「シズカナカクレガ」ヘヤフコソ
DAW格闘記


この本なかったら手も足も出ませんでした・・・・・・。


 リズムボックス、ってモノを世界で最初に出したのは、銘機「MS−20」で名高いコルグ(KORG 京王技研)である。商品名がダサくもとてもユーモラスで、「ドンカマチック」といった。言うまでもなく、バスドラの「ドン」って音とスネアの「カッ」っちゅう音からのネーミングだ。60年代末のことだ。
 時代は下がっておれが学生の頃、ローランド(Roland)から、今や伝説のTB−303やTR−909なんてものが発売される。今でこそ超高値で取引されるコイツ等だが、当時は楽器屋の店頭でいじってみて、そのあまりにショボイ音色に泣けそうになったものだ(伝統的にローランドの製品群には音の太さが欠けてる気がする)。キョッとかペポッとか。
 それからしばらくしてMIDIなんてーモノが普及し始めた。音源がどーたらこーたらでシーケンサを組み合わせて、キーボードからうにゅうにゅで、と、もはやおれには理解できない、ややこしい世界であった。

 それから四半世紀近く、パソコンの発展とともに世の中すごい進歩した。音楽とて例外ではない。

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 --------う、動かんがな〜っ!!

 Zoomのマルチエフェクターのオマケでついてきたスタインバーグ(Steinberg)の「CubaseLE」っちゅう、DAWソフトを手持ちのノートパソコンにインストールした第一声がこれ、である。

 何かこれはきっとインストール方法を間違えたに違いない!と、アンインストールして再びインストール。やはり動かない。起動さえしない。ヘルプも見れない。無料ゆえ取説は死ぬほど不親切でないに等しいし・・・・・・。
 弱り果てて、翌日会社でシステム関係に詳しい人に尋ねてみた。その人はまったく音楽ソフトのことは知らないのだけど、おれの拙い必死の説明に、短くも的確な質問を重ねて大体の見当をつけてくれた。要はPCのユーザー名が漢字で入ってるからだろう、とのご託宣。
 帰宅して早速、新規ユーザーフォルダを半角英字で作成し、そこにインストールするとイッパツで立ち上がった。あ〜、そぉいや会社のグループウェアでも似たような現象あったなぁ〜、などと、済んでから思い出すマヌケなおれである。

 いずれにせよ持つべきものは良き家族、良き友人、そして今の時代はIT技術に詳しい者だろう。

 しかし、何だか無闇に沢山の小窓の開くソフトではある。おれのPCは15インチ液晶に1400×1050の解像度なので、そんなに画面自体狭いというほどでもないのだけれど、それでも目がチラチラする。加えて、ほとんどの画面にものすごく沢山のボタンやヴァーチャルなノブ・スライドコントロールがついてる。MS−Officeのタスクボタンなんか足許にも及ばないくらいの数だ。これを理解せにゃイカンのかよぉ〜、と思うと気が滅入る。
 滅入るが、平たく言えばただのクセに、MTRとタイコやベースその他の音源、ミキサーにエフェクターが丸々一式入ってるのである。昔なら揃えるのに100万円くらいかかったような内容だ。上手く活用すれば一人バンドもできるだろう。

 あらかじめ購ってあった「CubaseSE徹底操作ガイド」ってーマニュアル本と首っ引き。ふむふむ、まずは使うトラックを定義して、そこにMIDI音源とか、VSTインストゥルメント、っちゅうのを読み込んで紐付けるわけやな。ほうほう、エフェクターも掛けれるんか、・・・・・・かかること数十分、バスドラの「ドス」って音が打ち込めたときはものすごく感動した。お!音源に909も入ってるやん。

 いじくり回してる内にだんだん理解できてきた。いささかスネアがローピッチ過ぎたり、シンバルの音が仏壇の鉦みたいなのがダサいけど、タイコの音はかなり使えるし、909やパーカッションのトーンを変調させれば、ノイジーで減衰の早いシンバル音も出せる。
 ベースもさすがドイツ製ソフト。コニープランク直伝の「あの音」が出せるやおまへんか。何種類も音色はあるけど、結局は「あの音」なのが楽しい。ブンヨヨブヨンヨブヨブヨブンブン、みたいな。

 順調にリズム隊作成は進み、何曲もおれは打ち込んだ。内蔵エフェクターも空間系はさすがにちゃっちいけど、欲を言わなきゃジューブンすぎる内容だ。
 この手の例に漏れずしかし、リズム隊はなんとも冷たい。実際、バンドっちゅうのは、テンポやノリ、強弱に「揺らぎ」があるから生々しさがあるのだけれど、いかんせんそこは機械なので、そのままだととにかく冷たい。これを微妙にいじってノリを出すソフト、なんてーのもあるらしいが、そこまでやってる金もヒマも、マシンスペックの余裕もない。
 タイコは符割りを細かくして裏打ちやハイハットの芸を細かくするとかなり解消されるし、ベースのノリが要求される曲は自分で弾けばエエんやんか、と思い至って、タイコだけのパターンをさらに量産。ネタはいくらでもあるんで困ることはない。

 それにさすがパソコン、ある程度パターンをこしらえると、あとはコピペで貼っつけて行けるので、開発生産性はひじょうに高い。いや〜、これって楽しいかも。

 ・・・・・・と、ここまではとても良かったのだった。

 よっしゃぁ〜!次は音入れぢゃい!、と実際の楽器をオーディオインターフェース、っちゅうのを介してつなげてみる。リクツで行けば打ち込んだカラオケに合わせて、快適にギターやベース・ボーカルの音入れができる筈だ。トラックを指定しトラック上の録音ボタンをクリック・・・・・・

 ギョババババババ〜〜〜〜ッ!!

 思わずのけぞるほどの凄まじく強烈なホワイトノイズ。メルツバウのCDを間違えて再生したのかと思ったぞ(笑)。

 再び「CubaseSE徹底操作ガイド」との格闘が始まるが、そのような現象についてはどこにも書かれておらず、サッパリ要領を得ない。何度やってもドバババドバババ、これではまったく録音にならない。いっそこれを録音すればクールなノイズミュージックなのだろうが、録音されたはずのトラックは無音状態のまま。

 何日無益な努力を続けたか、とうとうおれは匙を投げた。何でもかんでもポジティヴに、ブレイクスルー目指して努力してられるか、っちゅうねん!!こんな前進しないことに時間と労力を費やしてるヒマなんてないのだ。旅にも行かんならん、文章も書かんならん、画像も整理せなならん、コンテンツもアップせなならん。休みの日は限られてるのだ。おお、そーぢゃそーぢゃ。

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 どこかで作業を再開せんとアカンなぁ〜、と思いつつ1年近くが過ぎた。

 音楽をやりたいって気持ちはずっとあったのだが、オーディオインターフェースは寂しく本棚の隙間に押し込まれたままになっているし、マニュアル本も増殖する蔵書のどっかに埋もれてしまった。やはり宅録はおれにゃぁムリなんかな?バンドメンバー募集しようかな?でも、こんなオッサンが募集して、果たして応募してくれる人おるんかな?と考える日が続いていた。

 そこに突然の旧友からの誘い。何でも前から欲しい欲しいゆうてたヤマハのMP3ピンポン録音マシン「サウンドスケッチャー」をついに買ったそうで、オマエもそれ買って遠距離バンドやろうと言う。おれは今ある機械も使いこなせてないし、買い足す資金の余裕もない。それに正直この機械、ライブの一発録りやアイデアスケッチには手軽でいいけど、篭ってやるには却ってめんどくさそうだ。
 おれは一念発起して封印されてたCubaseを起動し、マニュアル本を引っ張り出してきたのだった。

 持つべきものはどうやら、良き友ではなく悪友のようである。

 楽器もつないだ。?????・・・・・・ナゼかアレだけ凄まじかったノイズが出ない。さっぱりワケが分からないけど、結果オーライで先に進む。トラックにちゃんと音も入ってる。お〜!めっちゃ音クリアーに録れてるがな。よし、MIDIのシーケンサ音源といっしょに再生ぢゃあ!!

 ・・・・・・ウガ〜ッ!今度はいっしょに再生されんがなぁ〜っっ!!



付記:
 この1週間後、どうして再生されないかはようやく判明した。トラックダウンまで苦闘は続く・・・・・・・。
2006.10.15

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