「シズカナカクレガ」ヘヤフコソ
性能は少し足りないくらいが面白い


初詣でナニゲに45mm/F1.8で撮った年を越して残った紅葉。悪くないっしょ?

 MFT(マイクロフォーサーズ)に移行したことについては、これまで何度か書いた通りだ。最初のキッカケは、フルサイズの性能はともかくあまりの重さとデカさにいささか難渋、辟易してしまったことからだった。

 ちなみにボディはハイエンド機の「EM−1」ではなく、ミドルグレードの「EM−5」を選んだ。これはハイエンドがモデル末期で、新型の中級機とあんまし性能的に変わらなかったのが理由としてはいっちゃん大きいけど、結果的にはそれくらいで良かったと思ってる。ちょっとばかし軽いし、より小さいし、画像処理エンジンとか画素数、最高感度、手ブレ補正、防水性あたりが概ね一緒なら、他の細かい部分はおれ的にはあんまし関係ない。
 アカンこっちゃと思いつつレンズは何だかんだでいつの間にか6本に増えた。4本は純正のズイコーレンズだけど、2本のヘンテコリンな魚眼は怪しい中華レンズだったりする。フィッシュアイなんてタマに遊べたら十分。飛び道具に大枚叩いたって仕方ないではないか。でも純正の4本にしたって「Pro」って名前に付くハイエンドなのはズームの2本だけで、単焦点の2本はフツーに安いヤツだ。こっちはすごく小さくて軽い。後はそうだなぁ〜・・・・・・換算35〜40mm前後のちっこい単焦点があったらもぉ十分かなぁ〜?換算90mmは普段使いにはちょっと望遠過ぎて、後ろに下がり切れない時に困る。

 つまりサイズ・重量だけでなく、コスト面でも随分と身軽な構成になった、っちゅうこっちゃね・・・・・・って、そうしてシステム・リプレースした途端にメーカー分社化で身売り、っちゅうのだけは勘弁してほしかったけどな(笑)。まぁ、ブランド残ったのは不幸中の幸いだったが・・・・・・でもねぇ、いくら部門が赤字っちゅうても祖業だけは残した方がエエって思うで。

 閑話休題、こうしてせっかく機材一式を更新したのに、クソ忌々しいコロナの感染拡大と、その尻馬に乗ったかのようにメディアが垂れ流す無責任な情報が作り出した国全体の空気のせいで、あまり存分に撮りまくれてはいないのがスゴく残念ではある。それでもこうしてあまり肩肘張ってない機材で写真を撮るのは何だかとても楽しい。
 フルサイズ、それも買った当時は破格のスペックのハイエンド機、プラス腐っても鯛(笑)な金帯のF4小三元レンズちゅう構成からすると、絶対性能ではやはりちょと苦しいな、って時はそりゃぁ〜、ある。あるさ、もちろん。ぶっちゃけ性能面だけで見ればMFTでアドバンテージを感じてるのはフォーカスポイントの数と手ブレ補正(・・・・・・この驚異的なスゴさは使うと分かる。歩留まりが飛躍的に向上する)くらいなもんで、やはり高精細さだとか暗部の粘り、高感度耐性なんかでは、巷間とやかく言われるほどではないにせよヤッパシ八ッ橋、ちょと負けてる。ボケ量はどうでも良いんだけどさ・・・・・・まぁ当然だわな、軽く小さく、値段半分以下になったんだし、これで何もかんも同じやったら誰もフルサイズ機なんて買わへん、って。

 ところが不思議なコトに、それだからこそ楽しく思えてるナンギな自分がいる・・・・・・こっからが今日の話題だ。

 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 結論から言うとこの楽しさって、限界性能がフルサイズにはちょっと及ばないってトコから来てるんぢゃないかと思ってる。言うまでもなく全然及ばなかったらやはりこれは悲しくなるばかりで楽しくはない。ちょっとの塩梅、その微妙な辺りとでも言えば良いのだろうか。

 単純に比較はできないけど、乗り物に例えるならホットハッチとかクォータースポーツの面白さに似てるかも知れない。どっちも最高速度とかゼロヨンといった限界性能では、当然ながら本格的なスポーツカーやリッターバイクには負ける。でも、操って楽しいってコトでは負けてないどころかむしろ楽しかったりもする。軽いし、目一杯回せるし、下りではむしろ突っ込める分速かったりするときもある(・・・・・・いやまぁ危ないけど、笑)。もっと速くするためにあちこち弄り回すのも、比較的お手軽かつ安価にやれて敷居が低い。
 だからって、軽トラや原付ではやはりナンボなんでも遅すぎる。まぁそぉゆうコトだ・・・・・・って、世の中には奇特な御仁が沢山いらっしゃって、敢えてそぉいったんでバカッ速に仕立て上げるなんちゅう、変態チックな趣味性を発揮してるケースもある。趣味の世界なんだし、それはそれでアリだ。写真で言えば針穴写真機で作品撮るようなモンだな・・・・・・否定はしないが、おらぁやらんです、ハイ。

 或いは、家で作る料理の楽しさなんかもちょっと近い気がする。食材だけでなく、調味料や香辛料、調理器具等々はプロのお店みたいに完璧に揃ってはない。だからって、それらを全部揃えて作って楽しいか?っちゅうたら、必ずしもそうでもない。あったら持て余すし、家庭の台所では身動きが取れなくなるかもしれないし、それにちょっと足りなかったりするのをあれこれ工夫するから家庭料理は楽しいのだ。だからって、冷蔵庫の中はほぼ空っぽ、見渡しても塩コショーくらいしかない、包丁も俎板もない、ってな状態ではどうにもやはり面白くない。

 十全には揃ってないけど、一とか二ほど貧弱ではない、七〜八なトコの残りを、あぁでもないこぉでもないとあれこれ創意工夫で埋めてくってのが、実はおれにとっての道具の醍醐味なんぢゃないかって気がしてる。
 別におらぁマゾヒストではない(むしろかなりのサディストだ)から、「苦労は買ってでもしろ」とばかりに好き好んで苦労したいと思ってるワケではない。否、逆である。加えられるあれやこれやの工夫は、要するに一種の支配欲の歪んだ発露に他ならない。ほれ、良く道具が扱いやすいのを「コントローラブル」なんて言ったりしますやん。コントロールって訳すと「制御」とか「統制」とか「支配」って意味でしょ?正にアレだ。
 この心理が実はとても幼児性が強くて、要するにただの我儘であるコトは良く分かってる。子供に知育玩具を与えるようなモンだ。あまりにチャチだと飽きてすぐ放り出したり、反対にやりたいことが到底実現できなくて癇癪起こしたりもするだろうが、だからってレベルが高かったら高かったで今度は扱いかねて癇癪起こしたりするような心理に近い。

 ・・・・・・そう、支配したいのである。

 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 写真には自分で決めなくちゃならないファクターが沢山ある。構図や画角はもちろんとして、絞りの浅い深い、EVの明るい暗い、光の当て方、シャッタースピード、さらに現代ではホワイトバランスやISO・・・・・・ザッと列挙しても結構な数だ。そしてこれだけのパラメータを瞬時に判断して変更するなんて人間ワザでは到底無理だから、今は「オート」なんて優れた機能がカメラには備わってる。すべて機械任せにしちゃうフルオートから、絞り優先だのシャッタースピード優先だの、ISOオートだの、ホワイトバランスオートだのあって、そのおかげでユーザーは昔より遥かに速いペースでパカパカ撮りまくれるのだ。

 もしおれが他の趣味を持たず100%カメラに時間を費やし、さらには長考が許されるような対象物を撮る方向に行ってたら、フルサイズでも飽き足らなくなって、買う/買わないはともかく中判欲しがってたろうし、このご時世に抗うような、もっとアナログでマニュアル操作に拘ったいささか偏固な方に行ってたような気もする・・・・・・まぁ根がイラチだからそこまではねぇか(笑)。
 ところが実際はそうではない。楽器も弾きたいし、料理も作りたいし、最近はあまりにも時間が無いからやってないけど、もっと野宿もしたいし、チャリにも乗りたい。あれもしたい♪これもしたい♪もっともっとしたい♪っちゅうこっちゃね(笑)。ホンマこの歳になってもアホやな〜、って我ながら思うわ。
 それにそもそも専ら撮ってるのが、時間掛けてジックリマッタリ出来る代物ではない。ストリートフラッシングとまでは行かないまでも、まぁどしたってゲリラ的な撮影にならざるを得ないワケだし(笑)。

 そうした諸条件の制約を勘案すると、多用するちょと中途半端っちゃ中途半端な絞り優先オートではなく、実はフルオートなんかがおれには一番向いてるのかも知れない。それも可搬性の問題を抜きにすれば、って但し書きは付くものの、最新で色んな限界値が高いフルサイズのハイエンドモデルが良いに決まってる。実際、D810をフルオートで撮ったら、自分であれこれ弄り回すより簡便で失敗なく、クオリティ高かったりしたもん。
 その後も日進月歩でデジカメ内部の被写体認識や画像処理のアルゴリズムは進化し続けており、今やかなりAIに近付いて、何を撮ってるか?どう撮るか?まである程度判断した上で最適値を決定してるみたいだし、もぉバカチョンで構えてシャッター押すだけに徹するのが吉のようにさえ思える。やってるコトはスマホと変わらないけど、吐き出される絵だけはパッキパキに一眼らしい、みたいな。

 それでもそうはならず、さらには性能的にちょっと足りないMFTがこんなに面白く思えてしまってるのは、可搬性だけでなく(・・・・・・いや、突き詰めて考えると可搬性も「好きなように」持ち運べる、ってコトだから同じか)、どぉでも良いような枝葉末節にまで働いてしまうおれの支配欲をどこか逆に満たしてくれる余地があるからだろう。

 まぁ、そんなんよりも被写体を支配する愉悦の方が千倍勝るのは、今更敢えて言うまでもないことなんだけどね。だからモデル兼ペットは何人か持っておきたいです、ヤッパシ。


誰だ!?MFTはボケないって言ったのは!?(笑)・・・・・・これも45mm/F1.8。

2021.01.09

----Asylum in Silence----秘湯 露天 混浴から野宿 キャンプ プログレ パンク オルタナ ノイズまで
Copyright(C) REWSPROV All Rights Reserved