「シズカナカクレガ」ヘヤフコソ
怖い音楽の話


これがウジャウジャだとたしかに怖い

 よほどその体験が怖かったらしく、何度も何度も中島らもはエッセイでそのことについて触れている。

 自宅の2階のベランダで(どぉせちょっと多分、何かをキメながらだろうが)、故ブライアン・ジョーンズのソロアルバム「ジャジューカ」を聴いてたら、人間の顔が葡萄の房になったようなものが下の方からせり上がってきたというのだ。

 これと似たような図柄を「パタリロ」で見たことがある。バンコランが過去に始末した犯罪者の亡霊に乗っかられる、みたいなシーンだと思うが、まぁ、ディープパープルの「ファイヤーボール」のジャケットのようなもんだった(笑)・・・・・・いきなり(笑)、でどないすんねんな?(笑)で。

 ダミアの「暗い日曜日」が、それを聴いて自殺者が続出したために発禁になった、ってエピソードは有名だが、冷静に考えると1930年代、ナチスドイツの台頭によってヨーロッパには少なからず厭世的な雰囲気が覆っていたことも事実なワケで、必ずしも曲の責任に帰するのもどうか、って気がする。この曲、今でもけっこう耳にするし。
 自殺の演出の添え物、と理解すべきなんぢゃないだろうか?

 レコードやCDに幽霊らしき声が入ってた、って話はやたら多いが、大抵はマスタリングの際の消し忘れや、マスターテープの転写だったりする。この手の話を敢えてここで取り上げようとは思わない。

 今日は、もっと音楽そのものの直接的なパワー(音霊、と言ってもいいかも知れない)としか思えない事例についてあれこれ。

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 最初は尺八の曲について。

 この話は子供の頃におれの父親から聞かされた。ネットでさんざん調べても同じ話が出てきたためしがないので、恐らくはかなり貴重な採話例ではないかと思う。

 何でも、父親自身が小学生ごろ、というから今から60年以上前、戦前の大阪での話である。彼の同級生に父親が尺八のお師匠さんの家があったのだという。その家に遊びに行ったときにそこの親爺さんからそもそも聞かされたらしい。
 尺八の曲に「ゆき(おそらくは”雪”という字をあてるのだろう)」というのがあって、これを「締め切って真っ暗にした8畳の部屋で、北向きになって吹く」と降霊現象が起きるのだそうな。

 いわば、霊おろしの曲なのである。尺八で筆おろしならちとナサケないが、霊ではシャレなりません。

 ともあれ、「真っ暗」や「北向き」は何となく心情的に分かる気がする。しかし、どぉして八畳の間でなくちゃイカンのか、サッパリ意味不明なだけに、この話にはある種の真実味があるように思う。ちなみにその曲を父親は聴かしてもらったそうだが、どぉってことない、フツーに「ブォ〜ブォ〜」と尺八が鳴ってるようにしか聴こえなかったらしい。

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 似たようなエピソードを今から20年ほど前に本で読んだことがある。著者が誰だったか忘れたし、ネットで裏付けを取ろうと思ってググッたけど見つからなかったので、本当にうろ覚えで申し訳ないが、次のような話だ。間違うてたら堪忍どすえ。

 一つは筝曲「葵上」。

 これには今挙げた尺八の曲と同様の効果があるのだそうな。たしか同じように、特定の条件の下で演奏しないと幽霊は現れないらしい。
 「葵上」は源氏物語がベースだったっけ?おれはそっち方面にトンと疎いのでメッチャ弱気だが、なんとなくそんなにめでたい話ぢゃなかった記憶がある。
 でもさ、筝曲でしょ?お琴。インストゥルメンタルやんか(・・・・・・尺八もそうだけど)、なんでそれで降霊現象なのだろう?と、ぶっちゃけ思う。

 次に謡曲「敦盛」。

 織田信長のフェバリットナンバーだった、っちゅうアレですよアレ。「人間五十年、下天のうちをくらぶれば、夢幻の如く也」とかなんとか、大河ドラマでも良く出てくる・・・・・・で、これに「別れの段」っちゅうパートがあるらしいんだが、そこをお師匠さんが弟子に教えると、ナゼか弟子と離れねばならない事情がたちまち起きる、というのだ。
 だから、これは弟子の卒業課題となってるのだとかなんとか・・・・・・あまり怖くなかったな(笑)。

 しかし、洋楽でこの手の事例をついぞ聞いたことがない。もし、何かご存知の方がいらしたら掲示板にでも書き込んでください。

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 その後、ノイズだなんだと、ややこしくも抽象的な音楽に傾倒していった原因の一つに、このような音の神秘性に関する話を聞いたことがズ〜ッと記憶に残ってたことも挙げられると思う。バッハの平均律の向うには何もなさそうな感じだもん。

 だがまぁ、呆れるほどその手の音楽を聴いても、見事に何も起きなかった。

 SPKだマウリツィオビアンキだラムレーだ、と死体解剖か何かのバチ当たりな写真をジャケットに大きくあしらった、おどろおどろしくもやかましく、不吉な音塊を聴いても、一向結構日光、カーテンも揺れなければ電気も消えず、ましてや金縛りに遭うこともなく、実に何一つ起きなかった。

 けだし、どれもこれも出そうな音楽、ではあったんだけどね。思い出すまま列挙すると、TG「Funeral in Berlin」、MonteCazazza+ZEV(だったかな?)「California Babylon」、下にジャケット紹介した23Skidoo「The Culling is Comming」etcetcetc・・・・・・え!?サイキックTV?甘いな、ありゃぁ。
 あ!そぉいや今は非常階段のアルバム、ってコトになってジャケットも違ってるが、おれの記憶ぢゃコンピレーションだった「終末処理場」。アレは最初火葬場の写真使ってたのが、あまりに関係者にいろんな災難が起きるんでお祓いしたとか聞いたことがある。でも、それって音のせいぢゃないよなぁ・・・・・・

 ・・・・・・ともあれ、そんなおれも今は立派に更正し、もとい、単に歳を取り(笑)、別に霊障音楽こしらえようなんて気持ももはやサラサラない。そろそろ暑くもなってきたんで、今回はちょっと趣向を変えてみたかった・・・・・・それだけっす。でわでわ。


ホンマに出そうなサイキック音響の名盤といえば、これをお勧めします。


世界一バチ当たりなジャケットかも
でも実は単なるミーハー。内容はカス以下。MBも似たようなもん。


附記:今稿を書くに当たってサーチした中に似たような例が一つ見つかったので紹介しておこう。出所は2ちゃんだ。

    >>20  『舞うと死ぬ舞い』というのがあるらしい。
         ならば、舞うのでなく「ただ聴いても死ぬのかな?」と思って、私は、その雅楽のCDを注文してみた。
         タイトルは『雅楽の稀曲』日本コロンビアCOCF−7058の中に収録されている「採桑老」(さいそうろう)という
         7分ちょっとの曲である。
         別のサイトを見たら、実際に雅亭会という所のメンバーが、この舞を舞ってみたが、
         無事に終わり、別に何事も起きなかったらしい。
「怖〜い音楽しっている人あつまれ 」http://piza.2ch.net/log/occult/kako/956/956213322.html


 ・・・・・・無事でよかったねぇ(笑)。
2006.05.23

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