「シズカナカクレガ」ヘヤフコソ
Side-B Life



・・・・・・適当に拾って集めてみました。みんな頑張ってていいことだとおらぁ思う。

 日本古来の考え方に「ハレ」と「ケ」なる考え方がある。民俗学の泰斗・柳田國男が見出したもので「ハレ」は祝祭等の非日常、「ケ」は日常を指すとのことだ。日本の神道なんかとも深く関わる、漢字が伝わる遙か以前から成立していた固有の、そしてきわめて重要な概念である。それをここで単純化して説明できるほどの知識をおれは残念ながら持ち合わせていないのだけれど、ものの本によると「ケ」には「気」の字があてられる。そして、ウソかマコトか「ケガレ」とは本来「気枯れ」であって、命のパワーみたいなもんがマイナス側に落ち込んだ時期を指すのだとか。

 最新の民俗学の世界ではさらに研究が進み、「ハレ」と「ケ」はどうやら単純な聖と俗みたいな二つの対立関係ではなく、ニュートラルな「ケ」に対してプラス側の「ハレ」とマイナス側の「ケガレ」という状態が振幅、あるいは円環構造を持って成り立ってるものらしいってことが唱えられている。つまり聖性は「ハレ」にも「ケガレ」にもあり、それはなかなか複雑な表裏一体みたいな関係にある。「TOWN&COUNTRY」のロゴでおなじみ陰陽(インヤン)マークだって、巴になった黒白の中にポチッと白い点、黒い点があるっしょ。陰は陽を内包し、陽は陰を内包するっちゅうあれですよ、あれ。キング・クリムゾンの「太陽と戦慄」のアルバムジャケットだって、太陽と月が合体したデザインなんだけど、同じような意味になってる。PartTとUがトップナンバーととラストに配されるのも陰陽の対比を表してるし、曲自体もそれぞれ極端にやかましいパートと無音に近いくらいに静かなパートで構成されるのも同じ伝だ。

 光りあるところに影がある・・・・・・は忍者アニメの傑作「サスケ」の名文句だが、いずれにせよ何事にも陰と陽、昼と夜、太陽と月、表と裏は存在し、どうやらそれらは決して善悪なんかと簡単に紐づけて考えちゃいけないし、どちらかだけでは成り立たない、ってことなんだろう。もちろん人生においても、だ。

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 震災が起きてしばらくした頃だったか、一緒に温泉に行きませんか?という一通のお誘いのメールが来た。ぶっちゃけ「またかい!!」って思った。実のところ、そぉいった類のメールはこれまで結構来ており、そして、99%はロクでもないものでウンザリしてたのだ。要は何を勘違いしたのか、もてないクンなワニが言葉遣いだけは丁寧に、自分のことはちっとも書かず都合のいいことばっか並べ立てた挙句、図々しくご一緒したい、みたいなものである。こんなんばっかり続いてしまうとホント、人間猜疑心の塊になってしまうのは許して欲しいと思うくらい、世の中ワケの分からんキティガイに満ち溢れてる。
 ところがそれは違っていた。きちんと自己紹介しているだけでなく、ご自身の撮られた奥様の美しい温泉画像を添えられてさえも来たのである。名前を仮にCさんとしておこう。

 礼には礼を以て応えなくてはならない。おれも画像を添付して返信した。最初の返信メールの内容はまぁありきたりな内容だったが、すぐに返事が来てさらに美しくも過激な画像が何葉か添えられていた。ネットからのいい加減な拾いものでないことは、作風や映ってる被写体である奥様の様子から明らかで、抑制が効きつつも丁寧でウィットの感じられるメールの文章とも併せて、この人は信用できるな、って気がした。そうして本格的なやり取りが始まった。

 デジタル一眼に急速にハマッたのもこのCさんの影響である。ホントもぉ、ムチャクチャ写真上手なんだわ。大胆な構図と鮮やかな発色、あと上手い人って、絵になる場面とか角度、タイミングを見付けるのが実に上手い。スノボの上手な人がゲレンデのちょっとしたコブやギャップ、斜面を見付けては軽〜くスタイリッシュにトリック決めてくのと似てる。下手クソほど、肩に力入れまくって大層にパイプやパークに入って無理やり大技かまして痛い目に遭うのだ。
 そいでもって、シチュエーションが温泉だけでなく、所謂野外露出やスワップパーティーと多岐に亘ってたところから、そろそろ今回の本題である「B面生活」についてが始まる。ちなみに、この「B面生活」って言葉はCさんのメールにあったものを使わせていただいてる。

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 今更改めて申し上げるまでもなかろうが、おれは性的にインモラルとされることにはたいてい興味があるし、理解もある。嫌いなのはロリコンとホモだけだ。理解できないのはネクロ系とかそんなんくらいで、あとの守備範囲はひじょうに広い方だと思う。
 だいたい、当事者同士の問題に正常も異常も、普通も変態も、善悪も正邪もヘチマもあらへんやんか、そんなん外野の雑音やんか、と思うのだ。常識や規範に縛られてどないすんねん!?って思うのだ。

 大上段に語ってみたものの、実のところ考えるばっかで実践的な行動に移せてなかったのがおれの、っちゅうかおれ達のナサケないトコなんだけど、言い訳させてもらうならば、そこはやはり子はかすがいの甘納豆ってヤツで、子供の存在がきわめて大きい・・・・・・え?お前ら温泉行ってはあられもない写真撮りまくったりしてるやんか!?って?
 とんでもない。あんなのはセクシャリティの観点からすれば全くもって児戯に等しい行為だ。無いに等しい。もちろん温泉行にはセクシャリティの切り口だけでは語り尽くせない魅力がある。それはそれでいいもんだから、こうしてずっと続けてきた。否定する気も貶める気もない。ただやはり、セクシャリティとしてはじぇんじぇん弱く、おれからしてみればA面生活の一部なのである。

 いつだったか、ヨメと語り合ったことがある。もしおれ達がずっと二人だけだったら、子供授かることがなかったら、もっとディープな世界に、おそらくは何年もしないうちに間違いなく踏み込んでだろうね・・・・・・と。ヨメはエェ〜ッ!そんなん〜、とか言いつつもかなり同意してた。子育てという時間的な制約に加え、経済的な制約もあって、放埓と淫蕩の世界にはなかなか入りたくても入って行けなかったのだ。
 あ!誤解しないでいただきたい。別に子供たちの存在が疎ましいとか、邪魔だ、と言ってるワケではない。ただ、身体や時間軸は一つしかないのだし、あれもこれもいいトコ取りみたいに全部得ることは不可能だ、と言いたいだけだ。それを諦念と言われるなら甘んじて受けよう。でも、よっぽど阿漕な商売で金がうなってるような仕事でもない限りぶっちゃけムリよ、絶対。

 そうして気付けば結構な歳になっていたのだった。まぁ、おれとヨメはずいぶん歳が離れてるし、それに彼女は普段からムチャクチャに体型維持も若さ維持も鍛えまくってて、これまで一度も実年齢に見られたことがないのが自慢なのはいいけれど、それでもまぁ10代20代からすりゃいい歳であることには変わりない。見事にオッサン・オバハンである。もう、このまま老境を迎えてくのかなぁ〜、なんて鬱屈した気持ちもあった。

 そこにCさんからのメールだ。ある種の天佑のように思えた。

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 おれはヨメに、かいつまんで言うとおよそ次のようなことを丁寧に話した・・・・・・子供たちも大きくなってだいぶ手が離れてきたし、おれもあと10年もすれば老境に達するだろう。オマエだってその若さは尊敬に値するけど、客観的に考えていつまでもは保てない。それで正直なところ、おれはこのままずっと何もないまま行くのはやはりしんどい。オスカー・ワイルドぢゃないけど、やはりどこか「幸福より快楽だ」って思ってる。どうしようもなくおれはそぉゆうタイプなんだ。つまり、有り体に言ってもっと性的にディープなトコに一緒に足を踏み入れたい。具体的にそれが何か、っちゅうと、いろいろあるんだけど、ともあれBDSMは夫婦ではなかなかゴッコの域を出ないし、それに生活の隅々まで四六時中支配/被支配、規律だ調教だってのは息苦しくなってしまうだろうからそれは我慢する。まぁクリトリスやラビアにピアスくらいは入れさせてもらうかも知れないけど、とにかくこれからいろんなことを考えながらやってこうや・・・・・・と。

 そりゃ〜タマげてましたよ。ドン引きもしてましたよ。逡巡もしてましたよ。随分と気が小さくて常識人な彼女としては、これまでの温泉巡りでもかなりブッ飛んだことだったのだし、何を改まっていうのかと思えばそんなこと切り出すのだから、けだし当然ではある。もっと早くに言ってくれてたら、とも言われましたよ(←オイオイ!笑)。

 爆食系ラーメンと同じで(笑)、最初からり全部入りだとハードルが高い、後先顧みずいきなりスワップとかでは病気やら妊娠の不安もあるから怖い、ってんで、ちょっとづつステップ踏んで行くことにして、まずは簡単なトコから、ってなった。不安の払拭は大切なことだろう。
 とは申せ、彼女にしても一旦OKはしてみたものの、いざ実際行動に移すとなると弱気の虫が顔を出して、渋って愚図って仏頂面だった。しかし、一眼レフの綺麗に写る効果もあってかだんだん快感になってきたみたいである。本当に喜ばしいことだ。その過程を記録した画像もすぐに数百枚になった。Cさんに上達を褒めていただけるのも励みになってる。

 しかしながら、撮りためたそれらをここで発表する気は全くない。今後も無いだろう。このサイトには特定のジャンルを設けないことを決めてるとはいえ、ある種の線引きだけは少なくとも必要だろうと思ってる。それこそがA面・B面ってことだと思う。

 ともあれB面生活も世の過激な方々からすると実にささやかなんだけど、しかし着実に始まった。ここに来て思ってもみなかった障壁が立ち現れたとはいえ、まぁ日本なんて狭いもんだ。何とかなる。

 ここは一つ「アナザー・アサイラム」の立ち上げでも考えてみようかな?(笑)・・・・・・ウソウソ!そんなヒマありませんってば。

2011.09.04

 
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