「あれ〜!?アップするカテゴリー間違えてやいまへんか?」
タイトル見てそぉ思われる方もいらっしゃるかも知れないが、ここで間違ってはいない。今日はちょっと長くなるが、温泉でのそぉゆう話だ。
最初に長島温泉とはどういう所か?から話すことにしよう。この温泉は伊勢湾に面した木曽川と長良川に囲まれた河口付近に位置する、巨大遊園地やプールを備えた日本でも有数の一大レジャーランドである。元々は油田だか天然ガスの開発をしようとして掘削したものらしい。
名古屋から近いので愛知県の温泉と思われているが、実際は三重県の木曽岬町って町に属している。周囲には昔地理で習った輪中集落が点在する。輪中があるくらいだから低湿地なわけで、昔は土地があまりまくってたのだろう、とにかくべらぼうに広い。どれくらいかっちゅうと、1000m四方くらいある。ざっと30万坪だ。そんな中に遊園地やプール、松竹梅にランク分けされた巨大な旅館群等がある。
ぶっちゃけ個人でいくよりは団体向きのところだし、もっと忌憚なく言うと、普段おれが取り上げてるような侘しい温泉情緒みたいなものは一切ない。ガーッと何百畳もの大広間があって、各旅館共用のホントに千人入れそうな千人風呂があって、何軒もの2次会用のスナックやカラオケ部屋があって、みたいな・・・・・・と書くと、ちょっとけなしたみたいに取られてるしまうかも知れないが、それはそれ、これはこれ、セグメントが違うのだから仕方のないことだ。団体向けとしてはトップクラスのアメニティを完備してると言えるだろう。ことに広大な敷地に施設がひしめく遊園地は、安易にキャラクター商法に頼ることなく、質実剛健・中身本位に絶叫系マシンを充実させている点など、ひじょうに好感が持てる。
もちろんおれも団体で行った。それも何年かのうちに2回。そして2回とも、このカテゴリーに記してかまわないような出来事があったのだ。こんな温泉、他にない。
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もう20年ほど前の話だ。社員旅行だった。おれはまだ新入社員で、初めて体験する「社内行事」とやらに当惑したり辟易したりしながらも、持ち前の「保身ゆえの陽気な順応性」を発揮してそれなりに上司や先輩たちに馴染んでいた。
宴会が終わり、二次会も終わりして、大概へべれけになったおれも含めた7〜8人のオトコたちは、一部屋になだれ込んでさらに飲んでいた。平社員ばかりではなく役付者もいた。
----おい!お前らみんな、そろそろ風呂行くど!
声を上げたのは、Sちゃんと呼ばれてた隣の課の役付者だ。当時40過ぎくらいの独身で、単身、新世界あたりの鉄火場(もちろん非合法の)に行っては博打打つのが趣味、とゆうナカナカ素敵に豪快なオッサンである。反面、繊細でシャープな仕事ぶりと、面倒見の良さから誰からも慕われていた。
----はいっっ!と、全員が従ったのは言うまでもない。
最寄の大浴場は最上階にあったと思う。大きな階段を上がったところが入り口で、右が男湯、左が女湯となっている。ここで急にSちゃん声を潜めておれの耳元で囁いた。
----おい!オマエ!オマエや!ちょっと女湯見て来い。
----え!?僕がですか!?
----オマエ〜、新入社員やろうが!それとオマエ、ちょぉ来い!
と2歳ほど年かさの先輩も手招きされた。「一緒に行ったれや!先輩やろが!?」と囁かれたらしい。
まことに理不尽っちゃ理不尽な命令ではあるが、まぁ、おれもかなり酔っ払ってたので、それほど抵抗もなかった。それに時間も時間だ。Sちゃんにしたって、どぉせこんな時間には誰もいないだろうと踏んで、若い衆のおれたちをけしかけてるに違いない。
大きな暖簾をくぐると左側に引き戸がある。音を立てないように静かに開けると、目の前が靴脱ぎになってて、そこにはなんとスリッパが一足あった。驚いた。こんな時間に誰か一人入ってる、ってコトだ。靴脱ぎの横はおれの背丈より少し低いくらいの目隠しになっている。普通に立ってりゃ中は見えるが、おれと先輩はマンガに出てくる泥棒のような「抜き足差し足忍び足」の姿勢でいたので向こう側は見えない。
数秒の逡巡、および目配せの後、あたかもシンクロナイズドスイミングのペアが揃って潜った水中から伸び上がって顔を出すような敏捷さで、おれたちは衝立の向こうをシュッと見たのだった。
!?
3mほど奥、大きな長椅子の上で仰向けになって、こちらを頭にして素っ裸の女が寝ている・・・・・・。
----いますいますいますいます!いました!ハダカの、たぶんネーチャンが寝てます。
----何ぃっ!?ホンマか!?
----ホンマです!!
・・・・・・無論、これらのやり取りもまた息を殺したヒソヒソ声だった。
見張り数名を残しながら、おれたちは代わりばんこで見に行った。若い女だ。どうやら酔いつぶれてるみたいで、まったく起きる気配がない。それにしてもだらしない。思いっきり立て膝で脚広げてる・・・・・・いわゆるM字開脚だ。
あまりの爆睡っぷりに、おれたちはだんだん大胆になってきた。最初は遠巻きに見てただけだったのが、近寄るだけでなく、ついには足許にまで回りこんで、中身もジックリ鑑賞するなんて振る舞いにまで及びはじめた。よく考えずともムチャクチャである。バレたら警察沙汰だったろう。
最初にけしかけたSちゃん、打つ方の極道はやっても、買う方はどうやらオクテでサッパリらしい。これ以上ないっちゅうほどにゆるんだ顔して、抑え切れない爆笑をこらえながら、「ポッコン」などと意味不明な感想を漏らしている。
とはいえ、そんなに長い時間ではなかったように思う。もちろん、こんなことで性的満足など全員あるわけもない。平たく言えば、首尾よく大掛かりなイタズラが成功した時の悪ガキの充実感でもって、おれたちは改めてちゃんと男湯の方に入っていった。意気揚々と。
なお、このとてつもなく無防備なオネーチャン、おれたちには見覚えがあった。社員ではない。おれたちを乗せてきた観光バスのガイドだったのである。
翌日、このガイドさんを囲んでおれたちが記念撮影したのは言うまでもない。事情の分からないまま、彼女はニコニコと営業スマイルを振りまいていた・・・・・・悪い連中だ、おれたちは。
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それから何年後だろう、またもや会社の旅行でおれは長島温泉に出かけて行くことになった。
威張るワケぢゃないけど、今よりはるかに髪の毛も潤沢にあったし、体型もスリムだったのもあってか、いや、今のようにあちこちに気を遣うこともなく、自由気ままに仕事してたオーラが出てたのか、その頃のおれはそれなりにモテた・・・・・・っちゅうか、人間誰しも人生そういう時期はある。妙に何事もトントン拍子でツイてた時期だったのである。
そんな星巡りの時ゆえか、会社で不思議におれになついてじゃれ付いてくる若い女の子がいた。若いも何も新入社員だ。率直に言って、不美人に近づかれても張り倒したくなるだけだが、ナカナカにその子は美人だった。決しておれの主観や、お話を盛り上げるための脚色で言ってるのではない。彼女は人並み以上の容姿や器量が求められるポジションに据えられてたのである。つまりは、誰が見てもそうだったのだ。
それにしてもツキ、っちゅうのはホント、まるで潮干狩りのアサリのようなもんで、あるところには固まってあるものらしい。
部屋割りを聞かされておれは驚いた。通常このような団体旅行では数名での相部屋が原則なのに、なぜか一人部屋があてがわれたのだ。幹事が言うところによると、旅館がちょっといっぱいなのと、コストを叩きまくったのが影響したらしく、布団部屋みたいなところが回ってきたのだという。
----どうする?エエ部屋でみんなと一緒か、布団部屋みたいなんで一人か?
----そら一人ですわ・・・・・・っちゅうか、その部屋「出る」ようなトコちゃいますやろね?
----いや、それは分からん。
着いて部屋に入ると、ちょっと天井に屋根だか階段が干渉して一部斜めになってるのと、窓からの眺望がきかないくらいで、あとはフツーの部屋である。全然悪くない。念のため壁の額縁裏返したが、御札が貼ってあることもなく、押入れ開けたら仏壇が鎮座してることもなく、本当に単に条件がちょっと落ちるだけのようだ。添乗員部屋、と呼ばれるものかも知れない。
風呂に行ってあとは宴会だが、まだ少し時間がある。おれは観光旅館特有の異様に分厚い座布団に座り、タバコを吸った。そして漠然と考えた・・・・・・最近の自分はたしかに何だかツイてる気がする。今日だって何でか知らんが、ワルサしろと言わんばかりにこんな一人部屋だ。旅行には件の美人も来てる。もし、このツキが本物なら、あのコを部屋に連れ込むことだって、そっから先の進展だって、たいした苦労もせず易々と実現できるハズだ・・・・・・そう、つまりある種の大胆な賭けをしてみようって気持になったのだ。
宴席の献杯のやり取りの隙を見計らって、おれはメモの切れっ端に部屋番号だけ書いたものを、そっけなく彼女に渡した。ヘンにコチャコチャ書いては、賭けの意味がなくなってしまう。
「ちょっと最近寝不足やったんで、今日はもぉ寝ますわ〜。ホント、付き合い悪ぅてスンマセン」、とか何とかテキトーな理由をつけて、不粋な野郎共はまいた。部屋に戻ってもすることはない。ボーっと冷蔵庫の缶ビールを飲みながらTVを見るだけだ。強がりでもなんでもなく、別に期待で胸が高鳴ることもなかった。
いや、実のところ、全然期待してなかったといえば嘘になるけど、いくらなんでも無愛想なメモの切れっ端一枚で、かわいい女の子が鴨ネギでホイホイやってくる可能性はひじょうに低いだろうと思ってた。だからこそ賭けなのだ。それどころか事態がまったく悪い方に展開して、来ないだけならまだしも、「部屋に誘われた〜!」などと言いふらされて、悪評が立つことだって十分ありうることだ。あ、ちょと短慮だったかな〜?しまったかな〜?まぁ、あかなんだらあかなんだ時のことか〜、ハラ括るしかしゃぁないな〜、何のこっちゃない、胸が高鳴ってるんは不安のせいやないか・・・・・・
控えめな音でドアがノックされた。
・・・・・・それから後に起きたことを、微に入り細をうがってポルノ小説まがいに逐一述べるのは本意ではない。結論だけ言うと、おれは自分に課した賭けに快勝した。今さらの躊躇も、ヘンにもったいぶった駆け引きもほとんどないまま、催眠術にかかってるかのようにすぐに彼女は落ちた。部屋に来て15分と経っていなかった気がする・・・・・・って、最初からそのツモリで来たのだから、そりゃそうか(笑)。それにしても異常に早かったなぁ。
結局、夜半過ぎまでおれは、そのコとセックスしまくったのだった。まったく太ってはいないのに、何かクラゲや沼地に挿入したらこんな感じだろうな〜、というような、まるで骨格の感じられない、それまであまり出会わなかったタイプの感触だったことだけは明瞭に覚えている。
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こうして語ったってもう時効だろう。二回目の方のエピソードから数えても10数年経ったのだから。人殺しても15年なんだしさ。
ああ、登場人物のその後にも少し触れておこう。Sちゃんはこの翌年だったか、家業継承の問題が持ち上がり、会社を去っていった。求心力のあった人だけに、とても寂しかった。美人の彼女も2年後くらいだったか郷里に戻り、昔から付き合ってた、っちゅうカレと結婚した。まぁ、気楽なラブアフェア、息抜きのつまみ食いだったワケだ、お互い。
ともあれ、長島温泉には爾来、訪ねる機会に恵まれていない。行けばまた、何かあるのだろうか?二度あることは三度ある、とも俗に言うしね(笑)。
・・・・・・しかし、よしんばあったとしても、恐らく今のおれは思い切った一歩を踏み込もうとはしないだろうな。
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