「シズカナカクレガ」ヘヤフコソ
惰性とモチベーション/青頭巾・・・・・・14TH ANNVERSARY


これが元祖「半チャン」だ。

https://blogs.yahoo.co.jp/tamanonikukyupunipuni/より

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 もう1年くらい前の話になるだろうか、神田神保町のラーメンの名店・「さぶちゃん」が店主の高齢化を理由に閉店してしまった。半チャンラーメン(ラーメン+半量の炒飯)の元祖と言われ、客はほぼ100%がそれを頼んでたと思う。おれも半チャンしか食ったことが無い。食べ飽きしない、懐かしい味のラーメンと焼き飯だった。
 いきなり脱線して申し訳ないが、ゴキブリみたいに数だけ多いラーメンチェーンの幸楽苑が、あろうことか「半ちゃん」ってのを商標登録しちゃってるらしい。オマケに後付けの尤もらしい理由を並べたりしてるのが、如何にも後ろ暗さを糊塗するための姑息さと卑怯さバレバレで実にみっともない。こんなクズ会社、とっとと早くツブれてしまった方が世のため人のためだ。認めた方も認めた方でホント、役所の連中の無知蒙昧には呆れるを通り越して空恐ろしくなってしまう。ともあれちょっと前に触れたパチモンじゃんがら同様、こぉいう火事場泥棒みたいなコトするトコのモノは、おれは絶対に食わない・・・・・・って、まぁこれまでも不味いから殆ど食ったことは無かったんだけどさ(笑)。

 それはそうと「さぶちゃん」のハナシだった。あの辺で用事があった折におれも何度か食ったんだけど、大将の恐ろしくマイペースで淡々としつつも迅速で確実な手さばきは本当に見事で、まったく見てて間然とすることがなかった。最後に行ったのはかなり昔で細かい手順は忘れたけど、どれだけ行列が並んでいようが一度に作るのは絶対に4つ、中華鍋に油回して、丼と焼き飯の皿並べて、麺を釜に入れて、チャーハン作って、スープ注いで、テボで麺振って・・・・・・ってな一連の動作を流れるような、また機械のような正確さでひたすら繰り返して行くのである。そこには一分の隙も無駄もない。もはやそれは名人芸の域に達してたと言ってもあながち大袈裟ではなかったと思う。

 ともあれおれはこうした「市井のプロ」が大好きだし、すごく尊敬する。

 中島らももエッセイで似たエピソードを書いてた。どこだったかのたこ焼き屋のオヤジの手さばきが実に見事で、左手にタコの切り身を掴むと、あんなに形が不揃いなモノであるにも拘らず、必ず10切れになってるというのだ。そしてそれは本当にスゴいことだ、と。名人の寿司職人が飯桶から掴むシャリの米粒の数がどれも同じだ、なんてのも同類のエピソードだろう。

 逆の視点からの話もあって、花村萬月がやはりエッセイの中で、職業的小説家を名乗っておいてウンウン呻吟しながら文章を捻り出してるなんて全然ダメだ、ってなことを書いてた。創作の苦労とか芸術家気取りなだけで、そんなモンただの無能と怠慢の表れに過ぎないと言いたかったんだと思う。プロットが決まればあとは職人的に淡々と原稿用紙のマス目を埋めてく(・・・・・・って、彼はPC使ってやってるけど)のがプロなんだ、と。

 プロであるってコトは、惰性でやってるとかやってないとか、モチベーションが高いとか低いとかでは計れない全然別のトコにある、っちゅうこっちゃね。まぁ昨今世に溢れ返る意識高い系のバカには死んでも分からないコトやろな、コレって。

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 もちろんおらぁ別にこのサイトで収入得てるワケで無し、全くもってプロではないんだが、せめてこうした「市井のプロ」の姿勢に少しはあやかりたいと、これまでサイトのコンテンツについては可能な限り淡々と沢山アップするように努めてきており、それで気付いたらまる14年である。今でもペースはあんまし変わっておらず、3〜4日に1ページくらいでアップしてて、年間では100ページづつくらい増えてってる格好になる。いや、最初期の頃は過去の色んな手持ちのデータをHTML化して上げるだけだったんでさらに速いペースだった。でもフルスクラッチの今はそうも行かないんで、ぶっちゃけこれくらいがコンスタントにやってける限界ではないかと思ってる。ホントは今の倍くらいのペースで出来たらもっと良いんだけどなぁ〜、とは思ってんだけど、ムリなモンはどしたってムリですわ。
 ともあれ継続は力なりで、勘定してみたらザッと2000ページ弱くらいにまで膨らんでて、我ながら驚いてしまった。これはまぁ個人がシコシコと拵えてるサイトとしては、ケッコーそれなりのボリュームではあろう・・・・・・と、ここだけはちょっとドヤ顔させてください(笑)。

 ともあれ相変わらず時間的な余裕なんてまったく、ない・・・・・・ってな愚痴はこれまで散々グジュグジュ書いて来たからここは割愛するとして、最近はさらに新たな問題が起こって来た。それはコンテンツを作ってく上での最大のネタの源泉となってる旅そのものに関してである。

 仕事とネコの世話があるんで、そうそう2泊以上の旅に出掛けるワケにも行かない・・・・・・って、仕事はまぁ誰かに任せりゃ済むものの、ネコは本当に何日も放って置けないのだ。かといって連れてくと家猫で人馴れしてないモンでものごっついストレスになるらしく、ひたすら気弱にニャーニャー鳴き続けたりエサ食わなくなったりと、これはこれで宜しくない。
 だからどしたって主体は一泊二日の旅程になってしまいがちだ。それがですわ、あろうことか関東から1泊で行ける範囲での目ぼしい候補地が段々無くなって来たのである・・・・・・いやいや、表現が正確ぢゃないな。ネタ切れとはちょと違う。

 おれのGoogleMyMapが候補地をプロットしたボチボチだらけで大変なコトになってるのは以前書いた通りなんだけど、どしたって限られた時間内では優先順位の高いトコから訪ねてってしまうのは人情だろう。その結果、中途半端に各地に未訪のスポットが点在することになってしまった。そりゃぁ出掛ける以上は、やっぱし八ッ橋再訪よりは未訪のトコに行く方が気分も上がる。しかしだからって残った未訪のスポットばっかしを繋ぐとそこはやっぱし二軍、やっぱしどうにもコース全体としては地味すぎてイマイチは日光の手前でパッとしないし、どう工夫してもコースとして上手く収まってくれない、ってなケースが増えて来たのだ。
 かなり緻密に調べ上げてるとは申せ、元来、巨石にしても廃墟にしてもそんな無数にあるものではない。それに巨石なら消滅することもあまりないが、廃墟なんて生モノですぐに解体されたり転用されたりで消えてしまったりもする。また、交通量の激しい道路沿いや住宅街の真ん中、或いは観光地化してて人が沢山来るとかでは、ロケーションとして使えない。だからボチボチだらけとは申せ、自ずと限りがある。
 オマエ、そんなマイナーなトコばっか行っといて何を贅沢ヌかしてんだよ!とお叱りを受けそうだけれど、マイナーにはマイナーなりの松竹梅のランクがあるのだ。
 ホンマこれには困る。これまでは「おれってスポット見付けるの上手くね!?」って、ちょっとばかし自惚れてさえたのだ。ところがスタート地点がいつも同じ自宅だと、いつかどうにもならない時が来るって事実に遅まきながら気付いてしまったのである。

 まぁ、まだもうちょっとは大丈夫とは思ってるし、例えば昨年の浜名湖周辺や篠ノ井線北方、或いは今年の春の秩父等をディープに回る旅とかでは、望外の発見があったりしてかなり楽しかったりもしたから、そこまで差し迫った問題ではない。しかし、何となくあと数年内に本格的に厳しくなるんちゃうやろか?って不安はある。

 この対策はカンタンっちゃ実に簡単だ。どこか遠くに引っ越して生活の拠点を移せば良いのである・・・・・・あるって、それがたちまち出来りゃぁ苦労はせぇへんわっっ!ってね(笑)。

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 旅の道具であるカメラについては、性能的には今の構成で何の不満もない。まぁ、もぉちょっと手ブレ補正が強力だったらなぁ〜、とか、暗所耐性があと2段くらいあればなぁ〜、とか欲を言い出せばキリが無い。ただやっぱし重いのはしんどい。それで今後は可搬性を重視してM4/3への移行やAPS−Cへの復帰を検討してる。
 実はそのキッカケとなったのが、先日たまたま出掛けた岩合光昭って人のネコの写真展だ。この人、オリンパスのエンドーサーなんでM4/3でどれも撮ってんだけど、大きなパネルに引き伸ばされた作品の数々を見ておらぁ、フルサイズとどこがちゃいまんねん?劣ってまんねん?って思ってしまったんっすよ。プロだから当然とは申せ、素晴らしくキリッとヌケと発色の良い作品が並んでた。

 画素数なんて実際、A4印刷くらいなら2000万画素もあれば全然十分なんだし、良く考えたらおれ、せいぜい2L判で、それも滅多に印刷なんてしないワケだし(笑)、それに最近のネコも杓子もフルサイズな流れも、メーカー側の売上と粗利ってアザとい意図が大分見えて来たしで、まぁもぉ潮時かな?ジューブンかな?って気持ちが強くなって来てるのが正直なトコだ。

 多分解像度って、音の世界でのビットレートみたいなモンなんだと思う。そりゃぁ可能な限り多い方が良いんでしょうや。気持は分かります、って。でも、流石に圧縮しまくった64kbpsとかでは素人のおれでも音質悪いなぁ〜、って分かるとは申せ、128kbps超えたあたりからは殆ど分からない。言われたらそぉかなぁ〜?くらいの差異でしかない。最近流行のハイレゾなんてもぉサッパリ分からない。
 そんなんにネチネチ拘るより、音楽そのものに拘るべきなのだ。音質良くたってクズな音楽はいくらでもある。それに最近のリマスター盤なんかで起きてる現象からも分かる通り、音質が良くなることで却ってツマらなくなる音楽だって一杯ある。

 写真だってそうでしょう?ちゃいますか?

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 ああ、道具っちゃぁPCをそろそろどうにかしなくちゃなんないんだった。今のは北海道時代、前の東芝のダイナブックがクラッシュして、取り敢えずと思ってヤマダ電機で回線契約やら何やら抱き合わせでタダ同然で手に入れたごく一般的な富士通のノートPCだ。アタリだったのか未だに快調に動いてはいるものの、それでももう7年、お迎えの日は間違いなく迫ってるだろう。
 おらぁマック派ぢゃないんで、次も当然Windowsマシンにせざるを得ない。否応なしに10である。タブレットはやはり作業生産性に劣るんで、机に置いて使うものが良い。あ!そぉいやWindows7以前の環境で作ったDVD−Rとかが壊れる問題って片付いたのかな?どうも未だに信用できないよな、Windows10って。MSのエゴばっか目立ってさ。ホンマ困るわ。

 それはともかく、このバカみたく増大したデータファイルをどぉすりゃエエんだ?環境をオンプレでやってたら否応なしに向き合わねばならない問題だ。だからクラウド・・・・・・ったって、はいそうですかとホイホイあんな写真やこんな写真をアップロードするのはやはり躊躇われる。

 TB単位のデータをもっと確実かつ安全で、シンプル・安価に保持する画期的な方法って出て来ないモンっすかねぇ・・・・・・?

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 そんなんでサイトはこれからも続けて行く。今年は交流のあったサイトがいきなり閉鎖したりしていささか考えさせられたこともあったけど、おれ自身はまぁこのまま、この調子で続けてくんだろう。これはずっと書いてるコトだけど、被写体の幅を広げ、ペースも上げたいんでペット兼モデル兼アシスタントは欲しい、やっぱし。

 ただ今はもう、このサイトをどんな趣旨で始めたのか?とか、どこに向かってんだ?とか、どんな拘りがあるんだ?とか、そんなのは忘れかけて、ただもう淡々とコンテンツをアップし続けてる自分がいるのも事実だ。それって続けること自体が自己目的化しとりゃしませんか?意味なくないっすか?とツッコまれれば、はいその通りですと答えるしかない。

 上田秋成の「雨月物語」の一篇に「青頭巾」って話がある。旅の高僧が立ち寄った村で住人から恐ろしい鬼の話を聞かされる。その正体は、元はと言えば衆道で可愛がってた稚児に死なれて狂った山寺の老僧であり、すっかり化物屋敷となったその山寺に高僧が単身乗り込んでってソイツを調伏するってなストーリーだが、昔からラストシーンの意味が良く分からないでいる。

 人食い鬼となった老僧を仏法の力で説教し、スッカリ正気を取り戻させたところで、高僧は彼に「江月照松風吹 永夜清宵何所為」って漢詩を授け、ひたすら唱えてその意味を考えよ、分かれば本当の仏心に至れるぞよ・・・・・・ってな如何にも禅宗坊主らしい韜晦なコトを言いつけて去ってく。
 ここまではまぁまだ分かる。ここで終わってたらフツーに旅の一夜の怪異譚系の怪談話で分かりやすい。ところがまだ話にはちょろっと先があって、1年後、高僧はもっかいその廃寺に確認にやって来る。そしたら何とまぁ、さらにボロくなった廃墟の中、相変わらずその化物は座禅組んだままブツブツと消え入りそうな声で漢詩を唱えるままだったのだ。それで思わず「作麼生、何の所為ぞ!?」などと喝入れて杖で叩くと、化物は消え失せ、座ってたとこには青頭巾と崩れ落ちた骨だけが残っていた・・・・・・と。

 ・・・・・・こりゃ一体、何なんだ?って思うよね?何とも蛇足の感がある。

 反省させただけでは退治したことにならないし、かといって仏道に仕える者がたとえ相手が化物とは申せ、殺生しちゃってはマズいし・・・・・・ってな諸般の事情を忖度して(笑)止む無くこんな筋立てにせざるを得なかったのかも知れないが、それでも何ともスッキリしない。

 鬼は1年前にすっかり改心してるのである。
 しかし、未だに言われた通り愚直に漢詩を唱え続けてたのである。
 なぜなら、意味が分からなかったから。
 分からなければ本当の仏心には至れないんだし。
 とは申せ、村に降りて人食って栄養補給すんのは止したんで肉体は消滅してしまった。
 つまり残ってたのは、いわば妄執である。
 ただもうひたすら漢詩を唱える。

 「知の放蕩人」だった作者・上田秋成は、実は案外、妄執のみでひたすら漢詩を唱え続ける青頭巾に自分自身のどうしようもなさを仮託して敢えて書いたのかも知れない。さらにそこにカブせておれ自身を投影するなんてもぉ、図々しくもおこがましい限りだが・・・・・・。

2018.10.07

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