「シズカナカクレガ」ヘヤフコソ
 2011 空知U・・・・・・札沼線
 
午後は滝川の石狩川を挟んだ対岸の新十津川から札沼線に沿って札幌に戻ることにします。

積木の家みたいな終点、新十津川。
もっと荒廃しきったのを想像していたら、意外にも小ざっぱりと整備されていました。
元は単なる中間駅だったのが、石狩沼田までの区間が廃止されたために終点となったものです。
出入り口付近に雪よけの三角屋根のついてるのがかわいい。
線路はちょっと行ったところで途切れています。

元は機回り線や側線を有する駅だったことが空地の広さから伺えますね。
コスモスはあまりに儚げで、自分の家には植えたくないかも。
駅前では何かのイベントが行われており、大声で民謡を歌っていました。
申し訳程度にお土産なんかも並べられています。

札沼線の歴史を書いたコピー綴じのパンフをオッチャンがくれました。
・・・・・・で、最初の駅、「中徳富」なんですが、廃駅となって今はもう影も形もありません。

しっかし、廃駅ってどんなんやねん!?
続いては「下徳富」。

ここも草地から、かつては留置線があったことが伺われます。
背後に見えるのは防風・防雪林ですね。
駅本屋はかなりの大きさがあります。手前の空き地はおそらく貨物側線の跡でしょう。
事務室部分も何もすべて撤去されてガランとした室内。
駅前広場より望む。

左に見えるのはかなり古風な丸形のホームタンク。
駅前には農業倉庫が今も何棟か残っています。

この辺りの列車ダイヤは一日僅か3本。

一体全体、誰が乗るんでしょう?
誰が植えたのか、朝顔が枯れていました。
ホームの階段かもボロボロに崩れています。

警戒色も今は意味がありません。
豊かな穀倉地帯を控え、かつては貨車の列が並んでた時代もあったんでしょう。
今はただもう荒廃しきった風景です。
続いては北海道特有の乗降場の雰囲気を色濃く残す「南下徳富」。
板張りの粗末なホームから少し離れたところに、箱みたいな待合室が一つ。

駅名表もありません。
粗末なベニヤ張りの内部。

ただ、地元の人が掃除するのか清潔に保たれています。
年に何人利用者いるんでしょうね?
徳富のつく駅名が多いのですが、これは開業時に村の間でいろんな争いがあったせいだそうです。

いっそ「コロンビアトップ」とでも付ければ良かったのに。
ホーム上より新十津川方向を望む。

呆れるほど線路は真っ直ぐで変化に乏しい風景が続いています。
駅の全景。

興味のある方は模型化の参考にでもしてください。
これも乗降場の雰囲気を強く残す「於札内」。

前の道路は狭い未舗装路で、周囲には何もありません。
いい感じに錆びてますね。
ここも地元の方々の手で綺麗に掃除されています。

寄書ノートなんかも置かれてあったりします。
ほとんど区別のつかない駅ばかりで申し訳ありません。

「鶴沼」もまた、乗降場の雰囲気溢れる小駅です。
しっかし、学園都市線、って看板を立てるのに要した費用は絶対回収できないでしょう(笑)。
待合室がホームから離れてるのは乗降場の特徴の一つかもしれません。
コンクリートの塊は鉄道の施設ではなく、用水路。
待合室内部。

これだけ綺麗だと駅寝も苦にならないでしょう。
ようやくマトモに駅らしい駅である、「浦臼」に到着。

今はワインの産地として有名な町です。
 ここは駅舎にテナントで歯医者が入っています。

また、ここから先は列車本数も若干増えます。
これを撮ったからどうなるワケでもないんですけどね・・・・・・。
しかし、線路そのものはポーンと真っ直ぐに1本通ってるだけだったりする。
しかし、空地から想像するに、かつては多数の側線を有していたことが分かります。
超広角の効果を差っ引いても駅前は閑散としてます。
国道に至るメインストリートだってこんな感じ。
札幌軟石で作られた古風な農業倉庫。
・・・・・・ってなこと言ってた時代が一番のどかで豊かだったのかも知れません。
青い屋根が印象的な「札的(さってき)」。

ここも乗降場っぽい造りです。
モルタル造りのこの待合室はこれまでに比べると随分大型。
「札の的」なんだから縁起担ぎの記念切符でも売ればいいのに。
腰板の淡い緑に昭和30年代くらいのレトロな雰囲気が漂います。
軋む木の引き戸も最近ではスッカリ見かけなくなりました。
・・・・・・と、微かにレールが鳴り始めたと思ったら、たった1両の列車が近付いてきました。
当然のように乗降客はゼロ。
僅か数秒の停車ののち、単行のキハ40は去って行きました。
おそらく開業当初からと思われる大きな木の植わった「晩生内(おそきない)」。
駅前広場は無意味なまでに広い。
ここもかつてはかなりの規模であったことが伺われます。

手前に見えるのはロード乗りが停めたANCHORですが、肝心の持ち主が見当たりません。
こりゃ読めんわ〜。
きわめて古風な机とベンチ。
駅前というのもおこがましいほどにガランとしています。
ホント、だんだん区別がつかなくなってきましたが、「札比内(さっぴない)」。
ここは委託駅で、かなり内部の設備がちゃんと残っています。
・・・・・・そもそも乗る人がいるのかどうかが問題ですけど(笑)。
こうして見て行くと、札沼線の駅らしい駅はどれも、規格品的な統一性を以て造られていることが分かります。
すなわち、本線が3本に分かれ、再び1本にまとまり、貨物側線・本線・機回し線となっており、ホームは一見島式ホームに見える片面という構造です。

駅本屋の隣にはもちろん、かつては貨物上屋があったと思われます。
これは昭和初期、少しづつ延伸を繰り返した地方の閑散路線でよく見られるスタイルと言えます。
当時はそれなりに合理的な線路配置だったんでしょうけど、今は何の意味もありません。
ここの階段はまだ現役っぽいですね。
以前から興味のあった、駅の非常電話の中を見てみました。
平野部を走る札沼線としては異例の、山峡の雰囲気漂う「豊ヶ岡」。
どうしてこんなところに駅を作る必要があったのか、全く理解に苦しむロケーションです。
ここもまた乗降場の雰囲気がありますね。
ホームと待合室はずいぶん離れています。
粗末な内部は他の小駅と同じ。

ただ、最近の秘境駅ブームで人気があるのか、けっこう来る人は多い模様。
木の引き戸が昔の民家っぽいです。
駅前(?)は車1台がやっと通れるほどの砂利道。

なんかNゲージでこんなセクション作ってみたい。
閑散区間の中では最大の駅、「石狩月形」に到着。
ここはマトモに側線が残っています。

手前右側は貨物ホームの跡でしょう。
ホームも狭いながら、対向が出来るようになっています。

昔はもっとたくさんの留置線、あるいは駐掃く所があったらしく、空き地が広がっています。
実にノッペリとした構内全景。
古風な煉瓦造りの農業倉庫。

前の草地も遥か昔は引込線があったのかも知れません。
ぶっちゃけ、小樽のレンガ倉庫よりリアルでした。
ここは一応有人駅で、改札業務なんかもやってる模様です。
寒さ対策のためか、閉塞室のでっぱりが大きく作られ、物置になっていました。
ここは待合室にけっこう列車を待つ人がいました。

ちゃんとマトモに駅してます。
駅前通りもここまでの駅からするとずいぶん駅前らしい。
しかし、次はまたこれ、こんなん。
何となく交番を思わせる待合室の「知来乙(ちらいおつ)」。
明るくグラッシーな室内の様子。
列車本数は、ローカル線としてはまずまずある方でしょう。
ひたすら単調な景色が続きます。
何だか「2ちゃん」っぽいなぁ〜(笑)。
続いては地元用のフリースペースと一体化した、ログハウス風の造りが特徴の「月ヶ岡」。
野菜の出店が店じまいをしているところです。

何だか乗せられていろいろ買ってしまいました。
駅は元からこんな何もない配線だった模様。
岡はどこにあるねん!?
買ったもの。

キュウリ・ズッキーニ、トウモロコシに、お釣りがないってんで崩すために仕方なく自販機で買ったCCレモン。
室内の様子。

収穫時期はもっとたくさん並ぶのかも知れません。
続いては車掌車改造のナサケない姿を晒す「中小屋」。
何かもうボロボロで気が滅入ります。
たしかこのスタイルって、昭和59年の貨物列車大撤退あたりで大量の余剰が出たことから始まったんぢゃなかったっけ?
ちょっと「棄景」風に撮ってみました。
少し離れて大きな農業倉庫。
駅前には広大な更地。

昔は駅前商店なんかあったのかも知れません。
さらに「本中小屋」。

さっきの中小屋と区別つきませんね。
この駅で降りて、本当に観光目的でこの観光看板見る人って、絶対にゼロだと思います。
荒れて剥がれた塗装に、この応急処置的な駅舎自身ももう長くないことが伺われます。
正直、余りに変化のない景色に少々飽きてきてるのですが、この変化のなさこそが札沼線らしさだと自分に言い聞かせながら撮ってます。
上二つはまぁ分かる。

しかし、下二つはなんどいや!?と言いたい。消された真ん中も気になるし。
数字からすると、農業倉庫は一面に建ち並んでいたものと思われます。
どうもやはりこのタイプの駅って好きになれないです。
どうせ利用客なんていないんだしさぁ〜、ってヤル気のなさがありありで。
「鉄道の世紀」なんてモンがとっくに終わってしまってることを痛感します。
さっきと区別が付かん一枚。
元の駅本屋の大きさが良く分かりますね。
続いて「石狩金沢」。駅前のガソリンスタンドも見事に廃業済み。

でっかい蜘蛛が巣を張ってます。
国道から駅に入る道はこの通り、悲惨の一言に尽きます。

遠くにまた車掌車が見えてます。
駅の全景。
ここもかつてはそれなりの規模の駅だったのでしょう。
遺跡の発掘現場のように残る建物の基礎が何とも侘しい。
六角形断面のホームタンクはわりと珍しいかも。

空色に塗るのが国鉄流なのかどうかは分かりません。
しかし、駅寝するにはこのタイプ、密閉性が高いのでそこそこ向いてる気がします。
次はいよいよ閑散区間の終わり、「北海道医療大学」です。
大学ができたおかげで急発展を遂げた駅に到着。
朝夕に学生が利用するだけなので、ガランとして殺風景な室内の様子。
ここから先はこれまでとは打って変わった、近郊区間でラッシュもある路線となります。
ホームも延伸だけでは足りなくなって、増設されてたりする。
ホームからいきなり大学に入って行けるのは海芝浦に似てますね。
ラーメン屋の食券販売機のような切符の自動販売機。

大半が定期客なので正規の物を置く必要がなかったのでしょう。
大学ができて急発展した路線ってことでは片町線にも似てます。
そんなところにまたもや単行のディーゼル。
休日の今日は乗り降りする者もなくすぐに去って行きました。

間もなく札幌(正しくは桑園)からここまでの区間は交流電化の予定です。
札沼線、いささかイラッとするほど景色の変化に乏しいローカル線でしたが、それこそがしかし、本来のローカル線の姿のようにも思えました。
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