「シズカナカクレガ」ヘヤフコソ
ったくイカシた焼鳥だぜ!!


まだ写真撮影してないんで、拾いですみません。

https://www.session.de/より
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 備忘録替わりにしてる3行ブログにも先日書き留めたんだけど、いつの間にかギブソンの経営状況がかなりヤバいコトになってるらしい。

 何でもこの20年くらいの、M&Aっちゃ聞こえは良いが、要するに手当たり次第の買収に次ぐ買収によるダボハゼ拡大戦略で借入金がどんどん増える一方で、肝心のギター販売は一貫して減少しており、有利子負債が日本円にして実に600億円くらいに膨らんぢゃってんだそうな。この額は、楽器っちゅう所詮は軽工業な会社としては異常なレベルと言える。
 それで切羽詰まってセミアコとか拵えてるメンフィスの工場を売りに出したりしてるんだそうな。価格は19億円。どぉ考えたってこれは一時しのぎとか焼け石に水ってな金額であることは素人目にも明らかで、要はそれだけ危険水域に達してるってコトの証に他ならない。ホント、綱渡りの状況が続いてるみたいである。

 実際、傘下に収めたブランドがどれも順調に成長してるようには見えない。代表例だとドラムのスリンガーランド。フェンダー傘下のグレッチがオシャレで廉価な小径ドラムセットなんかを積極的にリリースしたりして何とか頑張ってんのに、こっちは今や完全にブランド休眠状態である。昔はローランドと組んでたケイクウォークなんかもギブソンの子会社になってからはサッパリ鳴かず飛ばずだし、ヘビメタ御用達だったクレイマーは数年前から新製品のリリースが完全に滞っちゃってる。スーパーハイテクギターの草分けであるスタインバーガーは一昨年だったかにギター製造が中止され、今は細々と小物を供給するくらいしかやってない。ナンボ元から廉価版とは申せ、機能的には何の問題もないスピリッツシリーズなんてアータ、今では3万数千円で投げ売りされてるんだから悲惨な状況である。そんなんばっかしで好い加減懲りたかと思ったらいきなりティアック買収したり、どうも脈絡がないっちゅうか無節操っちゅうか、一体全体何をしたいのか良く分からない。

 「無かったら買う」っちゅうのは、モノ作りとしては実は下策と言える。そんな風にして掘っ立ててであちこちからブランド掻き集めて、それでさぁ何かエエもん作ったれやと言われてもそうはカンタンに問屋が卸してはくれない。だって社風も技術もノウハウも立脚点も違うのだから。まだ基本素材ならともかく、ある程度形になったモノをくっ付けるのは大変な困難を伴う。感情的な摩擦だってあるだろうし。
 もちろん一方では敵対的買収ってのもあるだろう。早めにツブしとかんとアカン、っちゅう考え方やね。しかしそれは企業体力・・・・・・つまりは製品が良くてお金に余裕あってこそ出来ることであって、今のギブソン製品にそこまでの寡占化を狙える実力があるようには到底思えない。結果、ただもうあちこちに大枚を払って業界全体の縮小だけを加速させてるような状況だ。

 早晩会社としては最もブランド価値の高いギブソン自体の身売りを検討せせにゃならん事態になるのではあるまいか。

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 そんなニュースを横目にですわ、とうに人生も間違いなく折り返し点を過ぎてるのにですわ、またもやIYHをやらかしてしまったのである。以前から気になってた・・・・・・どころか駄文で一話を割いてまでして「欲しい病」について切々と語ったファイヤーバードをついに購入してしまったのだ。

 実を言うと、あれ書いた頃から出物のチェックは密かに続けてたのだった。一昨年だったか、マエストロ・ヴァイブローラの付いた新品が14万弱で投げ売りになってた時はかなりマジで買いそうになった。しかしマエストロって見た目は最高にクールでファイヤーバードにも良く似合うんだけど、実用性では限りなく厳しい難物である。ビグスビーよりもさらに効かないし、かといって無理にギュワンギュワンやるとチューニングは一発でガタガタになるし、でも付いてる以上はついついギュワンギュワンやるだろうし(笑)。努めて冷静に考えて、やっぱし弾いててチューニングの安定しないギターだとストレスが溜まるだろう、ってコトで何とか諦めたのだった。それでも手に取るときっと我慢できなくなるだろうから、最後まで触らないようにしてた・・・・・・意外に純情なのだな、おれも(笑)。

 そうこうするうちに、今度は近所の中古楽器屋で白いのが吊るされてるのを見付けた。何年物とかには興味ないから確認しなかったが、再発以降のモノでバンジョーペグだったから2013年以前のモノだろう。見たところ、フレットの減りも、ボディの傷も殆どない新古品みたいな状態のが11万ほどだったかな?ある程度年配の人なんかで念願叶って買ってはみたものの、結局持て余してケースに仕舞いっ放しにしてたようなパターンではないかと思われる。
 これは試奏させてもらった。まぁ要するにファイヤーバードの音であって、元々があまり使い物にならない音(笑)だから全然合格水準だ。白は個人的に大好きな色で、おれは楽器と乗り物については白系を選ぶコトがとても多いからその点でも〇である。これもかなりグラッと来た。
 しかし、何故かその日はペロペロ弾いてるうちに醒めて来て、「これ以上ギブソン系で白ばっか増えてもなぁ〜」とガラにもないことを考えたのと、音色はともかくバンジョーペグのチューニングのしにくさがミョーに気になって来てパス(あのペグってシビアに追い込むのがむつかしいんですよ)。それで2週間後くらいにもっかい弾いて決めようと思って行ったら、とっくに売れてしまった後だったのだ。
 他にもあちこちの店で手頃な値段のを見掛ける度に気持ちは揺れたが、良く見るとネック修正の跡が汚なかったり、ロッドに余裕がなくなってたり、ステッカーやら何やらの痕で状態が今イチだったりで、よっしゃぁ〜!って買うほどの決断には至らなかったのだ。ところで、分かる人には分って頂けると思うが、ファイヤーバードのサンバーストの中古って何故か98,000円であることが多い。何でやろ?

 ・・・・・・で、だ。

 先日仕事で外出して、用件終えてそのまま帰宅しようと思って駅に向かってると大きな楽器屋があった。冷やかし半分で入ってみるとあったんですよ!青いファイヤーバードが!新品なのにチョイ傷だかなんかでプライスタグは以前見付けた中古の白より安いではないか。往年の国産コピーモデルより安いってどぉゆうこっちゃ!?そして早速試奏させてもらって、おれはちょっとばかしビックリしたのだった。
 っちゅうのも音が随分マトモになってるのである。図体のデカさのワリに、トレブリーっちゅうよりは蚊の鳴くような細い音が最大の特徴だったのに、そうではなくなってる。不思議に思って訊いてみると、いつ頃からかピックアップがアルニコからセラミックに替わったのと、ワイアリングが見直されたコトで出力が大きくなり、音も太く、また若干中低域に厚みのある音色になったんだと言う。これやったら全然フツーに使えるやん。
 とは申せボディシェイプはそのままだから、相変わらず左膝に載せたらネックが遠く、右膝に載せたらボディがなんとも肋骨に引っ掛かるような、どうにも姿勢が決まらない弾き辛さだし、ポットがおかしいのか急にフルテンになるようなボリュームカーブの不自然さだし、最近のギブソンに共通する妙に真っ白なバインディングはどうにもちゃっちい。

 それでも小1時間後、俗に「畳」と称される巨大なケースを提げてニヤニヤ嬉しそうに楽器屋を出て来る不審なオヤヂが居たのだった・・・・・・ってこれ、こないだディストーション買った時とまったく同じハナシの運びやんけ(笑)。

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 ぶっちゃけまだ詳細なインプレを書けるほどには弾き込めてない。大体、弦もまだ買ったまんまの010−046なので、009−042と固さが異なる。こんな固いの、昔はよりスケールの長いストラトにまで張ってた自分が信じられないや(笑)。
 現時点で言えるとすれば、スタインバーガーのギアレスチューナーがひじょうに使いやすいコト、そのおかげでヘッド落ちは改善されてるコト、歪ませた時のコードの分離が今一つ良くないコト、しかし単音引きではSGなんかよりもさらにクセが無く、おれの弾くような曲にもけっこう合うコト、ネックシェイプはかつてよりは随分細くなったが、おれの所有するフライングVやSGよりは若干台形っぽいコト、そしてストラップ付けて立って弾いてもやっぱりどうにも弾き辛いコト(笑)・・・・・・ってなカンジだろうか。ホント、シェイプとしては余程エキセントリックなエクスプローラーの方が100倍ラクだな。

 ちなみに一時期、ボディ割れを避けるためか見た目のためか、サイドに移設されてたプラグジャックはまた元のボディトップに戻されてる。おれはこっちの方が好きなので好都合だ。どうもレスポールとかテレキャスとか、ボディサイドに挿すタイプは個人的には使いにくい。また、これも一時期採用されてた専用ソフトケースも昔ながらのエビ茶の四角いハードケースに戻されてる。本当にバカみたいにデカいだけでなく死ぬほど重い難物で、可搬性は極端に悪い。こっちは旧弊の復活だと思う。

 左肩は撫で肩でオリジナルシェイプでもないし、塗装は塗りつぶしでクリアー掛かってるのに木目が透けるヘボさだし、中の材だって昔のような良いものではないだろう。何ピースのツギハギかも分からない。指板はローズって謳われてるけど、近年のギブソンの指板材についておれはかなり疑惑の目を向けてる。ともあれ染めてるのは確実である。レモンオイルで拭いたらペーパータオルが真っ黒になるんだもん。落ち着くまでは弾くたびに指先も黒くなるだろう。SGは買った当初、弾くたびに指先が茶色になったので染料の配合は変えたのかも知れない。それと昔はもっと重かった印象があるが、何だか妙に軽い。多分、木材が年々入手が厳しくなって、本来は目の詰まった重いマホガニーを使ってたネックにまでボディ用のスカスカのを回してるんだろう・・・・・・まぁ軽い方がラクでおれ的には良いんだが。

 つまりエンスーなマニアからしたら、もぉ歯牙にも掛けられないような貧弱なスペックなのだ。オマケにギターとしては根本的な欠点だらけ・・・・・・でもそんなこたぁどぉでも良い。実用性に乏しいことなんてハナッから承知だ。おれはとにかくファイヤーバードが欲しかったのだ。
 「ペルハムブルー」なるスバルのクルマにでもありそうなちょっとグレーがかったメタリックの青は、これはこれで良く似合う。優雅と言っても良い。経年変化でクリア層が灼けたら緑がかって来るだろうが、きっとそれはそれでまた美しいに違いない。そぉいやディッシュインレイのネックなんて何年ぶりだろう。

 ファイヤーバードには「不死鳥」や「鳳凰」って意味があるにも拘らず、これまでの経緯やエピソードは「閑古鳥」とか「風見鶏」、あるいは「怪鳥」とか「化け鳥」みたいなんばっかりな、どうにもならんヘンテコなギターである。鳥のクセに高らかに飛んだことが一度もない。ファイアーバード、最高で最低だ。

 ったくどぉしよ〜もないほどにイカレた・・・・・・もといイカシた焼鳥だぜ!ファイヤーバードってよぉ!

2018.02.04

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