「シズカナカクレガ」ヘヤフコソ
2007 北関東(後半)

鹿島灘沿いに北上してやってきたのは阿字ヶ浦。

海岸線からずいぶん離れて高台に上がったところに、茨城交通湊線の終点である「阿字ヶ浦」があります。
半島の先で、完全な盲腸線。
数年前訪れた時には那珂湊に放置されていた廃車がこちらに移動されています。

非電化の地方私鉄としては驚くほど広い構内には、人っ子一人見当たりません。
コンクリート造りの古い給水塔が悄然と残っています。
ナカナカ、駅本屋は好ましい形態ですね。

線路側に差し掛け屋根が出ていないのはかなり珍しい。
駅を離れて歩き始めることにしましょう。
おにぎりとお茶を買い込みました。
割とすぐに「磯崎」到着。
漢字がない駅名票はちょっとマヌケな感じ。
片面だけのホームの無人駅ですが、ここもホームはムチャクチャ長い。

後から調べてわかったのですが、昔は国鉄の海水浴の臨時列車が乗り入れていたためだそうです。
サツマイモ畑の中をまっすぐに延びる線路。
旧国鉄カラーのキハ20の単行が追い抜いて行きました。

意外に走行音が静かで、背後からくると分かりにくい。
2.5m・・・・・・ってしょうもない看板で税金の無駄遣いすんな、っちゅうねん(笑)。
線路から離れないように村の坂道を登ると・・・・・・
・・・・・・海が見えました。

線路はかなり内陸部を通っていることが分かります。
この駅は何年か前に来たことがあります。

その時、隣接するスーパーで買い物したのですが、今はツブれちゃってました。
乗降客ほとんどいないのに、看板の効果あるんでしょうかねぇ・・・・・・。
JR線に乗り継ぐことが前提になった運賃表。
新興住宅地の交差点を過ぎた下り坂に唐突に現れる「殿山」。
知らないでスピード出してるとそのまま突っ込みそうな立地です。
女子高生が一人列車を待ってました。
この辺から少し線路を離れ村の中を大きく下って行くと・・・・・・
古い街道筋のような重厚な建物がだんだん増えてきます。
あ、さっきも見たな「沖正宗」。
これは古い商人旅籠か何かといった雰囲気です。
そんな町並を抜けたところ、大きく線路がカーブして・・・・・・
沿線最大の駅である「那珂湊」に到着。いかにも地方の中心地らしい寄棟の立派な本屋。

古くから漁港として栄えたところです。
駅前も地方の要衝の佇まい。
ローカル線の改札口、って好きだな〜。

何かドラマがありそうで。
巨大な差し掛け屋根が、かつての乗降客の多さを物語っています。
駅名票も木だったら良かったのに。
今のJRのローカル線より、よっぽどかつての国鉄らしさを残しているような気がします。
ここには車庫があって多数の車両が留置(放置?)されています。
昔の準急カラーに塗られた寒冷地仕様の気動車。
京成グループ系に共通するトリコロールの気動車群。

多くは廃車体のようです。
ステンレスボディで錆びないからか、台車を抜いて倉庫に転用。

いわゆる「湘南型」ですが、なんとも困惑したような珍妙な御面相。方向幕の窓がまるでマロの眉毛(笑)。
巨大な貨物上屋がそのまま残っています。
当然、その近くにはモルタル造りでクリーム色の壁の日通の事務所。これにあと、山吹色のボディの3輪オートが加われば完璧。

昔は日本中で見られた定番の組み合わせでした。
駅外れのバラスト積み込み場より遠望した全景。
線路は田んぼの中を行きます。

イマイチ、景色の変化には乏しい。
周囲に何もない無人駅の「中根」。
いったい1日何人乗り降りするんでしょうね〜。
屋根の形からすると昔は列車が対向できたのかもしれません。
だいぶ日が暮れてきました。

急がねば!
勝田が近付いて周囲は住宅街となる中を単調に延びる線路。
石畳のスロープが特徴的な「金上」。
昔はもっと大きな駅だったような雰囲気。

この近くに鉱泉宿があるのですが、徒歩につき立ち寄りは断念。
列車を待つのはオニーサンが一人だけ。

それにしてもどの駅もホームだけは異様に長い。
農業倉庫もローカル線の駅近くには必ずある建物でした。
この朱色とクリームのツートンって、派手すぎない程度で風景の中にハマりますよね。
明らかに工場のの従業員のために後からできた感じの「日工前」。

駅、っちゅうより乗降場、って呼んだ方が似つかわしいかも。
古レールで組まれたエラく物々しい駅名票。
実際はこれよりかなり暗くなってます。

よく手持ちでブレずに撮れたもんです。
そうこうするうちに「勝田」到着。

上野からの快速の終点でもある大きな駅です。
ビルが建ち並び、それなりに賑わいを見せる駅前ロータリー。
そんな駅の日当たり悪そうな隅っこがこの鉄道の起点。
昔は客貨の乗り換え・積み替え需要もあったのでしょう。

完全に日が落ちて急に暗くなってきました。
長大な常磐線の列車が発車していきます。
クルマに戻らねばならないので列車に乗ります。

運賃は悪い冗談のように高い。
那珂湊で例のディーゼルと離合。
結局、終点までの乗客は数えるほどでした。
概ね30分ヘッドでダイヤが組まれてるので、ローカル線としてはまずまず走ってる方でしょう。
この味わい深い路線もご多分にもれず廃線が取りざたされています。

本来は2008年春に廃止予定のところ、取りあえずは補助金で延命措置が取られたようですが、こんな利用状況ではあと何年もつかは分かりません。
・・・・・・などと感慨に浸っている場合ではない。今夜の泊る場所を探さねば!

まずは阿字ヶ浦の海岸近くで立ち寄り湯に入りましたが、エラい値段が高かった。
走り回ってようやく大洗の道路わきに具合の良さそうな公園発見。
いつも変わり映えしない夕食だなぁ〜。
何はともあれ、海近くで寒くもなく快適に一夜を過ごせました。

テントは私だけでしたが、車中泊をしてる釣客がたくさんいて普段より安心だったかも。
VAUDEのテントは国産に慣れてると変わった作りの部分が多いのですが、とにかく軽くてそこそこ広く、そして結露が少ないのが長所。
しかし、空模様が怪しく今にも降り出しそう。

大急ぎで撤収します。
実質1日の、まったく計画立てずに出かけた小旅行でしたが、それなりに楽しめました。

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