「シズカナカクレガ」ヘヤフコソ
600円分だけ語れ!!・・・・・・「体験の唯一性」という価値を踏まえて


おれが大好きな鶯谷「哲学堂」のラーメン。ちなみにこれは600円ぢゃないよ。甘レバも美味い!!

 おれは、「くだらないデータベースサイトはダメだ」みたいな発言を繰り返してる。今日はその辺についてちょっと書いてみよう・・・・・・あ、単刀直入すぎた。全然マクラがなかったな。

 「データベースサイト」とは何ぞや?っちゅートコにまずは触れねばならないだろう。つまり定義。人によって色々見解はあろうが、おれとしてはごく普通に、「台帳形式の体裁で、何らかの属性分類を行い、検索がしやすいもの」と考えている。コンピュータのデータベースのイメージだ。

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 くだらないデータベースサイトで、カテゴリー的にいっちゃん多いのはグルメ関係だろう。それも価格の張るフレンチやイタリアンなんてーのは元手が続かないためか少ない。多いのはやはり、ラーメン・パスタ・カレー・オムライスetc・・・・・・といった、せいぜい千円札一枚でことたりるB級グルメ系が多い。まぁ、標準価格600円、ってトコだろう。
 目下おれのサイトのメインコンテンツになっている、温泉ってカテゴリーも、せいぜい千円札一枚の世界なので、同じようにわりとイージーに作れてしまう。これはもちょっと安くて標準価格500円か・・・・・・足代考えるともっと高くつくけれど(笑)。

 体裁はどれも似たようなものだ。
 大体、地域別とかで分類されてて、行ったレポートに画像がチョロッとくっついて、所在地・電話番号・値段に味だのタイプだのオススメ度だのなんだの、と。温泉ならば、女性にオススメ度だのなんだの、と。

 分かりやすくしようとする一心でそうしてるんだろう。気持は良く分かる。でもさ、たいていは詰まんないんだよ。薄っぺらで内容空疎で、別に何か面白いこと書いてあるわけでもないし、面白く読ませようとする工夫もないし。
 ヒデぇのになると、単にその店の公式HPとリンクしてるだけ、とか、ネットで10秒もあれば調べられるような情報だけ、を羅列してるサイトもある。自分で身銭切ることさえしてへんやん。そこまでしてホームページ作りたいかねぇ??

 もちろん、すべてのデータベースサイトがくだらないと言ってるわけではない。素晴らしいサイトもたくさんある。断簡零墨に到るまで変質狂的と言っていいほどに集めたサイト、他の自分の生活を犠牲にしてすべてを注ぎ込んだサイト、なんだか他に類例がないくらいにユニークなサイト・・・・・・えてしてこれらのサイトは作者の人格に問題のある場合も多いけど(笑)。

 どうしようもないのは、以下の条件にあてはまるようなデータベースサイトだ。

   ● 大した数こなしておらず、そもそもデータベースになっていない。
   ● 体験に基づいてない。
   ● 独自の視点や表現がない。
   ● 損得ばかり言ってて対象への愛がない。

 何がダメかというと、そうゆう状態であれこれ書くことが不用意に相手を貶めることなのだ。ヘタすりゃぁ書かれた相手の生活を日干しにする可能性だってある。
 考えても見て欲しい。600円やそこらのラーメンやら1回500の温泉で、さほどの知識も見識もないヤツに勝手に一覧表にされたあげく、五つ星の5段階評価で★ひとつとか書かれることを。それがたまたま結構なアクセスがあって、その情報をイージーに取り出して鵜呑みに信じるバカが現れることを。◎とか○、△、×・・・・・・何の権利があってオマエは書けるのだ!?って思うよ。

 ・・・・・・明らかに営業妨害だっせ。

 そりゃ〜まぁ、いいことばっかり書いてても、何だか毒がなくて面白くもなんともない。ホメちぎるだけが愛ではない、ってことはよーく分かる。ただ、しかし、それを安易にデジタル化しないことだ。笑いのオブラートでくるんで面白おかしく書いてあげることだ。金銭的な損得の物差しだけを当てないことだ。

 たしか、飄軽かつ狷介固陋で有名だった小説家・内田百閧ノ関するエピソードだったと思う。間違ってたらゴメン。読んだのがずいぶん昔なので詳細を忘れたけど、とにかくこの人、町内の蕎麦屋から昼飯に毎日ザルソバかなんかの出前を取る・・・・・・で、その蕎麦屋が美味いのかというと、マズいのである(笑)。でも、マズくたってなんだって、おれはその蕎麦屋を昔から食ってる、だから出前を取り続けるんだ・・・・・・ってな内容で、おれはハラをかかえて笑った。

 これってとてもカッコ悪い。スナオぢゃねぇなぁ〜、とも思う。しかし、正しい態度である。もはや「アバタもエクボ」でさえない。「腐れ縁」っちゅーた方が近い。好きになるってーのはこぉゆうことなんだなぁ〜。
 そして同時に、データベースサイトの表現でこんな芸当は無理だろうな、とも思う。分類され、デジタル化され、台帳化されてしまった情報の中から、「功利」以外の何が浮かび上がるっちゅーねん!?

 ちなみにこの内田百閧ウん、晩年に芸術院会員に推挙されて、「イヤだからイヤ」っちゅーて断ったらしい。いいなぁ、それ。

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 ぢゃ、オマエどやねん?とツッコミ入れたくなる御仁もおられるだろう。

 正直、ダメ。根がセコくて狭量だから、コストパフォーマンス悪けりゃムッとするし、何かヤな体験があるとすぐに激昂してしまうし、そもそもホメるっちゅー行為は大の苦手だ。

 だから自分のサイトについて、いささかズルいが、おれは最初からデータベースサイトの体裁を放棄した。そうでないと自分の器ではどんどん悪い方に向かっていく気がしたのだ。データベースって主観のカタマリなのに客観の衣装をまとえる分、おっかないし。
 それゆえ最低限、テーマの分類だけは行って、あとは全くの順不同のグジャグジャ。サッと情報が取り出せる構造には意図的にしてない。断片だけを読んでも何も分からんし、全体を呼んでもガイド的な使い方は全くできんし。
 つまり実用に役立たないのだ・・・・・・もっと言うと役に立てて欲しくない。

 この構成には元ネタがある。尊敬して止まない碩学・南方熊楠の、唯一まとまった著作「十二支考」がそれだ。おれは興味の赴くまま話が飛びまくる漫談調のあの展開が大好きだ。
 熊楠は博覧強記ぶりを発揮して、呆れるほど大量の引用をしてるけど、読後感はただもう「知ることの楽しさ」以外何も残らない。簡潔な文章も読んでて爽快。おれもそうありたい。岩波文庫から出てるので、是非読んでみてほしい。

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 さてさて、一方でおれは最近、これだけ色々なネットワークが発達し、情報が氾濫することで、かえって「体験の唯一性」は今まで以上の価値を持ちうるのではないか?とも思ってる。
 「体験の唯一性」とはおれがデッチ上げたのだが、平たく言うと、「Aさんの『X』体験と、Bさんの『X』体験は違う」ってコトだ。ま、当たり前っちゃ当たり前のことです。
 もちろん、これを大きく認めてしまうことは実際、愚劣極まりない価値相対性の罠も待ち受けていて怖い。「Aクンの個性もBクンの個性も認めましょーね〜♪」みたいな、「一見寛容、その実、単なる判断停止状態」にも陥りかねない。それでも、だ。

 インターネットの普及で、すべての人が容易に何かを発信できる状況が整った。そのオカゲで、珍奇なものから詰まらないものまで、あらゆる情報をすべての人が容易に取り出せる状況も整った・・・・・・ってことは、知識や情報を持ってるってことは、昔ほど自慢にならないってことだ。
 「トリビアの泉」って雑学番組があるが、あそこで紹介される情報を30年前に手に入れようと思うと、それこそ万巻の書物の読破が必要だったに違いない(※)。今はある意味、雑学王受難の時代である。
 そして、こうして情報がどんどんフラットになってくと、当然の帰結として、体験が輝きを増してくる。「おれ**知ってるねん」は歯牙にもかけられなくなり、「おれ**をしたことがある」が大事になるのだ。対象物が珍しいものである必要はまったくない。
 まぁ、子供が熱出したとか、庭の木が色づいた、とか日記みたいなんばっかりはどうかと思うけど(笑)。

 私的な体験を発信する、大いに結構。そうでなきゃ、おれだってこんなサイト作らなかったし。ただ、その際はくだらないデータベース化だけは止めとこうね〜♪そしてできるなら、ほめるのは払った値段分、けなすのは粗利分くらいにしときましょうや。

※トリビアの「盗み」

 あの投稿情報の数々には「知泉」ってサイトからのパクリが多いと思う。雑学王・唐沢俊一を監修に迎えてるんなら、スタッフも気を利かせてその辺はちゃんとやってほしいよな。「知泉」が最近やんわりと閉鎖しちゃったぢゃないか〜!


もう一軒、おれの大好きな渋谷「喜楽」のラーメン。これは600円だったような。

画像はいずれも「グルナビラーメン」http://ramen.gnavi.co.jp/より

2005.06.19

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