「シズカナカクレガ」ヘヤフコソ
違いが分からん・・・・・・・スネアドラム


何とお値段30万円以上もする国産スネアの雄、タマのソリッドベルブラス。

https://www.keymusic.com/より

 お時間を取らせて申し訳ないが、まずは以下に挙げる動画サイトでいろんなスネアの音を聴き比べして欲しい。全部通しで聴くとケッコーな時間が掛かるんで、まぁ適当に同じフレーズのあたりを探しながら端折ったって構わない。多分、50台くらいあると思う。どれもYoutubeで見付けた。

   〜YAMAHA Drumsのスネア全種類を一挙紹介!!〜(メタルシェル)
   〜YAMAHA Drumsのスネア全種類を一挙紹介!!〜(ウッドシェル)
   音加工無し!スネア比較 叩き比べ 26台

 ・・・・・・如何だったろう?ヘッドやスナッピー、またチューニングを全く同じにしたイコールコンディションかどうかまでは分からないけども、ぶっちゃけそこまで有意な差異を感じられただろうか?
 恥ずかしながらおれにはあんまし良く分かんなかった。そらまぁ柔らかめのウッドで深いのをローチューニングにしたのとスチールの浅胴をカンカンに張ったのでは、低域の出方とかキンキンした残響とかでたしかにパッと聴いただけでも違うよなぁ~、って気がするけど、後は大同小異、恐らくブラインドだったらどれがどれだかまず分からない。大体叩く人がメッチャ上手なんだし、そこまで音色で大騒ぎするコトか?って気にさえなった。

 これらの動画を見て、マイスネアの選択に真剣に呻吟できる人がおらぁ羨ましいとさえ思う。決して茶化してるのではない。ホント、ナンボ聴いてもそこまでドラスティックな差があるとは分からなかったのだ。ちなみに値段はバラバラで2~3万クラスから10万オーバーまであったんだけど、みんな当然ながらタンッ♪とかダシッ♪とかスネアの音色で鳴ってる・・・・・・当たり前か(笑)。そんなんだから、テクニック磨いた方が100倍良いし、まずはヘッドとかスナッピー、チューニングを追い込んだ方が吉なのではないか?って気がした。

 太鼓を叩き始めてしばらくしたら、マイスネアが欲しくなるってのは昔からのあるあるバナシで、それぞれが拘りのマイスネアをケースに入れて持って来たりする。バンド時代のタイコは、名作の誉れ高いLUDWIGの”LM402 14x6.5 Supraphonic”ってのを愛用してた。ボンゾも使ってたっちゅうロック系スネアでは定番中の定番モデルだ。当時は今より遥かに輸入楽器が高い時代だったから、ビンボな彼にとってはホント、伝家の宝刀とか虎の子だったろう。彼曰く、シェルがラディック独自のひじょうに特殊な金属でできており、それが音の秘密なんだと・・・・・・後年に至ってこうして自分で叩くようになって、実はほぼアルミって知ったんだけどね(笑)。
 しかしながら本人だけでなくおれもボーカルもとにかくカンカンパンパンしたハイチューニングが好きで、そんな風な音をいつも求めてたくらいで、細かいコトは何だか良く分からなかった。あぁ、そぉいえばスナッピーがザーザー引きずるのがイヤで、エッヂから5cmくらいのところでビニールテープ貼ってスナッピー押さえてたりもしてたっけ。
 でもウッド/メタル、浅洞/深胴、増してやテンション数の違いなんて一切気にしてなかったし、いっせーのせーでバンドとして演奏したら、そんな細かい部分での音色の違いなんて、誰にも分かってなかった。

 ・・・・・・現在でも多分、日本のアマチュアバンドの大半が似たような状況なのではあるまいか。

 バイトしまくってようやく貯めた金叩いて大好きな***のシグネチャー、な~んて買ったけど、得意げなのは本人だけで、周りの他のメンバーにはあんましどころかサッパリ分からない。そいでもって何叩いたってモタるだのハシるだのヨレるだのディスられて凹んだりして・・・・・・あまつさえスタンドから外すときに落っことして、ついでにシェルまで凹んだりして(笑)。

 今日はそんなハナシだ。

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 もちろん、チャンと聴けばスネアの音色に差異はある。そらありますって。現にエラそうにこうして書きつつ、さらにはロクに叩けもせんのに、今や手許にはスネアが3台あるんだし(笑)。

 ギャラリーを見ていただければお分かりかと思うが、1台目はSONORのいっちゃん安い”AQ2-1455SDS”ってスチール。鉄板1mm、10テンション、シングルラグ、2.3mmのトリプルフランジフープ・・・・・・センタービードがなくてツルッとしてるんがちょっと特異なくらいで、後は極めて標準的な仕様だ。2台目は中古っちゅうかほぼ新古品かつ、ブランド日本撤退で投げ売りになってたCRUSH”SUBLIME E3 14×6.0”ってメイプルで10プライのかなり厚いシェルの。ノギス当てたワケぢゃないんでハッキリしないが10mmくらいある。
 別にミーハーでSONORにしたワケではなく、ホントは見た目のクラシカルさだけでLUDWIGのスープラライトっちゅう安いスチールにしようと思ってたら生憎の品切れ、定番のチャドスミやそうる透もなくて、寂しくこれが値引き札貼られて店の床の隅に転がってたのだ。2万をちょっと切るくらいだったと思う。いやいや、想い出した。たしか勉強がてらで同時にタマのSLPにあるデコボコスチールやパールのセンシトーン、リファレンスその他、取り敢えず鉄ばっかし、安いのから高いのまで一通り何台か叩かせてもらったんだけど、そこまで大きな違いがないんでこれにしたんだった。アルミでもブラスでもなく、その時はナゼか古典的なマテリアルである鉄が欲しかった。まずはそっからやろ!?みたいな気持ちだったのだ。
 これらにさらにその後買い足して、3台目がDWの下位ブランドでPDPってトコの”CONCEPT MAPLE 10x6.0”っちゅうミニスネアをこれまた現品処分で1万ナンボ。モノまみれは治らんね。これもメイプルの多分10プライで小っこいクセにヤケにシェルは分厚い。塗装が変わっててオイルステンみたいなんを軽く染み込ませてあるだけだ。ハハハ、いずれにせよ3台合わせても5万円でジューブンお釣りが来るような値段ですわ・・・・・・マトモに金払え、ってね(笑)。

 いっちゃん気に入ってるのはCRUSHかな。叩き較べると音に深みっちゅうかツヤがあるし、ムダにキンキンし過ぎない。かといって籠もってもない。ムリに引っ叩かなくても大きな音が出るようなカンジがある。さすが元の定価で4~5万クラスだっただけのコトはあるのかも知れない・・・・・・って、CRUSHは新興ブランドで他社より定価がエラく安かっただけで、ホントはもっと高くてもおかしくない造りだと思う。そんなんが9,000円とは余りに安い。
 一方のSONORはサスティンっちゃぁ聞えは良いが、皮とスナッピー以外での無駄な残響が多過ぎる。ハデっちゅうより少々ヒステリックで攻撃的なカンジ。それがスチールシェルの特性なんだとは分かってるとは申せ、叩くとキィ~ンって高周波がどこかで絶えず鳴ってるのが良く分かる。余りにキンキンし過ぎるんでラグをバラして中に詰め物したり、革のワッシャを噛ましたりしてかなり軽快な音にできたけど、それでもやっぱしちょっとキンキンする。
 PDPは流石ディフュージョンブランドってコトなのか、あるいはシェル厚が合ってないのか、ナンボ小径とは申せとにかく鳴らないし、チューニングの美味しいトコが分かり辛い気がしてる。まぁ、サブスネアもしくは小径セット用であんまし爆音で鳴らさないように作ってあるのかも知れない。ただ、テンテンした音は何となく可愛くて好感が持てるし、小さなシングルヘッドのタムに短いスナッピーを付けたようなんと較べると、まだ少しはスネアらしい音がしてるように思う。驚いたことにその後、希少価値が出たのか、ケッコーなプレミア価格で取り引きされてるみたいだ。

 買ってしばらくしてから一度は体験してみたくて、CRUSHには42本スナッピーってのを入れてみた・・・・・・元祖のグレッチはベラボウに高いんで国産のだったが(笑)。通常20本の響き線のコイルが倍以上になっており、音量が2倍になるワケぢゃないけど、ザラザラ感が増してザドゥッ♪ってな感じになる。かつてのハイピッチとは真逆の方向なものの、これはこれで何かとても気に入ってしまった。
 それでついでだから凝った作りの余ったスナッピーをSONORに移植してこっちも叩いてみると・・・・・・何とまぁ、これが不思議とチョーシ良いぢゃあ~りま温泉♪

 ・・・・・・結局、皮とかスナッピーなんだなぁ~、って思ってしまったのだった。いささかショボいPDPだってスナッピー替えたら化けるのかも知れないな・・・・・・えっっ!?ハナシがオマエ、矛盾して来とるやないか、ヴォケ!って?

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 要するにこれって、プレイヤーvsリスナー問題なんだろう。

 ギターでも書いたっけ。自分で演奏すると楽器の個性の違いって如実に分かるんだけど、聴かされてる方は大して分からん、っちゅうアレね。タイコも楽器である以上、同じ法則が当てはまるワケだ。
 それにたまたま、ってタマではないけど(笑)、CRUSHのスネアをタダ同然でゲットしたから音色の違いについてこうして生意気にも意識できただけで、もし最初に買ったSONOR1台だけだったら、さらにあれこれ弄り倒してそこそこ納得できるようにして、「いやぁ~、やっぱスチールの乾いてパンパンした感じはエエねぇ」とかゆうて悦に入ってたんぢゃねぇの?って気もする。いやホンマ、客観的に言えばその程度だし、でもそんないい加減さ、ワガママさこそが音楽に対する拘りの本質であり、そして時に神が降りてくるような奇蹟の瞬間をもたらしたりもする。

 結局ハイピッチかローピッチか?それとスナッピーの鳴り方くらいしか、音色としての明確な差ってないんぢゃないかな?ギターで言えばフェンダーぢゃギブソンぢゃっちゅうてあれこれ種類交換するより、ピックや弾き方、トーン、アンプ側でのディストーションの深さ、イコライジング等をシッカリ追い込んだ方がハッキリ音の差が出るのと同じだろう。

 そうそう、件のLM402についても動画が多数存在してる。興味のある人はダーッと聴き比べてみられては如何だろう。「『あの音』はやっぱしコイツでないと出せない」なんて言われるワリには、どの動画も音は十人十色で全部違ってたりする(笑)。そらそうだ。皮を定番のホワイトアンバサダーにするのとピンストにするのだけでもかなりちゃうんだから。まぁ、そんなモンですわ。

 昔話の続きを最後に書いて、そろそろ締めくくりにしよう。

 カンカンのまるでティンバレスみたいなスネアの音でやってたおれたちのバンドだったが、どうしたコトかある頃からタイコがローピッチに目覚めたのだった。「やっぱしあんましハイピッチやとなぁ、音詰まって美味しいトコが鳴り切ってない気ぃすんねん」とかゆうて、俗に言う「ドスドス・ダシダシした音」を追求しだしたのである。おれとボーカルはいささかガッカリして、最初は文句タラタラだったが、あんまし機嫌損ねて揉めても宜しくないんで、そのうち好きなようにしてもらうようになってった。カンカン言わしたけりゃオープンリムショット、っちゅうテもあるんだし。そんなある日の練習のことだ。

 冷静に聴くと、たしかにローピッチにはローピッチのドスの効いた響きの良さがあるような気がして来る。タメの効いたロールとかフラムとか織り交ぜながらひとくされ叩いて、「な!?これはこれでエエ感じやろ?」と言われると、頑なにハイピッチに拘ってたのを考え直すべきなんかな?って思える。
 とにかく彼はメチャクチャに上手だったから、しばら気の向くままにローピッチに合いそうなスローで重いパターンを叩き続けてもらった。その内、ポッと浮かんだこれまた重いリフをおれが挟み込んで行く。ベースが音を拾いながら合わせて来る・・・・・・。

 ・・・・・・何とまぁ、それで一曲できちゃった(笑)。カウント130~40前後が多かったおれたちにしては珍しいテンポで、重く暗く沈み込むような、ちょっとばかし往年のブリティッシュハードロックっぽい雰囲気だったけど、披露してみると意外にお客さんからも店の人からもウケが良い。そんなんでその後のライブでは必ずセットリストに入るようになったのである。

 スネアを取っ替え引っ替えするよりは、やっぱしまずはチューニングでっせ。そいでもって皮とスナッピー。あとの材質とかテンション数とかはあんましカンケーないって。丈夫で壊れにくくて長く使えそうなん買えばエエんちゃいますかねぇ?


これがPDPのミニスネア。10インチなんでかなり小径。タムホルダーが付いてるのがユニーク。

https://www.amazon.co.jp/より

2021.09.01

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