機材はアナログが面白い |

真空管では最も一般的なECC83(12AX7)
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http://iwamoto-camera.com/より
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・・・・・・最近つくづくそう思う。
いや、楽器関係の話である。デジタル技術の進化によってA5サイズくらいの箱の中に何十種類ものエフェクターを詰め込んだり、PCの中にシンセから音源、エフェクター、ミキサー、MTRまでをオールインワンに出来たり・・・・・・と音楽をやることに付きまとっていたコストや習熟の難しさ、スペースの確保、またそれに伴う・・・・・・前回のコピペはいかんね(笑)。
たしかにデジタル技術によって何かととても便利になったし、タダ同然で色んなモノが揃うようにもなった。おれも随分とその恩恵に与らせていただいてる。それは疑うべくもない事実だ。
しかし、何故かおれの行き着いたギターを鳴らす環境は、目下アナログの極みなのである。ギターにブースター1発咬ませて後はVOXの真空管アンプ直、ほぼそれだけだ。ブースターっちゅうたかて怪しい中華メイドのJOYOである。何とブースト量が+35dbもあったりする。元祖のMXRのマイクロアンプがたしか+25dbくらいだったことからするとバケモノだ。まぁ、強いて工夫してると言やぁ9V駆動のこの小さな箱にパワーサプライから18Vの電圧を掛けて給電してることくらいだろう。理由はサッパリ分からないけど、その方が断然音が良くなるのだ・・・・・・まぁブースター自身の寿命は多分スゴく縮めてることだろうとは思うが。コイツをムスタングやダンエレでフル、P−90のSGで7〜8割、ハイパワーなVで5〜6割くらいにツマミを回してる。いやもう十分だ。
コーラスやディレイ、ディストーション、ワウなんかは今でも手許に置いてるし、以前はデジタルのマルチエフェクターを何台も買い替えたりさえもしてた。しかし、結局残ったのはこれだ。セットアップとも呼べないシンプルさである。
理由はただもう音が良い、それだけである。もちょっと具体的に言うと、手、それも特にピック持ってる右手に音が付いて来る感じや歪み具合がとても心地良いのである。何なんだろ?これ!?同じアナログったって進化したトランジスタやFETなんてのもあるし、デジタルアンプなんてモノさえ最近ではあるが、真空管を知ってしまうと戻れない(行けない?)気がする。おれはトランジスタの権化とも言えるローランドのJCシリーズが昔から大好きだったんだけど、どうもあと一歩のツヤとかハリとかリニア感が真空管と比べてしまうと足りないのだ。
エフェクターにしても然り、色んな優れた歪み系エフェクターはアナログ、デジタル問わず存在するものの、最も原初のスタイルのこの「真空管を歪ませる」っちゅうのが最も心地良い歪みを生んでるうに思う。大体今のエフェクターの歪みは真空管の歪みをシミュレートしてできてるんだしねぇ。
もちろん家で鳴らしてるワケだし、そんなにスゴいモノではない。出力僅か4W、プリ管2本、パワー管1本のクラスAっちゅうてシンプルっちゅうか玩具みたいなモノだが、そんなんでさえも圧倒的に良いのだ。
年々迫りつつあるとは申せ、残念ながら音、それもエレキギターっちゅう不確かなことこの上ない世界に於いてはデジタルは未だアナログに追い付けていないと言わざるを得ない・・・・・・しかし、それはあくまで演奏する側の問題であって、聴かされる方には殆ど分からないビミョーな差異の世界であるのも一方で事実なんだけどね、うくくく。
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不思議なコトに、エレキギター以外の音の増幅には真空管のアンプはあまり似合わない。ベースは最近主流となったデジタルアンプが最も爆音かつ良い音を出してくれるような気がする。理由は良く分からない。多分、あまりアンプ側でクセを付けないで原音をドーンと忠実に増幅してくれる方がベースには向いてるからかも知れない・・・・・・っちゅうか、パワーアンプ通してスピーカーで鳴らす必要さえも今は怪しい。もうシッカリしたプリアンプだけにして、後はミキサー卓にブッ込んでPA直に鳴らしてもベースは行けるんぢゃないかって気がしてる。もちろんそれは、おれがベーシストではないからってのもあるけどね。
キーボード類にしても同様だ。ファズ掛けてレスリースピーカーで鳴らすような時代ではないと思う。エフェクター類が必要なら適宜咬ませば良いが、後はライン直で全然問題ないんぢゃなかろうか。
ちなみに散々上に書きまくっといて矛盾することは分かってるんだけど、実はギターにしたってそんなシンプルな環境に出来たら最高だろうな〜、とも思ってたりする。大体、真空管アンプは暑いし重いし、真空管が意外にすぐにヘタるし、交換するとケッコー高いし。
今は家にマッキーの12chミキサーと20W×2のパワードモニターを置いてるんで、そこにマルチエフェクト1台だけ噛ませてギター突っ込めれば随分スッキリすると思うのだ。
つまり、おれは真空管信者でもなければアナログ万歳と言いたいワケでもない。デジタルで真空管と同じように右手に付いて来るリアルな音が出せるのなら、いつでも乗り換えたいとも思ってる。
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さて、アナログは電子楽器の世界にもあって、シンセサイザーなんちゅうかつては未来の楽器と言われたものにさえアナログとデジタルがある。冒頭に書いたようにデジタル化がどんどん進んで、現在では単体楽器としてのシンセサイザーさえもが随分と少数派になってしまった。
今はソフトウェアシンセっちゅうて、PCの中に仕組みが全部収まってしまって、それをMIDIキーボードコントローラーっちゅう、要は鍵盤状のモノを繋ぎ込んで弾けばPCがたちまちシンセサイザーになっちゃう時代なのである。それもいっちょアガリどころか2丁でも3丁でも大丈夫。複数のキーボード繋いで、それぞれ別の音源を鳴らせば往年の雛壇に積まれたキーボードの山も楽々再現可能である・・・・・・まぁPC1台だとCPUの能力が付いて行けなくなるだろうけどね。
ハモンドにフェンダーローズ、メロトロン、CP-70、ミニムーグ、アープのプロフェット5なんて往年のプログレ少年が憧れた豪華絢爛な組み合わせだってその気になればやれてしまう。
・・・・・・ただ、ちょっとも面白くないのである。
シンセサイザーの面白さは詰まる所、ツマミやスライドバーを直覚的にリアルタイムでグリグリ弄り倒すことにあると思ってるんだけど、どうにも極限のデジタルであるソフトウェアでは楽しくないのだ。いちいち画面上の見辛いパラメータやツマミもどきをマウスで変えなくちゃならなかったり、フィジカルコントローラを繋ぐにしても機能の割り付けを行わなくちゃならなかったり・・・・・・とどぉにもまどろっこしい。クイッと回せば単純明快!ギュヨォ〜ン♪って大胆に音色の変化が起こるアナログシンセは、この点でとても楽しかった。もちろんセッティングを追い込んだり、いつも安定した音色を出すのはその分大変だったけどね。
要はデジタルにはフィジカルな面白さが無い。フィジカルコントローラーちゅうたかて所詮、ニンテンドーのWiiとかSwitchみたいなモンだ。
そんな物足りなさを感じてるユーザーは潜在的に多かったみたいで、今はヤマハの子会社になってちょっと残念なコルグが数年前、このデジタル全盛の御時勢にマコトにチープなアナログシリーズを出してくれた。VOLCAと名付けられたそれらは、80年代のアナログ全盛期のチープさを前面に打ち出してる・・・・・・ってライバルのローランドの往年のTB−303やTR−606のパクリっちゃパクリなので、いささかナサケなくもあるが(笑)。
出てるのは、リズムボックス、ベースシーケンサ、サンプラー、キック、シンセで、どれも1台1万円ほどだ。信じられないくらいに安いが作りもかなりチャチで、思いっ切りツマミを回すとすぐに折れそうだったりするのが今のコルグの苦しいトコだろう。
しかし、これがもうメチャクチャに面白いのである。ドンカッドンカッって安っぽいタイコの音、MS直系のブヨブヨして強烈にフィルターの効くベース音、如何にもなサンプラー・・・・・・おれは3台同時にデカい音を鳴らしたくて、それでミキサーまで買ってしまったのである。
内部にはこれまたミニマムでチープな16音ステップシーケンサなんかが組み込まれてて、何台か並べるだけで充分にアシッドハウスの真似事がやれてしまうのだが、やはり延々とそれだけでは飽きてしまう。
それで思い付いたのが、これを音源にしてシーケンサ部分だけをDAW側で制御すればもっとグリグリに専念できるのではないかってコトだ。原理はカンタンで往年の外部音源接続と同じ考え方で、PCから台数分のMIDI信号を出力してそれをVOLCAのMIDIインに繋げば良いハズだ。中古でMIDIのマルチポートも入手した。今はMIDIの外部音源なんて流行らないから製造中止になっちゃってたのである。何だかもうアナログだかデジタルだかサッパリ分からない構成ではあるけれど、とにかく目の前がツマミだらけなのは間違いない。
キーボードコントローラーも持ってるので、ブヨブヨドンドン鳴らしながら、何となればソフトシンセを鍵盤で弾くことだって可能だ。音はオーディオインターフェースから吐いてミキサーに持ってけば良いのである。もちろんギターやベース弾いたって良いし、マイクも繋がってるから絶叫しても良い。
DAWやDTMにどうしても付きまとう「人力の欠如」や「ライブ感の無さ」だって、これなら解消するだろう。よっしゃぁ〜っ!
・・・・・・残念ながら多忙を極めてたり他の活動が忙しいせいで、この「電子楽器食い倒れ太郎」みたいなスタイルはまだ実現していない。でもまぁそんなにアセることもなかろう。その内どーせヒマになるんだしさ。そうなったら造反ジジィのオールドスクールな「踊れるノイズユニット」でも始めようかしらん。
そんなんでエレキギターはともかく、電子的な楽器ほどアナログが面白いのは、間違いないことのように思う。 |

アナログシンセの不朽の傑作、KORG”MS−20”。とにかく音がズ太い!
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2017.08.10 |
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----Asylum in Silence----秘湯 露天 混浴から野宿 キャンプ プログレ パンク オルタナ ノイズまで
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