「シズカナカクレガ」ヘヤフコソ
続・ったくイカシた焼鳥だぜ!

 
実は隠れたファイヤーバード愛好家だったと言える故・ブライアン・ジョーンズ。
リバース/ノンリバース共にかなり気に入って弾いてたみたい・・・・・・エンドーサーだったんかも。。


https://www.pinterest.jp/より

 ドラムにかまけてる間にこれまたちょっとした変化がギターの世界に起きてた。

 焼鳥、ことギブソンのファイヤーバードが昨年(2021)で何度目かの製造中止・・・・・・今風に言やぁディスコンになっちゃってたのである(※)。そうなる予兆はあった。言うまでもないことだが、2018年に起きたギブソンの破産宣告である。以前、ファイヤーバードについて書いた時にギブソンの経営状態がヤバいって述べたけど、その僅か数ヶ月後、ホンマにツブれたのだった。原因はムリっちゅうか無節操なまでのM&Aと、そうした買収先のブランドを全くと言って良いほど育てられなかったコトだろう。マトモに独り立ち出来たトコないんちゃうやろか。
 しかし腐っても鯛、単車におけるハーレーダビッドソンみたくそこはやはりアメリカを代表するギターブランドゆえ、すぐにあちこちから支援の手が差し伸べられた結果、取り敢えずブランドの身売りは回避された。今は何と、これまたアメリカを代表するブランドであるジーンズの老舗・リーバイスが救済に入って再建中みたいである。しかしそうなりゃ当然ながら様々な経営の合理化が行われる。平常時の長閑な合理化とは根本的に異なる、ナサケ容赦ない峻烈過酷な文字通りのリストラだ。「選択と集中」っちゅうやっちゃね。売れ筋で利益率の高い製品はシッカリ残し、死に筋やら永いマーケティングが必要なのは削って、とにかくまずは短期利益を出しましょ、何もかんもハナシはそっからだ・・・・・・みたいな。

 その煽りを喰らったんだろう。だってファイヤーバード、明らかに売れてなかったモン。大体、昔からチャンと売れて定番化してたらもっともっと世の中にコピーモデルが氾濫してたって。

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 思えば、ギブソンのエレキギター/ベースには「3本目以降の柱」が育っていない。1本目の柱は言うまでもなくレスポールだろう。ブランドイメージはこれによって確立されてる、っちゅうても過言ではない。2本目は何だかんだでSGになる。その奇妙な格好については永遠の議論の的にはなってるものの、何だかんだで生産性とプレイヤビリティ、どっちも高く、地味に屋台骨を支える定番の存在としてこれからも続きそうだ。
 では3本目はどないやねん?フュージョン御用達な335に代表されるセミアコが、ステイタス性では3本目を背負ってるのは間違いなかろう・・・・・・が。実のところそこまでムチャクチャ大量に売れてるワケではない。何せ製作に手間ヒマが掛かって値段が下げられず、必然的に高級ラインにならざるを得ない問題がある。なんとか仕上げを簡素化して価格を抑えたラインもあるんだが、それでもやっぱし高いモンな〜。フライングV/エクスプローラーといった変形軍団は、本家よりも他社のもっと尖がったんがヘビメタ系に売れまくってる状況だ。正に「イノヴェーションのジレンマ」で、本家本元ゆえの矜持が邪魔してオリジナルの形っちゅう枠から出られないままになってる印象が強い。
 いちばんボトムラインを支えるハズのジュニア系もぶっちゃけ弱い。そもそも論で「ジュニア」って名付けた時点でマーケティング的にはいささか失敗しちゃってるのではないか?って気がおらぁしてる。実は弾きやすさや取り回しの良さではSG並みのひじょうな優れモノだし、カッコはむしろこっちの方がエエくらいなのに、どうにもエントリーモデルのチープなイメージが先行しちゃってるのと、上記の変形モデル同様、メーカー自身がその枠から先に行こうとしなかったのが災いしてそのままになってるのが惜しい。PRSの成功の後追いで(PRSのフォルムはジュニアがベース)、慌ててダブルカッタウェイのレスポールなんてやった時にはもぉ後の祭りだった。

 まぁ、この「3本目の柱」問題はもう一方の雄であるフェンダーにだって大いにある。ストラト/テレキャスの後がムチャクチャに弱い。むしろギブソンよりこっちの方が厳しいかも知れない。ホンマにその後は売れてない。ジャズマスとムスタングは何とかそれなりのポジションを獲得できてるような気がしないでもないが、他は惨憺たる有様と言えるだろう。ただ幸い彼等はベースでも、しっかりプレシジョン/ジャズベースっちゅう確固たる2本柱を立てることが出来ており、これはひじょうにデカい。

 ・・・・・・ベース!嗚呼、ギブソンのベース!(笑)

 いやもぉホンマ状況は絶望的やね。たしかに昔からしぶとくリリースはし続けてんだよ。EBとかサンダーバードとかそれなりにバリエーションもあるさ・・・・・・でも、どれもこれもじぇんじぇん売れてないんですわ。このことについては以前一章を割いて駄文にまとめたから、詳しくはそちらをご参照頂きたいが、そんなこんなで総合勘案してギブソンのエレクトリックのシリーズを突き詰めると、マトモに大きな商売になってるのは実はレスポールとSGしかないのである。

 ・・・・・・んぢゃぁ、エレキより遥かに古いルーツを持つアコギはどうだ?

 「ワークホース」ことJ−45なんかを筆頭に、たしかに00、ダヴ/ハミングバード、SJ−200等の名作は数多くある・・・・・・どころか全てのシリーズが世に知られた存在だったりする。 一説にはフレット音痴の個体が多いって昔から囁かれてたりはするものの、繊細にアルペジオっちゅうよりは、ハーモニカ咥えてコードをかき鳴らすようなスタイルが身上のギターなんだし、そんなに関係なかろう。
 しかしながら、ユーザーは例えばマーチンなんかと較べたらケッコー絞られてくる印象がある。どだいそもそもの製作数がそれほど多くない。大量生産に割とシフトしてるエレキよりもずっとハンドメイドの手工芸品に拘ってる気がするな。つまり数がハケないから、経営を支えるほどではない。

 こうして考えてくと、本来的にギブソンって会社、本業部分では名声のワリにガタイがそれほど大きくないし、支える商品群もバランス悪くて極端に偏ってる状態だったと言える。いやまぁ、それが分かってたからこそノレンの価値を最大限に活かしながら・・・・・・換言すればそれを担保に、色んな分野をダボハゼのように貪婪に漁りまくって、総合楽器メーカーを目指したかったんだろう。もちろんその気持ちは分からないでもないが、古今東西、アセッて業容を急拡大して上手く行ったためしはないし、商売がかなりヘタだったように思う。

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 話を可哀想な焼鳥に戻そう。そもそも論で、どうしてギブソンはここまでファイヤーバードに拘って来てるんだろう?

 実はそれがいっちゃん分からない。台頭するフェンダーに対抗すべく、1963年に渾身の一作としてリバースモデルが売り出されたものの、得てして肩に力入りまくったモノほど大ゴケするって法則通り世評は全く芳しくなく、販売実績は低迷。あまりの不人気ぶりにキレたのか、破れかぶれのように3年後、ボディシェイプを左右そのまま引っくり返すなんちゅう荒業(ノンリバースと呼ばれる)に打って出てみたもののやはり売上はパッとしないまま、またもや3年ほどで消えてる。だって明らかにノンリバースの方がカッコ悪いんだモンな(笑)。
 そこからは何年かに一度、メダリオンぢゃ建国記念ぢゃとスポット生産が行われただけで、レギュラーモデルで復活を遂げるのは実に20年以上経った90年代になってからだ。そっからの20年弱くらいが最もファイヤーバードの輝けてた時代かもしれない。スタインバーガーのギアレスチューナーだとか、ジャックのボディサイドへの移設(・・・・・・すぐに戻したけど)、ゼロフレット(・・・・・・これもすぐに戻したけど、笑)等々の細かな迷走、もとい仕様変更を受けたり、専用の新しいピックアップが開発されたり、カスタムや廉価版、シグネチャーモデルが出されたりと、それなりにレギュラーラインらしい厚遇ぶりだったのだから・・・・・・どんだけ数が売れたのかは不明だけどさ。いや多分、大して数はハケてないんだけどさ(笑)。

 その誤謬は、「ファイヤーバードX」の想像を絶する大失敗っちゅう蹉跌にまで至る。

 何をトチ狂ったか、一時期ギブソンはオートチューナーにエラく拘りを見せてた時期があって、それをノンリバースをさらに弄った「ファイヤーバードX」って新作に搭載し、満を持して発表したのだった。2010年のコトだ。しっかしそれは、誰がどぉ見ても殆ど60年代のビザーレギターにしか見えないようなB級SFチックでヘンテコリンなボディシェイプの代物ではあった。パッと見、殆どファイヤーバードにさえ見えなかったんだから困ったモンだ。
 奇天烈なコイツに搭載されてたのはオートチューナーだけではなかった。スペックだけ見たらホンマにスゴい。マルチエフェクターだとかオーディオインターフェース、ピエゾピックアップ、Bluetooth、ワイヤレスシステム、専用フットペダル・・・・・・何だかラーメン屋の「全部入れ」みたいなテンコ盛り仕様にはかなり驚かされた記憶がある。そのクセ、現代のギターにはもはやマストアイテムと言い得るトレモロは付いておらず、昔ながらのハードテイルってトコに何ともツメの甘さが感じられる。
 しかし驚きはしたものの、このように何でもかんでもひたすら詰め込んだ商品は失敗するのが必定だろう。往年のフレッシャーのエフェクター内蔵ギター然り、無駄にややこしいBCリッチのコントロール然り、どれも一時の徒花で儚く消えてった。スーパーテクニカルなギタリストの手許周りのコントロール類がおしなべて極めてシンプルなことからも伺える通り、左右の手のタッチにニュアンス表現の多くを依存するギターっちゅう楽器に、あまりにややこしいスイッチやノブって実はフィットしないのだ。

 半ば予想されたことではあったがコレ、まったくと言って良いほど売れなかった。衝撃的な動画がある。あまりに大量の不良在庫を抱え、投げ売りすると商品価値が下がる(・・・・・・元々あんましなかった気がするが、笑)のを嫌ったギブソン自身がブルドーザーで踏み潰しちゃったのである。会計的に言やぁ、「除却して特損計上した方が吉」ってな判断になったんだろう。あるいは破産した会社から不良在庫とはいえ資産になるものを従業員が勝手に持ち出すことを警戒したのかも知れない。
 その時の模様が撮影され、Youtubeに上げられたのだった。不死鳥、何度目になるか分からない失墜・・・・・・それも台湾唐揚げみたいに潰して延ばされるっちゅう完膚なきまでの大失墜であった。だって、キャタピラでメリメリバリバリ〜!でっせ。

 厳密に言うと、ディスコンとは申せレリックバキバキのカスタムショップやヒスコレ系では少量が今も作られてるみたいである。まぁ不死鳥も大分とヒネ鳥になっちゃったってコトだろうな(笑)。それぢゃあきまへんわ。ヘポポポポ。


ギターって案外頑丈なんだなぁ〜・・・・・・

2022.07.17

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