「シズカナカクレガ」ヘヤフコソ
エエやん♪エエやん♪・・・・・・・ジャズベース


これです!最も市場に出回ってるタマ数は多いかも(ギャラリーのアウトテイク予定より)。

 「自らの不明を恥じる」ってコトバがあるけど、今回のケースは正にそれだった。この歳まであまりジャズベースを省みることがなかったことを、である。

 悪いのは何十年も前、楽器に興味が湧き始めた頃に読んだたしかフレッシャーのカタログだ。そーだそーだアイツが悪い。そのコラムスペースみたいなトコに書かれてあったのが、スッカリ刷り込まれてしまってたのだ。曰く、ジャズベースはフロントとリア、両方のボリュームを上げるとフェイズアウトしたサウンドになります。重低音を出すにはどっちかのボリュームをゼロにするのが宜しい・・・・・・みたいな。
 書かれてた内容は決して間違ってはいない。今の本家はどうか知らないけど、実際そぉゆうピックアップのワイアリングと配線で、両方を上げるとフェイズアウトしたストラトのハーフトーン同様、軽い音になっちゃうのだ。

 何かそれってややこしくて、ベースのイメージとちゃうよなぁ〜、って感じたのと、何となく当時はシングルコイルよりハムバッキングのピックアップの方が上等かつ取っ付きやすいモノに思えてた(笑)、ってのもあって、おれはベース買うならプレシジョンかな?って思い込んでしまったのだ。それにジャズベの方が若干ボディがヒネれてるくらいで、全体的な見た目に大きな差は無いんだしさ。

 いやもぉ実にアホなカタログヲタもあったモンだ。ホント、あの頃に戻れたら自分自身を張り倒してやりたいで、ったく。

 フェンダーベースを代表するプレベとジャズベ、まずはその違いをおさらいしとくと、前者が低音3〜4弦用と高音1〜2弦用の2個のピックアップをハムバッキングに繋いで1つにしたのがネックエンドとブリッジの中間辺りに付いてる。ストラトで言えばセンターピックアップくらいの位置だ。それにボリュームとトーンノブなんで実にシンプル。ボディシェイプはストラトみたいな感じで左右に飛び出たホーンは非対称だけど、全体としては左右対称になってる。そしてホンの僅かにネックの握りが太い。現在のフェンダーのスペック表見ても41.3mmとジャズベに較べて3mmちょっと(0.125インチ)太くなってる。この差は意外と大きいと思う。
 一方のジャズベは、フロント/リアっちゅうよりはセンター/リアみたいな構成でシングルコイルが2個、それぞれのボリュームに対しトーンは共通のが1個だけ。でもピックアップセレクターは無くて、ボリュームでバランスを調整する仕掛けだ。ボディは上記の通りで、ツイストしてるとでも言えば良いのか、若干だけど1弦側の方が下がってオフセットされた形になってる・・・・・・ったって見た目的にそんなに大きな差ではない。そいでもってこれまた上記の通り、若干ネックが細身に仕上げられてる。
 実のところ他は34インチスケールとか片側4連ペグとかブリッジとか使用する材とか、スペックはほぼ変わらない。興味のない人には同じに見えることだろう。これもまぁプレべ買ったらもぉエエか、と思っちゃった理由の一つだったりする。
 ただ売り出した当初、フェンダー社はジャズベの方をより高級ラインと考えてたみたいだ。それが証拠に、手間の掛かるネックバインディングやブロックインレイなんかはかつてはジャズベにしか採用されてなかった。

 つまり最大の違いはピックアップの仕組みや配列ってコトになる。でももちろん、ピックアップが変わったからって音程そのものが変わるハズがない。要は倍音構成みたいなのが変わって音色がちょっと変わるだけだし、ベースだからって高音成分が要らないワケぢゃない。例えばギブソンやらカール・ヘフナーみたいに余りにも低域だけが強く出たベースは音程感が弱くなるし(・・・・・・この2社はショートスケール主体なのもあるけどね)、「地を這う」といやぁ聞こえは良いが、何となくブヨブヨ・ズモズモした輪郭のボヤけた音になるのだ。何事にも「塩梅」ってモンがあるワケやね。
 この点で、中低域が強めに出るプレべ、中高域がジャズベ、ってな大まかな違いがあるが、弾いてる方はウンウン頷いて悦に入っても、聴かされる方は余り分からない。ハッキリ違うなと思ったのはハーモニクスの出しやすさの違いくらいだろうか。リアピックアップのあるジャズベの方がこれは断然簡単だと思う。
 要はプレシジョンももちろんこれはこれでとても良いベースだ、ってコトだ。とにかく単純明快なのが良い。漢のベースって気がする。ピックアップ1個にボリュームとトーン、それだけの潔さがおれみたいなヘタクソにはあれこれ考える必要がなくて合ってた。もちろんティム・ボガードを例に挙げるまでもなくバカテクだってOKな奥の深さもある。タイコで言えば3点セットみたいな感じだろう。ジャズベはなんかテクニカルな印象なんで3タム・2フロアってなトコか。2バスとまでは行かないな。それは24フレット仕様で5弦とか6弦の多弦ベースって気がするわ。

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 ともあれ新しく弦楽器を購入した時の儀式で新しいストラップも買って、長さはやはりこの人を参考にすべきだろうと、ジャコパスの腰だめより若干高い目くらいにして鏡の前で提げてみて、改めて気付かされた。

 ものすごくバランスが良くて身体にややユルさを持って馴染むのだ。ピタッとフィットしつつも遊びがある。ストラップの長さを変えてもこの感覚はあまりブレない。

 これまで家にあったのはフェルナンデスのFRB−75っちゅうて今風な形をしたもので、やはり近年の製品らしく人間工学的に計算されててフィットするようにデザインされてる。重量級とは申せバランスなんかもとても良いのだが、ぶっちゃけちょっと不満があったりもした。たしかにフィットはするものの許容範囲が狭いとでも言うのか、ギプスみたいとでも言うのか、「この体格・体型にはこの高さで絶対ストラップ合わせて、この角度で提げてね」みたいなタイトなフィット感でいささか窮屈だったのだ。それに比べると、ジャズベのフィット感には少しアバウトさやルーズさがある。
 バックパックに譬えて言うと、フェルがあっちこっちに調整用ベルトの付いた最新型の高機能ザック、ジャズベは付いてなくはないけど、まぁ腰とショルダーストラップの長さ調整くらいなワリと初期のザック、ついでにプレべは?っちゅうたら、こりゃ古典的キスリングだろうか(笑)。ジーンズで言うなら近年のスキニーみたいなピッチピチでもないがストレートほどルーズでもない。古典的なスリムくらいな感じかな?

 ちょっとヒネれたオフセットボディだけでこんなにシックリ来るんだ?ってぶっちゃけ思ったな。レオ・フェンダーはやはり天才だわ。

 それとこれはパッシヴタイプに共通することだけども、何か「弾いたら弾いた分だけの音が出る」ような素直なカンジがとても好ましい。ずっと昔、フェルナンデスのコピーもんのプレべ(・・・・・・っちゅうてもドンズバ時代だから素晴らしく良く出来てたな)で拙いなりに一生懸命リフやらベースパターンを考えて曲作ってた時の感覚さえ甦るような気がする。
 一方でアクティヴのフェルはどことなく音が冷たいっちゅうか、均質過ぎるっちゅうか、自分の技量以上の音が出てるような気がしてならない。これはおれの持ってる中では数少ないアクティヴのもぉ一本、タカミネでも感じてることで、パラセティックでしたっけ?そらたしかにすごく煌びやかで綺麗な音が出るんだけど、ぶっちゃけおれホンマはここまで音出せてないハズなんだけどな〜、ってな違和感がいつも付きまとってしまうのである。デジタルのマルチエフェクターなんかもそうなんだよね。どこか何かノレない。

 もちろん、基本設計が古いゆえの問題点もある。宿痾と言われるデッドポイントもキッチリある。シングルコイルゆえにノイズは噛みやすいし、タッチに対して出音が生々しく、また正確過ぎるモンだから、上手な人だと微妙にタッチの差を表現できたりするかもしれないが、ヘタクソなおれではただもうひたすらバラついてアラばかりが目立ってしまう。俗にギターでもフェンダー系よりギブソン系の方が初心者に馴染みやすいと言われるのは、要するにシングルコイルとハムバッキングの性格の違いで、これはベースにも当てはまるのだ。
 オマケに僅かながらヘッド起きが発生してやがる(幸いネックのハイ起きまでは無かった)。実はこれもフェンダー系の宿痾なのだ。ヘッドに角度がないままナットの押さえを確保するために、ナットと4弦ペグの間で段になっており、材の繊維が通ってる部分の厚みが僅か1cm少々しかない。そのためナンボ硬いメイプルとは申せ、約80kgとも言われる張力に負けてここから曲がりやすいのである。特にネックの細いジャズベではよく起こる。ちなみにこの現象を避けるためにハイエンドベースで有名なLAKLANDなんかではものすごくナット周辺を厚く作ってる・・・・・・っちゅうのはマメね。ついでに言うと、昔持ってたフェルのプレべのコピーもここはドンズバ度を敢えて落として厚く作ってあった気がする。

 クドクド書いたが、つまりはチョー気に入ってしまった、っちゅうこっちゃね。ヘッド起きの問題は熱掛けて直してもらうか、ネック交換すりゃエエんだし。

 周囲でも同年代の人の訃報をポツポツ聞く年齢となってしまってるのに、このところ楽器については不思議と良い巡り合わせが続いてる。ドラムもそうだった。自分が長く理想としてたサイズで、古いとは申せ大切に扱われてたプロレンジのセットがポンと手に入った。今回のジャズベにしたって、5万ナンボと安いなりにあれこれ何本も弾き比べた上での納得の一本だ。何だかありがたいことだ。
 もちろん、ブティック系とかのハイエンドモデルとは比べ物にならない、ってのは分かってる。しかし別にエキゾチックウッドの派手な木目が欲しいワケでもなければ、究極のプレイヤビリティとかどの弦のどのフレットを弾いてもバランスの取れた完璧な鳴りが欲しいのでもない。フツーに実用的かつ実戦的に長く使える・・・・・・ただそれだけで充分なのだ。

 ジジ臭いが、最近セカンドライフってコトを良く考えるようになったのは仕方のないことだろう。何年続けられるのかは知らないけど、その気儘な日々の良き相棒に、前回も書いた通りのシブい3トーンサンバーストでオーセンティックなこのジャズベはなってくれそうな気がしてる・・・・・・なぁ〜んて、すぐにリッケンの#4001とかが欲しくなったりしてね。

2020.11.04

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