「シズカナカクレガ」ヘヤフコソ
ピックアップはフロントやね!


こぉゆうヤツっす。

http://www.sekaimon.com/より

 初めて買ったアリアプロUのレスポールのコピーモデルはワリと本家に忠実に作られてて、ピックアップセレクターにはちゃんとクリーム色の丸いプレートがかまさっており、そのフロント側には”RHYTHM”、リア側には”TREBLE”とあった。今は本家でさえもこのプレートは省略されることが増えたが、これが無いとどうにもレスポールの左肩のデザインに締まりがないように思えてしまう・・・・・・などと言いつつ、これがあるとワッシャの緩みの原因になりがちなので、おれもバンドやるようになってからは外してたんだけどね(笑)。

 弾き始めた当初は全く何も知らないからリア側の音の方が固いってコトさえも分からなかったが、それでもしばらく練習する内に音色の違いは体感で覚えて行く。ギターはネック寄りのフロントピックアップで音を拾うと甘く太く、ブリッヂ寄りのリアだと固く鋭くなるのだ。文字通り「トレブル」なのだ。だからこれは何となく理解できる。
 ・・・・・・でも、何で音に丸みのあるフロントがリズムなんやろ?っちゅうのがガキだったおれの第一の疑問だった。だってリズムって歯切れが命ですやんか。それならキンキン・チャリチャリしたリアの方が似合うやんか、逆やんか、と。
 第2の疑問は、教則本読むと大抵がソロにはリアピックアップ使え!って書いてあるんだけど、ホンマにそぉなんかなぁ〜?って思うケースが多々あったコトだ。速弾きならともかく、ロングトーンの泣きのフレーズとか、ナンボ安物のトランジスタアンプでも(・・・・・・いや、それだからこそ、か)フロントの方がソレっぽい音が出るような気がしてたのである。当時で言うなら例えばサンタナとか有名なホテカリのソロなんかがそうだ。

 そんな感じで、ロックギターに於けるリアピックアップ至上主義的な考えにはワリと初期の頃から馴染めないでいたある日、衝撃的な超絶テクニックの天才ギタリストがこれまた衝撃的なギターを引っ提げて現れる。言うまでもなくエドワード・ヴァン・ヘイレンとあまりにも有名なお手製フランケンギターである。
 ストラトタイプのボディにちょっと傾け過ぎぢゃねぇのか、っちゅうくらい斜めに付けられたハムバッキングのピックアップがリアに1発だけ、トーンコントロールもない。これ以上シンプルなのはないやろ、ってなボロボロのギターが出て来て、ロック少年たちがフロントピックアップへ眼を向けるコトはほぼほぼ消滅したと言えるだろう。フロントピックアップなんてジャズギタリスト専用でしょ?みたいなカンジ。
 そんなんだからやっぱりおれが間違ってるんかなぁ〜、ってあの頃は結構真剣に悩んでたモンだ。

 ところがどんなけ好きになろうと努力しても、個人的にはリアピックアップが好きになれないのである。そらまぁ弾くギターがP−90やらテレキャスやらシングルコイルばっかしで、リアだとキンキンしがちだったっちゅう事情もあるとは申せ、当時のバンドでのスタイルであるクリーントーン+コーラス・ディレイでのシーケンスパターンには、リアではどうにも音が平べったく感じられてしまうのだ。
 そんなんで、自然とフロントの使用率が殆どになってしまってた。リアなんて歪ませてピッキングハーモニクスを出す時とか、特段の用事がない限りは使うことがなくなってしまった。フロントで歪ませての速弾きは音の分離が悪くなるとか言われるが、おらぁそもそも大して速く弾けないんで関係ないし(笑)。

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 爾来、一貫しておれはフロントの使用率が高い。弾くギターのメインはツンツン・キラキラなシングルから中低域にコシのあるハムバッキング(それもマホガニーボディ)に変わり、使う音色もクリーントーン主体から歪みばっかしになったけど、余りにブーミーすぎる気がした時にセンター(フロントとリアのミックス)にするくらいで、後は大抵フロントでばっかし弾いてる。リア外してオクやメルカリに流そうか?っちゅうくらいに使わない・・・・・・ああ。ムスタングやダンエレはフロントとリアのミックスを基本にしてるかも。

 だけど何かとリアの方にメリット多いのは間違いなく事実だろう。上に書いた通り、まずハーモニクスが出しやすい。例えば6弦開放で2フレットと3フレットの真ん中辺りのトコ、3フレット、4フレット、5フレット、7フレット、12フレット・・・・・・と順にハーモニクスを出すとEメジャーの和音で下降音程が出せるんだけど、フロントだと最初の3音がとても出しにくい。
 強く歪ませといて、ちょっとピックを深く握って12フレット近辺のフレーズをフロントピックアップのポールピースの真上あたりで親指の腹が弦に触れるように弾くと(←言葉で書くとややこしいけど実際はそんな大したことはしてない)、面白いようにキュンキュン・ピキピキとピッキングハーモニクスが出せる。おらぁヘタだから狙った倍音を自在にコントロール!なんて逆立ちしても出来ないが、それでもフレーズに一味効いて「お料理もちょっと工夫でこの美味さ!」みたいになってくれて楽しい。これもやはりフロントでは出しにくい。
 いやいや、そんな飛び道具みたいなコト言わずとも、ハンマリング・オンやプリング・オフといった基本テクだって、リアの方がカンタンに綺麗に出せる。平板って上で書いたけど、逆に言えばその分、音の粒が揃いやすいのかも知れない。リフにしたって1度5度8度のドローンコードならともかく、構成音が多いとフロントではグジャッとツブれやすくなってしまうが、リアだと取り敢えずはタイトになってくれる。

 結局、フロントの魅力は単音での音そのものの太さとか暖かみとか広がりくらいで、整然と演奏するって基本的な観点からはリアよりハードル高いような気がする。
 そうは分かってても、でもやっぱしおれは馴れたフロントばっかし使ってしまう。いっそジャズに転向しようか?・・・・・・指が付いて行かへんがな(笑)

 この10年くらいボチボチと続けてるバッハの無伴奏曲を強引にギターで弾く、っちゅうのもフロントが似合う。ちょっとしたコツとその日の調子はあるものの、まるでチェロのように豊かに響くディストーションサウンドが出せた時なんかは一人で悦に入ってしまう。これがリアだと畢竟エレキギターの音になってしまい、どこをどぉ工夫しても出せない音だ。
 この音色がいつでも安定して出せて、かつ一曲通してモタッたり突っかえたりしないだけのテクニックがあればおれも一端のギタリストとしてやってけてたんだろうけど、そうカンタンには問屋が卸してくれない。はぁぁ・・・・・・。

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 さてさて、今は動画がカンタンに見られる時代になった。YouTubeで探せば過去の名演なんてぇのがいくらでも見付かる。誠にありがたい限りである。そして実際に弾いてる姿を見てるうちに、おれは知ってしまったのだ。

 ・・・・・・数多のギタリストが決してリアばっかしで弾いてないってことを。

 有名どころでいうとジミー・ペイジ、この人はどのギターを弾く時もセンターが多い。リッチーさん、驚くほど小まめにフロントとリアを切り替えてるだけでなく、使用率でいうとフロントの方がやや多いように思う。大体ストラトってリアはトーンが効かずキンキンのままだから使いにくいんだろうか。フリップ翁も若い頃から割りとフロント主体だ。すんげぇ高速メカニカルシーケンスパターンの途中で何の意味があってかリアに切り替えてみたり、かなり拘ってる様子が伺える。ガキの頃に疑問に思ってたサンタナは意外や意外、ウッドストックではSGをリアで弾いてる。でも70年代はフロントが多い。ワラプトソ、もといクラプトンはクリーム時代はリアばっかだけど、近年はストラトのセンターをやたら使ってるカンジだ。ホテカリは二人ともリアで弾いてるが、ジョー・ウォルシュなんてテレキャス使ってるやんけ!なーにが「ハムバッキング特有の粘りのある音」だよっっ!?(笑)。

 でもまぁ、殆どのギタリストは時々で上手く使い分けてるように思う。特に70年代半ばくらいまではエフェクター類も未発達だったせいか、細かいタッチやニュアンスのためにピックアップ切り替えたり細かくボリューム・トーンを動かしてるケースが目立つ。つまりひたすらリアでばっか弾いてる方がむしろ少数なのだ。

 誰やねんホンマ!?「ギターソロはリアに限る!」みたいなことを吹き込んだんは!?ヴォケがっ!

 それどころか最近はフロントを使った方が綺麗に響くテクニックさえ現れた。
 バーコードのポジションを基本にハンマリングやプリング、スライドを絡め、2オクターブとか音程の離れた分散和音の上下行フレーズをダウンピッキングやアップピッキングで超高速に弾き倒すスィープ奏法である。ワリョワリョウリョワリョ〜、ってな独特の音がする。残念ながらおれは大してできない。
 おれの無能はともかくとして、これにはフロントがとにかく宜しい。まぁバッハの曲の途中でも明らかにスィープみたいにやんなくちゃならん箇所は出て来るんで、悪戦苦闘は一応してる・・・・・・そんなレベルのおれでさえもリアの方がたしかに鳴らすのが難しいような気がするって分かるもん。

 そんなこんなで、タイトルはあくまでおれ個人の好みのコトだ。要するにエレキなんて好きなピックアップの位置で弾けば良いのだし、フロントの多用にヘンに引け目を感じる必要なんてちっとも無いってコトを、おれはこの歳にしてようやく知ったのだった。
 どうやらいつまで経っても上達してないのはテクニックだけではなさそうである。本当に悲しく、悔しい・・・・・・ヌククク。 


スィープのエクササイズパターン例。難しいよん♪

http://www.shredacademy.com/より

2018.04.14

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