「シズカナカクレガ」ヘヤフコソ
2010 栃木(初日午後)

加仁湯を後に、さらに奥に向かいます。
ここまで来ると谷も狭くなり岩だらけ。

ただ、輸送のためのクルマが入るので道は広くて歩きやすい。
メインルートをはともかく支流の谷はひじょうに険しいことが分かります。
そして、佇まいも含めて日本有数の秘湯と言える日光沢温泉に着きました。

八丁湯や加仁湯が建物を新しくし、マイクロバスによる送迎を行い、要は俗化してしまった中、ここは頑なまでに昔ながらの「山の宿」に拘り続けています。
御用のある人は鐘を1回鳴らして下さい、と。

両脇に詰まれた薪がこれから到来する季節を感じさせます。
ここの名物犬「チャング」。子供も何匹かいるお母さん犬。

しっかし温泉の犬ってどうしてこうも大人しく、人懐こいのでしょう。
案内されたのは山小屋そのものの簡素な部屋。

ちなみに板壁の隙間からは隣の部屋が見えあまつさえ押入は2つの部屋で共用してて、双方の襖を開けると部屋は筒抜け(笑)。

・・・・・・ま、それが山小屋っちゅうモンですな。
「故・白石宙和先生の書」と但し書き付き。

後から調べてみると栃木ではかなり有名な書家だった方のようです。
おお!こんな所にナショナルの二又ソケットが!
窓からの眺め。

いかにも質素な温泉宿らしくて、この鉛丹葺の屋根は大好き。
下に見えるのは正面玄関。

建物は自分たちの泊まるところが一番古く、そこからL字型に増築されているようです。
風呂に行く前にしばらくは館内をウロウロしてみることに。

これはひじょうに古い温泉分析表。
中庭から台所方向を望む。

緑のネットがかかっているのは晩のおかずになる魚の生簀。
何だか昔の小学校を思わせるトイレ。
浴室は階段を下った谷川沿いにあります。

ここの凄い所は、隅々までピカピカに磨き上げられてることでしょう。スリッパ無しでもまったく靴下が汚れたりしないのには感心しました。
折角の達筆なのに、いろいろ乱暴に訂正されたり書き足されてしまってる(笑)。
内湯は男女別に別れており、夜は入替になります。

ま、これは後からユックリ入るとして・・・・・・
・・・・・・何はともあれ、まずは外にある混浴の露天風呂に。

深さが分からないので恐る恐る後ろ向きで入る(笑)。
秋とは思えない陽射しの強さ。

奥が下流方向になります。
これが全景。

左にある物々しい目隠しはこの時点では何のためのものか良く分かりませんでした。
反対側から見た所。

上にももう一つの露天風呂があります。
見ての通り、泉質は白濁した硫黄泉。

温度はそれほど熱くもなく、入りやすい。
浴舎方向を望む。

階段を上がると上の露天風呂、さらにその上が旅館の建物になっています。
全体としてはなかなかワイルドでいいのですが、ちょっと直線的にどこもかしこもコンクリートで固めてあるので、鄙びて自然と一体になった感じは薄いかも。
巨大なカエルの置物が見えます。

こうして見ると、上の露天風呂とはかなり高低差のあることが分かります。
アップで一枚。

何だか堤防の護岸の横にいるみたい(笑)。
実はこっちからは下から登って来る登山客が良く見えたりして・・・・・・。
上の方に移動することにします。
入浴だけの場合はこちらが入口になってるようで、それでこのような簡素な脱衣場が設けられてあります。
木々に覆われた露天風呂の全景。
下とは泉質が異なり、こちらは無色透明。
木の間の2本の樋から源泉が注ぎ込まれています。
茶色く見えるのは底のタイルの色。

意外にモダンな作りですよね。
これだけ陽射しが強いのに湯気が上がるのは気温が低い証拠でしょう。
旅館の建物を背景に。

自分たちの泊まる部屋が僅かに見えます。
木の葉越しに降り注ぐ日の光って、何かいいなぁ。
上流に向かって。

竹の柵の真下が最初の露天風呂です。対岸は切り立ってボロボロに崩れた崖。これでようやく分かりました。

下の露天風呂の物々しい塀は「落石除け」だったのです。
下流方向に向かって。

景色はこっちの方が圧倒的にいいです。
意外に風が冷たいので、また入ることに。
浴舎の屋根をバックに。大体の位置関係はご理解いただけたでしょうか?

今夜の泊まり客らしき人が次々とやって来てるようなのでそろそろ上がることにします。
内湯の湯の表面には析出物が薄氷のような堅い膜を作っていました。
そう!、ここの面白いところは、露天風呂の出入りは窓からなのです。
「野天風呂には是より出入りください」と書かれた札をバックに。
ちょっと間抜けな感じやな〜。

これはちなみに女湯の方に戻るところ。
人によっては小汚いと思われるでしょうが、こんな複雑玄妙なゴテゴテ感、いろんなモノがいい感じに混ざって同化したような状態はそう簡単にできませんね。
洗面桶ももはや木の色してません。
こちらが女湯、湯は無色透明で明らかに泉質が異なることが分かります。
いや〜、楽しかった〜!とか言ってるところ。
すぐに部屋に戻ってもすることないので、再び館内をウロウロ。
え!?オマエは加仁湯で見た「手白沢のクロ」ぢゃあ〜りませんか!

自分ちのように寛いでますな。
ここは鬼怒沼その他の登山基地となっており、建物の下を潜って登り始めます。
古風なストーブの置かれた談話室。
売店コーナー。

驚いたことにペナントが売られてたので早速ゲット。
頼めば岩魚の骨酒なんかも出してくれるみたい。
部屋に戻りましたが、いかんせんすることがなく手持ち無沙汰。

朝早くて眠たいのもあって、この後布団敷いて昼寝しました(笑)。
大声で夕食の準備が出来た案内があり、行ってみると既に薄暗い食堂は宿泊者で一杯。
山小屋とは思えない豪勢な食事。

左上から時計回りで岩魚塩焼と山菜天麩羅、ウドの佃煮、ポテトサラダ、冷奴、山菜炒め、真ん中左から金時豆、ガンモと南京の炊き合わせ、ナメコおろし。
見事に完食。

良く考えたら朝に饂飩食べたっきり、ハラも減るはず。
登山客が大半なので、ウダウダする人は誰もいません。

サッサと食ってサッサと寝る、が徹底されてます。
広間の隣も談話室で、こちらには囲炉裏が切ってありました。
出たところにはさらに古い温泉分析書。
夜の山小屋の雰囲気って独特のものがあります。
「お願ひ、廊下室内に於ての煮物お断り」・・・・・・まぁ、コッフェル持参の自炊の登山客ならやりかねないかも。
白熱灯の暖かい光に包まれた夜の外観。

例の「手白沢のクロ」は、宿のオニーサンに「クロォ〜、もぉいい加減うち帰れよぉ〜」と言われながらも、のそっと玄関先で寝そべってました。
静かに山小屋の夜は更けて行きます・・・・・・と書きたいところですが、隣の部屋のババァ共がムチャクチャやかましい。

ホント、恰好だけはいっちょ前なのに、登山の初歩的な常識もご存じない中高年が多すぎ。

明日は朝から山を下ります。

----Asylum in Silence----秘湯 露天 混浴から野宿 キャンプ プログレ パンク オルタナ ノイズまで
Copyright(C) REWSPROV All Rights Reserved