誰かに、響く

影は形に従い、響きは音に応じる･･････だから影響なんだって。

http://jamesdanis.com/より"Shadow of Nude, Joshua Tree Nat'l. Park 1991"

故・中島らもは主催する劇団「笑殺軍団リリパットアーミー」を旗揚げしたきっかけについて、偶然観に連れてって貰った芝居があまりにも詰まらなかったもんで、「こんなんならおれの方がよっぽどおもろいモン作れるわい！」と思ったことを挙げていた。 　才能が溢れまくって持て余してしまうほどだった彼からすれば、有象無象の学生芝居に毛の生えたような下らんのを一蹴することは実に容易だったようである。おれが大学を出た頃くらいだろうか、既にリリパットアーミーは関西の劇団としては随分メジャーな存在となっており、扇町ミュージアムスクエアとかを根城に次々とスラップスティックコメディーの新作を発表してた記憶がある。まぁ、おれは芝居には興味が無くてからきし具体的な知識はないんだけど。 　ただ、エッセイで告白してたが、推理物を書くのだけはどうしても駄目だったようで、ホンが間に合わなくなってエラい目に遭ったとか何だか、そんな呻吟さえもネタに面白おかしく記してた記憶がある･･････記憶があるって、オマエ家に本持ってるんやろ？スカすなや！調べろや！と思われたアナタ、ごめんなさい。実はおれ、最近思うところあって山のような文庫本は全部叩き売っちゃったんですわ、二束三文でＢｏｏｋ−Ｏｆｆに。 　それはともかく野球やサッカーを始めとしてプロスポーツ選手になった人の多くに、目指したきっかけが子供の頃に見た試合や選手のカッコ良さに憧れて、っちゅうのが多いのは今さら述べるまでもないことだろう。おれがガキの頃も「巨人・大鵬・玉子焼」なんて言われて、野球選手は子供のなりたい職業ナンバーワンだった。 　アイドルも然り。スカウトマンの甘言に騙されて何人のバカな若い娘がいつの間にかＡＶデビューしたことだろう（笑）。田舎娘がＴＶで観た歌番組のアイドルに憧れて･･････な〜んて苔の生えたようなモチーフ、流石に絶滅したろうと思ってたら現在放映中の朝の連続テレビ小説、え〜っと「まれ」だっけ？あの中にだって出て来るよね。かほど左様に憧れは大事とは申せ、「フランダースの犬」はいくら何でも悲惨だな、っと。 　放談モードだとだんだん足の踏み場も無くなって来る。何を書こうとしてたんだっけ！？あ、そうそう、今日は「影響」ってコトについてだったんだ。 　･･････････････････････････････ 　現在のこのサイトを始めたきっかけは、実はひじょうに内省的でエゴイスティックなものであることはこれまで何度か書いた通りだ。 　１０数年前にちょっとした病気を患って入院し、手術を受けた。予想外に手術は難航し、７時間近く掛かったらしい。実はそれ以来、切開した部位の周りには若干麻痺が残っててイマイチ感覚がハッキリしない箇所があったりする。当時はあまりピンときてなかっただけで、今から考えれば結構大変だった。 　無事に退院はしたものの、しばらくは家で安静にしてなさいって医者が厳命するもんだから家にかなりの期間引き籠らざるを得なかったのだが、無聊の日々を託つのも気が滅入ってしんどくて、ここは一つ土佐日記の紀貫之ぢゃないけれど、世の人もすなるホームページなるものを拵えて、万一自分の身に何かあっても何がしかの記録を世に残してこましたろかい･･････そんな気持になったのだった。つまりサイト作成そのものは誰かに影響受けて、っちゅうのではなかった。何となく、ってーのがいっちゃん近い。 　ともあれそんなこんなで始めてみて、生まれ持っての如何にも大阪人らしいウケ狙いのサービス精神もあってか、人にどう読んでいただくか？見ていただくか？についてはそれなりに心を砕いて工夫したものの、そっから先についてはかなり無頓着だった。カル〜く読みトバしてくれたらそれで良し･･････っちゅうか、こんな泡沫サイトが誰かに影響を及ぼすなんて想像も付かなかったのだ。 　結局おれはその後何年経ってもくたばらず、当初の目論見であった過去の記録に加えて、色んな事柄を徒然かつ雑多に、とにかく淡々とコンテンツを質はともかく量的に充実させるうちに、自分で言うのもなんだけど、とんでもなくサイトは巨大化した。もちろん、今もこのように増殖を続けている。おそらく、ボリュームと内容の脈絡のない広がりではかなりなモンだろうとは思ってる。 　しかしながら、おれ自身としてはワリと外界に対して無頓着にやって来たのだった。そらまぁたまに晒し上げだとかパクリだとか不愉快なこともあるけれど、まずまずサイト名通りの「静かな隠れ家」であったと言って間違いはなかろう。そしてこの姿勢はいささか世捨て人的でもあったと思う。ハハ、今度は方丈記の鴨長明かい？（笑） 　･･････ところが、だ！いやもぉ「！」を１０個くらい並べても良い。 　思っても見なかったことに、コンテンツと呼ぶにはこんなにも素人丸出しで拙くも残ないのに、ポツポツとではあるが、そんな内容に触発されました〜！ってな方からのお便りが届いたりするのである。曰く、温泉にヨメやカノジョと行くことにしました、アルコールストーヴ試してみます、自転車ハマろうと思います、爆音出してみます、ブログ立ち上げてみます、勇気出して撮影に挑戦してみます･･････etc。 　別段ありがたいと思うべきことではないと思う。だっておらぁ少しもそんなコトを望んでたワケではないのだから。しかし、何となく嬉しいことは確かである。 　何故ならおれの持論で、表現にせよスポーツにせよ日常生活にせよ、あらゆる行為は鑑賞する、つまりパッシヴな享受者だけに止まってちゃダメっちゅうか、とても勿体ないことで、何だってとにかく自分でやってみることが一番楽しいからだ。そんな自発的なアクションのキッカケになれたことが素直に嬉しいのである。 　ギターでもベースでもピアノでも、弾け。ドラムなら、叩け。 　それが出来なきゃＤＴＭで打ち込め。 　小説でもエッセイでも日記でも、書け。 　絵は描け。 　模型は作れ。 　映画は撮れ。 　写真も撮れ。 　芝居は演じろ。 　ダンスは踊れ。 　料理は拵えろ。 　おれはこれまでそう思ってあれこれ手を出してきたし、これからもそうあり続けるだろう。今のところ映画や芝居、ダンスとは未だ無縁だけどね。 　･･････････････････････････････ 　そして最初のエピソードに戻る。 　ひょっとしたらみなさん、感動や羨望、憧憬ばっかしではないのかも知れない。それこそ真逆で中島らものように、こんなクソしょうもないのんやったらおれの方が１００倍おもろいのん作れるわい！書けるわい！もっと綺麗に撮れるわい！モデルかてこっちの方が上ぢゃい！（･･････あ〜！コラコラ！笑）などと闘争心や敵愾心をメラメラと燃やされてる方も中にはいらっしゃるかも知れない。いや、居る方がむしろ当然だろう。 　そりゃぁ反面教師とか捨て石とか噛ませ犬とかは全く以て哀しいことではあるのだけれど、それならそれで仕方ないと思ってる。結果的にそれでもし、より優れた表現が出て来るのなら、こんなおれでもちょっとは世の中のお役に立てたコトになるワケで、まずまず良しとしなくちゃならないんだろう。 　知らない何処かの誰かに、何がしか響いて、心に漣を立て、それで何かの行動を起こす契機となる･･････ちったぁ最近はそんなことも考えるようになった。

２０１５．０５．１９

----Asylum in Silence----秘湯 露天 混浴から野宿 キャンプ プログレ パンク オルタナ ノイズまで Copyright(C) REWSPROV All Rights Reserved