「シズカナカクレガ」ヘヤフコソ
うつろう・・・・・・15TH ANNVERSARY


サイトを始めた2004年、7年後に未曽有の災厄がやって来るとも知らず、その年を表す漢字はコレだった。

 15年前の病院での医師との会話を想い出す。

 ------腫瘍というのは金平糖みたいな形してましてですね。そのツノが延びてった先に新しいのがまた出来るんです。
 ------はぁ・・・・・・金平糖ですか。
 ------ですから、腫瘍だけではなくてその周りの組織も含めてケッコー切除することになります。それと、腫瘍の位置が神経の手前か奥かでも手術の難しさは大きく変わります。
 ------・・・・・・と言うと?
 ------神経より表皮であればワリと簡単です。奥だと神経をちょっと横に動かすんで時間が掛かります。厄介なのは神経束の中に出来てた場合で、ボンレスハムみたいになってるんで一度神経を切る必要があります。
 ------どうなるんですか?
 ------後遺症のリスクがあります。具体的に言うと顔面麻痺等が残ります。ビートたけしみたいなカンジです。
 ------横に動かすだけでもあるんですか?
 ------ありえますね。鍼治療を想像するとお分かりかと思うんですが、神経ってちょっとつついただけでも大きく反応しますから。
 ------そりゃ困りますね・・・・・・。そもそもワタシのは良性なんですか?悪性なんですか?
 ------それは今の段階では申し上げられません。今の検査の段階では悪性の可能性は低いと思いますが、ただ・・・・・・
 ------!?
 ------ココの部位はワリと再発しやすいのと、再発すると悪性変化するケースが比較的多いです。
 ------しぇぇぇ〜。それって要は癌っちゅうコトですよね?
 ------いやまぁ、あくまで一般論としての可能性ですよ。実は大体、すべての人が身体の中に2つや3つ腫瘍持ってるんです。
 ------え!?そうなんですか?
 ------それが何かのキッカケで大きくなるかどうか?暴走するかどうか?ってだけなんです。

 数週間後、手術が済んで退院したおれは、紫外線が当たると傷口に色素が沈着して宜しくないっちゅうんで、カーテンを閉め切った薄暗い部屋の中で、相変わらず腫れ上がったアホみたいな顔で茫然としてた。切除した腫瘍は幸いボンレスハム状態ではなかったものの、神経束よりは奥にあって、オマケに想定よりもかなり大きかったモンだから、予定よりも手術は長引き、麻痺とまでは行かないものの、顔面にはいささか感覚の喪われた部分が出来てしまった(・・・・・・何年もかかって治ったけど)。最終的な良性/悪性診断の結果はまだだ。何でもすべての切除した細胞をスクリーニングして確定診断するんだそうな。

 何度も書いた通り、そんな宙ぶらりんの不安極まりない無聊の中で始まったのが拙サイトである。だって、マジで何もやることあらへんのやもん。ヘタに動き回ると縫合した痕がハンパなく痛むモンだから、何やるにせよ極力ジーッと座って動かずにやるしかない。

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 今年もキッチリ開始日を忘れてたコトからすると、まぁもぉサイト作りは完全に生活の一部みたいになっちゃってるんだろうって思う。特別な何かをしてるような感覚は最早完全に喪われてしまってる。家に帰れば食後ただちにPCを起動し、昼間にメモッてたことをブログに上げたり、文章をペチペチ打ったり、画像を整備してキャプション付けたり、掲示板への書き込みに返事したり、目下いっちゃんめんどくさいっちゅうか、ストック溜まりすぎてどれだけ時間を割いても焼け石に水状態になりつつある”Works”用の作品を途方に暮れながらシコシコと仕上げたり・・・・・・ってなルーティーンを淡々とこなす毎日だ。そ、ルーチンワーク。

 糊口を凌ぐ仕事ではこれまでとにかくルーチンワークを嫌悪・否定してやってきたのに、一門の得にもならないこの取り組みは実に淡々と単調な反復作業をひたすら繰り返してるんだから、おれもやっぱし偏屈だわ、と他人事のように感心してしまう。

 ともあれそんな風にあまり肩の力を入れないようにしたら、ほぼほぼ途切れることもなく15年が過ぎた。子供で言えば生まれてから中学3年になるくらいの長さだ。その間、ひたすらコンテンツ増やすことだけに腐心してきた。
 多分、今から思えばターニングポイントは、背景色を真っ白にしたあたりからのような気がする。現在のこれ以上シンプルにするのは却ってタイヘンってなヴィジュアルにしたんがたしか2007年頃だから、割りとサイト立ち上げてすぐにスタイルは確立したっちゅう風に考えて良いのかも知れない。もし始めた頃のようにあれこれ弄るのを続けてたら、多分もっと早くに終わっちゃってたように思う。

 実はたまに背景色と文字色は変えても良いかな?と思ってCSSを仕込んであるんだけど、結局弄ったことは一度もない。大体、見た目で言うなら今の新しい基盤の方がよほど簡便にクールな印象のを拵えることが可能なんだし、そんなトコに血道を上げても仕方なかろう。
 自分のイメージとしては、原稿用紙やノート、スクラップブック、アルバム帳、ファイルといった保管する容れ物の仕様を濫りに変更する気になれないのと一緒だ。長く持つんだから、コレ!って決めたらそのスタイルを踏襲する、みたいな(笑)。

 そんなんで自分自身の興味の対象はちょっとづつ変わりつつも、サイトのスタイルとしては進歩はないけどちょと退化はあり(笑)くらいで変わってない。しかし周囲はドンドン変わってく、移ろっていく。

 でももぉ基盤となる技術についてあれこれ言う気はない。これからもより新しい技術は登場するんだろうし、いちいち右顧左眄してそんなんに付き合ってちゃ中身の方に割ける時間が無くなってしまう。今の最も素朴なスタイルが通用しなくなったらその時考えれば良い。結局ITに関して言うならば、最も枯れた技術が何だかんだで最も遠くまで運んでくれるのは間違いなさそうだ。
 ネットを取り巻く環境も随分と変わった。裾野が広がってバカが増えたオカゲで、もう昔の魑魅魍魎が跋扈するような百鬼夜行の治外法権で自由を謳歌できる状況は望むべくもない。

 いろんな方とのネット越しでのお付き合いも、新たに始まったかと思えば古い人といつの間にか離れてしまってたりの繰り返しで、ほんの僅かづつ増加傾向にある程度だが、いずれにせよ古典的なサイトでやってる人は今はもうほぼいなくなってしまい、ブログが基本となってる。
 どうもおれはミョーにパワフルで近寄りにくい印象を与えてしまいがちなのか、何か「怒らせてしまったと思ってメール自粛してました」な〜んて言われることがあったりする。そらまぁたしかに理屈っぽくて気難しいトコが大いにあるとは申せ、殊更に孤独を好んでるワケでもなし、これでもフレンドリーなつもりなんだけどねぇ・・・・・・シクシク。
 いやもう言い訳もヘチャチャもホチョチョも如何せん上記の通りで、とにかく帰宅してからの時間を目一杯使ってもいろんな作業がまったく追い付いてないような状況なんで、なかなかメールいただいても返信できてないだけですわ。あちらさんもこちらさんもそちらさんもどちらさんもごめんなさい。

 興味はグルグルと回りながら長周期的に回帰するような感じで、そんなに今はもう新たなことに手を出してはいない。強いて言うなら、これ以上肥ったらいくらなんでもヤバかろうと、用事のない休日の朝、散歩の代わりに走り始めたっちゅうんと、ボケ防止のために(笑)タイコを始めようとしてるくらいだ。要するに身体と神経のエクササイズであって、趣味っちゅうのとはちょと違うかも知れない。それにしても走るのはひたすらしんどいしツラいし、タイコはマジでむつかしいっすわ。
 そして空いた時間を見付けてはサイト作成。ひたすら増えるコンテンツ、ネタ枯れはともかくとして、基盤のHPBって限界ないのかな?ある日突然、一杯いっぱいになったらどうしよう?

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 何のこっちゃない。かつてちょっとばかしの悲壮感の中で始めたサイト作りではあったけど、特にその後病が再発することもなく、とにもかくにもこうしてノホホンと続けられている。

 思えば悲願のタイコだってようやっと入手した。この狭い家に良くそんなスペース残ってたな〜、って感心してしまうが、チャンと室内にセットを組み上げられたのには我ながら感心してしまった(・・・・・・もちろん可能な限りコンパクトにしたけどね)。オマケにこの前纏めたように腐っても鯛で、古いとは申せかなりハイグレードなクラスのだ・・・・・・ちっともマトモに叩けないが(笑)。あ!ギターももちろん続けてますよ。これ以上本数を増やす気は無いけどさ。
 廃墟への興味は少し薄れて来てるかも知れない。逆に巨石・磐座についてはいや増すばかりで、もっともっと広く全国を見て歩きたい気持がますます募って来てる。やはり本場(!?)、っちゅうか密集地帯は西日本、特に近畿から中四国なんで、生活拠点を戻したって良いくらいだ。
 カメラは所詮はやはり道具だし、これ以上ハイエンド機に向かうことはないだろうと思う。むしろサイズや画素数をデグレードしても良いと思ってる。ほんなナンボ高精細に撮ったからって、ボケ味に拘ったからって、収差がどぉこぉっちゅうたかて、それが良い写真になるとは限らない。使いこなせないほどのハイエンド機を買って、少なくともそのことを学べたのは成長だった。
 原点である温泉は、まぁフツーに行った先に気に入りそうなトコがあれば入る、ってなスタンスだろうか。あまりに感情移入して温泉に向かい合ったところで、おれの好きな佇まいを今なお保つトコは今や殆ど絶滅状態なのだから。それに恨み言を並べたって仕方なかろう。
 アウトドアは生活そのものをもっとアウトドアにしたいんだけど、これだけは先立つモノがないとねぇ。自転車は再開目指してます。

 ・・・・・・そんなトコだろうか。

 ともあれこうして「今」を愉しめることに感謝しながら、また1年、1年と続けていけたらそれはそれでホントにありがたいことだ・・・・・・なぁ〜んて、こんな心にもないモノ分かりの良いしおらしいコト口走ってしまうなんて、おれも歳取ってヤキが回ったたモンだなぁ〜(笑)。

2019.10.06

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