「シズカナカクレガ」ヘヤフコソ
2008 初詣(二日目 全興寺〜野崎観音)

正月二日、今日は大阪の平野にやって来ました。

ここにとてもユニークな寺があるというので、一度見てみたかったのです。
その名を「薬師堂・全興寺(せんこうじ)」といいます。

境内に人の姿はほとんどありません。
まずはこれ。

その名も「地獄堂」。
いきなりの仕掛。

2択の質問に答えていくと、極楽行きか地獄行きかを判定してくれるスグレもの(笑)。

正直に回答したら、エラい判定結果になったのは言うまでもありません。
内部はこのように正面に閻魔大王。
右には脱衣婆とヤットコ持った獄卒の鬼。
左には残り9人の裁判官。

日本の裁判制度は基本3回制ですが、10回制とはある意味非常に優しい。

この御堂、賽銭箱の下の銅鑼をボワ〜ンと叩くと懇切丁寧な地獄の解説ビデオが始まる、っちゅうハイテクなからくりも備えていました。
これは涅槃堂。

中央、水の中に置かれた緑色の石は涅槃像を表しているとのこと。

アブストラクトなセンスがとてもいいですね。
「この石の穴に頭を入れると地獄の釜の音がきこえます」」

挿絵がユーモラス。
・・・・・・で、早速やってみる。

ま、要は「水琴窟」でした。
こちら今度は、半地下構造になった「ほとけのくに」。

分厚いコンクリートで覆われてるとこからすると、核シェルターも兼ねてたりして。
階段の手すりには四国八十八ヶ所の霊場の砂が詰められてあります。

細部にまで手を抜かない凝った作りと言えますね。
いかにも瞑想空間といった薄暗い中、壁面いっぱいに並ぶ石仏。
中央はステンドグラス状の曼陀羅らしき模様。

下からライトアップされてます。
境内には「駄菓子屋さん博物館」なるものもあり、かなり気合の入ったコレクションが陳列されています。

正面に見える白黒TVに映るのはかつての南海・平野駅。私が高校の頃、地下鉄谷町線の延伸に伴って廃線になりました。
いい感じに苔むした水掛不動もあります。
商店街のアーケードに面したこちらが正門のようですね。

何か「屋台村」の入り口みたい。
とかくこのようなアトラクションを寺がやることにいい顔しない人もいますが、個人的には色んな人に優しく楽しく啓蒙する、っちゅう点でいいことなんぢゃないかな、と思います。
アーケードの下の商店街を行きます。
もう40年以上も前のことです。

私はこの商店街で迷子になって大泣きしたことがありました。
今や、子どもたちもそのときの私の年齢を追い越してしまいました。

それにしてもこの商店街、佇まいは昔と全然変わってない気がします。
平野は中世から続く古い町で、大阪空襲でも焼けなかったことから、古い街並みがよく保存されています。
開発の波から取り残されたことが結果的には吉と出たワケで、近年は大阪の貴重な町並み保存区域として急速に売出し中。
そしてこれが平野のランドマーク、大念仏。
府下最大の木造建築であることは以前、エッセーに書きました。
鐘楼もビッグサイズ。

残念ながら、「亡女の片袖」は見れませんでした。盆の一日だけの一般公開だそうです。
せっかく平野まで出てきたので、6歳ころまで過ごした自分の生家を見に行ってみました。

驚くべきことに、かなり改装されてるものの今でもチャンと残ってるやおまへんか。

もう、築50年近いハズです。
再び戻って平野の町に。
今度は杭全神社に行くことにします。

ここはいかにも正月らしく初詣客でごった返しています。
ま、縁日は後からな、と。
この神社、寺がむやみに多いこの界隈では唯一といってよい大社です。
私も、生まれてすぐの宮参りはここだったとか。
エビせんに天カスと目玉焼き載せたこれ、美味いっす。ジャンケンに勝つと目玉焼きの数が増えたりするんですが、なぜか絶対に勝てない。

1枚200円、原価考えるとアホらしゅうなりますが。
上の子は大阪名物・ドテ焼き。

関東系の煮込みに較べると非常に味がコッテリしてるのが特徴。
さて、いささか過去への感傷に満ちた平野の町を離れ、東に向かいます。

おせちや雑煮ばっかりなので、正月らしくないモノが食べたくなりました。

それにしても「天下第一」って、露骨なパクリやなぁ〜。
お!意外に美味いやん!

正月早々から店内は混み合っていました。
そうこうするうちに到着したのは奈良の県境近く、交野にある磐船神社。
ここは何と、天孫降臨の時に神たちの乗ってきた磐船(一種のUFO?)を御神体とするっちゅう神社なのです。

マジかよぉ?
まずは500円払って、ここの名物である「岩窟めぐり」に挑戦。

平たくいうと、修験道の行場です。
危険なのでこのようなタスキを首から提げさせられる。後からこの数を数えて、戻ってきてない人がいないか確認するワケです。

窓口には「どなたか猫もらっていただけませんか」の貼紙がありました。
それがこれ(笑)。お供えを食い散らかしちゃうそうです。

大人しくて可愛いので、よっぽどもらおうかと思いましたが、東京まではねぇ〜。
鳥居の向こうに柵で囲われた岩窟入り口が見えます。
いや、想像以上に中のコースは狭く複雑で、足許もおぼつかない。

デブだとつまる人もいるかも知れません。
各種の指示がペンキで描かれてますが、実際この通りに行かないとどうしても潜れない場所があったりします。
神主さんは「絶対ちゃう方行かんといてくださいね〜。ちゃう方行ったら別の世界に入ってしまいます。ほしたらエラいコトなりまっからね〜。」と盛んに言ってました。

ニライカナイや常世の国が開けてるのでしょうか?
異様にディープな空気に満ちた岩窟の最深部に到着。

山伏がお籠りの行をする場所のようです。
ようやく迷路のようなトンネルをぬけて裏山へ。
てっぺんにも巨大な岩。

「天の岩戸」だそうです。
いずれにせよここが古代の巨岩信仰の流れを汲む、アニミズム満点な場所であることは間違いなさそうです。

そこに後世の神道や仏教、山岳信仰といった諸々のものが混じって、奇妙な宗教テンコ盛り状態になってる、と。
本地垂迹、神仏習合を端的に表す注連縄の張られた不動明王の磨崖仏。
ともあれ、別の世界に行ってしまうこともなく(笑)、ひじょうに楽しめました。

ハッキシ言ってここは超オススメです。
日が翳って来た中、さらにダメ押しでもう一ヵ所。
お染・久松で有名な野崎観音です。

東海林太郎の「のっざっきま〜い〜りぃわぁ〜よぉ〜♪」でもユーメーか・・・・・・。
ここも夕方近いのに初詣客はかなり多い。
お寺は急な階段をかなり上って行きます。
このタオル、買っちゃいました。
お寺そのものはそんなに大きくありません。
江口の君堂・・・・・・って江口の君って誰や?(笑)
あ、説明があった。

「子さづけのやいと」っちゅうのがシブいっすな。
十六羅漢。

「野崎観音十六羅漢、うちの親父は働かん」との戯れ歌にもなったとの注釈が・・・・・・つまり、それだけ大衆信仰を広く集めてたってコトでしょう。
ちなみに「野崎の鐘のつきっ放し」で有名な鐘楼は、この前日ガンガンみんなが叩き過ぎたせいか、撞木が外れて重傷者が出る大事故があって閉鎖されてました。
あまりユックリもしてられません。

日が暮れて寒くなってきました。
この後、門前の和菓子屋で福袋買って実家に戻ります。駆け足でしたが中身の濃い一日でした。

明日は再び北摂方面に向かうことにします。

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