「シズカナカクレガ」ヘヤフコソ
ネット「無し」生活


これこれ、これです。2万チョットで買ったの。

 2週間ほどの間、家に戻ってもネットのない、もっと正しくいうとPCのない生活だった。新しい土地で、新たにネット契約をせんといかんのに加え、このところのPCの不調がますますひどく、このままだと完全にクラッシュしちゃんうぢゃないか、ってな不安定ぶりで、PCのフタを開けるのさえ怖くなってたのである。

 おれは元来TVは観ない方だから、入居した小さな部屋にも置いてない。いや、まぁ会社としてはいろいろ気を遣ってくれて、買ってあげるとまで言ってくれたのだけど、情報はネットからいくらでも入手できるのだし、会社に行けば新聞もあるんだし、それに大体、YouTubeあたりからの拾い動画を繋いだだけみたいなしょうむない番組ばっかしになっちゃって以前に比べてより一層必要を感じなくなってしまっている。おれは丁重にお断りした。同じ伝でどうせ使わないって理由で電子レンジも辞退申し上げた・・・・・・これはちょと後悔したかも(笑)。
 PCも閉じてると本当に静かだ。引っ越したばかりで室内はガランとして空漠で、多分、入居前に新しく張り替えられてるのだろう、蛍光灯の光を反射する壁紙の嘘くさいほどの白さがより一層侘しさを掻き立てる。

 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 思えば、家に帰ってスーツを脱ぐと条件反射的にPCを立ち上げるような生活になって10年くらいになる。以前はどうやってたのかが思い出せないくらいに、もうそれは当たり前のルーチンになっていた。

 最初に買ったのはどこのだったっけ?とにかく白いデスクトップだった。宅配にすりゃエエのに、送料が惜しくて電車で持って帰ってエラい目に遭ったコトだけは覚えてる。降りた駅で力尽きてタクシー乗るくらいなら初めから送ってもらえ、っちゅうねん(笑)。
 ちょうどi−Macが売り出されて爆発的なブームになる前後だったような気がする。OSは一世を風靡したWindows98で、CPUもメモリも家庭用としてローエンドに近い機種だったけど、どだい家の回線だってアナログの56kbpsとか今の感覚からすれば死ぬほど重いヤツだったから、まぁそれなりに釣り合いは取れてたのかもしれない。そんなんでも何年かは楽しく遊べた。
 他人を巻き込むのが大好きなおれは、ネットから落としたエグい画像をムッツリな同僚たちに見せたりなんかして、何人もにPCを買わせたものだ。そうそう、モロにi−MacのWindows版粗悪コピーといえるSOTECの「e−One」がバカ売れして、おれの出鱈目な口車に乗せられてそれを買ったのも5〜6人いたと思う。ああ、SOTECも今は会社もブランドも消滅しちゃったな。栄枯盛衰は世の習いとはいえ、ITはホントに移ろいが早い。
 最後、このPCはウィルス対策ソフトをいい加減にしてたせいで調子がおかしくなり、そのままオシャカになってった。とは申せCPUが366MHzとか、大切に使ってたとしても遅かれ早かれ限界はすぐに来てたろう。

 次に買ったのはDELLの「Inspiron」ってノートブックだ。家の回線環境がCATVに替わって劇的に速くなったのもあって、気合い入れて張り込んで、結構しっかりしたスペックのを購入した。途中でメモリも積み増しした。OSはスカタンやハズレの多いWindowsの中では名作と言えるXPに進化していた。
 DELLはいろいろ陰口を叩かれることも多い通販BTOブランドの雄だが、おれはこのモデルが今まで所有した中では一番印象深い。ホームページ始める気になったのも、こいつが快適でもっといろいろ使ってみたいって気分がベースにあったからだ。ただ、プラスチックのシボの質感や駆動系のうるささはやはり安っぽく、ちょっとどこか見かけ倒しの高級感、あるいはパチモン臭さが最後まで漂っていたのはご愛嬌だったが・・・・・・。
 一般的には一時ほどの勢いがなくなったと認知されてる気がするけど、DELLはおれの中ではかなり好印象のブランドだ。実はそれほど安くもなく、同じ値段で2ランク上のスペック、ってな売り方をするところがミソだろう。おまけにチョーシ乗って選択パーツをグレードアップすると空恐ろしい値段になる。また、ローン組むとやたら金利が高いのも大きなマイナスポイントと言える。ともあれ、もう買うこともあるまい。
 これは何年使ったっけ?だんだんと動きがおかしくなってきて、ブルーアウトが増え、そして正常起動しなくなった。何となく愛着があって、今でもタンスの中に置いてあるハズだ。

 そいでもって先日まで使いまくったのが東芝の「DynaBook」。会社の人が、デスクトップ撤退して背水の陣で頑張ってるハズだからいいんぢゃないの!?ってな、まことに根拠の薄弱な推奨を信じたのである。
 買ったのは秋葉原の電気街をウロついてて、裏通りにあった今は無きLAOXのコンピュータ館でだったと思う。そろそろ経営がおかしくなりかけてた時期だったのか、猛烈な値引きに加えてメチャクチャなポイントつけてて、それでオールインワンのプリンタやら外付HDD,USBメモリやらなんやら一杯付けた。それでもポイント余ったので、小物類も同時に買ったような記憶がある。
 OSは薄幸の32bit版VISTA。だいたい起動音をロバート・フリップにやらせたあたりからコイツは方向性をトコトン間違えてたのかもしれない(笑)。それでもメモリをソフマップかどこかでサードパーティ買って0.8GBお釣りの来る4GBまでズープアップして、パワードモニターにMIDIコントローラ、元からのHDDやオーディオI/Fにプリンタ、ファンでPCを強制空冷する台、ポートが足らんのでUSBの増設・・・・・・と、まるで這えずりまわるケーブルで筐体がメデューサの頭みたいな状態になってコイツは頑張った。
 しかし、どことなく華奢な印象が当初からあったのも事実だ。スピーカーはやたらと音のでかいハーマンなんちゃらがついてたのは良かったが、画面を畳んだ時に止めるツメが2本ある代わりに妙に細かったり、画面の下の縁の部分がエラく熱を持ったり、CPUの冷却口の穴が小さかったり、何となく物理的な余裕っちゅかキャパシティが小さそうだなぁ〜、と思いながら使ってたら、やはり逝ってしまった。調べてみて分かったのだけど、冷陰極管はダイナブックの泣き所らしい。

 何たることか、企業でのオフィスユースは未だにXPが盤石の地位を築いてるというのに、おれはただのホビーユースでVISTAさえも終わってしまったのである。貧乏なのに、シクシク。

 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 今、目の前にはメタリックレッドの富士通の新しいノートPCが鎮座してる。Windows7の64bitでCore−iなんちゃらってCPUで、メモリは4GBで・・・・・・ってあまり詳しいことは良く分からない。とにかくまぁ特段の不便も感じることなく機嫌よく動いてる。
 ・・・・・・ってーか、踊らされるのはもう沢山だ、って気持ちが先に立ってしまい、もうあまり細かいことは知りたくもないっちゅうのがホンネだ。回線引くのとコミコミなら本体価格2万円チョットだなどとと電気屋の店員がゆうから、それなら元のPC修理して、別に回線契約して、なーんてゴタゴタ面倒になるより手っ取り早いから決めただけのことだ。

 ぶっちゃけもうどぉでおいいのである。元来薄い方だったけど、より一層デザインにもメーカーにもスペックにも興味が湧かなくなった。画像を整理してホームページを作る、あるいは暮れに年賀状をこしらえる、って作業があるから仕方なくPC買ってるだけで、ネットブラウジングしてメール打つだけなら最早ケータイやスマホで充分だろう。OSだってそんな、64bitなんて必要感じないし、どだい出回ってるソフトのほとんどは32bitばっかぢゃん。それを変換して擬似的に64bit環境の上で走らせてるだけだ。
 それかあらぬか、世界中の企業はなかなかXPより先に行こうとしない。無理してリプレースに巨額の資金を投入する必要を最早感じていないのである。マイクロソフトは躍起になって無理やり需要を掘り起こそうとしてるけど、この数年の深刻な経済状況にあって、そうホイホイと丸め込まれるバカもいないわけで、完全に技術はニーズを徒に追い越してしまったままだ。

 最先端技術にさえ倦む時代なんだな、といささか寂しくなった。

2011.09.03

----Asylum in Silence----秘湯 露天 混浴から野宿 キャンプ プログレ パンク オルタナ ノイズまで
Copyright(C) REWSPROV All Rights Reserved