、何も無かった太子の町の山奥の寺は増築に次ぐ増築を重ねました。

ここは社務所の2階の大広間。一面に広がるのは裁判関係の書類。
これが全部裁判関係書類なんだから恐れ入ります。

まぁ、商売としてはひじょうに利益率の高い阿漕なコトをしてたんですが、天網恢々痒みにムヒ、悪いコトはいつまでも続きません。
数年もしないうちに関東各地で集団訴訟を起こされるに至り、この寺はアッサリ放棄され、一味は雲隠れしました。1993年頃のことと言われます。
悪人どものダシがたっぷり染みてるのか、床からは怪しいキノコが生えています。
それからおよそ20年、かつては阿含宗もビックリの星祭りなんかもやって団体客がひきも切らなかった寺は、このようにスッカリ荒れ果ててしまってます。
訴状の一部。
こんなのが山積み・・・・・・もちろん初めから騙す気でやってんだから、真面目に読む気なんてサラサラなかったと思いますが(笑)。
スタッフの居室だったと思われる3階に上がりました。
荒らされてはいるものの、意外に破壊や落書きは少なかったりします。
さて、この話がピカレスクとして面白いのは、西川の一味は関東で足が付いたもんで、捲土重来今度は名古屋に本拠地を移して、新規巻き直しで同じような商売を始めたこと。それが有名な明覚寺です。

・・・・・・まぁ、根っからの悪党共ですな。
そうそう、2階から3階にかけてはこのように大量のセクシー系のブラやショーツがあっちこっちに吊るされてありました。
悪戯にしてはあまりに念入りで偏執狂的な感じがします。「森杏菜」っちゅうのも良く分からない。

まぁ、大金を毟り取られて気の触れた人がやったのかも知れませんな。
そんな生臭い歴史はどこ吹く風と、境内には山桜が咲き乱れていました。

本拠地を名古屋に移した彼等は上述の通り、「本」から「明」と名前も一文字変え、宗派も曹洞宗から真言宗に鞍替えして再び同じような商売を始めました。
本堂に上がってみることにします。下は巨大な物置になっていました。

ところがビジネススタイルは全く以前のまま、懲りずに根も葉もない霊視とやらで因縁話をデッチ上げるっちゅうのだからいささか芸が無いっちゅうか底が浅かった。
本堂内部。中は何も残っていません。

アッと言う間に再び集団訴訟。さすがに今度は後が無いと思ったのか、西川一味もふてぶてしく開き直って最高裁まで争いましたが、1999年に敗訴確定、宗教法人には解散命令が下りました。
本堂の裏手にやって来ました。

この左横に夢殿みたいな形の有名な御堂があります。
その内部。壁面を埋め尽くす圧巻の位牌とその雪崩。

床が腐りかけてたところに東日本大震災の揺れがこのような景観を作ったと思われます。
ぜぇ〜んぶ、位牌。
こっちもずうぇ〜んぶ!位牌!位牌!位牌!

マウンテン・オブ・位牌!(笑)。
永代供養なんて甘言に釣られて、一つ数十万円単位のお金を遣った人がこんなにもよぉさんいるワケです。
ガラにもなく宗教とは何ぞや?とっちゅうコトを考えずにはおれませんでした。

もちろん西川義俊って男は明らかに詐欺師です。セールストーク主体の騙しマニュアルまで作って、末寺と称する営業所を全国に展開して販売成績を競わせてたのだから逃れようがありません。
しかし、やったことの本質に今も一般的な神社や寺がやってることとどれだけの懸隔があったのか?と。

その料金が法外か法外でないかの境目はどこなんだろう?と。
あるいは、法外な金を払うことで贖罪と救済を実感するしかない度し難い愚民は本当に純粋に被害者なのか?と。
誰かが悪趣味な演出を加えてますね。

下着ぶら提げた基地外と同一犯かな?(笑)。
ともあれ、法外なお布施を募りつつ、こうしてかなりの投資をして伽藍整備に資金を注ぎ込んでたのはそれはそれで事実です。

オウムのサティアンよりはよほどちゃんと「お寺」してます。
それにしてもこのほぼ全ての部屋に積み上げられた色んな什器の山は圧倒的。

見た目のハッタリは大事な演出、設備投資には金を惜しまなかったようですね。
組織としてかなり多数の人をスタッフとして雇い入れてたのは間違いありません。

本覚寺〜明覚寺の残党はその後のマルチや怪しげな健康食品、新興宗教等のコアスタッフとして散ったと言われます。
元はそれぞれに名前があったんでしょうが、今となってはどれも単なる御堂。

間取りからして社員寮だった感じ。
妙にリアルなプリンタとスキャナ。
これまたメチャクチャに物が詰め込まれた部屋。
「参画型中長期経営計画」「驚異の3分間成功術」「実践新商品開発コンセプトチャート集」・・・・・・

やってた内容が詐欺だったっちゅうだけで、ビジネスとしてはかなりマジメに取り組んでた模様(笑)。
これまたリアルなタイムレコーダー。

勤勉な労働の第一歩はまず遅刻しないことから!(笑)。
ここはそれなりの幹部の部屋でしょうか。

ちょっと内装が豪華。
幼児も暮らしていたようですね。
嬉々として写真撮りまくる私にいささか呆れ顔のヨメ(笑)。
どれがどれやら分からなくなってきましたが、ここもかなり圧巻でした。
詰まれてるのは小さな厨子を中心としたキットの入った段ボール。

中身はほぼすべて新品のまま。
どうやら念持仏を収めるもののようで、本体は別売になってたようです。幾つか転がってました。

おそらく干支別にオススメ仏が決まってたのではないか?と。
そしてここにも詰め込まれた膨大なガラクタ類。
こうして見ると悪党どもの饗宴の跡は、意外にアソビの要素の少ない、極めてドライでビジネスライクなものでした。

これだけの施設をアッサリ放棄して、一旦地下に潜ったっちゅう判断力も経営としてはナカナカかも知れません。
恐らくは蓮の花でも植えてたであろう池もご覧のとおり。
ちゃんとNHKの受信料は払ってたようです(笑)。

あとSECOMもシッカリと・・・・・・悪人だけに悪事に対しては敏感だったのでしょう。
・・・・・・あれ!?真言宗を名乗ってますな。何でも良かったんでしょうけど(笑)。

ともあれ統一教会による霊感壺、法の華三法行の足裏診断(福永法源は相変わらず意気軒昂のようです)・・・・・・このテの宗教を隠れ蓑にした荒稼ぎは後を絶ちません。

否、組織化され教団となった宗教そのものが本質的に詐欺集団だと私は考えています。
おそらく、ムダ金を使うことと贖罪あるいは救済の希求が峻別できない無知蒙昧な衆生が世の中に溢れる限り、絶対にこういった悪徳ビジネスは無くならないでしょう。
あ!そうだ。

どうもここでは二人とも気分が乗らなくて、あんな写真やこんな写真は撮りませんでした。

珍しく硬いトーンのキャプションばかりになりご退屈さまでした。さらに廃墟探訪は続きます。
----Asylum in Silence----秘湯 露天 混浴から野宿 キャンプ プログレ パンク オルタナ ノイズまで
Copyright(C) REWSPROV All Rights Reserved