「シズカナカクレガ」ヘヤフコソ
レスポールってどぉなんよ!?


レス・ポール御本人が持つ初期のゴールドトップ。スイッチプレートはなく、何とジャックがボディトップに付いてる。
どうやらサーキットを改造してるっぽいのと、フロントピックアップのネジが少しネック側に移されてる。右下に見えるのはPAFの試作品?


https://www.cnet.com/より

 ・・・・・・って、おらぁモノホンのギブソン製はこれまで所有したことがない。今、手許にあるのは中古で買った、ミンコレ末期のグレコがよくやってた「一見本家にありそうで実はない」っちゅうニッチ仕様な白で3ピックアップのカスタムだ。型番は分からない。この頃からグレコのギブソン系パチは、廉価ヴァージョンでは1本だけネジ止めされたデタッチャブルもどきの奇妙なセットネックに変わるが、コイツはちゃんとセットネックになってるんで、それよりは上のクラスだったんだろうが、ポジションマークが白蝶貝ではなくパーロイドだったり、ピックアップにDRYより下のが付いてるので、ひょっとしたらカタログ外のスポット生産モノなのかも知れない。シリアルのスタンプデイトから判断するに90年頃だから、多分この見立てに間違いはないと思う。

 そこまでジャパンヴィンテージを称揚する気はないけれど、とにかく愚直なまでに本家のデッドコピーを追求してた時代でもあり、仕様的には材も作りもかなり細部に至るまでギブソンと変わらない。どぉだろ?違ってるんはヘッドのインレイのデザイン(ダイヤモンド⇒トーチ)、トルクロッドカバー(釣鐘⇒教会の鐘)、オーバーバインディングフレット、塗装(ラッカー⇒ポリウレタン)、後はロゴくらい(笑)かな?・・・・・・あぁ、恐らくミリスケールで作られてるってのはあるかもしれない。

 しかし何でもかんでも真似すりゃエエっちゅうモンでもなかろうと思う。あまりに真似し過ぎたモンだからとにかくコレ、バカみたいに重たいんですよ。近頃は材の世界的な払底も後押しして、本家でさえチェンバードだとかウェイト・リリーフだとかゆうて、ボディバックのマホガニーを刳り抜いて軽量化に努めてるっちゅうのに、これは中までミッチミチに木が詰まってる。だから5kgくらいあって、提げるとズッシリ肩に来る。そのために分厚いクッションの入った幅10cmほどもあるストラップを装着してんだけど、それでも肩にグイグイ食い込んでメチャクチャ重い。ぶっちゃけ弾く気が失せるほどに重い(笑)。
 ちなみに完成度では本家さえ超えたと言われるトーカイのレスポールレプリカもメチャ重い。噂では東海楽器はガチのヴィンテージのレスポールを今でも所有してて、それをベンチマークにしてるらしいから、この重さは本家譲りなんだろう。事実、レス・ポール本人も「ギターは重いほど良い」みたいな発言してたしねぇ。

 でもそれっておらぁ根本的なレスポールの欠点ではないかと思う。そんなに重いのがエエんやったら、いっそセメント固めて作れ!って言いとうなるで。

 ・・・・・・そんなこんなで今回は、「レスポールをひたすらディスる」っちゅうネタでやってみたい。

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 重さはまぁレス・ポール自身が確信犯で重さに拘ってたワケだから、それを第一の欠点っちゅうたるんはちょっと気の毒かも知れない。どうやら彼は重ければ重いほどサスティンが稼げるって信じてたみたいだ。それはあながち間違っちゃないけど、全体をそこまで重くする必要が無いコトは、色んな科学的知見も取り入れて作られる現代のギターが証明してる・・・・・・あ、念のために申し添えるとギタリストのレス・ポールさんってミュージシャンとして優れてただけでなく、偉大な発明家としても歴史に残るような人だった。
 エレキギターのアイデアも相当早かったが、マルチトラックレコーダーを世界で初めて拵えたり、早くも70年代には現代のサンプラー/ルーパーみたいなんをギターに貼り付けて1人バンドをライブのネタにやったり、ローインピーダンスに拘りを見せたのも圧倒的に早い時期からだ。天才やな。
 それはさておき、ちなみにカルロス・サンタナやリック・ニールセンも重さについては同じような発言してたっけ。そのワリにはPRSは軽い気がするぞ。ウッドストックでデビューした時はペラペラのSGジュニアやったぞ(笑)。まぁリックはいっぺんに3本提げたり、5本ネックのギター弾いたりしてるからそれなりに説得力あるかもなぁ〜・・・・・・違うって(笑)。

 そんなんでこのギターの第一の欠点はっちゅうたら、ハイフレットでの演奏性が現代の目線からするとあんまし考慮されてないってコトだろう。そらまぁシングルカッタウェイで指板は22フレットまであるけど、ネックは16フレットでボディに挿し込まれ、オマケにヒールの厚みをボディ厚に合わせたモンだから異様に出っ張ってる。
 もちろんギブソン自身もそれは良く分かっており、だからこそネック外れっちゅうリスクを冒してまでその後のSGやフライングVでは、恐ろしいコトに22フレット一杯いっぱいで挿し込まれてたりするワケだ・・・・・・ただ、いくらなんでもこれでは接着面が少な過ぎるんで今は19フレットになってるけど。
 ストラップボタンの位置もひじょうに宜しくない。昔の細身のストラップならともかく今の時代の幅広のだと、多用する15〜17フレットあたりでさえ握り込んだ親指が当たって何ともジャマだ。だからこれもその後に出されたのではネック固定ネジを兼ねてボディ裏に移ったワケだが、どうしたコトかレスポールだけは頑なに当初仕様が踏襲されたままになって今に至る。加えてレスポールあるあるで、ここにこの向きでストラップボタンがあるもんだから、ギターを立てて弾くとストラップが外れるなんてコトがある。落としてネック折れたらシャレになんない。だからストラップロックみたいなんはマストアイテムと言える。
 ともあれ、こんなんでハイフレットあたりで平然と鬼の超絶速弾きするジョン・サイクスとかちょとおかしいんとちゃうやろか。

 ピックガードもワケ分かんないよね。配線隠す必要もないし、大体アーチドトップで弦はボディより随分高く離れたトコを走ってるんだし、そもそも要らんのんちゃうんかい?って気もするが、羽根みたいな三角のは今でも標準装備だ・・・・・・ひょっとしたら、ジャズギタリストはかなりネック寄りでピッキングするからフィンガーレスト代わりってな意味があったのかも知れないけど。

 プラグジャックの位置も使いにくい。堅いメイプルだしそんな陥没するコトもないだろうからボディトップで良かったろうに、ボディサイドにある。そらまぁテレキャスだってボディサイド、オマケに一段深くなってるっちゅう謎仕様なんだけど、ここにあってストレートプラグだとしばしば膝が当たったりする。L字使っても、ストラップのトコを潜らせて手探りで挿し込むのがやりにくい。だからその後のギブソンはボディトップ、フェンダーはストラトの船形を経てやはりボディトップになってたんだろう。

 あと、ピックアップセレクター!敢えて複雑な配線取り回しとザグリやルーティングを加えてまでして左肩のあの部分でないといけないって、そんな家訓でもあったんか?って思うぞ。
 ガシャガシャとコードをかきむしるような弾き方すると、ほぼ100%手が当たってピックアップが切り替わったりする。往年の横山健なんてだからガムテを何枚も張って固定する、っちゅうムチャをやってたワケだ(・・・・・・いやまぁまずは見た目のラフさを狙ってたんだろうけどさ)。
 もっと分からんのがそこに挟まれた丸いスイッチプレートだろう。スタンダードだとクリーム色、カスタムだと黒いペラペラのアレ。そもそも要るのか?弾いたら分かるやん。ワッシャ代わりか?ワンポイントのデザインか?
 そして刻まれる金文字の意味不明さは最早シュールでさえある。ポエムかよ?いやまぁリアの「TREBLE」は百歩譲ってまだ分かるわ。実際トレブリーな音になるんだしねぇ。しっかしフロントの「RHYTHM」って何やねん!?って思うぞ。リアでカッティングとかしたらアカンのか?フロントでメロディとか弾いたらアカンのか?だけどジャズメンの大半は、フロントばっかし使って流麗なフレーズ弾いたりしてるやん。何のどこがどぉ「リズム」なのか、ホンマ理解に苦しむ・・・・・・って、見たらSGのプレートも同じやね。

 そんなんで昔、アリアのコピーモデル(・・・・・・今から思えばこれもムチャクチャ重かったな)使ってた頃は、鬱陶しくてピックガードもスイッチプレートも外しちゃってた。だって要らんモンは要らんねんもん。今のグレコはっちゅうと、お誂え向きにピックガードは初めから欠品してた(笑)。でもスイッチプレートはめんどくさいんでそのままにしてあったりする・・・・・・おれも丸ぅなったモンですわ。

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 こうして見てくと、レスポールってホンマ、バロックの古典楽器に近いくらい古色蒼然としてて色んな所が現代の間尺に合っとらんし、アップデートが行われないまま今に至ってることが良く分かる・・・・・・ってか、ギブソンは変われるチャンスをみすみす見逃した気がする。それはダブルカッタウェイのジュニアのフォルムをリリースしたあたりでもっとプレミア性の高いモノを作るアイデアが浮かばなかったことだ。恐らく「ジュニア」って名称が呪縛になったんだろう。事実、早くにはヘイマー、その後はPRSがジュニアの機能性に気付いて成功してることからも、ギブソンの勘の鈍さ・スカタンぶりが良く分かる。
 実はレス・ポール本人もこうした所謂「フツーのレスポール」は早くに弾かなくなっており、70年代くらいからは専らフラットトップで電気仕掛けがてんこ盛りの「レコーディング」ってのを亡くなるまで愛用してた。

 機能面からこうしてレスポールをディスると、「何てったって音が〜っ!」と言われる御仁も多かろう。しかし、音にケッコー個体差があるのは紛れもない事実で、どれもが全部「芯があるのに甘く太く艶やかにサスティンたっぷりで粘る」ってワケではないらしい。そんな比較動画もあったりする。それにそう主張される方の一体全体どれだけが本当にレスポールの音色を理解してるのか、おれには甚だ疑問だったりもする。少なくともおれにはそこまで「レスポールならではの音」なんて分からんもん。大半はネームバリューにアテられてるだけだ。エフェクター噛ましまくっといて悦に入ってるアホとかもおるしねぇ・・・・・・。
 少なくとも、レス・ポール御本人みたいに硬質なクリーントーンでグリッサンドっちゅうか単弦高速フレーズ入れながらビキバキに弾いて、それから言って欲しいわ。

 なるほど、見た目は文句なしに美しい。シンプルだけど均整の取れた優美で複雑なカーブから構成されるフォルム、スタンダード特有のフレイムメイプルの縞々に個人的にはそれほどソソられないものの、ヴァイオリンの名器や高級家具みたいな重厚さと風格があるのは間違いない。そして要するに不人気で生産効率も悪くて打ち切りになっただけとは申せ、オリジナルはゴールドトップやカスタム併せて10,000本くらい、その内サンバーストのスタンダードに至ってはたったの1,500本弱しか作られなかった(・・・・・・つまり、出た当初はいっちゃん不人気だった!)っちゅう絶大な希少性だってある。

 ・・・・・・ハハ、詰まるところ人気の根本は、みんなミーハーで欲の皮が張ってるコトにあるんですよ、チャンチャン♪


よその国は知らんけど、少なくとも日本でチェリーサンバーストのレスポールスタンダード人気を決定付けたのはこの人やろな〜。

https://knowyourmeme.com/より

2022.11.05

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