「シズカナカクレガ」ヘヤフコソ
あ〜、しんど!・・・・・・HPB格闘記+


何とVer18にまで進化してるんだね!!

 ホームページビルダ(以下「HPB」)は元々はIBMのホームページ制作用オーサリングソフトである。オーサリングソフトとは、そのままだと直打ちでハードなコーディングが必要なアプリケーションを、素人でも簡単に操作できるようにしてくれるものの総称で、他にもドリームウィーバーだとか、色んなホームページ作成お助けソフトは存在する。一等最初のリリースは90年代の終わりくらいで、その後ブログやツイッター、SNSの流行で個人のホームページ制作が昔ほど流行らなくなったコトもあって、一太郎で有名なジャストシステムに権利が譲渡されて今に至っている。最近のはWordPress準拠になったらしい。

 このサイトを立ち上げた当初に書いたとは思うが、何でHPB買ったか?っちゅうと、思いがけず病気で入院・手術して1ヶ月近く家の中で陽の光に当たらないよう蟄居する事態となり、余りの無聊を慰めるため「どれ、イッパツおれもほーむぺぇじっちゅうもんをやってみようかい」などと思ったからだ。いやいやいやいや、正直、当時はちょっと死に対する恐怖もあって、これまでの来し方を纏めといた方が良いのかな?って気持ちもあった。それで近所のヤマダ電機まで、いかにも病み上がりっぽく毛糸の帽子なんかを深くかぶって行ったら、売ってるのがこれしかなかったのだ。たしかVer6.0くらいだった記憶がある。PCはその頃はDELLのノートだったっけ。

 操作は実にカンタンで、試作品とは申せ最初の数ページをアップするまで3日も掛からなかった。うわ〜!こりゃぁ実にベンリぢゃわい、と思ってそのままダラダラ使い続けて10年が経つ。まさかこんな恐ろしい欠陥が潜んでようとは、最初は夢にも思わなかった。もちょっとよく調べてりゃ良かった。勢いでGO!!はやはりあきません。

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 何が欠陥って、アータもう、ムチャクチャに動作が重いんですよ。パフォーマンスが悪いんですよ。その重さはhtmlシートの枚数と内部リンクの数におおよそリニアに増大して行く。100ページくらいまでは何ともないけど、それを過ぎたあたりから少しづつ顕著になって行き、4〜500ページで劇的に悪化する。
 このソフト最大のウリである、ビジュアルにサイト構造を表示するだけでなく、フォルダ間で何らかのファイル移動を行っても自動的に内部リンクの記述が修正されるっちゅう機能がもうまるで動かなくなるのだ。サイト開くだけで数十分とか、もう悪い冗談である。そいでもって1ページ作成して保存するとまたもや砂時計、応答なし、HDDはブンブン唸りまくりみたいな状況に陥る。
 これはひじょうに有名な欠陥で、回避策はネット上を探すといくらでも見つかる。代表的なトコでは、開く階層の制限、サムネイル非表示、全体図非表示等だが、これさえももっとページ数が増えて来るとだんだん怪しくなって来る。それでもまぁ年々歳々PC容量、殊にメモリが飛躍的に増大する流れが幾分速度劣化を緩和してくれてるのもあって、これまで何とかかんとか騙し騙し使ってきたのだった。

 これだけ有名な事実をメーカー側はこれまで一度も認めていない・・・・・・っちゅうか、そもそもこのソフト、そこまでバカでかいサイトを拵えることを本来的には想定してないのである。インターネットなるものが爆発的に広がり、見てるだけでは飽き足らず、プライベートなホームページを作りたい人が増えてきたネット勃興期、プロバイダのオマケについてるせいぜい50MBほどのスペースに「**家のホームページ」とかなんとか、個人情報自ら晒しまくりでどぉでもいいようなことをチョロチョロ並べたサイト、昔は星の数ほどあったんだけど、まぁそぉゆうのを簡便に作ることを主眼として開発されてるのだ。1000ページなんてそもそもやっちゃいかんのだ。

 ともあれそれがこの数ヶ月、いよいよ立ち行かなくなった。専門家ぢゃないんであくまで推測の域を出ないが、メモリ不足から何らかの内部情報がぶっ壊れるんだろう。サイト自体の認識が出来なくなることが頻発し始めたのである。折角打ったページがそれでブッ飛んだこともある。正直、作業に足取られるくらいヤル気を削ぐものはない。それでなくても足りないアタマで、文章考えたり画像並べたりするだけで精一杯なのだ。

 通算何度目かは知らないが、ある夜またもやサイト情報がクラッシュして、おれは抜本的な処置を施さないとどぉにもならんトコまで来てることを不承々々認めざるを得なかった。

 最も良い方策は思い切ってきっぱりHPBベースのサイトであることを止めてしまうことだろう。年初にも言及したWordPressあたりに移行するのが最も今風に思われる。多分、構造的にも非常に軽く動作するであろうことは想像に難くない。BBSやブログなんかだって見た目もスマートにオールインワンで纏め込むコトだってできそうだ。おれは2800円もする解説本まで買って勉強した。なるほど爆発的に広まるのもむべなるかなで、優れモノであることが分かる。
 しかし唯一にして最大の問題は、事実上新たにイチからサイトを作り直さんとアカン、ってコトだろう。日記代わりのブログに至ってはしょうむない記事が7000くらいあるのだ。あと、デザインも基本的には自分で作るのは異常にめんどくさいから、ブログみたいにテンプレートを拝借することになる。
 宝くじでも当たって悠々自適で暮らせる時間が出来ればそれも可能だろうけど、今のおれには到底無理だ。寝てる時間さえ無くなってしまう。

 次善の策は、別のオーサリングソフトに移行することで、そうなるとドリームウィーバー一択ってな公式があったりするんだけど、おれには結局、同じ穴の貉のように思える。これ以上もう2階建て構造みたいなやり方を新しく覚えてまでやりたくない。

 そんなわけで消去法でウダウダ考えて得られた結論は、平凡極まりない安全策、既存サイトの抜本的な手直しだった。

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 以前から気にはなってたものの、何となくほたくってた機能に「サブサイト」っちゅうのがある。これはHPB上でサイトの一部分を疑似的に切り離して独立して管理するコトを可能にする機能で、おそらくはファイル増大に対処するために構えられたものであることは間違いない。しかし、使うには一定の制約があって、メインフォルダ直下のフォルダを一つの単位としてその子サイトに使うファイルは基本すべてそこに収まってなくちゃなんないし、仮想のトップページはそこにあるhtmlシートとしなくちゃなんないのだ。この仮想サイトの枠以外の場所からファイルを参照することも可能だけど、そのためには「共有ファイル」っちゅう定義が必要になる。

 ・・・・・・と、サブサイト作成の手順を読んでおれは暗澹たる気持ちになった。だって、分割したいようにフォルダ構造を作っとらんのだもん。それに精査してみると保存時の操作ミスで、本来あるべき場所にないファイルが次々見付かるではないか。ひょええええ。

 かくして格闘が始まった。それはバトルっちゅうよりストラグルとでも呼んだ方が良い内容だった。作業手順は以下の通りだ。

    (1)サブサイト用のフォルダを新たにルートフォルダ直下に作成する。
    (2)htmlシートをそれぞれ(1)に移動する。
    (3)写真やバナー等の画像ファイルを(1)の下の画像フォルダに仕分けする。
    (4)共有ファイルを設定する。
    (5)サブサイトの定義を行う。
    (6)不要になったフォルダを削除する。
    (7)サーバ側を一旦全削除する。
    (8)(1)〜(5)で作り直したサイトをアップロードする。

 手順としてはこれだけで実に単純なんだけど、何が問題かって、フォルダを作るのも削除するのも、ファイルを移動するのも、全ていちいちサイトの開き直しと再構成が付いて回るのである。つまりこれまでウンザリさせられてきた問題が頻繁に起き、否応なしに向かい合わされるのだ。当然、これまで起きたファイルのクラッシュも頻発する。そうなりゃまた認識のし直しだ。ぶっちゃけ発狂しそうになった。

 どれもサイトの開き直しが付いて回ってそれなりに面倒だったものの、最大の難関はテキスト関係が元は一つのフォルダになってたのを10個に分割するトコだった。適当なネーミングであちこちに分散してた画像類をネチネチ探して正しく仕分けし、所定のフォルダに移動させるのである。何せ時間が掛かるので迂闊に動かすワケにも行かず、一旦分類表をエクセルで自作して、一つ一つhtml開いて中の記述見たりしながら同じ場所にあるものを分類して、極力一発で動かして行かなくちゃなんない。とにかく動作が重いもんだから、一晩に実行できる移動は3回くらいが限度で、何度PCを叩き壊したい衝動に襲われたか分からない。

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 作業開始しておよそ1ヶ月、ファイルの分類と仕分けはようやく完了した。実のところ、サブサイトの登録自体は軽く、すぐに終わった。ロゴだの矢印だの、いくつかの画像の共有登録も済んだ。よしよし、それではサブサイトを開いてこましたろうではないか。

 ・・・・・・愕然とした。

 「メインのサイトを開いてからでないとサブサイトは開けません」などと、何のためのサブサイトか分からんような人を食ったメッセージが出やがるのである。サイト全体を開く重さを回避するためのサブサイトなのに、それを開くには一度全体を開けって、不条理劇か?禅問答か?開発業者はちょっとアレな人の集団なのかも知れない。一体全体ここまでの苦労は何だったんだよ?
 大阪弁ではこのような場合、「こらぁナメとんのか、ワレ!目ぇ開けたまま寝とったらシバき倒すど!」と言う。しかし、PC相手に凄んでも詮無いことで、おれは意気消沈のまま仕方なくやってみると、今までよりさらに重くなってるではないか。今さら元に戻すワケにも行かず、おらぁもぉホンマ目の前が真っ暗になったね。

 ここまで来たら、軽く開ける方法を見付けるしかない。通常の「サイトを開く」での軽量化対策に何かまだ未知のモノがあるのかも知れない。おれはネットを探しまくったが、どんなけ探しても上に書いた3つの設定以外さしたるものが出てこない。それどころか、サブサイトは見捨てられた機能であるってな風な不吉なモノばかり見付かる。一方で面白い発見もあった。「ライカ伝」等の懐かしさとシュールさが一緒になった作品で知られる寡作のマンガ家・川崎ゆきお氏がかなりヘビーなHPBの遣い手であったことだ。氏のサイトは実に4万ファイルからのボリュームがあるらしい。おれのはまだ1万6千ほどだ。まだイケる。

 最も手っ取り早い回避策は、サイトを開かず、個々のページを開いて運用してくことなんだろうけど、それならそもそもサイト分割なんてしない方が良かったワケで面白くない。絶対に何かあるハズだ。
 そぉいやここまでは専ら「ツール」⇒「オプション」の中の設定をあれこれ弄繰り回して、動作条件を変えることで何とかしようと目論んで来たのだが、どうもそこには答えが無いように思えてきた。そんなこんなで疲れ果てて何気に、これまで使ったことのない「ビジュアルサイトビューを開く」っちゅうのを試してみた。

 ・・・・・・キチガイみたいなメッセージは出ず、サブサイトは直接、そしてほぼ一瞬で開いたのだった。こぉゆうことこそマニュアルに書けよ!!

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 ともあれ、取り敢えずの延命策は成功した。動作の感じからすると、あと数年は問題なく使えるのではないかって印象だ。そりゃぁHPB自体が販売停止になるリスクはあるし、従来の機能が今後のヴァージョンアップでどこまで保証されるのかも不透明だから、もちろん安心はできない。そもそもベースとしてるWindowsにしたって8以降の迷走ぶりが凄まじく、また、世の中はどんどん脱PCが進んでいるようにも見える。アセンブラやCobolがしぶとく生き残っているように、実は新しい仕掛けに頼らず、古典的なhtmlのみでフルスクラッチで記述するのが案外最もホームページを長持ちさせるのかも知れない。

 かくしてようやくサイト側の作業も目処が付いたな、と思って胸を撫で下ろしていたある晩、一通のメールが到着していた。弱り目に祟り目、熱燗にアタリメ、それは7年間使ってきたDTIブログの終了を知らせる内容だった・・・・・・。

2013.09.29

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