「シズカナカクレガ」ヘヤフコソ
エフェクターボード格闘記


取り敢えずこんな感じに落ち着きました。左上は今後の変態系拡張のための空きスペースです。

 「エフェクターボード」っちゅうのはどうやら和製英語らしく、あっちでは「ペダルボード」って呼ぶ方がどうやら一般的なようではあるが・・・・・・知らない人のためにちょっとだけ最初に説明しておくと、エレキギター弾いてる人の足許に小さな箱がいくつか並んでるのを見たことがある人は多いだろうが、あれがエフェクターである。ギターの音をあれこれ変える魔法の箱だ。基本的には大体どれもスイッチを足で踏んでON/OFFする。
 これが1つ2つのうちならまぁなんとかなるが、複数を一度に切り替えるのは大変だし、いちいち練習やライブごとに床に並べて結線するのも面倒だったり断線のリスクがあったり・・・・・・っちゅうコトで一つの板の上に並べたモノと思っていただいて良い。

 今回は、この所しばらくハマッてたこのエフェクターボードの新調について気楽に流してみたい。

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 過去に手持ちのエフェクターについてはケッコー書いてんで、そっから後をまずはザーッと述べてみよう。元々持ってたトーカイのコンプレッサー・オーバードライブ・コーラスにRATが加わり、コンプとオーバードライブは二軍落ちし、すぐに真空管アンプをプッシュするのに購入した貧乏人の味方、JOYOの”Roll Boost”ってブースターと、これまた貧乏人の友、BEHRINGERの”Echo Machine”ってのが投げ売りになってたんを追加したあたりからかな?

 前者はまぁ所謂ただのクリーンブースターなんだけど、+35dbと後続を破壊しかねない異常なレベルでブーストアップしてくれて色々他にも使い道がありそうなんで買った。たしか1,980円だったっけ。後者もコンパクトで多機能なデジタルディレイとしてはワリと早くに出た方で、中身はおそらくBOSSの劣化コピーだと思う。こっちも3,980円とかもぉ、ナンボ中華製とは申せありえないような値段で買った記憶がある。でもまぁフツーにエコーが掛かってくれたら何でも良いし、そうした使い方なら音ヤセもさほど感じられない。

 ところが、肝心のRATの歪みがどうにも性に合わないんですわ。中身はBOSSの超ロングセラー”DS−1”のクローンって言われてんだけど、かなり根本的なトコで間違ってる気がする。ディストーションっちゅうにはファズっぽいし、ファズっちゅうには何か中途半端で振り切った感じがない。そしてとにかく音が塩辛い。それでこれまた投げ売りになってたROCKTRON”Metal Planet”を衝動買いしたのが6年ほど前・・・・・・あぁ、これも一話デッチ上げてたな。5,000円だったっけ。詳しくはそっち読んでくらはい。これはおれ的には隠れた名作なんぢゃないかと思ってる。

 相前後して今度はワウペダルが欲しくなったんで、VOXの定番である”V847A”ってのを買った。ジムダンのクライベイビーが強気な値段なのをよそに、こっちは現品処分特価だか何だかで安くなってたのだ。効きのエグさではジムダンなんだけど、安さに負けた。さらに普段良く覗く楽器屋でフェンダーのチューナーがこれまたワゴンセールの投げ売りになってたのを追加・・・・・・まぁ、ホンマにロクなエフェクター持ってねぇな、おれ。ガラクタに近いのばっかしやん。

 ・・・・・・ともあれ、この5〜6年はこれらのほぼガラクタを直列に繋いでテキトーに鳴らしてた。安物だろうが何だろうが元々持ってたB4の紙くらいの大きさのボードには当然入りきらず、チューナーとワウは絨毯の上である。

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 キッカケはちょっとした思い付きからファズを新たに買っちゃったことだ。

 いや実はこの数年、「エフェクツベーカリー」って国産の激安ブランドの評判があまりに良いのが気になってて、それで試しに買ってみた、ってだけだ。ROWINやMOOERといった新進気鋭の(!?)中華ブランドと筐体が同じだったりするんで間違いなく中身は中華製だろうが、そもそもファズなんてローファイなモンで、最近のブティック系ハイエンドなんてハッキリ言って立ち食い蕎麦が超高級店を名乗って一杯1,500円取るのに等しいのだから、取り敢えず試してみるにはこんなんで十分だろう。

 ・・・・・・ところが世評通り、コイツが意外なまでに使えるヤツだったのだ。小さすぎて006P電池が入らないほどの箱とおよそ楽器系には似つかわしくないユルくて可愛いイラストとは裏腹に、チャンと凶悪な往年のファズの音がする。どうやらロシアンマフのクローンらしい。”Larks’ Tongues in Aspic PartT”の最初、ヴァイオリンの神経症的な5拍子クロマチックのリフの裏でンモォ〜ッってな感じにフェイドインしてくる6/8⇒4⇒3〜って不穏なロングトーン、あんなんがいとも容易く出せる。

 ・・・・・・俄然、他のも欲しくなっちゃった。

 思えば長年愛用のトーカイのコーラスは電子接点が最近不調で、踏んでも切り替わらなかったりする。ディレイはクリーンでのセッティングのままだと歪ませた時にエコー音がかぶり過ぎて濁るのが気になってたりもしてた。ぶっちゃけ歪みには薄くリバーブが掛かってる程度で充分なのだ。
 そしたらお誂え向きにコーラスとリバーブがそれぞれ単体でも安いのに、セット販売でさらにお安くなってるではないか。「おやつセット」とかゆうて2台で1万円少々とはホンマもぉ無茶苦茶である・・・・・・で、ポチッ。
 ついでに申し上げるとこの2台もひじょうに素晴らしい。そらまぁ値段が値段だけにアラは皆無とは言えないものの、特にストレスを感じることもなくフツーに使えてしまう。むしろ変調幅が意外に大きすぎるのが嬉しい誤算で、その気になればウニョウニョとかボエンボエンと変態系な使い方までできる懐の深さまで持ってる。侮れない存在だわ、エフェクツベーカリー。

 しかし、従来のコンパクトエフェクターの2/3くらいのサイズとはいえ、既に何台かはみ出してるボードに入るワケがない。ただでさえ足の踏み場もないほどいろんなガラクタに溢れたおれの部屋がますますややこしいコトになって来てる。それに歪みをOFFにしてコーラスとディレイをONにペペペッと一瞬で踏み変えたりとかはやっぱし面倒だ。それにこれからジジィになって足腰弱ってくっちゅうのに、足がもつれてコケたらどないすんねん?

 ・・・・・・そうだ!この際エフェクターボードも新調しちゃえ!

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 まずはスイッチャー探しからだ。

 スイッチャーっちゅうのはフットスイッチだけが横一列に並んだもので、今はシリーズとプログラマブルの2種類に大別される。シリーズってのは、要はボード上に点在するエフェクターのスイッチを足許の一ヶ所に固めるためのものだ。例えばエフェクターがA・B・C・Dの4つ、スイッチがP・Q・R・Sの4つあって、AにはP、BにはQって直列(シリーズ)で基本は1つのスイッチに1つのエフェクターを紐付けてそれぞれON/OFFするってなシンプルな仕組だ。2台以上を一つのスイッチに紐付けももちろんできるが、一斉にON/OFFすることになる。
 そんなん意味ないやん!って思われる方もいらっしゃるだろうが、世の中直列でないとイヤ、って御仁が意外に多いのと、古いエフェクターだとスイッチングノイズがひどいとか、OFFでもエフェクター通れば音色の劣化があるとか、踏み間違えが減るとかで、こうしてスイッチだけは別に独立させたいってニーズは根強くあるのだ。
 これに対しプログラマブルっちゅうのは、上記の条件でいうとAとCはP、BとDはQ、AだけはR、A〜D全部はSみたいにユーザーで自在に組み合わせることが出来る。

 そう考えたらおれのニーズからするとプログラマブル一択なんだろうけど、今売られてるのはどうもおれ的にはムダに複雑化してて鬱陶しいのである。バンク切り替えで15パターン登録できます・・・・・・とか、そんなに要らんっちゅうねん。ややこし過ぎるわ。それも記憶させるのにナントカスイッチを長押ししてランプの色が変わったらどぉのこぉのとか、そんなことするんやったらフツーにマルチエフェクター買いますって。
 おれが欲しかったのは、昔ながらのスイッチングリレーでせいぜい4パターンくらいが登録できるシンプルなヤツだったのだが、これがもぉどこにも売ってない。
 これはかなり途方に暮れましたな。いい加減スッパリ諦めてただ直列に並べるだけにしようかとも思ったくらいだ。

 しかしそれでもしつこく探してたら、最もシンプルなA/Bスイッチャーに唯一、ボチッと一回踏むだけでAチャンネルBチャンネルが切り替わるって製品が見付かった。ワン・コントロールってトコの「ホワイトループ」っちゅう小さな箱だ。
 通常のA/Bスイッチャーってのは2つのボタンがあってA・BそれぞれのチャンネルのON/OFFになってんだけど、これは2つのボタンの片方がバイパス、もう片方がチャンネル切り替えなのである。これならクリーンと歪みが一踏みで切り替わる。本当はもう1チャンネル、変態系が欲しいし、歪み3台の切り替えは直列でイチイチ踏まねばならないが、無いモノは無いんだから仕方ない。

 ともあれこれでとてもミニマムな、おれでも迷うことなく扱えるスイッチャーが決まった。ついでに先頭にバッファー兼ジャンクションボックスも入れることにした。これも小さいのが気に入って同じワンコンのにした。何のこっちゃない、調べてみたらエフェクツベーカリーもワンコンも元は有名なナインボルトをルーツとする会社の製品やんけ。
 ・・・・・・って、もし今後ガチで変態系が欲しくなったら、このスイッチャーの後くらいに1ループスイッチャーを増設すれば対応できそうだな。またワンコンにしよぉ〜っと。

 ここまで決まれば、後は載せる台をどうするか?だけである。

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 昔ながらの定番は、手品師が小道具を入れるような縁と四隅を金属で補強した黒い四角い箱である。鳩とか万国旗が出て来そうだ。今まで使ってたのもこのタイプなんだけど、何か古くなると表面に埃が溜まってこれがどうにも取れないのが気になってた。どぉ言えば良いんだろ?ビニールの表面に網戸みたいなのがさらに貼り付けてあって、その細かい目地に詰まるのである。あと、角張ってて足をぶつけると痛いのも気に食わない。

 ツワモノはボード自体を自作したりもする。ホムセンで板買って適当な大きさにして、器用な人だと綺麗にクッションやらニードルパンチなんかを張ってタッカーで周囲をキチンと留めたり、すごく綺麗な木目の板に丁寧にネジ止めしたり・・・・・・と、市販品よりよほど美しいのがネット上に見つかる。お手軽なトコだと、激安で売ってる押入スノコに並べる、なんちゅうのもある。
 とにかく自分の思い通りの大きさに出来て、割安に仕上がるメリットはあるが、如何せんDIY故に時間が掛かる。それに凝り出すと止まらなくなる惧れもある。先日アンプのスピーカーキャビネット拵えたばかりなのに、また日曜大工に没頭するのも何かちょっと性に合わない。

 さらにリサーチしてるうちに、最近は鉄板で出来たスノコ系ボードが各社から出され、結構主流になりつつあることが分かって来た。スノコだけに配線をカンタンに隙間に落とし込んで目立たなくしたり、パワーサプライやコンセントを裏面に隠せたり、少し全体がスラントしてて踏みやすかったりとメリットはありそうだ。欠点はかなり重いのと、ただの金属のスノコの分際でひどく強気な価格なことだろう。どうしよう?・・・・・・と悩んでたら、いつもの卓越したアポーツ能力が発揮されたか、定価の6割引きっちゅう爆安でちょうど好いくらいのサイズが見付かった。もちろん即決ポチ!PALMER”Pedal Bay”ってのだ。代理店が撤退するのかもね。

 最後は配置と結線だ。手持ちのパッチケーブルでは到底足りない。昔はカラフルなのが5本ナンボとかで安く売られてたのに、最近はこんなトコにもハイエンド志向が進んだか、プロビデンスとかモンスターケーブルとかバカみたいな値付けのばっかしになってしまってる。それに何だか種類が昔より少ない。
 気になってこれまた調べてくうちに、どうやらパッチケーブルについては今や完全にソルダーレスが主流になってることが分かった。これ、ハンダ付け無し(・・・・・・だから「ソルダーレス」、ね)で自分の好きなケーブル長に拵えることが出来るのである。おれも店頭で製品は見てたけど、根がレトロで、かつ疑い深いモンだから、まさかここまで市場を席巻してるとは知らなんだ。
 理屈は単純で、細めのケーブルをジャックの穴に突っ込むと中心のホット線が奥にある針に刺さる。そいでもってケーブル固定するイモネジを締め込むと周囲のコールド線の網に当たってアースされる・・・・・・それだけである。
 さらに深掘りしてくと、怪しい中華製ならアマゾンで安いのがいくらでもあるし、そこまで性能的に悪くないし、作り方はバカでも出来るくらいにカンタンだってコトも判明。そんなんで個性はないけど信頼性は高いカナレのケーブル使った”Tone Geek”ってトコのを2セット購入。

 残り作業はもぉ速い速い。位置決めしてエフェクターの裏にベルクロのオス貼って仮置きして、踏んでみておかしくないか調整して、決まったら長さを目分量で測りながらパッチケーブル拵えて挿してくだけだ。2時間ほどで終わった。折角なんでスイッチ付きの短いコンセントも組み込んだ。

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 ・・・・・・一言、メッチャ快適である。いやこれがもぉマジで。

 先頭から順に解説するとジャンクション/バッファー⇒チューナー⇒ワウペダル⇒ブースター⇒A/Bボックスと流れて、Aがコーラス⇒ディレイ、Bが歪み3台・・・・・・で最後にリバーブと、オーソドックスとはいえそれなりにケッコーな数が並んでるのに、一発切り替えの効果は絶大だ。もっと早くからやっときゃ良かったわ。

 冷静に考えれば、おれが今鳴らしてる音なんて安物のマルチエフェクターでも概ね出せる。むしろ音のヌケとかS/N比なんて、昔持ってたマルチの方が良いかも知れないくらいだ。そりゃぁ、右手に付いてくるリニア感の優位性とかはあるとは申せ、別段そんなのを職業的に求められてるワケでもない。それにこんなローエンドな構成でさえケッコー高く付く。ただひたすら自分のヲタクな趣味、エゴの結果だ。
 そうとは分かってても、ツマミをグリッと回せば単純に音が変わるっちゅう、アバウトかつ不安定でプリミティヴな愉しさはやっぱしマルチでは味わえないし、何とも心地良い。

 この構成であと何年使えるのかは分からんし、空きスペースを変態系で埋めたくなってくるのは必至だろう・・・・・・ま、エエやんか。いつまでも道楽は終わらないのだ。”Hobby Remains The Same”やで。

2022.01.26

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