「シズカナカクレガ」ヘヤフコソ
2010 出流(午前)

ある晴れた秋の日、土埃が真っ白に舞い上がる石灰鉱山沿いの山道を上がって着いたのは・・・・・・
・・・・・・栃木は佐野の山奥にある真言宗の古刹、出流山満願寺。
予想を遥かに超える巨大な寺院です。

背後に見えるのは立派な信徒会館。
朝早くてまだ売店等は開いてません。
何ぢゃありゃぁ〜!?と思ったら鐘楼でした。
他に参詣客の姿もありませんな。

とにかく無駄なくらい早めの行動がうちの流儀。
千社札で牡丹燈籠の家状態になったお堂。
境内は水の気配に満ちています。

今回ここに来た目的は奥之院を訪ねること。
本堂の脇に小屋があって、入山料300円也を払います。

・・・・・・チェッ!別料金かよ。
左上に描かれてるのが奥之院。

絶壁にできた鍾乳洞の前に懸崖造になっており、本尊はなんと巨大な石筍。
灯篭の並ぶ山道を登り始めます。

秋の光は何だか地面に染み込む様な感じ。
この辺一帯は石灰岩質の山ばかりで、鍾乳洞が霊場になってるワケですね。
お!ここなら野宿できるかな(笑)。
到る所に苔むした地蔵が半ば埋もれて立ってます。
それとよく分からないのがこの看板。

まぁ、足腰の弱い年寄りのために距離の目安に立ててあるんでしょうが・・・・・・もぉちょっとましなコピーは思い付かんかったんでしょうか。
もっと、修験道の危険な道を想像してたら全然楽勝。
そして、奥之院が崖の中腹に見えました。

鳥取の三徳山三仏寺ほどエクストリームではないものの、かなりトリッキー。
え!?

立ち入り禁止になってるやんか!
望遠で撮って判明。

落石でも直撃したのか、完全に建物全体が屋根から歪んでます。倒壊の日は近そうな雰囲気。
直下にあるのが高さ10mほどの大悲の滝。

実はこれ、奥之院の裏の鍾乳洞と繋がってて、穴から水が噴き出してるのです。お不動さんの祀られた滝の上部にも小さな穴がいくつも空いてるのが見えますね。
滝の上に上がると錆びてボロボロの鉄梯子があって、さらに鍾乳洞の入り口が。


※家に帰ってから調べたところ、ここから滝の噴き出す穴の奥の地底湖に入れるようです。
滝の上部を見たところ。

いや〜、鍾乳洞って何か好きなんですよ。
さらに奥には大日霊窟、
また、大師霊窟、普賢霊窟っちゅうのがあるようですが、どれも素人で入れる雰囲気ではありません。
奥之院は壊れてるし、他の鍾乳洞は観光洞でもなく、意外に手強いことが分かったので早々に下ることにしました。
本堂には寄進者の名前がずらり。

奥之院の建て替えのための資金集めでしょう。
マニエリスティックなまでに装飾の彫り込まれた柱が圧巻。
いささか残念な結果に終わりましたが、まぁそれなりに愉しめました。

多分、この寺域を探せばもっと鍾乳洞が見つかるんぢゃないでしょうか。
さて、ここに来た目的はもう一つ、名物の蕎麦。

門前には沢山蕎麦屋があって何だか良く分からんので、山門に一番近いここ「福寿屋」にしました。
最近はむしろ田舎の蕎麦屋の方がこういった感じの素っ気ないくらいにシンプルで新しい建物のことが多い。
そりゃもうここまでわざわざ来たんだから、「一升打ち」を頼まんとあきません。
100円入れて回すと星占いが出てくるアレ。

今でも残ってるんだなぁ。
まずはツマミの野菜の天麩羅と・・・・・
舞茸の天麩羅が到着。

他にも美味そうなメニューがあったのですが、蕎麦が凄まじかったら困るので自粛。
蕎麦つゆも到着!

ワクワク♪
ひょぇぇ〜!

湯飲みや煙草の大きさからサイズは想像してください。
・・・・・・!!
美味い!

たしかに美味いがしかし、ハンパない量です。神田の薮蕎麦みたいに薄く広げてあるならともかく、厚みがかなりある。
けっこう苦戦しながら完食!サイドメニュー控えめで正解。

味の単調さが喉越しの良さに打ち勝つ前にどう逃げ切るかがコツかも。
こうして見ると笊っちゅうより、渡世人の被る笠を裏返したみたいで、バカみたいにデカい。

奥の年寄り連れは呆れてました(笑)。
休日などムチャクチャに混雑するんでしょう。
石灰鉱山を見下ろしながら県道を山越えして南に向かいます。
一面見渡す限り石灰の地層が剥き出しの荒々しい景色が広がっています。
山を下ってもまた別の石灰鉱山に出ます。
ここはテツには有名な日石羽鶴鉱山。

かつては葛生とここの間に専用線があり、古いSLが有名でした。
ちょっと道を間違いながらも辿り着いたのが宇津野洞窟。

ここも正面に石灰鉱山が望まれ、重機やダンプの音が風に乗って聞こえてきます。
いや〜、それにしてもスクラップの自販機といい終わった雰囲気のトコやな〜。

ちなみに狭い駐車場では営業マンがクルマ停めてサボってました(笑)。
それでも観光名所に乏しい佐野市なので、一応整備はされてたりします。
これが洞窟入り口。

ちなみに料金は無料。鍾乳洞なのに無料。
あまり大した規模ではなさそう。
それでも何となく鍾乳洞ってだけで興奮します。
お!意外にエエやん!
「何も見えへんやんか〜」
最奥にはかなり見事な鍾乳石。

外気に触れて苔や黴が生えたりしてあまり美しくはありませんが。
二人とももっとショボいかと思ってました。
あちこちに折り取られた跡があります。

いかんなぁ〜。
このように背を屈めないと潜れないところもあったりする。

小学校低学年の遠足なんかが良く来そうな雰囲気です。
洞内は古くから信仰の場でもあったようで、護摩や松明を焚いたためか全体的に黒ずんでいます。
たしか奥多摩の日原鍾乳洞なんかも同じような感じでした。
それにしても、なんで鍾乳洞ってどうでもいいような名前をあちこちにつけるんでしょう?
意外に楽しめた、っちゅうと失礼かも知れませんが、ここはちょっとコースに組み込むと面白いと思います。
裏山に登るとボロボロの展望台がありました。

・・・・・・まぁ、見えたのは石灰鉱山だけでしたが(笑)。
まずもって平日は絶対に人の来ることのなさそうな地味な名所・宇津野洞窟、個人的にはけっこう気に入ってしまいました。

後半は同じような地名の出流原に向かうことにします。

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