「シズカナカクレガ」ヘヤフコソ
2009 千葉U

秋も終わりが近いある日、再びやって来たのは日本一寂しい接続駅である上総中野。
小湊鉄道、久留里線に続いて今回は「いすみ鉄道」を踏破するつもりです。

ちなみに今回、野宿はなし。用事があるので日帰りです。
ほどなく最初の駅、「西畑」に到着。
傾いた駅名票は国鉄時代からのものと思われます。
緩やかにカーブしたホームには、なんだか茶室みたいな待合室。
ええっ!?こ、これって!?
どうやら今は廃業しちゃってる様子ですが、湯倉という地名からしても間違いなく温泉宿のようです。

ネットで調べても全く情報が見つかりません。知ってる人がいたら教えてください。
未知の温泉に興奮してる場合ではありません。さらに下って行きます。

ひぇ〜!日曜日なんて1日2本!鉄道だけでなくバスまでがほとんど無用の存在となり下がってるようです。
・・・・・・ってーか、自家用車もあまり通らない(笑)。

そんな道路沿いには古びた美容室。
その角を曲がると「総元」。全く人の姿はありません。

隣は公民館となっています。
なんだか教会のような待合室内部の様子。
ホームのしょぼさからは不釣り合いなくらいに大きな駅本屋であることが分かります。
ここは駅名版も真新しい。
いい感じに倒れかけた納屋。
「自動車での進入はご遠慮ください」の看板を見ながら細い道を入ると・・・・・・
・・・・・・周囲の景色に同化するようにして「三育学院大学久我原」。

大学なんてどこにあるんだか・・・・・・(笑)
調べてみたらここから2kmも離れた山中にあるようです。

最近流行りの「命名権」、ってヤツですね。
無人駅としてはなかなかいい雰囲気があります。
待合室にはどっかの鉄ちゃんが忘れていったらしき三脚。
国道から駅入口までの道もこんなんで、ほとんど利用客はいなさそう。
大きな切り通しを越えると・・・・・・
急に広々と景色が開けました。

この大カーブをレールバスが走ってる古い写真を見たことがあるような・・・・・・
何だか一面アスファルトで固められたような殺風景極まりない「東総元」に到着。
駅名票は何故かウッディで墨痕鮮やか。
薄っぺらな割に妙に凝った作りの待合室。屋根には「大吉」の看板。

驚くべきことに(笑)、ここには列車を待つ老人がいました。
壁には回転式おみくじ。

調べてみると昨年TVチャンピオンのネタに取り上げられて、番組タイアップで建て替えられたようです。ほんと詰まんねぇコトするよな〜、TV局って。
黄色いレールバスが追い越して行きました。
房総標準形と言える寄せ棟・平屋建ての建物。
踏切脇にひっそりとある「小谷松」に到着。

駅間でのショットが少ないのは、かなりのハイペースで歩いてあまりよそ見してないからです。
踏切の向こうには小さな神社。

この路線は線路沿いに小さな寺社仏閣が目立つような気がします。
プランターがぎっしり並べられてほとんどホームとしての用をなさなくなってます。
そういえば駅名票のスタイルにあまり統一感がありませんね。
ヌッとレールバスが顔を出しました。

妙にルーフが低く腰高に見える独特のスタイルです。
街道筋に戻って来ました。

古い姿を残しているのは・・・・・・
・・・・・・牛乳の集荷所。農業倉庫と似ていますが、それよりはずいぶん小じんまりしています。

もう今では使われてる様子はありません。
かん水と天然ガスで有名な大多喜の町が近づいてきました。

ここは「天然ガス井戸発祥の地」だそうです。井戸掘ったら真水が出ないで鉱泉水ばかり湧いて、アタマに来てタバコ投げたら引火してガスの存在が分かった云々、と物騒な発見の由来が書かれてあります。
夷隅川を大きな橋で渡ると大多喜町内。

実はこの反対側につげ義春ゆかりの宿として有名な「旅館寿恵比楼」がありますが、敢えて撮りませんでした。
今、大多喜の町並みは房総の小江戸として売り出し中ですが、大正時代に一度町が丸焼けになってるので、実は残存する建物は少なかったりする。
どこが小江戸や!?って言いたくなる町並みを駅に向かってひたすら歩きます。

歩いてると、とんかつ屋への道を尋ねられました。旅先で道を尋ねられることがやたら多い。

ちなみにその有名なとんかつ屋とは「有家」のことですね。
「デンタルサポート大多喜」に到着。要はここも命名権ビジネスで、元は単に「大多喜」でした。

ロータリーに聳えるのは潤沢に採れる天然ガスを使ったガス燈。
何とか廃線になるのを避けようと、収支の足しにすべく売られる各種オリジナル商品。
・・・・・・でも、どうも3セクって弱小地方私鉄なんかより殿様商売な印象。
大原方向を望む。

ゆったりとした線路配置は痩せても枯れてもやはり元国鉄であることを物語ります。
レンズが広角すぎてやたら遠く見える上総中野側から見た駅の全景。

両開きポイントの上下線を中心に色々な設備がコンパクトにまとまっています。模型化するのにも手頃そう。
駅は町はずれの高台にあり、物産館以外は大きな建物もなくガランとした印象。
だらだら坂を下っていくと街道筋に戻り、今度は「水溶性天然ガス企業発祥の地」ってーのに出ました。

この辺はどこ掘ってもガスが出るみたいです。
すぐ上の築堤をレールバスが通り過ぎていきました。
川に沿って密集した竹林が生い茂るのが房総の川の特徴と言えます。
えらく遠回りして「城見ヶ丘」に到着。

近くのスーパーへの利便を図るべく、つい最近新設された駅です。
ここにも列車を待つ老人がいてビックリしました・・・・・・ビックリしたらアカンのでしょうけど。
線路も道路も何度も夷隅川を渡ります。

色合いの違いにお気づきかと思いますが、今回からカメラを新調しています。ところがこれがいささか露出オーバーというか、どうも全体的に白っ茶けて写る。
いい加減駅間距離の長さにウンザリした頃、ようやく「上総中川」に到着。

古い書体のホーロー看板は昔からのものでしょう。
モデル心をくすぐる小さな待合室。
基本的にどの駅も開業当初からホーム一本だけと思われる小さな駅が多い。
近所の高校が制作した駅名票。

あの手この手で住民の巻き込みを図る姿勢はまぁ称賛に値しますが・・・・・・
・・・・・こんなブキミなもん置かせるかぁ!?

他にもドレス着たのとかありました。夜見たらびびりまっせ。
スーパーで買いこんだ寿司を食べることにします。

房総は様々に意匠を凝らした飾り巻き寿司が名物だったりする。ちなみに左端の「花」は複雑なデザインを作る上での基本形と言われます。
平野部に出てだいぶ人家も増えてきました。ここにも房総系民家があります。

特徴としては概ねどれも3間×6間の大きさで、長辺の壁の片側に全く窓がなく、逆に反対側はほとんど縁側で窓だらけ、壁が1.5階分くらいの高さがあり、羽目板作りで物置やら納戸やらいろんな短い差し掛けが飛び出している、ってトコでしょうか。
商工会館が併設された「国吉」。

全体の形は「総元」とほとんど同じ。
列車対向ができるようになっています。

春には桜並木となるようです。
周囲は綺麗に手入れされています。
貨物側線も残り、保線用のトロッコが留置されてありました。

ホームはどの駅もこのようにリブの入ったコンクリートの擁壁でできていますが、かなりボロボロに風化が進んでいます。
駅前のタクシー車庫。

屋根の看板は色褪せてほとんど読めません。
植え込みがなければ駅と分からないような「新田野」。

この辺まで来ると道路も線路もまっすぐ、かつ平らで、ぶっちゃけ退屈。
遙か彼方まで線路が一直線に伸びる。
一昔前に国鉄でよく見かけたタイプです。

オレンジ色の部分だけ塗り変えて使ってるのでしょう。
何んとも特徴のない景色が広がっています。
固く戸を閉ざした自転車屋。
欄干の低い古い橋の向こうに鉄橋、意外に深い谷には覆いかぶさるように竹林、それは下流が近づいてもあまり変わりません。
極めて珍しい丸屋根・モルタルの農業倉庫。
その反対側には渋い形の公民館。

植え込みのすぐ隣は「上総東」のホームの入り口なので、あるいは元の駅本屋を流用したものかも知れません。
ホームの末端にこんなに大きな待合室があるのは珍しい。

古い写真を見てもここに建っているので、昔からこんな形式だったのでしょう。
それにしても統一感に欠ける駅名票ですね。
ここにも対向設備がありますが、反対のホームの新しさや片開き分岐になってるとこからしてこれは近年追加されたもののようです。
も一つ個性に乏しいこの線の変わった特徴として、異様に信号の背が低いことが挙げられます。
あの駅にはこぉゆう仕掛けがあったワケね!

誰がこんなん買うねん!?しかし。
不思議なことにこちらで五井までの切符を買うと全線が1,600円で買えます。

小湊鉄道区間だけで1,700円のはずなんですが・・・・・・。
実はここから次の「西大原」までの区間は道路が遠回りしているために5kmくらいあって、夕方も遅いし足も痛くなってきたので・・・・・・
・・・・・・一区間だけ列車に乗ってしまいました(笑)。

運賃は250円とムチャクチャに高い。

貫通扉に描かれてあるのはムーミンの「ミー」。
・・・・・・ってなワケですぐに降りる。

他の乗客からは奇異の目で見られました。
これまた素敵に古い駅名票。

背後の角刈りになったネズミモチの生け垣はここの標準形のようです。
この片流れの待合室もそうですね。
しっかし、どの駅もどの駅も地味の極致のような無人駅。
「ちゃいるどショップ」にたばこはいかんでしょ、たばこは。
夕暮れが迫り、猫も家路を急いでいます。
川岸もずいぶん開けてきました。

外房の海はもうすぐそこです。
巨大な杉玉の下がる造り酒屋の前を過ぎると、
ようやく終点・大原駅への入り口が見えてきました。
夕暮れ迫る閑散とした駅前広場。
前身の木原線は、1番線から発車していたようですが三セク移管後は元の貨物ホームを流用するカッコで新たにホームが作られたようです。
呆気ない線路の末端。

一応ホームは二面あります。
養老渓谷のハイキング帰りでしょうか、意外にたくさんの人を乗せて2両編成で列車到着。反対に乗り込む人はほとんどいませんでした。

このいすみ鉄道、国鉄時代から赤字に苦しんでおり、一度も黒字になったことがありません。今年の収支が思わしくないと廃止される見込みです。
いよいよ暗くなってきた大原駅のホームで今回の路線踏破の旅は終わりです。
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