とにかく野球だった! |
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本格(!?)野球マンガの嚆矢っちゃぁ、おらぁこの2作だと思う。
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https://www.amazon.co.jp/、https://www.kosho.or.jp/より
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球技全般に殆ど興味のないおれでも、今回のWBCはそれなりに愉しめた。
でもホンマ、基本的におらぁ「国威発揚」とか、ごっつニガテなんっすよ。あぁゆう萎びたナショナリズムとかホームタウンデシジョン炸裂しまくりのノリって、何か寒イボ出そうになるくらいイヤ。だから日本が優勝したこと自体、社交辞令的に「良かったねぇ~」くらいは口にしたりするものの、そんな歓喜の雄たけびを上げるようなことはまったく無かった。
ほれ、大阪やったらタイガースファンとかいてますやんか、トラ縞のハッピなんか着て大挙してファナティックに騒ぐの。エエ歳こいてアホちゃうか!?って心の底から思ってる。自分が実際にプレーしてんなら一生懸命になるのも分かるけど、プロとは申せ所詮は他人やんか。いやいやオマエ、贔屓っちゅうんはそもそもそぉゆうモンちゃうんかい!?って言われたらもちろんその通りなんだけど、どうしても自分にはピンと来ないのだ。
・・・・・・思えば、おらぁガキの頃から野球がそんなに好きぢゃなかった。その頃はスポーツっちゃぁまず野球だった時代にも拘らず、だ。
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しかしながらある程度長じて来ると、ガキの外での遊びがほぼ大体野球ばっかしになる時期があった。サラリーマンがゴルフやって当然って思われるんと一緒やね。靴ズリズリして線引いて、人数が集まればちゃんと3塁まで拵え、人数が足りなければ2塁までしかない三角ベースだ。ボールはソフトボールでは大き過ぎて子供の手に余るし、硬球は危ないってコトで、軟球ばっかしだったな。三角ベースでかつ場所が狭い時なんかは、フニャフニャした軟式のテニスボールで手打ちなんてこともたまにあったっけ。
でも軟球だけでは野球にならない。バットとやらグローブが要る。もぉオチは見えてるだろうが、極端にズレた父親が専横を振るう我が家では、これがナカナカ買ってもらえなかったりしたのだった。理由は知らんけど彼は野球をヒドく嫌ってたんで、「TVを前に瓶ビール呑みながら巨人阪神戦に齧り付く」な~んて昭和な風景はおれんちには一切なかった。
まぁ、これについては利害が一致したっちゅうか、上述の通りそこまで主体的におれが野球やりたいって思ってなかったんで、人格形成に暗い影を落とすこともなかったものの、それでもガキのコミュニティの中で、道具を何も持ってないのはとかく不便だし、それが原因でマイノリティの側に追われかねないのは事実だ。それにいつまでもツレから借りてるっちゅうのもカッコ悪いし。
そんな時、正に天からの贈り物のようにしてグローブだけでなく、あんまし誰も持ってないファーストミットまでが転がり込んで来た。くれたのは玩具のブローカーみたいなことしてた母方の叔父さんだった。そぉいや何故か母方の一統には、当時でも既に日本には数軒しか残ってないブリキの玩具工場やってたり、卸し問屋に勤めてたりと玩具関係の仕事してる家が多かったな。
当時はスポーツっちゃぁまず野球な時代だし、子供の遊びも野球だろ?ってんで、一山当ててこましたろとサンプル品か何かが回って来たんがその家にあったんぢゃないかと思う。そんな玩具の流通に載って売られる程度のモンだから、ミズノとかゼットとかはたまたローリングスとか、誰もが見知ったチャンとしたメーカー品でなかったのだけは間違いない。革だってひょっとしたら牛ぢゃなく豚だったかも知れないな。
余談だが、この叔父さんの家にはそんなんで、行くといつでも最新の玩具が大量にあって、そこの息子で従弟に当たる2歳年上なコーチャンってのがいて、ホンマおらぁ彼が羨ましくてならなかった。一世を風靡したスパイ手帳、ニンテンドー躍進のキッカケとなった光線銃、充電式でコースの上を走るマッチボックスのミニカー・・・・・・etcetc、何でもあった。
強いて問題挙げるなら、恐らく多くがサンプル品だったせいか、ちょっと足りてなかったり脈絡がなかったり、明らかにツマんないのが大量にあったり、って時もままあったコトだろうか。女の子向きのなんかは見向きもされずに大量に積み上げられてたりね・・・・・・あ!それと子供が見ても一目で分かるようなパチモンも多かった。
彼はそんな「玩具エリート」な環境にあった甲斐あってか、マジックヨーヨーの初代日本チャンピオンになって何度かTVに出たりもしてたな。「TVジョッキー」出てあの伝説の白いフォークギター貰ってたのが、これまたムチャクチャ羨ましかった記憶がある。
ハナシが脱線した。野球だ。そんなちょとパチモンっぽいとはいえ、晴れてグローブとミットが手に入り、気分的におれは補欠からレギュラー、或いは二軍から一軍に昇格できたような気持ちになれたのだった。バットだけでなく保革油なんかも小遣いで買って一生懸命塗り込んで柔らかくして、土曜日の午後にある程度アタマ数が揃いそうな時は、ケッコーな頻度で野球に加わるようになった。どうだろ?小学校3~4年くらいからだったろうか。ファーストミットはキャッチャーミットよりもさらにマイナーだし、あるとそれなりにベンリなんで、良く貸してくれって言われてた記憶がある。
野球に元々興味が薄かったとはいえ、みんなでワイのワイのゆうて遊ぶこと自体はとても楽しかった。以前書いた通り、おらぁ生まれつきギッチョだったのをムリヤリ矯正されたオカゲで、左右どっちでも投げられる代わりにイマイチ肩の力が弱い気がしてたんだが、みんなでやってるとそこまでヒドく劣ってるワケでもない。それよりむしろ大半は馴れとか経験値の問題だ、ってコトにも気付けた。打撃にしたってしばらくやってるうちに、平均レベルくらいにはなれた。何のこっちゃない、ただただおれはスキルアップの機会を父親から阻害されてただけだったのだ。客観的に見てホンマにむちゃくちゃヒドいハナシやと思うわ。
そんな想いとは関係なくゲームは進んで行く。所詮は軟球だからか打たれた球は初速だけは鋭くパコーンと飛んでっても、そっからの失速がひどくて、何となく弾道は番手の高いアイアンで打ったみたいな感じになる。ボールカウントはストライクだけでフォアボールなんかも無し、でも振り逃げはあり、ってのがローカルルールだった。喰いタン・後付けアリみたいなモンだな。ホームランは公園の縁より外ってなってたけど、実際そんなにも飛んでくことは滅多になかった。まぁ長閑なモンだ。
おれは何せ遠投能力に劣りはするものの、ヘンな知恵だけは回るからか、ピッチャーやらセカンド・ショートになることが多かった。ただ、ファーストやサードはガキの草野球でもやっぱし栄えある花形ポジションだから、それなりに巧いヤツが入ってたっけ。
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こんな風に「みんなで集まって野球」っちゅう流れ、残念ながらそこまで長くは続かなかった。もう少し学年が上がって来ると、各々習い事が増え出したり、もっと本格的に打ち込みたい連中は少年野球やリトルリーグに入ってしまって、段々メンツが揃いにくくなって来たのである。
ちなみに今はどうだか知らないが、当時おれたちの中では白地に緑の少年野球より、白地に紺なリトルの方がさらにハードでストイック、みたいなイメージあったっけな。そんなんだから6年生の終わり頃には、あんましもぉ毎週のようにはやってなかった記憶がある・・・・・・また余談になって申し訳ない。
冷静に考えるならば野球が絶大な人気を博してたのは、実はおれたちの世代よりもう少し上の世代なんぢゃないか?って気がしてる。「巨人・大鵬・玉子焼き」なんて言われてたのも、振り返ってみるとおれが物心ついた辺りだし、野球人気に一役も二役も買ってたマンガにしたって、おれたちが実際に野球やる頃にはいささかマニエリスティックっちゅうかキワモノっちゅうか、「侍ジャイアンツ」だとか「アストロ球団」、「アパッチ野球軍」といった荒唐無稽なトンデモ系にシフトしつつあった時期とオーバーラップしてるもんな(・・・・・・それ言い出したら、「大リーグボール」に代表される魔球のあれこれだって大概ムチャクチャだったけどさ)。
それに大体、都市近郊部では宅地化の進行により空地がドンドン減ってったし、野球はバット振るから当たったら危ない、な~んてもぉ野暮天の極みのような規制が持ち上がって来たりもしたし、逆に空地だらけな地方では過疎化が進んで子供の数が集まりにくいしで、ある程度のアタマ数がどしたって必要な野球っちゅうゲームにとって不利な状況は拡大する一方だった。サッカーやバスケの方がまだ人数少なくてもそれらしいことがやれちゃうモンな。それにスポーツっちゃ野球しかなかった時代とは多様化の進んだ今は違うのだ。
現在、子供たちが公園でボールで遊んでる姿を見ても、キャッチボールしてるのは今や1割くらいぢゃなかろうか。大半はサッカーでドリブルやらリフティングやってたりするもん。
おれも別に野球がかつての人気を取り戻して欲しい、なんてこれっぽっちも思ってない。むしろ今回のWBCの盛り上がり見て、まだまだ日本にもこれだけアツくなれる野球ファンの人口があったんだ!?って驚いたくらいなんだし・・・・・・もちろんそれは間違いなく世界の野球史に名前を刻むであろう大谷翔平がメンバーに加わってたことが最大の要因だろうが。本当に彼はスゴい。まだまだ若いのに、稀人だけが持つまるでギリシャ神話の世界の中にいるようなオーラさえある。
ともあれWBC、おれみたいなんでも少なくともこうして昔を偲ぶよすがになったっちゅうのは、やはり良いイベントだったんだろう。 |
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2023.04.02 |
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