「シズカナカクレガ」ヘヤフコソ
真逆のギター・・・・・・あるいは続・ウーマントーン

 相撲の番付表に置き換えると一目瞭然、分かりやすい。


西
横綱 レスポール ストラトキャスター
大関 SG テレキャスター
関脇 ES−335 ジャズマスター
小結 ファイアーバード ジャガー
前頭 エクスプローラー
フライングV
ムスタング
十両 レスポールJr デュオソニック
ミュージュックマスター

 ・・・・・・ってな感じだろうか。無論、異論はあるだろうけど。

 ひがぁ〜〜しぃ〜のギブソン、にぃ〜しぃ〜のフェンダー。さしづめ幕下はそれぞれエピフォンとスクワイヤーってトコだな。ほたら他のブランドはどぉなんねん!?K−1かプライドか?ミゼットプロレスか?とか、ややこしいツッコミはまぁ勘弁したってぇ〜な、ニーチャン♪(笑)。

 さてさて、上の表に示したとおり、ストラトが西の横綱であることは論を待たないところであろう。いくつか欠点はあるものの、総じて極めてオーソドックスで完成度の高いコイツがおれは大好きなのだ・・・・・・とは申せ、アンプ直でスムースなウーマントーンを出すにはそれなりの工夫が必要なこと、そしてそぉゆうギターを探し始めたことは前回書いた。

 今回はその続きだ。後半部分をストレッチしたような内容だし、個人的にウダウダ悩んだことを書き記すだけなので、ギターの予備知識のない人にはちっとも面白くないことをあらかじめお断りしておく。

 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 アンプ直でウーマントーン出すにゃぁやはり、ハムバッキング系のギターが良かろう。

 ならば、フツーに考えれば、東の横綱であるレスポールを買うのが無難なトコだと誰しも考える。

 チェリーレッドのスタンダードは、実際はムチャクチャ重たいし、ハイポジションは弾きづらいし、と欠点が多く、かつては結構不遇の時期もあったものの(タイムマシンがあればその頃に戻って買い占めたいな!)、今やエレキギターの一つの到達点である。やはり粘りながらもキレ・ヌケ・コシのある音は素晴らしい。新品/中古、本家/デッドコピーともに流通量がとても多く、腰据えて探せば格安の出物に当たる確率が高いのもビンボなおれにはありがたい。ちなみに永久貸与だと思ってたトーカイのデッドコピーは昨年取り戻されちゃったし・・・・・・。
 だからと言って、ストラトvsレスポールではミーハーもミーハー、芸のないことおびただしい。何せちょっとB級が大好きなおれが、王道中の王道を買うのは沽券に関わる・・・・・・は大袈裟か(笑)、いずれにせよどうにも落ち着かない気がした。
 それにおらぁ、今回は白いギターが欲しいのだ。理由はないけど白がいい。あともう一つ、近年寄る年波のせいで肩の調子が悪く、ヘタすりゃ5kg近くもある重いギターはしんどい。先日ダブルネックについて語ったその舌の根も乾かぬ内になんだ!?とネジこまれそうだが、実際、ダブルネックの魅力には抗いがたいものがあってちょっと試してみはしたのだ。でも、あまりの重さに泣く泣く断念したのである。


超定番、ですな。

 では、サイケな爆音ギタリスト達のマストアイテム、B級の帝王、SGか?

 ウーマンの創始者クラプトンだってSGが愛器やってんし、悪くない選択ではあろう。殊にラージピックガードだったりしたら、気分はもう水谷孝か灰野敬二だ。それにプレイヤビリティー、っちゅう点でSGはたいへん優れている。薄くて軽量なボディと周囲のジャーマンカーブ、Wカッタウェイと最終フレット近くでセットされたネックによるハイポジションの弾きやすさ、手の当たりにくいボディ末端部分に固められたコントロール類。良くヘッドが重くてバランスが悪いなんて言われるけど、ありゃ〜ヴァイブロアームをつけるとちょうどバランスが取れるようになってるのだ。それでいて音も悪くない。レスポのような高域のハリやヌケを期待するとキツいけど、歪ませるとかなりいっしょ。フツーの人には区別は絶対つかない。それでいてお値段の物分りはかなりよろしい。

 しかし、結局SGに食指は動かなかった。白で良いのがなかったせいもあるが、思えばそもそもおれはSGのカタチが嫌いなのだった(笑)。でも、エピフォンジャパンのラッカー仕上げのヤツなんか、本家よりデキ良くてかなりグラッと来たな〜。


やっぱSGってサイケが良く似合う・・・・・・裸のラリーズ

・・・・・・と、分からない人にはどっちかどっちか見分けがつかない灰野敬二

 ES−335に代表されるセミアコも悪くないな〜。音質とバランスの良さ、クセのなさではコイツがギブソン系では一番かもしれないと、おれはにらんでいる。フュージョン系のギタリストやスタジオミュージシャンがこぞって使うのも何となく分かる・・・・・・が、いささかボディがおれにはデカい。もう少し抱え込んで弾ける程度の大きさでないと辛いのも事実だし、造りが複雑な分値段も高い。それに何よりあまりに佇まいがシブ過ぎる。そんなこんなでボツ。

 ぢゃ、Jrやメロディーメーカー系はどうだ?

 いやいやいやいやパンクやね〜。通称ドッグイヤーと呼ばれるP−90ピックアップ1発、1V1T、テールピースブリッジのシンプル極まりないルックスと軽いボディによる取り回しのよさ、白とか黄色のポップなカラーリングが魅力だが・・・・・・どうにもJ・サンダースのイメージがおれには強く、NYアンダーグラウンドの匂いがプンプンしてるように思える。サスティンたっぷりのウーマントーンでブリブリ弾き倒す、っちゅう今回の趣旨にはいささか雰囲気がそぐわない。それとP−90はシングルコイルだけあって、意外にパリッとした音が特徴でもある。サスティンもあまり効かない。ちょっと路線が違う(・・・・・・って元々サンタナはJr抱えてウッドストックに登場したんぢゃなかったっけ、笑)。


スッカリお歳を召されたラリー・カールトン

Jrっちゃあこの人!ジョニー・サンダース。音楽よりも生き様がパンク。

  ここらでいよいよギブソン変形ブラザーズの登場だ。

 いっちゃん重厚な感じなのはファイアーバードだろう。同じジョニーでもウィンターさんご愛用で有名なアレ。通しネックにバカでかいヘッド、ケッタイな糸巻き、グラマラスなフォルム・・・・・・見るからに手が掛かってて、甘くてぶっといウーマントーンが出そうだ。さほど重量はないんだけど重々しい。ありがたいことにコイツ、新品の定価はそこそこなのに、不人気なせいか中古相場での値落ちが大きなギターで、比較的手が届きそうでもある。タマ数はさほど多くないものの、白もまずまず出回ってる。
 早速おれは何本か弾かせてもらった、のだが・・・・・・あれれ!?こんなにクッキリしたハイの出るクリアな音だったっけ??昔の印象となんだか違うな。
 意外だった。加えてボリュームツマミの効き方が何だかヘン。元々ギブソン系のギターはボリューム0からの立ち上がりが唐突なのだけれども、コイツはいきなりフルボリュームになるような印象。ノブの回転に対してまったくリニアぢゃない。それと見た目以上に座って弾きにくい。ちったぁおれも智恵がついたせいか、妙にそんな些事が気になってしまい断念。でも形はセクシーだよね〜。ウーマン、ってカンジ♪

 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 おれはようやく思い至った。音色や材質だけぢゃなく、いろんな意味でストラトの真逆を目指した方が絶対に楽しい、と。ならば、だ。

 ストラトは柔らかな曲線のフォルムに加え、「コンター」と言われる身体に合わせたボディのえぐりがあって、立って良し、イスで良し、胡坐で良し、と到って弾きやすいのも特筆すべき長所だ。ならば、思いっきり弾きにくいギターはどうか?

 そぉなりゃ〜も〜、フライングVしかねぇぢゃん!!白もあるし。

 カッコだけ、を最優先して作られた、まったく楽器のイデオムから外れたフォルム。座って弾くことは不可能に近い。オリジナルのコリーナボディのはともかく、再生産タイプは、作りの適度なチャチさ加減も好ましい。音はSGなんかよりもさらにウーマン向き。クリーントーンでもアタック感がほとんどないんだもんな。
 なるほどエクスプローラーもカタチはずいぶん過激だが、見た目とは裏腹にとてもバランスが良く実用的である。座って弾くのもヨユーでできる。何だかそれはテンションの上がってるおれにとっては、生ぬるい!甘い!って気がした。それにこのフォルム買うなら、やっぱしヘイマーのアレ、でしょう。ご存知リック・ニールセンが使ってたサンバーストのアレ、だ。

 やっぱVしかねぇ!!V・V・V・V・フライングVで、ブイブイゆわせたる!おれはさらにあちこちの楽器屋を回り、新品/中古問わず弾きまくった。無論、国産のコピーモデルも弾きまくった。何軒回ったか分からないくらい熱心に熱心に、初めてギターを買ったときのような気持ちで探したのだった・・・・・・。

 ともあれ、かくしてこの歳にしておれはフライングVのオーナーとなった。マイケルもルドルフも、A・パウエルも特段好きではないのに、だ。もう欠点だらけで幅が狭く、アクの強い音なのに、だ。ただもうストラトの真逆が欲しかったのだ。予想通り立ってしか弾けない。だから譜面台も併せて買った。何が「アンプ直」や?却って道具増えたがな(笑)。うれしそうに奇妙な形のをピヨピヨ弾きまくる姿に、家族はもはや呆れ顔だ。メロウな音色のウケが良いのがせめてもの救いだが。

 ・・・・・・まったくもってアホだ、と我ながら思う。


欠かせないのはマドロス帽の方。実はそれほどファイアーバードにはこだわってない(笑)ジョニー・ウィンター。
ちなみに弾いてるのはヘッド形状がレスポールの形をしたレア仕様。

元祖フライングVはむしろこの人、未だ現役のアンディー・パウエル

2007.05.28

----Asylum in Silence----秘湯 露天 混浴から野宿 キャンプ プログレ パンク オルタナ ノイズまで
Copyright(C) REWSPROV All Rights Reserved