「シズカナカクレガ」ヘヤフコソ
我、B級ギターを偏愛す(W)・・・・・・YAMAHA(ただしエレキ)の巻


名作、SGと不可思議なオリジナルシェイプ群の中でいっちゃん欲しいSX。ナスビみたい(笑)

http://www.yamaha.co.jp/より


 あろうことかヤマハまでB級のやり玉に挙げるのかよ!?と言われてしまいそうだが、おれの中でヤマハのエレキは製品自体っちゅーか、ブランドとエレキギターの「関係」がすごくB級なんですわ。

 〜〜中学を卒業したちょっといいトコの子供が、親や祖父母からお祝いで買ってもらったエレキ〜〜

 んん〜・・・・・・ちょっと恥ずかしいよね。でも、これがヤマハに対するおれの印象なのですよ。そうぢゃない人には悪いけど、おれの交友の周囲で、こんな風にして始めてオーナーとなったエレキギターがヤマハだったってヤツがケッコーいる(笑)。グレコでもフェルでもトーカイでもアリアでも、ましてやフレッシャーでもなく「ヤマハ」ってトコがミソだ。片田舎のレコード店兼楽器屋の店頭での、購入に到るまでの会話が目に浮かぶ。

 ----オマエ、エレキ欲しいゆうてたな。高校にもうかったし、買うたるわ。
 ----あ、アリガト。
 ----どんなんが欲しいんやったっけ?
 ----あ、まぁ、これ(・・・・・・とグレコか何かを指差す)
 ----(ちょっと値段を見て驚きながら)これってエエモンなんか?
 ----うん(トムソンよりは・・・・・・)。
 ----(隣にヤマハを発見して)オマエ、そんな「ぐれこ」なんてよぉ分からんトコのんにせんと、これにしとき。ヤマハやったら「メーカー品」やで。
 ----(よぉ分からん、ってギターのコトなんて全然知らんやんか)ヤマハ!?
 ----ヤマハゆうたらオマエ、ピアノから何からやってるし「メーカー品」やで。最初はシッカリしたトコのん買わんとアカンのちゃうか!?
 ----(スポンサーの意向は無視できず、しばしジレンマに苦しんだ後)うん、それにしとくわ。

 「メーカー品」!!ワハハ。ともあれ、こうしてちょっととんがった世界に足を踏み入れるためのツールは「ナショナルの白モノ家電」と同じ地平で議論され、まさに「めでたさも中くらいなりおらが春」となるわけである(笑)。

 念のため改めて断っておくと、上に掲げた会話はおれの創作、つまりは架空の話だが、ありそうだと思いません?

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 この感覚は無論、今の若い方々にはご理解できまい。まぁ、中年のオッサンのいつもの繰り言と思って読み飛ばしてください。

 ヤマハは言うまでもなくウナギと楽器の町・浜松が誇る、日本最大の、否、世界最大の総合音楽事業会社である。楽器制作については鍵盤楽器・管楽器・弦楽器・打楽器・電子楽器・ソフトウェア、とあらゆるモノを作っている。その木工技術を活かして家具なんかも作ってるようだし、ウソかまことか知らないけれど「佃煮」まで作ってるって噂まで聞いたことがある(笑)。たぶんデマだろう。
 単車メーカーのヤマハ発動機にしたって楽器メーカーのヤマハの分家筋。それが証拠に単車にも誇らしげに「三連音叉」のロゴマークが輝き、会社のウェブサイトの作りもほとんど同じ。
 また、おそらくは日本中のちょっと拓けた駅前には必ずあるであろう「ヤマハ音楽教室」や「エレクトーン教室」を通じて、幼児から一貫した音楽カリキュラムを持つ、情操教育機関としての顔もある。

 だから楽器そのものの作りは良心的というか、非常によい。同じ価格帯で他のブランドと比較すると、ちょっと下の方のグレードでは木が安っぽかったりするのが欠点だが(他メーカーがマホガニー・アルダーのところをナトー・アガチスで代用したり、とか)、でもその分、加工や塗装にシッカリ手をかけてて、当たり外れが少ない印象がある。

 70年代半ば製のヤマハのスチューデントモデルでラージヘッドのストラト(※)のコピーをジックリ分解してみたことがあるが、ブリッジがダイキャストではなく、スチールのプレス駒になっていたのに驚いた。詳しい人ならこんなコトは常識でご存知だろうが、本家フェンダーの場合オールドがプレス駒、CBS買収以降のラージヘッドがダイキャスト駒である。当時まだ日本ではそこまでコピー精度が高くなかったので、他メーカーではヘッドの大きさに関わらず、何でもかんでもダイキャスト。正しくスモールヘッドのストラトのコピーにプレス駒が採用されるのはレプリカがブームになる80年代近くになってからのことだ。ちなみにコスト面では加工に手間のかかるプレス駒の方が高くつくが、音質面と耐久性ではこっちに軍配が上がる、と言われる。
 そんな中、かなり早い時期に、それもあべこべでラージヘッドにプレス駒つけてたヤマハには、それなりのこだわりと見識があったのかもしれない。もちろん、コピーがいい加減だった、ってことも考えられるけど。

 こだわりといえば、フォルムへのこだわりが最たるものだろう。他の楽器メーカーが質の低いコピー製品をラインナップの中心に据えていた時代から、一貫してオリジナルシェイプのモノを主軸に作り続けている。ピックアップにしてもエスカッションのネジが3点止めだったり、ポールピースではなくブレードタイプのマグネットを採用したり、と独自の音に対する探究心を感じさせるものが多い。
 とは申せ、SGの背後にはレスポール、SCにはストラト、SJはテレキャス、BBにはプレベが見え隠れするのがちとナサケないけどね(笑)。

 でも、だ。そのような良心と教育心あふれる企業姿勢なればこそ、どうにもこうにも健全すぎてヤマハのエレキはB級なのだ。何でもキチンと全方位的にそこそこに作ってるのも、国語・算数・理科・社会は言うに及ばず体育・音楽・家庭科まで満遍なく成績のいい子供みたいだしね〜。何だかもうロックしてない。根本的に、「平衡を欠いて、枠からハミ出て、情操に悪いことする」のがロックなんだしさ。それが冒頭に書いたような親の庇護の元の「良い子のロック」的な雰囲気とダブる。

 そんなんだから、昔はまったくヤマハのエレキギターなんて歯牙にもかけなかったのだが、最近一種のノスタルジーと共に気になっている。現行品はエントリーモデルをわずかに残してかなり高級ラインに移行してしまったし、ムリしてその値段で買いたいほどの思い入れもないので、人気が今ひとつパッとせず、比較的安価に流通してる中古品で一本買ってみようかな。

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 ちなみにかつてヤマハが果たしていた冒頭の話のような役割を、今では本家ギブソンやフェンダーまでが担ってることは言うまでもないだろう。親にもそれなりに若い頃ハマってて知識のある人が増えたし、店に行けばSGやJrとかフェンダージャパンやメキシコモン(フェンダーUSAは安物専用工場がメキシコにあるのだ)なら4〜6万円台で買えるもん。

 何だかちょっと寂しいぞ。頑張ってくれ!ヤマハさんよ!!


※附記

 画像を借りてきたヤマハのサイトは、過去の製品までがちゃんとアーカイブされたこれまたとても良心的なサイトであるが、確か1万円違いで2グレードづつあったはずのストラトとレスポールのコピーは見事に掲載されていない。コピーやってたことを歴史から抹殺したかったのだろうか。


オリジナルを目指しながら、本家の影響がモロに見て取れる3本(笑)。SC、SJ、BB

同上


2006.01.14

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