「シズカナカクレガ」ヘヤフコソ
これってメディアの思想介入!?


これだってそのうち・・・・・・

http://www.ponycanyon.co.jp/より
 これまで何度もおれのエッセイの舞台として登場した京都の下宿、「K村荘」にはマジメな住人もいた。1階に住んでたO君などがそうで、物静かで大人しく、試験前にはキッチリ勉学に励む、典型的なマジメ学生だった。それでも彼は冗談も分かり、飲めるクチでもあったので、それをいいことにみんなで彼の部屋に酔っ払って押しかけて「いじる」ことがあった。O君は傍若無人なおれたちの振る舞いにも、それなりに楽しそうに付き合ってくれていた。

 そんなある夜、おれたちは同じように勉学に励む彼の部屋に押しかけ、その時点で相当酔っ払ってたおれは、「Oク〜ン〜、いっつもよぉ勉強してんのう〜。オマエ、どんな勉強の仕方してんねん〜?」とか言って机の袖の引き出しを開けたのだった。

 ・・・・・・1冊の本が出てきた。詳細なタイトルは忘れたが「清岡純子写真集」だった。あの(笑)。

 言うまでもない、日本のロリコンブームの立役者と言える女流写真家だ。ネットで調べてみたら、亡くなってもうずいぶんになるらしいが、80年代前後、彼女の撮った毛もロクに生えてない少女のヌード写真集はフツーに本屋に平積みになっていた。
 次の日からいきなりO君はそれまでのイメージはどこへやら、「ロリータO」などと不名誉なアダ名で呼ばれるようになり(無論名づけたのはロリコン大嫌いなおれだったけど、笑)、しばらく後に泣く泣くその下宿を引っ越して行ってしまったのだった。

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 世の中ややこしくなってきている。「パタリロ」のキャラで言うなら、バンコランとマライヒはすっかり市民権を得てしまったけれど、ヒューイットは今や変態を通り越して犯罪者だ。
 そんな風潮を受けて、サイトタイトルとは裏腹に、おれのHPを取り巻く状況が何だかにわかに慌ただしくなってきた。出だしは数日前、家に戻ると契約サーバから到着していた一通のメール。ちょっと全文を書き写してみよう。

    平素は弊社******レンタルサーバーをご利用いただき誠にありがとうございます。
    さて、今回ご連絡差し上げた内容ですが、規約違反についてです。
    弊社で巡回を行っていたところ、お客様のサイトがアダルトサイトに該当すると判断致しました。
    ご存じかとは思いますが、弊社ではアダルトサイト及びリンクにつきましては規約・禁止事項にて
    固くお断り申し上げております。
    お手数ですが、早急にご対処頂き、ご対処された内容をお問い合わせフォームよりご連絡下さい。
    尚、3日以内にご対処ならびにまたご連絡がない場合は、不本意ながらアカウント停止等の措置を行いますので、
    予めご了承下さい。
    弊社禁止事項のご確認も合わせてご確認願います。

 !?ガーン!ショエエ〜ッ!!わいのサイトが「アダルト」や、っちゅうんかいっ!?・・・・・・と、それからもっかいやり取りがあって、どうやら旅行に関するギャラリーが引っ掛かったそうなのだ。所詮ユーザは店子に過ぎないので、大家の言う規約が規約である以上守らねばならない。即座におれは無関係なのも含めて削除した。
 そりゃもう激怒しましたよ!おれはハダカの画像は載せても絶対ポルノグラフィーにはしたくないと思って、かなり慎重に構成してきたつもりなのに、一方的に鯖屋は「アダルト」の烙印を押しやがった。判断根拠を示しやがれ!!・・・・・・怒っても始まらないけど、ホント、レンタルサーバ屋のアダルト規制とやらは、きわめて記号化されたものであるらしい。

 しかし、「アダルト」ってなんだ!?

 良く考えると、ここには「国内法に抵触した」、とか「猥褻物である」との文言は一言もない。ま、長々と論文まがいのことを書くのは本意でもなければ能力もなく、読まされる方としても退屈極まりないだろうし、結論を書こう。
 実は「アダルト」の定義なんてどこにもないのである。あいまいな業者側の自主規制と検閲を、「アダルト」っちゅーコトバで大ざっぱに一括りにして、その時々の都合に応じて拡大解釈しながら(つまりマージン大きく取りながら)、ユーザーを管理しているだけなのだ。
 無論、チャタレイ裁判以来「猥褻」の法的判断にも時代による移り変わりがあって、万古不易のものではない。判決は時代時代で変わっている。ただ、そこには多少アタマの固い連中の勘違いとかもあるにせよ、表現の自由や芸術性との葛藤を巡る真剣な議論や民意の反映、あるいは国際情勢への勘案もある。

 業者の振りかざす「アダルト」にはそれが決定的に欠けている。何だかとても幼稚だ。小学生がちょっと女の子と仲良くなったりしたら、周囲から「ヒュ〜ヒュ〜♪」とか囃し立てられるのと似てる。加えて日本的な・・・・・・いささか下卑た喩えだが・・・・・・「沈香も焚かず屁もこかず」的な当たらずさわらずの姿勢も感じる。

 とまれ、このような規制が性の記号化や秘匿化を促進するのは今さら言うまでもないことだろう。でも、それ以上に表現行為の様式の固定化と表現者の特権階級化(あんさんみたいなシロートがそんなんしたらあきまへんがな〜、みたいな)を助長する気がして、おれは不安でならない。

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 しかしながら、おれにも反省すべき点が多々あるのは動かしがたい事実である。自己の良識に基づいてコンテンツを作ってはいたけれど、現代のその辺の法理のトレンドについて知識が不足してたことは否めない。これは危険なことだ。悪気がなくたって人は罪を犯すことが可能なように法律は作られている。
 好意的にお付き合いしてくださってる各サイトからのいろいろな助言もあり、おれだって無知の涙はご免こうむりたいので、泥縄ながら一夜漬けで勉強してみた。無味乾燥な法律条文も自分と関わるかもしれないと思うと、俄然面白く読めてアタマに入る。

 おおむね、おれの旅行写真が関係しかねない法律は、言うまでもなく「刑法175条、わいせつ物頒布等」と「児童ポルノ法」あたりだろう。家族が風呂入って遊んでるだけなのに大層やな(笑)。

 前者についてはあまりに有名なので条文は紹介しないが、コンテンツ全体の文脈およびおれ自身が煽情性をまったく意図してないこと、社会状況に照らして画像のいわゆる「露出度」から問題ないと考える。それこそモロ、な「アダルト」書籍・サイトは星の数より多いし、各週刊誌の方がよっぽどえげつない。天下のヤフーのトップページからでも、30秒もあればそのようなサイトにたどり着くことはいくらでも可能だ。おれのが叩かれるいわれはない。
 それだからいい、とは決して思わないし、「赤信号、みんなで渡れば怖くない」という気もないが、いずれにせよ司法の見解も一定の含みを残しつつも、基本的に表現者の権利を守る方向での見解を示しているので大丈夫だと思う。

 こっちはこれくらいで良いだろう。問題は後者だ。想像以上にこちらは2つの点で深刻な状況になっている。

 1つは日本の社会情勢だ。小さい子供が犠牲になる事件があまりに多過ぎる。ことに最近3タテで起きた、小さな女の子が犠牲になる痛ましい事件はここで紹介するのもおぞましい。アタマの弱そうなロリコンペルー人、ありゃなんだ!?こんな1銭5厘の価値もない不法入国者、すぐに死刑にしろよ、って思うぞ。今市の一件は、捜査が難航しているそうだが、ホンマ早く解決して欲しい。んでもってさらには、奈良の塾の事件だ。被害者となった女の子の犯人の同志社大生に対する「キモイ」っちゅー直覚の鋭さはたしかなものだったのだ・・・・・・不幸な結果を招くほどに。

 話はそれるが、現代はまったくもっておめでたい時代だわ。強盗致傷で逮捕されても退学にもならず、個人情報保護だかなんだか人権がどうやらで、犯罪者はがっちり守られてるため、昔のように前歴紹介もままならない。そんな状況で、この幼稚なテムパリ逆上大学生を雇ってしまった学習塾が責められるのは、いささか気の毒にも思えるぞ。

 さて、もう一つとは「子供のハダカ」を巡る国際情勢だ。これはもうとにかく問答無用の規制一本やり。それで小児犯罪が減るとはちっとも思えないし、各国には小児愛に関する独特の文化があったりする。日本の「稚児」なんかもそうだな。客観的には、プロテスタント系キリスト教義の押し付けのように思え、そこまで蛇蝎のごとく忌み嫌われねばならんのかと思う。
 でも、おれは個人的には冒頭に書いたとおり小児愛は大嫌いだ。無性の人間を相手に性を享受するのは、おれの倫理の中では許されない。

 ともあれそのような状況を背景にしては、「児童保護」を錦の御旗に、児童ポルノ法はますます厳格運用の方向に傾くだろう。第2条第3項第3号の条文は、まぁ、外圧に基づく掘っ立て法案だったこと、法改正の文言メンテナンスの煩雑さの回避、「ややこしいのは運用でカバーしてよ」って意思等の下に書かれてると思われるのだが、いくらでも拡大解釈可能な危険な文言である。

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 さて、このような状況でおれはどうゆうスタンスを取るのか?長くなったので簡潔に書こう。

1.サーバは移転。

 これはもう移転。ハダカ一切ダメよん、ぢゃどうにもなんない。すでにいくつか候補は見つかっている。地雷も踏みそうになったけど(笑)。「○apanHotWeb」、ここは間違いなく地雷です。
 外国サーバなら、ホスティングサービス自体にややこしい規制なくて手っ取り早いけど、そこには行かない。いわゆる「アダルトサーバ」にも行かない。何だかそれは志が低い・・・・・・つまり自分への背信になるからだ。

2.大人の裸体については、従来どおり掲載。

 無論、国内法の現行の運用の範囲でだ(ひらたくゆうと、陰毛はOK、ミはNGだな)。そもそもおれは露骨ないわゆる「ハメ撮り」とかを発表することには興味ないし、煽情性という点ではコンビニの一般週刊誌でさえ、はるかにおれの拙い画像群をしのぐ。
 おれがこのサイトで表現したいのは、「個人的な旅行の記録」、およびそれを通じて「裸体そのものは猥褻だなんだ、っちゅー前に美しく、そして特別扱いされて隠匿されるべきではない」ということと、「風景/ヌード写真の既成のイデオムに沿わなくとも、感動を与えることはできるのではないか」ってこと、それだけだ。

3.子供の裸体については封印。

 前条にかかわらず封印。ボカシとかでごまかしたりしない。上で述べたように、隠匿に犯罪抑止の有効性があるとは思えないし、開放することが逆に助長するとも思えない。やるヤツぁ必ず、どんなリスクを犯してでも必ずやる。
 とはいえ、画一的な摘発の機運が高まってる中で敢えて火中の栗を拾う気はない。それに何より、おれは自分の子がかわいい。「子ゆえの闇」「親バカ」でけっこう。現在のヒステリックな魔女狩りの風潮に「敢えて意図的に」乗ることにする。だから封印
 裸体・猥褻に対して比較的ラジカルな姿勢のおれがこうゆう措置を取る、ということで、現代の幼い子供たちが置かれた状況がきわめてシリアスであることに、読まれた方が少しでも思いを馳せていただければ、と本気で願う。
 加えて、おれの画像に煽情性はないとはいえ、ここまで強力に社会から子供の裸体が消去されてしまってくると、セクシャリティの精神的成熟度の低い者(キューピー人形にも欲情するようなヤツね、笑)が群がってくる可能性がないとは言えない。それはどうにも我慢のならないことだ・・・・・・とは申せ、画面に若干写りこむくらいは今後もあるだろう。

 再び脱線するが、O君が買った件の清岡純子は、その活動歴からすると、少女の聖性をあざとく演出しながら、その向こう側の、善悪も酸いも辛いも含む成熟した「女のサガ」の萌芽を確信犯で撮影していた気がする。そしてそんなことにも気づかず、バカな男共が「芸術」の二文字を免罪符に、写真集を買いまくることさえも予見していたのかもしれない。つまりは「毒」と「悪意」をテンコ盛りにしていたのだ。
 ある意味、作品集が市場から抹殺されたことは、日本の覚醒したレズビアンの嚆矢としては「正しく作品の意図が伝わってしてやったり」だったろう。「いや〜アホなオトコはん相手によぉさん儲けさしてもらいましたえ〜」みたいなヘラズ口をあの世で叩いているかもしれない。
 それはまぁいいとして、3話に1話はしずかちゃんのハダカが出てくる「ドラえもん」原作だって、そのうち絶版・廃刊の憂き目に遭ったりしてね(笑)。

 さらに出来すぎた符合だが、これ書いてる最中、知り合いのお子さんが誘拐未遂に遭った、って知らせを受けた。ホント世の中、状況は最悪だわ。

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 図らずも前回のエッセイの具体策のような展開になってしまった。どうにもおれは奇妙な「シンクロニティ」の力が備わってるのかも。

 今回の経緯ではしかし、収穫もあった。分かったつもりになっていたM・デュシャンの「泉」やJ・ケージ「4分33秒」といった判じ物のような作品が投げかけるものを、おれは体験的に了解することができた。すなわち、あらゆる「意味」は作者の意思が無論重視されるとはいえ、結局は社会的関係のあわいの中に成立するものだ、ってことを身をもって知ることが出来たのだ。

 ・・・・・・「芸術」は当然、「猥褻」も含めて。


補足:
 ことロリコンとなると引き合いに出されることの多い、「不思議の国のアリス」の作者L・キャロルだが、その多くの伝説にはかなり誤りがあるようだ。そのことをおれは本稿を書くに当たっていろいろ調べる中で知った。よって本文で軽々に引用することは避けた。是非、下記のサイトを一読されることを奨める。たいへんな労作だと思う。

「The Rabbit Hole」http://www.hp-alice.com/index.html

2005.12.16
----Asylum in Silence----秘湯 露天 混浴から野宿 キャンプ プログレ パンク オルタナ ノイズまで
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