「シズカナカクレガ」ヘヤフコソ
たかがピック、されどピック


シェイプ的には今でもけっこう好きかも。


現在はこれ。他はギャラリー見てね。

 ピック、とはギターを弾く小さな板状のものだ・・・・・・なーんて説明は今さら不要か(笑)。無くても弾けるが、やっぱあった方が弾きやすい。でも、ナカナカ自分に合うピックって見つからないモンで・・・・・・

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 ギターを初めて買った70年代末期、ピックは大体1枚50円だった。今でもそうだけど、どこの楽器屋にも小さな升目に仕切られたアクリルのケースに種類別に仕切られてピックが売られていたのだが、半分以上を占めるのが「ヤマハのシステムピック」っちゅうヤツで、残りのほとんどがピックボーイ、こと中埜商店の製品だった記憶がある。もちろんギブソンやフェンダーもあったけど、種類はオニギリばっかで、値段もちょっと高め(70円だったかな?)だった気がする。

 ヤマハのシステムピック、とはまさにシステムになってて、素材が鼈甲カラーのセルロイドと白いナイロンの2種類、厚みが0.20〜0.40インチ(ナイロンは+0.05インチ)の5種類、形がオニギリ、ティアドロップ、ペンタゴン、オーバル、トライアングルの5種類・・・・・・つまり50種類が揃っていたのである。
 たしかにチョイスしやすい利点はあったものの、ロゴやら表記方法が統一されてるもんだからイマイチ面白みに欠けるのも事実だったし、特殊な形の薄いヤツなんて一体どれだけニーズがあるのかも良く分からなかった。ちなみに今なおセルの一部のモデルは作られているようだ。

 当時のおれにとっては、たとえ50円といえどもアダやおろそかにできる金額でなかったのは言うまでもない。平たく言うと「痛い出費」だったのだ。そんな中で慎重に選んで買ったのがこのシリーズのセルのペンタゴンだった。だって「ヤングギター別冊小林克己ロックギター教室」の最初の課題曲がパープルやってんもん(笑)。厚みは0.40mm。リッチー先生御使用のホームベース形のアレ、と言えば分かりやすい。今でもフェルナンデスかどっかからポリアセタール製のがまだ出てるような気もするが、もうあまり見かけなくなってしまった。
 余談だが、彼が使用するホンモノは鼈甲製で、角の部分が突き出しの少ない広角になっていて、一般的な90度のシェイプとはちょっと異なるらしい。それにそもそもご本人は野球が大嫌いで「ホームベース形」と呼ばれるのを好まないんだそうな。

 このピック、ちょっと薄目に替えたりしながらそれでも1年くらい使ったが、当然のことながらピックだけでギターは上達するものではないし、その頃はやたら弦に対して斜めにピッキングしてたせいで、ものすごく削れて減るのが速いのだ。一言、不経済である。比較的耐久性のあるナイロンも試したが、こちらはどうにもしなりがなく、ボッテリして使いづらい。おれはホームベース形を断念した。

 次に白羽の矢が立ったのが、おなじみピックボーイのガンジャ柄のアレ、ね。今でもセルテックスやカーボンファイバー等、素材を変更しながらも売られている長寿商品の一つだ。元々はウソかマコトかE・クラプトンのシグネチャーと称する水色の幅の広いティアドロップ型をベースに、ナイロン素材で作ったのが最初。白と黒の2種類があって、これの1.00mmだったかな?とにかく分厚いのを使っていた。
 これはエッジの処理がきれいでずいぶん弾きやすかったし、磨耗も少なかったのだが、ナイロンゆえに音のアタック感に欠ける欠点があった・・・・・・って、おれがヘタなだけなんだけど(笑)。

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 ・・・・・・と、ここまで読まれて、何で50円を惜しむくせに、弾ける角が1ヶ所しかないホームベースやティアドロップを使ってたんだ?三角のオニギリとかにすれば3ヶ所あって、3倍得ぢゃないか!?と思われた方は鋭い。

 そうなのだ。三角なら3倍長持ちするのである。

 ところがおれはヘタなだけでなくアホだった。「硬くて先の尖った小さめのピックの方が速弾きできる」と信じていたのである(笑)。ま〜実際、あながちこの考えは間違ってはいないけれど、そんなことを四の五の言えるテクニックのレベルに到達してなかったことは言うまでもないし、ヘタゆえに余分な力が入ってるもんだから、ピックはますます削れて行く。もう少し先の尖った三角っちゅうと、サンタナでお馴染みの巨大な正三角形があるにはあるが、これはほとんど三味線のバチである。ムチャクチャに弾きにくい。

 そんなある日、おれは天王寺は茶臼山の麓にある楽器屋にフラッと立ち寄った。今はどうなったか知らないけど、当時はちょっとヘンコな感じのオッチャンが店主で、価値があるのかないのか分からないようなヘンテコリンなビザーレ系の中古ギターをたくさん置いてる不思議な店だった。そこで見つけたのである。
 昔の下敷きみたいな柄の、セルロイドでできた尖り気味のオニギリピックだった。何と一枚20円。しかし、色も厚みもバラバラっちゅうアバウトさ(笑)。無論、何の印刷もない。だからどこ製なのかも不明。それでもあまりの安さとキワモノ的な雰囲気に惹かれて適度なタッチのものを選んで2枚ほど買った。売れ残りなのかなんなのか、ピックの升目を3枡くらい独占して大量に置いてあった。

 数日後、おれは50枚、いやもっと買い占めたかも。抜群に弾きやすかったのである。ティアドロップ系の適度な尖り方とオニギリ系の握りやすさ、そしてしなりと反発力、それで一枚たったの20円・・・・・・削れやすいのは欠点だったが、何せ角は3つあるから3倍長持ち(笑)。バンドやってたときもズ〜ッとこれを使っていた。

 今はもうボロボロになったのが2枚しか残っていないが、おれはこれを越えるピックに未だに出会っていない。今ではこのシェイプ、かなり一般的になって同じようなものはいっぱいあるが、あの独特の適度なしなりと粘り気は、どんな新素材よりもおれにフィックスしてくれた。あ、そうだ、1つだけもっといいのがある・・・・・・鼈甲だ。しかし、いくら何でも高すぎて気軽に使えないもんな〜。
 ともあれその後、素材や厚みは色々変えたものの、基本的にはこの「尖ったオニギリ型」をかなりの長きにわたって愛用することになる。不思議なことにその内、フツーの丸っこいオニギリにも馴染んでしまった。

 結局もっともノーマルな形に行き着いたのだ。

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 ギターを弾き始めて30年近くになる、牛の歩みのように技術面の上達は遅いが、それでも牛のよだれのような(笑)粘り強さで続けて来たオカゲか、少しは最初のころよりマシになったのかもしれない。取りあえず、余分な力でゴリゴリ弾くことはなくなったように思う。
 何故なら、ピックのエッジが減らなくなったのだ。弦に当てる角度が平行に近くなったのかも知れない。

 昔のように50円の金に困ることもない。ピックは色も形も素材もさまざまで、気分転換にもなるし、ひょっとしたらもっと弾きやすいものに巡り会えるかも知れない、ってスケベ根性も働くので、面白そうなのを見つけるとついつい買ってしまう。ずいぶん膨大なコレクションになった。
 しかし、こうして浮気はするものの基本的にはずーっと一貫してオニギリだった・・・・・・それがだ。

 最近、、ギターのゲージを1サイズ細くした。弦変えたんだからピックもちょっと変えてみようかな?と何となくジム・ダンロップのナイロンのティアドロップで弾いてみた。

 ん!?弾きやすいやんか!!

 ちょっと面白くなって、あれほど苦手だったHERCO(ヘルコ)の「FLEX75」や、巨大サンタナピックなんかも試してみた。新たに5〜6種類買ったりしたかな?
 ま、結局は最初何となく手に持った件のジムダンロップがいっちゃん弾きやすいので、最近はそればっかしだ。クリーントーンでアタック感がやや乏しかったり、体温で柔らかくなって行くのは欠点だが、それでも往年のナイロンのモコモコした感じよりは断然マシだ。

 何とまぁ、40をいくつも過ぎたこの歳になってピック変更である。ピック選びに終わりはない。

2007.04.22

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