「シズカナカクレガ」ヘヤフコソ
2011 房総U

大昔の団地のそれを思わせる、暗く陰気で湿っぽい階段から今回の旅は始まります。
やって来たのは外房は御宿の町はずれ、崖っぷちにある「堂の上薬師堂」。

以前から一度訪問してみたかったところです。
梅雨の合間を縫ってやって来ましたが、何とも陰々滅々とした天気です。

まぁ、ここ、心霊スポットとも言われてるんで、こんな天気の方がシチュエーション的には似つかわしいかも知れません。
お堂は中腹にありますが、階段は海岸まで続いていて、かなりの高さがあることが分かります。
そしてこれがお堂の内部。

正面の仏像は後から付け加えられたもので、摩耗してほとんど分からないものの奥の崖に6体ほどが浮き彫りになっています。

そしてここで突如、カメラが作動しなくなったのは駄文の方に書いた通り。
・・・・・・怖かったぁ〜!!

恐れをなして早々に退散し、次にやって来たのは御宿の町中にある最明寺。
最近この手の石像を良く見るんですが、流行してるんでしょうか?
小さなお寺なものの、創建はひじょうに古く、歴史と由緒のあるトコです。
柱の木彫りは有名な「波の伊八」の手によるもの。
本堂裏にあるのが「大日窟」という名前の人工洞窟。

やはりここも房総ゴリゴリ系なのですね。
センサーが付いてて勝手に灯りが点るのがちょっと怖かったりして・・・・・・。
この変わったポーズは何でしょう?表情からすると弁財天かな?
一番奥には無数の幟に囲まれた大日如来が鎮座していました。
昔はこちらにも入口があったのか、大きく外に開かれています。
紫陽花の咲き乱れる急な石段を裏山に登って行きます。

小雨が降って来ました。
雨に濡れる紫陽花ってとても好きなものの一つです。
森の中を通る所はまるで夜みたい。
中腹のお堂。

平日ってコトもあって人っ子一人いません。
そう、ここは武井武雄と並んで私淑する童画作家・谷内六郎ゆかりの場所なのです。

週刊新潮創刊号の表紙の絵はここから見た風景が元になっていると言われています。
急に天気が晴れて来ました。
山の上には鳥の巣箱が一杯。

特に派手に宣伝もせず、こういったことを地道に整備する寺の姿勢には好感が持てます。
ねむの木の繁る木道を行くと・・・・・・
ウッドデッキの展望台になっていました。

御宿の海が眼下に一望できます。
実は道は途中で分かれてて、標高としてはこっちの方が上。

小さな社は地元の人が建てた三峰神社だそう。こんな遠方まで三峰講は広まってたんですね。
「夕影の松」は残念ながら跡形もありませんでした。
下って行くことにします。

途中にはこのように何ヶ所もベンチが置かれています。
蚊がワンワン飛び交ってるのにはいささか閉口しましたが・・・・・・(笑)。
暗い森の中、この紫陽花だけにスポットライトのように光が当たっていました。
夫婦銀杏をバックに。

まだほとんど知られていないこの最明寺の裏山、個人的には大変オススメです。
週刊新潮創刊号の表紙絵、およびそこに添えられた詩の元となったと言われるスケッチのレプリカの前で。

---上總の町は貨車の列、火の見のさに海がある
御宿の海岸にまでやって来ました。

いつしか重かった雲も晴れました。
その裏山にあるのが・・・・・・
・・・・・・メキシコ記念公園。

何だかよく分かりませんが、江戸時代に沖合で遭難した船を助けたのが縁で云々かんぬん。
巨大なオベリスクが広場に立つだけの静かな場所です。
あ、それと忘れちゃいかんのがこれ。

青カンしてるのではなく(笑)、遭難者を海女が素肌で温めたっちゅう伝承を元に拵えられたブロンズ像。
素晴らしい眺望が広がる割に誰も来ない隠れスポットと申せましょう。
晴れたのはいいが恐ろしく風が強い。
夏の真上からの太陽光は強過ぎて、顔が全く影になっちゃいますね。
公園脇から小径がさらに続いているので行ってみることにします。
下る途中からさらに脇道があって、
上がると昔の神社の跡のような別の展望台に出ました。
こちらの方が少し低いですが、街並みと砂浜を見るにはいいかも知れません。

意外なまでに楽しめたメキシコ記念公園でした。
そのまま細い道をチョロチョロ走って辿り着いたのは、侘しい海辺の漁村の雰囲気溢れる岩船の町。
その海際に悄然と経つのが岩船地蔵尊。
豊漁と海での安全を祈念して、真っ赤に錆びた古い碇が奉納されています。
そうそう、今回からピクチャーナントカってのを「ビビッド」をさらにカスタマイズしたものにしてみたんですよ。

海や空なんかもう、パッキパキの発色になってます。
赤の発色も埋もれることなく鮮明に出てますね〜。
温泉でのノー天気な画像を見なれた方には申し訳ありませんが、今回はこんな感じのシブいのばっかです。
ちなみにここ、日本三大岩船地蔵尊の一つだそうで・・・・・・そんなんにまで三大ナントカってあるいんかいっ!?(笑)。
海側はちょっとした展望遊歩道になってます。

それにしても風強ぇ〜!
ちなみにこの港の北方、断崖絶壁の続く釣師海岸は、とある特殊な世界では超有名スポットだったりします。

・・・・・・あたしゃ行く気しませんが。
そのままさらに北上して夷隅の大原漁港に到着。
いかにも漁村らしい、奥に続く細い路地。

つげ義春の傑作の一つ、暗いリリシズム溢れる「海辺の叙景」はここが舞台と言われています。
それで八幡岬の上まで行きたかったのですが、迷ってしまって断念。

---あの岬の下は蛸の巣でね、
   無数の蛸に襲われたらたちまち骨にされてしまうんだ
ともあれ、ラストの見開きで雨降る海の中を泳ぐシーンはマンガ史に残る名場面でしょう。

---あなたすてきよ
   いい感じよ
お腹がすいたので国道沿いの海のものが食えそうな店に。
奥の座敷からはすっかり出来上がってカラオケを歌いまくってるのが聞こえてきます。

こんな時間に呑んでるとは漁師さんでしょうか。
ワタシは日替わりの手こね寿司、ヨメは海老穴子天丼。
けっこういいお値段しますね〜。
朝から動きまくりで少々眠くなってきました。
丼も味噌汁もデカッ!!

奥の小鉢は鰯の味噌煮でした。
天丼もデカッ!!
国道沿いだし、多少見くびってたらあにはからんや!!かなり苦労して完食!

いやいや、お値段に見合うだけの味とボリュームでした〜。
さらに北上して太東岬灯台にやって来ました。
こんなトコでも存続を求めて手作り感一杯で宣伝するいすみ鉄道。

涙ぐましい努力です。
画質調整して正解でしたね。

ここはなんかヘンなオヤヂがウロウロしてたので早々に退散。
さらに北上してやって来たのが成東駅近くのココ、浪切不動。
チョード派手な山門で新興宗教かと思いました(笑)。
・・・・・・ナカナカにフレンドリーですね。

ビミョーに痛いですけど(笑)。
実はここにも懸崖造りがあるのですよ。
今は海は見えないくらいに遙か彼方になっていますが、ここは古代の海岸段丘と言われています。
その証拠にこのような海の浸食をうけた岩があっちこっちに転がってます。
「ぼけにかつ!」とか恋愛成就のハート石とか、地道に経営努力してますね〜。
懸崖造りの本堂の由来書。
ようやく足許までやって来ました。真っ赤に塗ってあるんで真新しいものに思えますが、実はけっこう古いらしい。

何はともあれ、人目を避けるようにいちゃついてた高校生カップルには悪いことしちゃったなぁ〜・・・・・・(笑)。
再び天気が曇って来てあまりスッキリと景色は見渡せません。

ちなみに背後の丘は「石塚の森」と言う自然林で、残念なことに87年の房総沖地震で半分くらい崩落してしまったそうです。
いや〜、懸崖造りはやっぱいいなぁ〜!
だいぶ日も傾いてまいりました。
東京方向に戻る途中、ナビを見てたら何とICのすぐ近くに、「あの」雄蛇ヶ池があるぢゃあ〜りませんか!
朝のイッパツ目が心霊スポットだったので、房総最強の心霊スポットとも言われる場所をそのまま通過するのもどうかと思って立ち寄ってみましたならば・・・・・・
単なる平凡な灌漑池でした・・・・・・何が房総の十和田湖ぢゃい!

みなさん、フツーに釣り糸垂れたり、犬の散歩なんかしてます。
あとは一路、東京に戻りました。

出だしのシリアスさに比べると、いささか最後がトホホだったものの、温泉無しでもかなり楽しめる房総のマイナースポット巡りでした。
----Asylum in Silence----秘湯 露天 混浴から野宿 キャンプ プログレ パンク オルタナ ノイズまで
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