「シズカナカクレガ」ヘヤフコソ
アコギ弾き語り地獄


この時はエレキも持ってったな〜。

 ・・・・・・自慢ぢゃないが、おらぁアコギが昔からめっちゃニガテだ。正直、苦痛でさえある。

 何故なら、弦がもぉ硬すぎるのである。手ぇ痛いやんか。おれ的にはありゃぁ尋常ぢゃない。エレキについては、ノーキー・エドワースがバンジョーの細い弦を1弦に流用するっちゅう荒ワザ業でもって、その後のエクストラライトゲージっちゅう道が切り開かれた。そのオカゲでプリングオン/オフもチョーキングもむちゃくちゃラクになったワケだけど、アコースティックは基本、弦の振動が表板を共鳴させ、それが内部で複雑に跳ね返ることでアコギらしい「あの」音が出てるワケで、やはりエレキ並みに細い弦では張力が低くていささか無理がある。素材もフォスファーブロンズっちゅうて、硬い素材が巻き弦に使われてたりもするしね。
 同じ理由なのか単にアメリカ人がデカいからなのか、スケールもフェンダー/マーチン系の25.5インチと長目が多い。だからより張力は強くなり、押弦するのはしんどくなる。おれの使ってるギターは俗に「ニューヨーカ−」とか呼ばれる小振りで少し短いギブソンスケールの24.75インチなんだけど、それでも元からの弦の太さもあってちょとしんどい。もっと短いのだと、最近急速に台頭して来てる台湾のアヌエヌエなんかは24インチとムスタングと同じショートスケールだったりするが、う〜ん、そこまで行くとやっぱし音がちょっとちゃうかも。

 オマケに弦高がエレキより高くなってるのが一般的だったりする。これもチャンと仕方のない理由があって、エレキは生音で少々ビビリが出ても音詰まりさえなければ、アンプ通せばまず無視できるレベルだったりするのが、アコギではそうは問屋が卸してくれない。なもんでどしてもやや高めになってるのだ。まぁ、往年のタコマとか、最近だとメイトンだとか異様に低いのもあるにはあるものの、おいそれとは手が出せないくらいにお高い。ありゃぁどんな風に上手くセッティング出してんだろうねぇ。ネックとフレットの仕上げに何か秘策があるんやろな。だから逆に安物は取り敢えずマージン稼ぐためにナットとサドルが尋常ぢゃないくらい高くなってたりする。
 そぉいや中学の初めの頃フォークギターがブームになって、クラスのヨシダ君ってのが、近所のダイエーのレコード屋で売ってたいっちゃん安い7,500円の死ぬほど弦高高いのをジーチャンに買ってもらって、気合でFを押さえてたっけ。もぉ楽器弾いてんだか筋トレしてんだか分かんない

 要は、ただでさえヘタなおれにとっては、アコギって存在自体がもぉ拷問のようにとてもしんどい。

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 解決法はいくつかある・・・・・・ってか上にもぉ答えは書いたぁるわな。少し短か目のスケールのギターに細い弦張って、弦高を限界まで下げる。これしかない。
 2つまでは既に実践してる。ミディアムスケールなギターなんで1点目は最初からクリア、2点目は2サイズダウンで現在最も細いセットである010−047に交換・・・・・・してもやっぱり硬いやんけ!クソッッ!
 弦高は・・・・・・弱ったなぁ〜、実は買った時からトラスロッドのネジ頭がナメちゃってて六角レンチがスカスカで回らない。道理で中古で買った時、異常に安かったはずだわ。でも現状ネックは綺麗に真っ直ぐなんで、ムリクリそんな逆反りセッティングにすることもなかろう。そんなんであとはナットやサドル削るか、トップの僅かな浮きを修正するくらいしか手はないが、純粋なアコギならともかくブリッジの真下にピックアップが埋まってて、さらには配線が裏側を這いずり回ってるエレアコで、それは素人の作業だとちょと手に余る。壊してまいそうだ。

 ただ、こうしてあれこれやって音はどないやねん?っちゅうと、やはり通常の012−053の弦を25.5インチのスケールのに張ったんと較べると何だか音全体がモッサリとくぐもった感じになってしまう。メリハリがなく低域だけがやたらボコボコ元気な、高域の煌びやかさとかツンツンしたクリスプ感に欠けたベシャッとした音だ。たとえ弦を新品のに交換しても、何だか初めからちょっと使い古した弦みたいなユルい音と言おうか。好意的に言えば中低域の利いたドスの利いた音とも言えるかも知れない・・・・・・ベースかよ!?
 もちろんエレアコでアンプ通すから、ある程度イコライザーで調整できるとはいえ、やはり大元がそんな音では限界がある。馬子にも衣裳とは行かんのだ。ダンエレクトロがどしたってレスポールの音にならんのと一緒やね。

 ・・・・・・って冷静に考えると、どんなに良い音色で鳴ったところで、根本的に技術力が不足してちゃどぉにもならんワケで、この歳で今さらながらの基礎練習と、まずはカバーできる曲を増やす日々だったりもする。ドローン(パワー)コードでガシガシ弾くならナンボでもやれるが、丁寧かつ繊細に押弦してアルペジオだスリーフィンガーだ、な〜んて辛気臭くて殆どやって来なかったんだもん。
 でも、「地方あるある」で何かの音楽のイベントに出さしてもらうっちゅうたら、これがもぉ基本「アコースティックの弾き語り」ばっかしなのでやらんとしゃぁない。困った困った。エレアコなんてアンプ通してんだからエレキと一緒やんけ!って思うんだけど、どうにもソリッドギターは田舎では旗色が悪い。思うにガツンと歪んだディストーション、っちゅうだけでもぉみなさん拒絶反応示してアウトなのではないか?って気がするな。

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 次は声の問題だ。

 ぶっちゃけおれはバンドやってた当時でも、歌には一切参加しなかった。そもそもコーラスとかハモるとかでさえ嫌いなのだ。ボーカルが一人歌ってりゃそれでジューブンだと思ってるから、コーラスやらハモりが入るような曲も作らなかった。70年代ハードロック辺りから入ったのが影響してるのかも。そんなんだからロクすっぽ人前で歌った経験がない。宴会の後の二次会でカラオケ行ったくらいのモンだろう。

 大体、自分の声が嫌いだったりする(・・・・・・まぁ、「自分の声が好き」っちゅう人の方が少ないだろけど、笑)。比較的カン高い声なのにどうにも透明感のない、安物の拡声器を通ったような声だと思ってる。何てーか周波数帯が狭い。かといってダミ声でさえない。オマケに永年の喫煙と加齢によるもんだろうか、音域だって随分狭くなった。低い方は昔から出にくいが、今は高い方も出にくいし、すぐに裏返る。それに何ちゅうか、腹から出てないんですよ。喉だけで出してる声って気がする。
 さらにはそうして喉だけで出してるせいだろうか、すぐに声が枯れるのもこれまた厄介だ。お声が掛かって出掛けて行ったらニギヤカシがおれ一人しかいなくて、べシャリで誤魔化しながら2時間も3時間もとなると最後はホントに声が出なくなって終了。唯一、救いがあるとするならば、まぁそこまで音痴ではないことくらいだろう。少なくとも#側にズラすことはないし。
 正に河内音頭の鉄砲節にある「お見かけ通りの悪声で〜♪」っちゅうこっちゃね・・・・・・って、あれは謙遜で歌ってるが、おれの場合はマジに悪声だ。発声法や音域はボイトレ等でどうにかなるかも知れないけど、声そのものの質だけはしかし治しようがない。

 そらもちろん、世界は広くて悪声のボーカリストなんてナンボでもいる。大フェバリットなP・ガブリエルはどうだ?ルー・リードだって、決して「良い声」ではない。T・ヴァーラインなんてアータ、ムチャクチャに音痴だったりもする。「あぶらだこ」・長谷川裕倫のあの声・唱法が美しいかい?横山SAKEVIに端を発するデスボイスやグロウル、スクリーミンなんてどぉなんよ?でも今や一般的・・・・・・でもないか(笑)。

 いやまぁ、これだけマイナーミュージック巡りばっかして来てんだからそんなこたぁハナッからよぉーく分かってた。百も承知だ。でも悲しい哉かなカナカナ蝉、おれに今与えられてる数少ない貴重な場ではそんなややこしいモン、全く求められてないし、やったらやったで金輪際お呼びが掛からなくなるだけだ。ナカナカ切ないジレンマではありますわ。

 さらにはおらぁ所謂「弾き語り」なアーティストに好きなんがおらんかったりする。古くは60年代反戦フォーク・・・・・・それで戦争終わったんかよ?ボケ!四畳半フォーク・・・・・・チマチマ、イジイジ貧乏臭くて鬱陶しいです。70年代のニューミュージック系・・・・・そぉゆうのがイヤだからおらぁ洋楽に行ったんぢゃい。最近の弾き語り女子・・・・・・曲も中身も金太郎飴で薄っぺらい恋バナ歌うな!せいぜい古いデルタブルースや、ネオアコブームの時のT・ソーンとかB・ワットをチョロッと聴いたくらいだ。そんなにハマらんかったけどさ。

 ギターはヘタやわ、声は悪いわ、ワケ分からん歌ガナるわ、オマケにフツーの歌へのモチベーションあらへんわ、ついでに言うならヴィジュアルも多少は痩せたとはいえ基本ズングリムックリの冴えないオッサンやわ・・・・・・では、まぁ常識的に考えてアカンわな(笑)。自分でもそぉ思うモン。そんなんが好き放題やったりしたら、すぐに「やらしてくれる場所、別に探しぃや。ココには向いてまへんで、オッサン!」って言われるのが関の山だろう。

 縷々述べたことから言えることは一つ・・・・・・おらぁ本来的に弾き語りにはあんまし、どころかじぇんじぇん向いてない(笑)。

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 ・・・・・・ぢゃ、何でしつこくやってるのか?

 多分、根っ子にあるのはひじょうに素朴で、何かしらの「繋がり」を作りたい、キッカケにしたい・・・・・・それだけだ。それを手っ取り早くやる手段だ。ギター一本ありゃぁなんとかなるし。

 その小さな繋がりが広がってけば、そのうちマイナーな世界の同好の士もひょっとしたら現れるかも知れない、って淡い希望を抱いてるのだ。そして驚くべきことに少しづつではあるけど、シナプスのようにそんな繋がりは着実に拡大している。市井に埋もれた善良な市民の仮面をかぶりつつ、実は傾きたい衝動を抑えてたり、なかなか理解されにくい拘りを堅持し続けてを日々を過ごしてる人は、極めて少数ながら老若男女問わず確実に、いる。ウソや思い込みではない。
 実は、何曲か演らせてもらう中には必ず1曲、「おれは好きなんだけど一般的なポピュラリティには欠けるような」歌をシレ〜ッとブッ込んだりしてる。すると不思議なコトに、必ず一人は現れるるのだ。終わった後に話しかけて来て、「実はあれ、メッチャ好きなんです〜」あるいは「まさかあの歌をこんなトコで聴けるとは思いませんでした〜」とか言ってくれれる人が。そしたらライン交換したりなんかして新たな交流が生まれる・・・・・・って、それが綺麗な女の子なら尚のこと嬉しいが、そこまで世の中甘くはない(笑)。
 それはともかく、この地に移り住んで僅か1年足らずってコトを考え合わせれば、これは客観的に見てもそこそこ上出来だろうと思うし、とてもありがたい。

 今月は何だかんだで7回やった。来月も現時点で4回やるのが決まってる。多分月途中でさらに何本か入って来るだろうから、同じくらいこなすことになる気がする。実にありがたいこってすわ。いやもぉ毎晩でも好いや!やる!ボク頑張る!ネタも増やしますから!(笑)。そのうち相手に応じて、エレクトロ系ユニットやらバンドスタイルやらメンバーが増えて多角でやれたらもっと楽しいだろうな。

 ・・・・・・などとアホな夢想に耽りながら、オッサンは今日もギター担いでニガテな弾き語りに出掛けて行くのである。


この時は急遽、メチャクチャ上手い人がドラムを叩いてくれました。
タイコが入るとやっぱし弾きやすいし歌いやすいよねぇ〜!!


2024.07.01

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