「シズカナカクレガ」ヘヤフコソ
アンプなんて要らない!?


大好きなドゥームバンド、"SUNN O)))"の凶悪極まりないアンプの壁。絶対アタマおかしい(笑)。

https://www.reddit.com/より

 ・・・・・・いよいよ本格的にそんな時代が到来しつつあるような気がする。

 言うまでもなくこれまで何度か取り上げて来たアンプシミュレーター(最近ではギタープロセッサと呼ばれることが多いみたい)と称される製品群の進化である。古今東西のアンプモデルが選べるだけでなく、スピーカーの数やらどの辺にマイク立てた音かまでそれっぽく設定できたりする。実機でバッドキャットにコッホ、マチレスを並べるなんて、酔狂なお金持ちかタダで貰えるミュージシャンでないとムリな芸当だが、いとも簡単に出来てしまうワケだ。
 そらまぁヘソ曲がりなおれは、敢えてこのご時世にマルチ+アンシミュからブースター+真空管アンプなんてめんどくさい方向に行っちゃったんだけど、やっぱし不便なことは不便で、お手軽さや安定性ではもぉ絶対に負けてるもん。どだい真空管はシッカリ暖まってナンボなんで、出音が安定するまでに時間が掛かる。キッチリ計測したわけではないが、感覚的にはスイッチ入れて30分くらいしないと綺麗に歪んでくれないカンジだ。スイッチ一つでキラキラのコーラスサウンドから極悪歪みまでホホイのホイで出せるアンシミュとは大違いだ。

 プライベートユースや宅録派は最早、アンシミュ以外のコトは考えてないと思う。オーディオインターフェース噛ましただけで、後はもう全部PC内部のソフトウェアで完結させてる人だって多い。
 そりゃぁ未だレイテンシー(ICチップの処理能力に起因する発音の遅延)とか、どうにもムリヤリ色付けしたような音色の不自然さとか、どこか手やピックと実際の音の間に一枚紙が挟まったような違和感といった問題は残ってるとは申せ、年々歳々改良されてきており、ぶっちゃけ聴かされる方はまったく分からないのではなかろうか。

 余談だけど、その嚆矢はLINE6の”POD”っちゅう製品である。あまり音楽の道具らしくない赤い丸っこい筐体に入ったそれが世に出たのはたしか90年代の終わりくらいだったと思う。最初は何がスゴいのか?従来のマルチエフェクターと何が違うのか?アホなおれにはサッパリ分からなかったが、あれよあれよと言う間に世の中を席巻していった。
 いやいや、そうそう!想い出した。ちゃうちゃう。その前にはジョンソンってアンプがあったっけ。所謂今のモデリングアンプのハシリで、どんなアンプの音でも出せるっちゅうのがウリだったような記憶がある・・・・・・って、せやったせやった!Tech21の黒い”SansAmp”はもちょっと早かったっけかな?後やったかな?アナログだったけどさ。

 何だかんだでもう20年以上の歴史があるのだ、この世界も。

 少なくとも家庭では「アンプなんて要らない」ってトコまで来てるのは概ね間違いないから、敢えてここで四の五の言うツモリはない。本日話題にしたいのは、ぢゃぁライブハウスやホールのステージではどぉなんだ?ってコトだ。

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 多分って付くけど、もう要らない。

 ・・・・・・っちゅうか既にそうなりかけてるパートがある。ベースとキーボードである。「キーボードはともかくベースでそれはないっしょ?」って思われる方も多いだろうが、実態としてはかなり昔から、それもチャンとしたハコほど、ベースは「ライン取り」ってやり方でプリアンプの後段からラインアウトで卓にブッ込んでPAのパワーアンプに通す方式が一般的になってたりする。ちなみに今はDIっちゅうのから分岐させて卓に通すらしいが良く分からない。
 つまり、たしかにステージにはアンペグだとかハートキーだとかナントカ、それなりのキャビネットに何発もスピーカーの入ったベースアンプが置かれてあるんだけど、その音を聴いてるのはほぼメンバーだけで、オーディエンスに聴こえてる音の大半は、実はそのエンクロージャーから発せられた音ではないのである。

 実際にアンプから出てる音を律義にマイクで拾ってるのは、今ではギターくらいなのだ。

 たしかにアンプで作った、特に歪み系の音には堪らないものがある。殊にパワーアンプ段まで真空管をフルアップにして飽和させた音は素晴らしい。痺れますわ。大いにそれは認める。しかし、到底その爆音はアッテネータでも通さなければ長時間耐えられるレベルではないし、他の楽器との音量バランスが如何せん悪すぎる。バンドあるあるの一つ、「ギターだけ悪目立ち」状態になってしまう。
 返し(モニター)も置いてないような大昔のライブハウスならともかく、今時のバッチリPAシステムを揃えたハコなら、なまじ一人だけクッソうるさいギターアンプからワザワザ音を拾うより、プリアンプから卓に取った方がミキサーさんだって音作りがしやすいのではなかろうか。

 大体、自分で持ち込んだアンプならともかく、常設アンプでラフな使い方でもされたら店としては堪ったモンぢゃなかろう。意地でもマーシャルのJCMとかフェンダーのツインリヴァーブあたりはやっぱ置いてあったりするんだけど、真空管アンプである程度の大きさ以上のモノって、馬力がある分、ぞんざいに扱うとすぐに焼けたりトンだりして大変なのだ。意外に繊細なのである。曰く、いきなり2つのスイッチをオンにする、ギター側のシールドを抜き差しする、何も考えずにフルアップにするどころかブースターまで全開で突っ込む、チャンネルリンクやエフェクトループ部分に歪み系挟んでゲイン上げる・・・・・・etc。下手すりゃマジで1日の稼ぎがパーになるくらいの損害だ。

 プレイヤー側にしたってきょう日本当にそこまで真空管アンプでなきゃならん、っちゅう人がそんなに多くいるとは思えない。GTだMEだG3だG5だHELIXだとのたまって、デジタルのアンシミュ/プロセッサーの黒い板をドーンと足許に据えといて、今更チューブの味がどぉこぉなんて噴飯モノだと思う。
 いや、たとえその手のデジタルでなくとも、歪みはとにかくエフェクターで作る、っちゅう人にもギターアンプはもぉ要らないトコまで来てる。古くは上述のTech21あたり、今はどうだろ?ヒューケトやオレンジみたいなアンプ屋さんからもストンプボックスタイプが次々出されてて百花繚乱だ。せいぜいタバコの箱をいくつか並べた程度のプリアンプをボードの空間系の前に置いてしまえば、そっから先はライン取りで全然OKだろう。それほどにプリアンプ単体での進化も凄まじい。通ぶってアルニコだグリーンバックだなんてうるさい、っちゅうねん。
 グダグダ並べ立てるのは止そう。ぶっちゃけ、アンプからマイクで音をどうしても拾わなくちゃいけないケースは、繋ぐエフェクターはせいぜいブースターとワウくらいで、アンプ直でガツンと歪ませる超アナクロな人くらいになっちゃってるってコトだ。

 ちなみにフリップ翁は長年使ってたJC−120の使用を止めて、今はライヴでもスタジオでも完全に卓直結でやってるらしい。たしかにビデオ見ると最近のライヴでは巨大なラックはあるけど、アンプらしき箱はどこにも見当たらないモンな。

 このアンプレスの流れはまだまだ極端な感じがあってマイナーだけど、これからはきっと広がってくことだろう。

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 冷静に考えると、プレイヤー側はともかく、お店にとってはアンプが無くなることによって得られるメリットは多いような気がして来る。まずは何たってステージが広くなる。アンプの故障もブツ自体が無いんだから起きようがない。余分な電気も要らないからコンセントも減らせるし、ブレーカーの落ちる心配も減るだろう。掃除の手間だって減る。
 これらはテナント料もままならない弱小のハコには設備投資や維持コストが圧縮出来てとてもありがたいことだろうと思う。それでこざっぱりしすぎて殺風景で寂しいっちゅうんなら、書割でマーシャルの壁でも絵に描いて、後方に貼っておけば良いのだ。

 さらに考えてくと、PAなんて要らない!?ってな気さえしてくる。ステージの左右に規模に応じて黒い箱に入ったスピーカーがいくつも積み上げられてるのは見慣れた、如何にも「らしい」景色なんだけど、あれも場所取るんでジャマっちゃジャマだ。調べてみたら、最近ではクラブなんかで「サイレントフェス」っちゅうてBluetoothで繋ぎ込んでみんなヘッドホンで聴く、なんてスタイルが既にあるとゆうではないか。ウンともスンとも言わないで静まり返った中、みんな踊り狂うワケやね(笑)。ただもうドスドスと床を踏み鳴らす音だけが店内には響いてる。

 楽器→アンシミュ→卓通した後の音をそのように処理すれば理論上は出来るハズだ。とは申せ、現状ではやはりレイテンシーの問題があるんで、やれなくはないけど目の前のプレイヤーの動きと出音が微妙にズレてどうにもブキミらしいが・・・・・・どだい鳴ってるのはボーカルの地声とタイコその他生楽器の音だけ、っちゅう方が余程ブキミか(笑)。野外フェスとか数万人規模でやったら、もはやアートの世界だろうな。

 こうして突き詰めて考えてくと、かなり味気ない世界がその先に待ってるのは紛れもない事実だ。一方でしかし、昔ながらにゴタゴタ所狭しとアンプ類が山積みになってるのも如何なモノか?って気もする。

 アンプレスでPAのみ、っちゅうのは今の時代には案外現実的な落としどころなのかも知れない。


スリムなPAと言えばコレ!なBOSE"L1 Model System“。楽器直結も可能で1本200W!これはだから400W!

http://audio-land.com/より

2019.10.11

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