「シズカナカクレガ」ヘヤフコソ
イギリスのP−MODELとかリザード・・・・・・・The Stranglers


1978年、伝説的なバッターシーパークでのライブの模様。オネーチャンたちが次々と脱いでいくんですわ。
注目すべきはこの時のスペシャルゲストが意外にもP・ガブリエルだったりするコトで、彼等の立ち位置が何となく分かる。


https://www.worthpoint.com/より

 ゴメンなさい!
 ゴメンなさい!
 ゴメンなさいったらゴメンなさいっっ!!

 告白するならば遥か昔、ガキだったおれはストラングラーズについてロクに聴きもしないままそんな風に思い込んぢゃってました・・・・・・だってメンバーにキーボードおんねんもん。それも大フューチャーの出まくりでピロピロ・ピコピコ弾くねんもん。パンクバンドでそらないやろ!?って。
 パンクってのが実は音楽のスタイルや用いる楽器ではなく、そのアティチュードにあるんだってコトに考えが及びもしないどころか、色んなバンドの時系列さえも良く分かってない、まったくもってアホで無知で思慮深さに欠けた南河内の中坊でした、ハイ。

 いやいや、でも実際当時の日本の音楽メディアも悪いわな(・・・・・・って「ミュージックライフ」とかくらいしかなかったが、笑)。何でもかんでも十把一絡げにして「パンク」っちゅうことにして、「とかく粗野で暴力的でアタマ悪そう」みたいなイメージで紹介しようとしてたもん。ジャン・ジャック・バーネルなんていささか毒舌家で腕っぷしが強い(・・・・・・ガチの極真カラテの師範だったりする)っちゅうだけで実はめちゃくちゃインテリ枠の人なのに、当初はもぉどれだけ凶悪なキャラのように語られてたか。
 ついでに言っとくとヒュー・コーンウェルもバリバリにインテリ枠で元は理系の研究者、オマケに階級社会なイギリスではかなり上の方らしい。ドラムのジェット・ブラックは中堅食品会社の社長で、デビュー時点で既に功成り名を遂げて(!?)それなりに実業家として手広くやってたような人で、そんじょそこらのガキや貧乏人の掘っ建てバンドで、とにかく一回でもライブに出て解散すれば失業保険がもらえてウマ〜!みたいな連中とはちょとセグメントが違ってたが、そうした事実が最初からチャンと報じられることはなかった。悪目立ちしてナンボなパンクのイメージ的に宜しくなかったからだろう。

 それが日本に輸入された当初のパンクムーブメントとやらの、薄っぺらな報道の実態だった。

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 時代が何周も回った後の今になってフラットに聴き直してみると、ストラングラーズって少々アグレッシヴってだけで要はまぁフツーにロックだ。ハードロックほど暑苦しくなく、プログレほどややこしくなく、パブロックほどアホっぽくない。
 デビュー当時のビジュアルなんかも、そんなそこまでパンクスっちゅう感じでは全然ない。なるほど黒づくめで、ギターやベースを低く提げてて、オマケにそれがテレキャスやプレシジョンだったりするのは僅かにそれっぽいけど、トサカ立ってもないし、ドラムはフツーのオッサンだし、キーボードなんてロン毛でちょっと前のジャーマン電子系みたいなみてくれだったりする。

 音自体にしたって「正統派」っちゅうても良いくらいにストレートかつシンプル、キャッチーで適度にポップな佳品揃いだと思う。そして歌いまくるベースとか、人間シーケンサーかアルペジエーターか?っちゅうくらいにひたすら分散和音系で弾きまくるキーボードとか、テクニック的にもかなり優れている。
 唯一、惜しむらくはメロディセンスのキレ、っちゅうか「冴え」みたいなんが今一歩弱いコトくらいだろうか。わっればはっぷぅ〜んとぅ〜♪の〜も〜ひ〜ろ〜ずえにぃ〜も〜♪とか、日本人バンドの英語歌詞でももぉちょっとは気の利いたメロディ乗せそうな気がするんだけど(笑)。ここがもちょっと突き抜けてたら、或いはポリスみたいな存在にもなれてたろう。

 ただ、いささかおれが穿ち過ぎなのかも知れないが、彼等の豊かな音楽的素養やキャリアのバックボーンを考えると、あまりポップに振らずちょっとぶっきら棒でモノトーンな印象を与える歌いっぷりやメロディラインは、元々の声質や音域の狭さもあったとは申せ、実はかなり意識的にそんな風にやってたのかな?って気もしてる。だって、これだけ賑やかいバックにくっきりしたメロディ乗せられたらちょとちゃうもんね。ロックとして最低限備えているべき攻撃性・衝動性みたいなんまでが損なわれかねんでしょ?・・・・・・って、ゴメン!これまで駄文で触れてきたいくつものバンド同様、基本的に初期メンバーの時代について書いてますんで、そこんとこ夜露死苦。
 そのあたりの匙加減が巧みで、全体的にキーボード出まくりで一歩間違えるとワチャワチャになりそうなのを緩和して、パンクの時流に乗ったソリッド感・疾走感のある聴き飽きしない曲に仕上げてるように思うんだがどうだろう?

 聴きようによっては、その後に到来するポジパンとかオルタナといったちょっと暗めの重めで、いささかややこしい路線に、本来的に持ってたものがむしろフィックスしてったように思える。4枚目以降はそんな感じが強い。
 この流れそっくりなバンドが日本にもいる。P−MODELだ。元はクリムゾンフォロワーなプログレバンドで70年代初めからやってたのが、ゴロッと路線変更で降って湧いたようなテクノムーブメントに乗ってピピッピ〜ってな安っぽいシンセを全面に出して登場したものの、3枚目くらいから明確にテクノから離れ、同じように変質してった・・・・・・。

 そう、真逆だったのだ。P−MODELが日本のストラングラーズみたいだった、っちゅうこっちゃね。リザードは・・・・・・う〜ん、メジャーデビューの時のプロデューサーはそぉいやジャン・ジャック・バーネルだったよな、たしか(苦笑)。
 この人、親日家なのか何なのか一時期日本に住んでARBにもいなかったっけ?マーティー・フリードマンのハシリか?ところでモモヨって不動産屋今も続けてるんかな?宅建通るってアタマ良えんやんか。ともあれ紅蜥蜴時代からすると、彼等も似たような流れだ。でもおらぁリザードはどぉもなぁ〜・・・・・・。

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 パンク、ってのが世に出て来て、もぉ何だかんだで半世紀近くになろうとしてる。

 シド・ヴィシャスを筆頭に生き方自体がムチャクチャにパンクっちゅうかほぼ人格破綻者で、とっくに鬼籍に入っちゃったんもひじょうに多い一方で、ダムドやバズコックス等、この初期パンクの時に出てきた連中が意外にそうであるようにストラングラーズもまた、今なお現役のバンドだったりする。虚仮の一念岩をも通す、継続は力なり、ホントこれには頭が下がる・・・・・・って、創設者でギターののヒュー・コーンウェルはとうの昔に脱退し、ドラムは寄る年波に勝てずドクターストップもあって勇退(・・・・・・デビュー時点でも既にかなりのオッサンだった)、サウンドを最も特徴付けてたキーボードは一昨年だったか、可哀想にコロナ禍に斃れて鬼籍に入ってしまったので、今はもうジャン・ジャック・バーネルのワンマンバンドみたいな体ではあるが、イギリス本国では押しも押されぬベテランバンドとしてコンスタントに活動を続けてる。しぶといとかしつこいとかおちょくる気はない。本当に大したモンだと思う。袂を分かったヒュー・コーンウェルもソロとして着実にキャリアを築いており、”When I Was A Young Man”な〜んてアイロニーに満ちた曲歌ってたりする。

 ・・・・・・ところで思う。

 パンクがちったぁ世の中を変えたことってあったんだろうか?っちゅうと、当然ながら何もない。結局は強かにマーケットに呑み込まれ、ポップミュージックのいちムーヴメントに結局は収斂されてった。そして当事者たちはそれなりにみんな落ち着く所に落ち着いて、おれも含めた大半は市井に埋もれてたりするのだ。

2022.08.20

----Asylum in Silence----秘湯 露天 混浴から野宿 キャンプ プログレ パンク オルタナ ノイズまで
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