「シズカナカクレガ」ヘヤフコソ
The Dream's Dream・・・・・・ハコを作りたい


ニューヨークアンダーグラウンドはここから生まれた・・・・・・CBGB&OMFUG

ベルリンっちゃぁ〜、「SO36」っすねぇ〜。今はすごく綺麗なハコになったみたいだけど。

https://www.billboard.com/,https://www.zitty.de/より

 夕暮れと共に段々と表通りに並び始めるオーディエンス、みんなノロノロしてるのにどこかイラ立った目。フライヤーだらけの薄暗い通路、いい加減なモギリ、ワンドリンクは申し訳程度のちっこい缶ビール、マトモに呑もうと思ったら絶対にもう1本必要。お!ココってオールスタンディングちゃうかったんや。座れるやん。2時間も立ってられるか、って。椅子投げるような音ちゃうしなぁ〜。
 あちこちで立ち昇るタバコの煙・・・・・・たまにちょっと違う煙もあったりする(笑)。埃っぽい空気に脂と汗と小便と皮革、そして安物の化粧品の混じった匂い、その日の音に合わせたのか合わせてないのかビミョーなBGM、ステージに並ぶアンプ類の赤い光、先バンどっちなんだ?客電は落ちたのにお約束のように必ず遅れるスタート、暗い中ようやくメンバーは登場し、スポットが点灯し、ぶっきら棒な一瞬の挨拶、始まる演奏、腹に来るキックの音、ザーザーとスネアをバズらせるベース、ルーズになったりタイトになったり、モタッたと思えば走るヨレたテンポ、それらが段々とまとまって来るカンジ、疎らな拍手・・・・・・。

 今の管理されて綺麗に整備されたライブハウスはともかく、昔はこんなカンジのトコがケッコーあった。いやまぁ演る側としてはそんなあちこち出たコトないけど、観る側ではホンマあちこち行ってた。不摂生と不養生の極みのような日々の中だったんで一つ一つはもぉ良く想い出せないが、とにかく何かそこにはいつも不穏でエキセントリックに蠢く「気」が満ちていた。実際、音なんてそこまで良く聴き分けられないんだ。ボーカルはまず聴こえないし、殆どの場合タイコとベースのバランスが合ってないし、ギターはトレブル上げ過ぎで耳に痛いし、そもそもハウリングでピーピーガーガーいわせたりしたら何が何やら分からん、って。

 「ただもうその場を体験すること」がライブハウスの醍醐味だったように思う・・・・・・って実のところ、おれ自身はライブハウスで演奏するのはあんまし好きではなかったんだけどね。だって緊張したら間違えるし、間違えたらアセるし、アセッたら走るし(笑)。

 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 ワリと感染拡大の初期の頃に新型コロナのクラスターが発生したんが大阪のハコだった、ってんでミソもクソも一緒くたの十把一絡げでスッカリ悪者にされちゃったライブハウスの廃業が相次いでる。冒頭に挙げたようなヤクザなトコだけではなく、キッチリした音響・照明設備を誇るような小ホールクラスのトコでも今や各地で廃業や閉鎖になってるらしい。実に残念で嘆かわしいコトだ。
 ちなみに件の大阪のライブハウスにしたって決して怪しいトコではなくてとても綺麗だし、そんなバイオレントでデストロイでポンなライヴやるような雰囲気でもなかった。キッチリ今風で機材もシッカリしてて、とても良く管理されたスペースだと思う。たまたま運の悪いことに感染者がオーディエンスの中に紛れ込んでた、それだけだ。

 弁護はともかくとしてしかし、ライブハウスの衰退はもっと前から確実に始まっていたのも事実なのではないかと思ってる。80年代のインディーズブームはすでに遠く、90年代終わりからの急速なインターネット普及によって、音楽を発信することは別にライブ活動やレコード・カセット・CD等々の記録メディアに頼らなくても可能になった。その後さらにYouTubeやら何やらの登場で敷居はさらに下がり、今は地道なツアーで人気に火が点くとか、どっかの町で絶大な動員数を誇るとか、そぉゆうのってトンと聞かなくなったもん。ライブ活動ないまま動画配信だけでブレイクするなんてケースの方がむしろ多いくらいなんぢゃないかな?

 もちろん、バンドの形態だって変わって来ている。室内作業中心で生ドラム叩ける環境のある人なんて殆どいないだろう。ギターやベースのアンプだってちょっと音量上げたら近所から怒鳴り込まれる。スタジオ借りるにゃ金も掛かるし、予約制だから好きな時に好きなように練習できるわけでもない。
 そうなると断然DAWやライン録りの方が有利と言える。昔はライン録りなんて到底マトモに聴ける音になってくれなかったが、今はアンプシミュレータやキャビネットシミュレータなんてモンが1万ナンボのマルチエフェクターにだって備わってる時代だ。実音をマイクで拾ったのに限りなく近い音が作れちゃうのである。
 ドラム・ベース・ギター・ヴォーカルってのはバンドの最もベーシックな形だったけど、そんなんにまったく拘る必要がなくなってしまった。いやいや、複数名のメンバーさえ必要ない。今のデジタル録音なら何回重ねようが音質の劣化もないし、弾けなきゃ打ち込みゃぁ済むだけのコトである。声が悪いとか音痴だ、っちゅうんなら、初音ミクに代表されるボカロ使やぁエエんだし。

 内輪の飲み会でさえリモートとか、バカなこと言ってるだけぢゃなくやってる時代なのだ。

 ・・・・・・でもそれって寂しくないか?無理してないか?カッコ付けてないか?

 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 みなさんは「オドラマ・システム」ってご存じだろうか?

 バッドテイストの巨匠(笑)であるJ・ウォーターズが「ポリエステル」っちゅう相変わらずの下品映画でやった(やらかした!?笑)ギミックで、観客には番号の付いたカードが配られ、画面に表示される数字に従ってその部分を擦って上映シーンに合わせた匂いを嗅ぐって趣向だった。やはりっちゅうべきか、サスガっちゅうべきか、カードに染み込ませてあったのはロクでもない悪臭ばっかしだったんだけどね。
 実に子供騙しでクダらないアイデアではあったが、実はこれ、その後も真面目に進化し続けており、さらに3D映画と合わさって現在の4Dとか4DXと呼ばれる、椅子が揺れたり、煙が出たり、水芸があったり、レーザー光線がビャーッってなったりするようなアトラクション体験型映画に繋がってたりする。匂いや香りを噴射する技術も当然ながらある・・・・・・悪臭はないみたいだけど。

 全ては「どれだけリアルに近付けるか?」のための試みと言って良い。そして既に答えは映画の世界で出てる、ってワケだ。即ち、どれだけ頑張ったってヴァーチャルはやはり「もどき」に過ぎない、どしたってリアルに追い付けない、って答えが。
 いや、いずれ肉薄するコトは出来るんだろう。今だってかなりしてるのは、同じような造りの室内ジェットコースターの臨場感を想い出せばお分かりいただけるハズだ。でも、本物のジェットコースターの迫力には全然追い付けてない。

 どれだけ高度なアレンジを施した楽曲をどれだけ素晴らしい凝った編集の映像で流したって、目の前でガチャーンとアコギで一発Emのコード弾いた方がリアルだし、第一金も掛からない。
 AVでどれだけ綺麗なオネーチャンが股開いてヨガッてたって、多少ブスでも実際にヤッた方がそらリアルなのと一緒だ(笑)・・・・・・え!?二次元マニアだって?知るかヴォケ!1人でセンズリこいて寝てろ!

 おれたちはリアルを取り戻さなくちゃならない。TAKE BACK REAL !

 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 コロナでのライブハウスの廃業続出のニュース観てて、「リアルを取り戻すための装置」、としてライブハウスって必要だし、設備投資としては比較的お手軽なんぢゃないかと漠然と思った。

 ・・・・・・そらまぁナンボなんでも伝説の「どらっぐすとぅあ」みたいに狭いのは特殊過ぎるが、キャパなんてそんな要らない。ステージも要らない。たとえあってもせいぜいドラムの台だ。裏返しのビールケースに載せられた、サランネットがあちこち破れたようなボロいアンプ数台とPA、モニターなんて気の利いたものもない。古びたタイコと緑青が噴いたシンバル、そこに最低限のミキサー、マイク、若干の照明で充分だ。

 言うまでもなくたとえそんな貧弱な空間でも、それなりに人の集まりやすい場所で確保するには相応のテナント料ってのが必要だ。敷金が最初に発生するし、家賃が毎月掛かる。坪何万とかだから、ヘタすりゃ数十万単位だ。だからって山里の納屋を改造ってワケには行かない。そして残念ながらそんな資金は逆さに振っても今のおれにはない。

 夢のまた夢、ってヤツですよ。


※脚註:タイトルはテレヴィジョンの名曲から頂きました。おらぁこの曲と「ヴィーナス」が好きやな〜。


京都の至宝と言える「拾得」は今なお健在。テリーさんもお爺さんにならはりました。

http://liveathome.jp/より

2020.09.16

----Asylum in Silence----秘湯 露天 混浴から野宿 キャンプ プログレ パンク オルタナ ノイズまで
Copyright(C) REWSPROV All Rights Reserved