「シズカナカクレガ」ヘヤフコソ
2012 道東(二日目前半)

朝になりました。

そうそう、この旅館。尾岱沼や野付半島のネイチャーフォトの愛好家の拠点となっているようで、館内には多数の凄い写真が展示されてます。
それらを横目に見ながら、食堂へ。
幕の内弁当を思わせる朝食。

右下から時計回りで、サンマ塩焼き、ひじき煮物、ウィンナー付サラダ、キャベツのお浸し、昆布巻・玉子焼・蒲鉾・たらこ・梅干。
あとは味噌汁とご飯。

ちなみに宿泊客は私たち以外は1組だけでした。
余裕で完食、すぐに出発。

今日もまた走行距離がムチャクチャに長いのです。
ダーッと南下して、どうしても行きたかった奥行臼に到着。
まずは現存する最古の駅逓所と言われる奥行臼駅逓。
駅逓とは北海道独自の交通と通信の拠点みたいなもので、最盛期には200ヶ所くらいあったようです。

現存するのは10数ヶ所しかありません。
広い敷地内には馬小屋等が散在してます。
続いてすぐ近くにある標津線・奥行臼駅跡。
標津線はかつては急行も走るくらいの路線だったのですが、1989年にあえなく廃止されてます。
霧の中からヌーッと列車が来てもおかしくないくらいに保存状態の良い駅構内。
通り抜けできる貨物線がいかにも1930年代に建設された路線らしい。
一段低くなった駅本屋。

僅かに残るベンチの空色が陰鬱な霧の中、印象的。
あ、ここにはタブレット室の張り出しがないですね。
未だに生活感の感じられる駅正面側。

別海村営軌道・風連線はこの駅前から出ていました。
実際のところ運転されていた期間は短く、完成から廃止まで僅か8年という呆気なさでした。
元々は厚床駅から出ていた馬車鉄道を、不思議なことに出発点側を廃止して奥地に向かって延伸してできたものです。
何となく困ったような、半ベソをかいたような面構えの自走客車。

ジーゼルカーのことをなぜか簡易軌道では自走客車と呼んでいました。
うわ!ひどく傾いてしまってます。
古めかしいエンジン。
さらに古めかしい台車。

これって、戦前のタイプぢゃないのかな?
ちなみに簡易軌道とは北海道にだけ存在した鉄道で、通常の鉄道扱いになっていない地元民のためだけのものでした。
線路の幅は762mm、ナローゲージっちゅうヤツですね。
錆も相当あちこちに回ってきており、このままここで朽ちて行くのかも知れません。

しかしその前にひっくり返るかも!?
カトーの産業用DLとミルク貨車。

本線は画面左奥に向かって伸びていたそうです。
反対側からも一枚。
こちらも随所で錆が流れ出して保存状態悪し。
モデル心をくすぐりますね。

このタイプは鉱山鉄道や森林鉄道での定番モデル。
驚くほど狭い運転室内部。

デブだと入れません。
右奥に見えるのがかつての駅舎。

鉄道自体出来たのが昭和30年代なので近代的な作りです。
ターンテーブルの跡。

湯口徹「簡易軌道見聞録」によれば、積雪地帯でターンテーブルを作るなどという、現場を知らないお役人仕事が簡易鉄道では結構あったようです。

まぁ、土地はいくらでもあるんだからデルタ線の方が合理的ですよね。
車庫の跡。

この左側に昔は牛乳積み降ろし場もあった模様。

どれだけ陳情して金せびったのかは分かりませんが、10年足らずで放棄するなんて言語道断。作ったんならチャンと元が取れるまで使え、って思います。
さらに南下して厚床到着。
改築されて立派な駅本屋・・・・・・しかし無人駅。
そして空っぽの駅前。

かつてここが分岐駅だったとは思えない猛烈な寂れよう。
明るく楽しい調子の看板が完全にスベッてます。
だだっ広いだけの構内。

ここが昔、駅弁も売られるほどに賑わう駅だったと、誰が想像できるでしょう。
奥の方に黄色い保線車が見えるので、、側線はまだ何本か残っているようです。
さらに南下し、太平洋岸を目指します。
海が近付くと霧が深くなってきます。

まずは霧多布岬を目指します。
道すがら見掛ける集落はどこも昆布干しの真っ最中。

だからどの家もやたらと広い砂利敷きの庭があります。
あとは点在する寂しい湖沼。
それと廃屋。
一味も二味も欠けたような荒涼とした風景が続きます。
ただもう原野には小さな花が咲いてるだけ。
可憐というよりは侘しげに見えますね。
ちなみにこの地域の酪農家の戸数は往年の1/10、言うまでもなく漁師も年々減り続けています。

ただ、酪農家も漁師も、一戸あたりの経営規模は大きくなってるそうですが。
「今日は休み返上ですか?」と訊いたら「7月から一日も休んでないよ!」とのことでした。
その甲斐あってか、この地域の昆布生産量は日本一。

ブランド性では利尻や羅臼に負けてますが、いろんな出汁の原料に使われたりで引き合いは多いようです。
霧多布に到着。

岬に向かってく途中で馬発見。
足が太いトコからすると農耕馬のようですね。
その名の通り霧で真っ白に霞む突端を目指します。
もうちょっと観光客がいるかと思いましたが、誰もいません。
ここでようやく気付きました・・・・・・
・・・・・・原生花園って、単に雑草が生えてるだけのことなんだと(笑)。
ミもフタもなかったですね。
霧の湧き上がる海をバックに。
本当に寂しい景色です。

晴れてれば海に向かって落ち込む崖が勇壮な景観なんでしょうが。
さらに先まで歩いて行けるのですが、行ってもどうせ眺望が効かないのでパス。
荒れ地の中にひどく殺風景な展望台。
登ってみましたが、当然何も見えません。
それでも土産物屋が一軒営業していました。
続いて到着したのはあやめが原。

いや、ここまでもいろいろポイントはあったんですが、あまりに地味なトコだらけでパス。
ま、ここも地味そうなんですけどね。
霧に覆われた森が広がっています。

聖飢魔Uの歌を思い出しました(笑)。
放牧されてる馬が逃げ出さないように、厳重な木戸が設けられてあります。
トドワラより幻想的やんか!
途中何ヶ所か同じような馬脱走防止の柵を越えて行きます。
霧多布同様、眺望は期待できそうにもありません。
お!何かあるんか!?
え!?あれ!?

ショボい!ショボ過ぎるぞ!
さらに進むと、先ほどと同じような殺風景な展望台。もう突端かと思ったら、まだ先のようです。

しっかし、何のために拵えたんでしょう?
霧の寂しい原野を行くと・・・・・・
・・・・・・また、馬がいました。
嘶く馬。
草を食んでいます。ウマウマウマ〜。
これはトリカブト系のヤバいものではないでしょうか?
これも。
ここもまた、海は湧き上がる霧で霞んでいました。

人を拒む、寂しい寂しい海です。
霧の立ちこめる陰鬱な原野に何があるワケでもないのですが、とても印象的な風景ではあります。
寂寥感だけの風景です。
そぉいやサイトのトップページにも霧の中の木々を入れてたなぁ。
そんな樹林をバックに。
ここまで来たらやはりお昼は厚岸の牡蠣を外すワケにはいかんでしょう。

・・・・・・ってなワケで後半は厚岸からです。
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